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メレディは緊張で吐きそうであった。
もしくは心臓が口から飛び出す可能性を感じて口に手を当てていた。

何故これほど緊張しているかと言えば、今朝セスティーナが訪ねて来たところから始まったのだ。



「急にごめんなさい、メレディ様にお願いがあって来ましたの」
「……セスティーナ様、今何時かご存知ですか」

メレディは少しぼさぼさとした髪を手で撫でつけながら文句を伝えた。
当たり前だ、彼女はセスティーナを出迎える準備をほとんどさせてもらえなかったのだから。

「そうですわね、朝の7時ごろでしょうか?」
「そして、お願いが何回目かお分かりですか?」
「ええっと……さ、4……?回目でしょうか?」
「6回です!この2か月の間にです!私を召使か何かだと思っていらっしゃるの!全く」

撫でつけても戻ってくる飛び跳ねた髪をあきらめ、両手を腰に合ててセスティーナを怒る姿は、まるで威嚇している子猫のようだとメイドのマイは思っていた。
最近かなりセスティーナからお願いを受けているが、彼女のことをとても気に入ってしまったメレディがいくら怒ったところで、ただ可愛いだけなのである。そして、セスティーナもそれを良く理解していた。

「まさか!いつもメレディ様にしか頼めない特別なお仕事だから、ごめんなさい。あまりにも頼もしくてつい……」
「ま、まぁ!別に?頼まれて嫌な気持ちにはなりませんもの!それで?今回はどんな要件でいらしたの?」
「ありがとうございます!では今日の午後にこの場所で皇太子殿下と2人でお茶をしてくださいませ」
「なんだ、ただのお茶……って、はあ!?何を言ってらっしゃるの!」

メレディがセスティーナの方を見たときには、すでにセスティーナの体のほとんどが部屋から出ている状態であった。
セスティーナはニコリと微笑むと、片手をふわふわと振りながら遠ざかっていく。

「では、よろしくお願いいたしますわ!またごきげんよう~」
「ちょ、お待ちに……」

無言で扉を開けていたマイが、固まった主人の体を優しく押し、椅子に座らせた。
心が落ち着くフレーバーティーを用意し、待っているとメレディが目を覚ます。

「え?え?え?あの人は一体何を言っていたの?今日?皇太子殿下と?お茶?は?今日、今日?!」
「メレディ様、落ち着いてください。もう準備を始めないといけません」

髪の毛をかき乱していた主人の手を押さえつけ、マイはフレーバーティーを主人の口に流し込むと、パチンと指を鳴らして他のメイドたちを招集した。
静かに集合した彼女たちにスパスパと支持を出した彼女は、いつも通りメレディを嗜めながら準備を始めたのだった。

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