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王女カオリーヌ

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その日、バイク帰路で香織と別れてからなんとなく沙織はなにかのハケグチを求めてズーマーを走らせた。
香織と兄の幸介がなんか怪しかったり、強くてカワイイロシア人の写真を見せられたりなにかムズムズする。
憂さ晴らしにちょっとだけ峠に行ってみようと思った。
夕方だし少し街を見下ろしたらすぐに帰るつもりだった。
うねった道が続く。
富士山が見えるカーブを曲がった瞬間、目の前になにかが走っていることに気づいた。
アスファルトを蹄でかけ走り、上下する体の筋肉と重さはまさに野生の迫力があった。

「本物の鹿ってこんなにデカいんだ…」

しばらく走ると鹿はガードレールを軽く飛び越え、絶壁をなんなく飛び降りていった。


「おお!スゴ!」

沙織は鹿が絶壁を降りる姿を見ようと同じ場所で止まった。
すぐさまバイクを降りて絶壁を見下ろすと鹿が山肌に突き出た岩に止まり沙織を見上げていた。
太陽の光が鹿と周囲の草原を照らした。
しばらく見とれていると沙織は、ハッとした。

「太陽?いま夕方じゃなかったっけ?」

見回すとバイクは馬にアスファルトの山道は野道になっていた。
沙織は首をかしげた。

「わたし、なにやってたんだっけ?」

なにかの民族衣装に黒いマントにとんがった帽子姿になっていたが沙織は違和感を感じつつ馬に飛び乗った。

「そうだ。急がないと勇者のパーティー出発しちゃう」

沙織は馬を走らせた。
しばらくすると街の門が見えてきた。
民衆が賑わって集まっている。
間違いなく勇者達の出発を見送りに来てるのだ。

「ああもう!遅刻だあ!」

澄んだ声が聞こえてきた。

「わがエトルリアに脅威を与える魔王ディアボロサイクロプスを打ち倒すのだ」

しかしよく聞くと聞き覚えのある声だ。
親衛隊に守られ勇者達をおくりだしていたのは王女だ。

「あれがエトルリア王国の王女かぁ」

近づくとそれは香織だった。

「香織?」

王女のドレスに身を包んだ香織だ。

「止まれ!」

親衛隊の槍に沙織は止められ馬を降りた。

「香織じゃん!」

「無礼者!エトルリア王国王女カオリーヌ様に向かってなんだその態度は!」

親衛隊の剣が沙織に向けられた。

「カオリーヌだぁ?」

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