48 / 75
第十六節気 秋分
末候――水始涸(みずはじめてかる)
しおりを挟む
休日の朝に早起きをすることが、随分と暁治の中で定着してきた。朝のラジオ体操に、一週間分の掃除、洗濯。早く起きなければ、自分の時間が取れない。もはや早く起きるのは必然と言っていい。
今日は以前、米を分けてくれた先輩教師の田中の実家で、稲刈りだ。大きな田んぼはコンバインで一掃するが、頼まれたのは個人用とのこと。
ひんやりとした風が吹き抜ける田園で、大きく伸びをしてから、暁治はどこか色の薄くなった青空を見上げた。それは夏の陽射しとはまるきり違う。
秋雨という言葉もあるので、雨の多い季節でもあるが、今日は秋晴れという言葉がぴったりだ。
「はるー! 手が止まってるよ」
「大目に見ろよ。お前みたいに長生きしてないから、経験値がないんだよ」
小さな田んぼと言っても、手刈りでの作業は骨が折れる。ずっと屈んだ体勢で、背中が折れ曲がったような気分にさせられた。
田んぼの半分をさくさくと、手慣れた手つきで刈った稲で埋めていく、朱嶺の背中がいつの間にか遠い。振り返った顔に、暁治の顔が苦々しくなる。
「早く終わらせないと、お日様のでているうちに終わらないよ」
「え、もうだいぶ終わっただろう」
田中の話ではこの田んぼは一ヘクタール。百メートル四方の大きさだとか。それを朱嶺が半分、暁治が残った半分のさらに三分の一。残りはあとひと息だ。けれど首を傾げた暁治に、肩をすくめた朱嶺が息をつく。
「まだこれからだよ。刈ったのをまとめて天日干ししなくちゃ」
「先は長いな」
「お礼にお米をもらえるんだから、頑張らないと」
「消費するのお前たちだろう」
今度は暁治が息をつく。そしてエンゲル係数のトップに立っている男の背中を、のんびり追いかけた。残りの三分の二も、やってもらおうという魂胆だ。
まだ二十代半ば、歳だとは思いたくないが、底なしの規格外たちに比べればまだまだ若い。ため息交じりに、そんなことを思いつつ、暁治はかなり馴染んできた鎌を稲の根元へ下ろす。
それから陽射しが高くなった頃に、稲を束ねて稲架というものに干した。稲も束になるとなかなかの重さ。腰を曲げっぱなしの稲刈りから、上がり下がりの重労働。
明日は腰痛になってもおかしくない。こうなると仕事のあとのご飯は美味いものだ。
「暁治ー! ご飯にゃ!」
「おお、そっちは終わったのか?」
「ばっちりにゃ」
ようやく一段落したところで、大きな田んぼのほうで手伝っていた、キイチがやってくる。彼の両手には大きな風呂敷包みの重箱。今朝、暁治が起きる前から、居候二人で作っていたものだ。
田んぼの脇、空き地にレジャーシートを敷いて、重箱を開く。中身はおむすびにサンドイッチ。唐揚げに、きんぴら、卵焼きにポテトサラダなどなど。男所帯に倣ってどれも大盛りだ。
最近の二人は張り合っているのか、料理の腕をめきめきと上げている。元々キイチはそれなりに作れる方で、朱嶺は肉じゃがオンリーだったのに、レシピが増えた。
朝や晩に二人で交互に作っているので、暁治はかなり楽をしている。
「暁治、からあげ」
「ん、これはキイチか?」
「そうにゃ」
左隣に座ったキイチが、一口大ほどの唐揚げを差し出してきた。促されるままに、暁治はそれをぱくりと口に含む。すると口の中に、じゅわっと肉汁と旨味が広がった。
もも肉はぷりぷりで柔らかく、衣もサクサクでかなり美味い。
「はる、こっちもあーん」
「ん? ああ、うん」
今度は右隣の朱嶺にサンドイッチを差し出された。レタスとハムが挟まったそれを口にすると、マスタードがツンとする。少しばかり塗った量が多いようだ。しかし許容範囲だったので、そのまま一つ完食した。
だがさらに右と左から、次々におかずを向けられて、自分で摘まむ暇がない。
「待て、お前たち。ちょっとゆっくり飯を食わせろ」
両方から箸を向けられ、さすがに暁治はそれから後ずさる。二人揃って首を傾げられるが、シートの上に置いた皿に指を向けた。
「俺はいいから、食え」
「ええー、僕の手ずから」
「駄烏より、おれのを食べるにゃ」
「二つもいっぺんに食えるか!」
横からおむすびと卵焼きを、口元にぐいぐいと寄せられる。とっさに彼らの手を掴んだ暁治は、二人の口元にそれらを押しつけた。
「おやおや、両手に花ですな。猫屋、麦茶を忘れてるぞ」
「全然、花じゃないですよ!」
ふいに聞こえた声に顔を上げると、にこにことした田中が、ポットを手にやってくる。傍まで来た彼は、ポットと紙コップを暁治の前へ置いた。
「噂には聞いてましたが、ほんとに三人仲良しで」
「噂ってなんですか?」
「宮古先生を巡って朱嶺と猫屋が火花を散らしてるってね」
「それって」
「学校中の噂ですな。いやはや、田舎ですから」
はっはっは、と笑う田中と裏腹に、暁治の顔はじわじわと熱を帯びてくる。それでなくとも美術部員に、賭けの対象にされているというのに。
それが校内で噂になっているということだ。
「微塵も事実じゃないです!」
「えー! はる酷い」
「おれの愛が伝わってないのか!」
「まだ、ってところですな。自分は朱嶺に賭けてます」
「田中先生まで!」
「はっはっは、午後は草刈りお願いしますね。夕飯はちらし寿司だと家内が言ってましたよ」
またまた笑い声を上げた田中は、言及を避けるようにそそくさと、来た道を戻っていってしまった。ついでにまた、仕事を押しつけられた気もするけれど、それどころではない。
両側からの視線が痛い。
とはいえキイチはまだ幼い印象で、弟のような気がする。朱嶺は無邪気な感じがあって、子供っぽくて。少し意識はしているようだが、まだまだ恋愛に発展していない。
けれど以前からの疑問はあった。ふとした瞬間大人びた顔をする。それが本当の素顔なのか、時とともに子供っぽくなったのか。
初めて会った時はいまより大人の姿で、祖父に紹介された時は、さほど年の変わらない子供の姿だった。三百年も生きていたら、やはり伸び縮みするのかと、変な納得の仕方になる。
こうして傍にいると知りたいことが増えていく。石蕗に言わせたら、意識した瞬間から恋ですよ、なんて言われそうである。
「はる? どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「なんでもないってことはないよね」
「なんでもないって」
くすくすと笑う朱嶺に暁治はついムキになった。けれど嫌な顔をもせず、彼はやんわりと目を細める。その見透かすようなまなざしが少し癪に障った。
「はるって子供の頃から変わってないね」
「成長がないって言いたいのか?」
「違う違う。なにか言いたいのに、言えない時の癖。変わらないなぁって」
「え?」
訝しげに首を傾げれば、笑みを深くして朱嶺は自分の腕を指さす。それにつられて視線を向けると、暁治の指先が彼の袖を摘まんでいた。無意識のその行動に気づいて、ぱっと手を離したが、いまさら誤魔化しもできないだろう。
「はるってば、可愛い」
「う、うるさい! 俺はいつまでも子供じゃないぞ。記憶の中の俺と一緒にするな」
「大人のはるも十分素敵だよ」
「取って付けたような言い方……っ」
文句を言おうとした口がふいに塞がれた。あっという間に近づいてきた、朱嶺を止める余裕がなかった。驚いて固まっていると、ちゅっと小さな音を立てて、唇が離れていく。
柔らかなその感触。触れたのは初めてなはずなのに、どこか既視感がある。
「ああっ! おれの暁治になにするにゃー!」
横からキイチに抱きつかれつつも、暁治は昔の記憶を掘り起こそうとした。しかし出来事が昔過ぎて、どうしても思い出せない。けれど触れた感触だけが、はっきりと残っている。
自分のファーストキスが、得意そうに笑っている、この男かもしれないという事実に気が遠くなった。
今日は以前、米を分けてくれた先輩教師の田中の実家で、稲刈りだ。大きな田んぼはコンバインで一掃するが、頼まれたのは個人用とのこと。
ひんやりとした風が吹き抜ける田園で、大きく伸びをしてから、暁治はどこか色の薄くなった青空を見上げた。それは夏の陽射しとはまるきり違う。
秋雨という言葉もあるので、雨の多い季節でもあるが、今日は秋晴れという言葉がぴったりだ。
「はるー! 手が止まってるよ」
「大目に見ろよ。お前みたいに長生きしてないから、経験値がないんだよ」
小さな田んぼと言っても、手刈りでの作業は骨が折れる。ずっと屈んだ体勢で、背中が折れ曲がったような気分にさせられた。
田んぼの半分をさくさくと、手慣れた手つきで刈った稲で埋めていく、朱嶺の背中がいつの間にか遠い。振り返った顔に、暁治の顔が苦々しくなる。
「早く終わらせないと、お日様のでているうちに終わらないよ」
「え、もうだいぶ終わっただろう」
田中の話ではこの田んぼは一ヘクタール。百メートル四方の大きさだとか。それを朱嶺が半分、暁治が残った半分のさらに三分の一。残りはあとひと息だ。けれど首を傾げた暁治に、肩をすくめた朱嶺が息をつく。
「まだこれからだよ。刈ったのをまとめて天日干ししなくちゃ」
「先は長いな」
「お礼にお米をもらえるんだから、頑張らないと」
「消費するのお前たちだろう」
今度は暁治が息をつく。そしてエンゲル係数のトップに立っている男の背中を、のんびり追いかけた。残りの三分の二も、やってもらおうという魂胆だ。
まだ二十代半ば、歳だとは思いたくないが、底なしの規格外たちに比べればまだまだ若い。ため息交じりに、そんなことを思いつつ、暁治はかなり馴染んできた鎌を稲の根元へ下ろす。
それから陽射しが高くなった頃に、稲を束ねて稲架というものに干した。稲も束になるとなかなかの重さ。腰を曲げっぱなしの稲刈りから、上がり下がりの重労働。
明日は腰痛になってもおかしくない。こうなると仕事のあとのご飯は美味いものだ。
「暁治ー! ご飯にゃ!」
「おお、そっちは終わったのか?」
「ばっちりにゃ」
ようやく一段落したところで、大きな田んぼのほうで手伝っていた、キイチがやってくる。彼の両手には大きな風呂敷包みの重箱。今朝、暁治が起きる前から、居候二人で作っていたものだ。
田んぼの脇、空き地にレジャーシートを敷いて、重箱を開く。中身はおむすびにサンドイッチ。唐揚げに、きんぴら、卵焼きにポテトサラダなどなど。男所帯に倣ってどれも大盛りだ。
最近の二人は張り合っているのか、料理の腕をめきめきと上げている。元々キイチはそれなりに作れる方で、朱嶺は肉じゃがオンリーだったのに、レシピが増えた。
朝や晩に二人で交互に作っているので、暁治はかなり楽をしている。
「暁治、からあげ」
「ん、これはキイチか?」
「そうにゃ」
左隣に座ったキイチが、一口大ほどの唐揚げを差し出してきた。促されるままに、暁治はそれをぱくりと口に含む。すると口の中に、じゅわっと肉汁と旨味が広がった。
もも肉はぷりぷりで柔らかく、衣もサクサクでかなり美味い。
「はる、こっちもあーん」
「ん? ああ、うん」
今度は右隣の朱嶺にサンドイッチを差し出された。レタスとハムが挟まったそれを口にすると、マスタードがツンとする。少しばかり塗った量が多いようだ。しかし許容範囲だったので、そのまま一つ完食した。
だがさらに右と左から、次々におかずを向けられて、自分で摘まむ暇がない。
「待て、お前たち。ちょっとゆっくり飯を食わせろ」
両方から箸を向けられ、さすがに暁治はそれから後ずさる。二人揃って首を傾げられるが、シートの上に置いた皿に指を向けた。
「俺はいいから、食え」
「ええー、僕の手ずから」
「駄烏より、おれのを食べるにゃ」
「二つもいっぺんに食えるか!」
横からおむすびと卵焼きを、口元にぐいぐいと寄せられる。とっさに彼らの手を掴んだ暁治は、二人の口元にそれらを押しつけた。
「おやおや、両手に花ですな。猫屋、麦茶を忘れてるぞ」
「全然、花じゃないですよ!」
ふいに聞こえた声に顔を上げると、にこにことした田中が、ポットを手にやってくる。傍まで来た彼は、ポットと紙コップを暁治の前へ置いた。
「噂には聞いてましたが、ほんとに三人仲良しで」
「噂ってなんですか?」
「宮古先生を巡って朱嶺と猫屋が火花を散らしてるってね」
「それって」
「学校中の噂ですな。いやはや、田舎ですから」
はっはっは、と笑う田中と裏腹に、暁治の顔はじわじわと熱を帯びてくる。それでなくとも美術部員に、賭けの対象にされているというのに。
それが校内で噂になっているということだ。
「微塵も事実じゃないです!」
「えー! はる酷い」
「おれの愛が伝わってないのか!」
「まだ、ってところですな。自分は朱嶺に賭けてます」
「田中先生まで!」
「はっはっは、午後は草刈りお願いしますね。夕飯はちらし寿司だと家内が言ってましたよ」
またまた笑い声を上げた田中は、言及を避けるようにそそくさと、来た道を戻っていってしまった。ついでにまた、仕事を押しつけられた気もするけれど、それどころではない。
両側からの視線が痛い。
とはいえキイチはまだ幼い印象で、弟のような気がする。朱嶺は無邪気な感じがあって、子供っぽくて。少し意識はしているようだが、まだまだ恋愛に発展していない。
けれど以前からの疑問はあった。ふとした瞬間大人びた顔をする。それが本当の素顔なのか、時とともに子供っぽくなったのか。
初めて会った時はいまより大人の姿で、祖父に紹介された時は、さほど年の変わらない子供の姿だった。三百年も生きていたら、やはり伸び縮みするのかと、変な納得の仕方になる。
こうして傍にいると知りたいことが増えていく。石蕗に言わせたら、意識した瞬間から恋ですよ、なんて言われそうである。
「はる? どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「なんでもないってことはないよね」
「なんでもないって」
くすくすと笑う朱嶺に暁治はついムキになった。けれど嫌な顔をもせず、彼はやんわりと目を細める。その見透かすようなまなざしが少し癪に障った。
「はるって子供の頃から変わってないね」
「成長がないって言いたいのか?」
「違う違う。なにか言いたいのに、言えない時の癖。変わらないなぁって」
「え?」
訝しげに首を傾げれば、笑みを深くして朱嶺は自分の腕を指さす。それにつられて視線を向けると、暁治の指先が彼の袖を摘まんでいた。無意識のその行動に気づいて、ぱっと手を離したが、いまさら誤魔化しもできないだろう。
「はるってば、可愛い」
「う、うるさい! 俺はいつまでも子供じゃないぞ。記憶の中の俺と一緒にするな」
「大人のはるも十分素敵だよ」
「取って付けたような言い方……っ」
文句を言おうとした口がふいに塞がれた。あっという間に近づいてきた、朱嶺を止める余裕がなかった。驚いて固まっていると、ちゅっと小さな音を立てて、唇が離れていく。
柔らかなその感触。触れたのは初めてなはずなのに、どこか既視感がある。
「ああっ! おれの暁治になにするにゃー!」
横からキイチに抱きつかれつつも、暁治は昔の記憶を掘り起こそうとした。しかし出来事が昔過ぎて、どうしても思い出せない。けれど触れた感触だけが、はっきりと残っている。
自分のファーストキスが、得意そうに笑っている、この男かもしれないという事実に気が遠くなった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる