願いが叶うなら

汐野悠翔

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冬物語

大晦日の約束③

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「で、葵葉、何食べたい? 何処の出店から並ぼうか?」


参拝を終えた後――
神崎君は心なしか目を輝かせながら、待ちきれない様子で私に訪ねた。


「えっとね、えっとね、あ、私フライドポテトが食べたい!」



私は悩みながらも一番最初に目についた屋台を指差し言う。


神崎君は楽しそうに笑顔を浮かべると、「了解!」と短く元気に答えながら私の手を掴み、フライドポテトのお店へと駆け寄って行く。


その後もリンゴ飴、綿菓子、私達はありとあらゆる出店に並んだ。


並びながら買ったものを頬張っては、他愛のない会話を交わす。


気がつけば、いつの間にやら私達の両手には抱えられない程の食べ物で溢れていた。



「お、兄ちゃん姉ちゃん、いっぱい買ったなぁ。どうだい、お面も一つ買ってかないかい?」


たくさんのお面が並ぶ屋台の前を通った時、店のおじさんが私達に向かって気さくに声を掛けてきた。

おじさんの誘いに神崎君は、一瞬何かを考えるように間をあけた後「じゃあそこの狐のお面頂戴」と言った。


「お、兄ちゃんありがとなぁ、毎度あり!」


おじさんは嬉しそうに狐のお面をとると、神崎君の頭にそれを被せてくれた。


「どうだ? 似合ってるか?」


後頭部に被せられたお面を私に見せながら、神崎君が無邪気に私に問い掛けてくる。

その姿を見ながら、私の心臓は一瞬ドクンと大きく跳ねた。


「……うん。似合ってるよ」


曇る顔を必死に笑顔で誤魔化しながら、私は一言だけ短くそう答えた。

神崎君が選んだお面は、“神耶君”がよく被っていたものと同じデザインで――

神崎君の姿が一瞬、神耶君の姿と重なった。


彼の行動に、私はある違和感を覚える。

……まるで私が神耶君に関する記憶を思い出していないか試しているかのような……そんな違和感を――


「兄ちゃん似合うねぇ、男前だねぇ。姉ちゃんの方も、一つどうだい?」


お面屋のおじさんのセールストークを遠くに聞きながら、私は頭に浮かんだ不安を払いのけようと、ブンブンと顔を横に振る。


「葵葉? どうした?」


そんな私の行動に、心配そうな顔をしながら俯いていた私の顔を覗き込む神崎君。

目が合った瞬間、私はこの不安を絶対彼に悟られてはならないと、急いで彼から顔を背けた。


「な、なんでもないよ。行こ、神崎君」

「……あぁ」

「兄ちゃん、姉ちゃん、ありがとねぇ」


お面屋さんの前から立ち去る私達の背中には、おじさんの大きくて元気な声が掛けられた。

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