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メレディは王宮のメイドを引き連れて街に出ていた。
買い物をする時には色々な人物の声が聞きたい、という理由から今回の催しの最中メレディはほぼ毎回王宮のメイドを連れて買い物に出た。
そして今回は、セスティーナに紹介されたハザード・トラデインも一緒である。
「アイスワイン?」
「ええ、皆様がいつも飲まれているワインとは一味違う、デザートのように甘いワインの事です」
「それが。よろしいのですか?」
「何かの土産には少し変わった物が良いでしょう。そして、同じ種類でも今まで見た事がない物の方が驚きが大きい」
なるほど、とメレディは思っていた。
セスティーナに紹介された時は怯え切った猫のように警戒心を露わにしていたハザードであるが、今は土産物選びに饒舌である。
まるで魔法の粉を飲んだように右端の店から左端の店までの説明を、流れるような言葉で案内していく。
それも全てメレディに分かりやすく、そして選ぶ理由まで語られる物だから、全て購入してしまいそうだった。
「アスタカ地方を治めていたと聞いたので、この周辺にもここまで把握されていると存じ上げませんでしたわ」
「昔はこの街の取り締まりをしておりました。その力を陛下に認められ、伯爵の名前をいただき、アスタカ地方の力を取り戻すようにと命を受けたのです」
「それは素晴らしいですわ」
「いえ、ようやく負債がなくなったところ。まだまだですよ」
「それでもやはり、」
求められる物を把握して相手に伝える。
シンプルだが一番難しい事とメレディは把握していた。
そして、今回希望する『お土産』という言葉だけで、各お店の一番良いものを紹介してくれるなら今後誰に渡すにも困らないだろう。
流石、土地だけはたくさんあると言われてきたアスタカ地方を再建した男である。
今では、緑豊かな癒しの場所として貴族がこぞって旅行に向かう場所として有名だ。
そして、先程出たアイスワインの製法を編み出し、特産品として扱っているらしい。
「それにしても、ハイトランデ嬢とご友人だったとは知りませんでした」
「最近仲が良くなったので、ご存知なかったのかと」
「そうでしたか、しかし、あのお方は一体何者なんですか……」
疲れ切った顔を隠しもせずにハザードはため息をついた。
セスティーナから声をかけられたあの日から、止まる事なく人を紹介され、仕事が山のように溜まっていくのだ。
「もしかしてロー……リポーター商会の会長も紹介されました?」
「な、なぜそれを?」
「セスティーナ様は多分、美しい皮を被った悪魔ですわ。良い意味で」
「良い意味で……?」
「ええ、お陰で私は大きな仕事を任されまして、この様にトラデイン伯爵にお土産を紹介されておりますの」
よく見ればげっそりした顔のメレディは、しかし、嬉しそうに頬を染めた。
「嬉しい悲鳴というやつですわ」
ああ、彼女も同じなのか。とハザードは思った。
そして、自分も同じように今、嬉しい悲鳴をあげているのだろうとも自覚する。きっと、この催し物が終わる頃には負債がなどと言う心配すら無くなるだろう。
「では、次はこちらのお店を……」
買い物をする時には色々な人物の声が聞きたい、という理由から今回の催しの最中メレディはほぼ毎回王宮のメイドを連れて買い物に出た。
そして今回は、セスティーナに紹介されたハザード・トラデインも一緒である。
「アイスワイン?」
「ええ、皆様がいつも飲まれているワインとは一味違う、デザートのように甘いワインの事です」
「それが。よろしいのですか?」
「何かの土産には少し変わった物が良いでしょう。そして、同じ種類でも今まで見た事がない物の方が驚きが大きい」
なるほど、とメレディは思っていた。
セスティーナに紹介された時は怯え切った猫のように警戒心を露わにしていたハザードであるが、今は土産物選びに饒舌である。
まるで魔法の粉を飲んだように右端の店から左端の店までの説明を、流れるような言葉で案内していく。
それも全てメレディに分かりやすく、そして選ぶ理由まで語られる物だから、全て購入してしまいそうだった。
「アスタカ地方を治めていたと聞いたので、この周辺にもここまで把握されていると存じ上げませんでしたわ」
「昔はこの街の取り締まりをしておりました。その力を陛下に認められ、伯爵の名前をいただき、アスタカ地方の力を取り戻すようにと命を受けたのです」
「それは素晴らしいですわ」
「いえ、ようやく負債がなくなったところ。まだまだですよ」
「それでもやはり、」
求められる物を把握して相手に伝える。
シンプルだが一番難しい事とメレディは把握していた。
そして、今回希望する『お土産』という言葉だけで、各お店の一番良いものを紹介してくれるなら今後誰に渡すにも困らないだろう。
流石、土地だけはたくさんあると言われてきたアスタカ地方を再建した男である。
今では、緑豊かな癒しの場所として貴族がこぞって旅行に向かう場所として有名だ。
そして、先程出たアイスワインの製法を編み出し、特産品として扱っているらしい。
「それにしても、ハイトランデ嬢とご友人だったとは知りませんでした」
「最近仲が良くなったので、ご存知なかったのかと」
「そうでしたか、しかし、あのお方は一体何者なんですか……」
疲れ切った顔を隠しもせずにハザードはため息をついた。
セスティーナから声をかけられたあの日から、止まる事なく人を紹介され、仕事が山のように溜まっていくのだ。
「もしかしてロー……リポーター商会の会長も紹介されました?」
「な、なぜそれを?」
「セスティーナ様は多分、美しい皮を被った悪魔ですわ。良い意味で」
「良い意味で……?」
「ええ、お陰で私は大きな仕事を任されまして、この様にトラデイン伯爵にお土産を紹介されておりますの」
よく見ればげっそりした顔のメレディは、しかし、嬉しそうに頬を染めた。
「嬉しい悲鳴というやつですわ」
ああ、彼女も同じなのか。とハザードは思った。
そして、自分も同じように今、嬉しい悲鳴をあげているのだろうとも自覚する。きっと、この催し物が終わる頃には負債がなどと言う心配すら無くなるだろう。
「では、次はこちらのお店を……」
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