拾われた異世界転移者

デスVoice

文字の大きさ
上 下
32 / 45
第一章《ギルド》「闇の権力者編」

第十四話 「首都ロキロキ」

しおりを挟む
「着いたぞ、首都ロキロキだ」

目の前には外壁に囲まれた巨大な土地が広がっている。その中心にそびえ立つお城こそがこの国の王が住む王宮で、今回の旅の目的地だ。

あの後、ブリガンダインとの戦闘でかなりのダメージを負った私たちは、近くの森で数日間過ごした。体を休め、治療に専念するためだ。

野宿にはなってしまったが、久しぶりにゆったりとした時間を過ごすことが出来て結構楽しかった。

他人の怪我なら私が治せるのだが、実は自分自身に治癒魔法はかけられない。治癒スキル所持の影響で常人よりは多少自然回復するスピードが早いが、それでもあの大怪我が治るまでには時間を有した。

私の血小板ちゃん達が頑張ってくれたおかげで、今はもうすっかり元気だ。旅を再開し、今やっと目的の地にたどり着いた。

「これがこの国の首都…」

今までとは比べ物にならない規模の街に、レイが感心している。さぞ圧巻だろう。

「久しぶりだぁ♡」

ティアはこの国の出身で、ロキロキにはたまに商売で来ていたようだ。
彼女の実家は魔物牧場で、そこで使う霊魂球を買いにきていたのだ。

そして、霊魂球で育てた魔物をペットとして街の金持ちに売りに来る。それが彼女らテイマーの本来の仕事だった。

しかし、ギルドも霊魂球売買を始めたのが運の尽きだった。奴らが霊魂球を集めるようになった理由は分からないが、軍事用かなんかだろう。

テイマーが邪魔になったギルドは、どんどんと圧力をかけていき、いよいよ法を変えてしまった。しかもそれだけでは飽き足らず、黒い噂を流して目に見えて迫害し始めた。

国民が信用しきっているギルドに誰も反感を抱きもせず、テイマー迫害の流れは広がり続けている。
勿論...ギルド本部が置かれたこの街が例外である筈がない。

「なぁ、ティア。ジャックの事なんだが、街には連れて行けないぞ?テイマーであることを周りに公言するようなものだからな」

一応、「使役」のちからの持ち主と「テイマー」である事は別になのだが、「使役」を持っている者の大概はテイマーなので、国民は同一に扱っているようだ。

「なら1箇所寄ってもいいかな?そこに寄れれば問題は解決だからぁ♡」

ふふん、とティアが自信満々に胸をつきだす。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

お久しぶりです、レイです。

僕らはジャックをアンナに預け、ふたりで先に街へ来ていた。ジャックを隠す「とあるアイテム」を買うためだ。

この世界には「魔道具」という、魔力で動く機械のような物が存在している。アンナが使っていたポケベルなんかもその一種だ。

この街には「使役」使い向けの、便利な魔道具屋さんがあるようで、ティアちゃんの案内でそこへ向かっている。

ベビーシッターもとい、ジャッカロープシッターにアンナを選んだのは、彼女が僕達の中で1番戦闘力が高いからだ。なんびとからも、ジャックを絶対に守ってくれるという信頼の証だ。

さっきはキャラじゃないとか言って嫌がっていたけど、大丈夫かな?仲良くやってるといいけど。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ほぉうら、ジャックちゃん♡ょぉーしよし」

「ふぃおんぬ!!」

「いいこだねぇ、ジャックちゃん!いつも偉いねぇ♡そぉれ!コチョコチョコチョコチョ」

「ふぃ!ふぃぉーーーーーお♪」

...めちゃくちゃ楽しんでいた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「レイくん!ここだよぉ♡」

ティアちゃんが足を止めたのは、いかにもな雰囲気の、路地裏にある小さなお店だった。

「……動物愛護団体ひがし店?」

店の雰囲気だけでなく、名前も十分に胡散臭かった。

前から思っていたけど、この世界のネーミングセンスはどこかズレている。通貨なんて「@」だよ?

でもアンナとティアちゃんの名前は普通だよな…?
あ、そうでも無いか。苗字が「エイ」と「ミロスフィード」だもん。

自分の名付けの親がこの世界の人じゃなくて良かったと心から思う。

「おじさぁーん!久しぶりぃ♡」

カランコロンとドアを元気よく開け、ティアちゃんが大声で挨拶する。かなりの常連なのだろう。

「オゥ…そうかい」

「んもぉ!おじさん!! 私だよ?ティアだよぉ?」

「そうかい、そうかい。わしは茶漬けだ」

中に居たのは70歳はいっているだろうか...ヨボヨボのやせ細った小さいおじいさんだった。

会話が全然噛み合ってないことより、この世界にも茶漬けがあることに興味が向いてしまった。それとも名前が「チャヅケ」と言うのか…?いずれにせよこのおじいさん...

「おじさん、だんだんボケが進行してきているねぇ」

前の家の近所にもボケているお爺さんが居た。左右の手に入れ歯を持って、奇声を発しながら街を走り回っていた時は警察沙汰になったぐらいだ。

「ティアちゃん、意外と辛辣だね」

苦笑いで一応ツッコむ。まぁ、ボケてるのは間違い無いだろうけどそれを本人の前で言うのもなかなか大胆だ。

「しっかりしてよぉ!今日はジャックくんのためにボールを買いに来たんだからぁ」

「ビーフストロガノフはワインと合うんじゃ」

どんなボケ方だ!何と間違えた!

って、それより...ボール?ボールってもしかして…

「ほら!この魔物ボールをくださいって言ってるのぉ!」

ティアちゃんがドンッと、そのボールをテーブルに置く。ボールと聴いた時にはドキッとしたが、見た目も名前もあの有名なボールとはかけ離れていて安心した。

「これください♡」

ボールの中には目玉があり、ギョロギョロと妖しく動いている。巻き付けられた赤い鎖も、かなり不気味だ。

「2500@だぞ」

1@は大体4円だと認識してる。大体の市場の物の相場を見る限り、多分それくらいだ。だとするとこのボールさんはだいたい1万円ぐらいか。

「今日は2500ね?はいどうぞ。おじさん、ありがとぅ♡」

今日...は?

「また来てなぁ」

このおじいさん商売の時だけボケがきれいさっぱりなおっている気がする。いや、人を疑うのは良くない。きっとたまたまだ。

またねぇ、と手を振りながら店を出るティアちゃんについて店を出る。これでお使いはおしまいだ。

なんだか振り回されてばっかりな気がする。これじゃ僕がいる意味が無い。助けになれていない。代金も高いだろうに、また支払わせてしまった...。

やっぱり僕はお荷物なのかなぁ…劣等感が込み上げる。

最近は前より戦えるようになった…と思う。しかし、それでもまだ、アンナには敵わない。ブリガンダイン戦では、アンナが僕を庇ったり、回復してくれたりなんかするからブリガンダインに攻め入る隙を作ってしまった。

力もお金もない、ただのお荷物。この世界にも疎く、役に立つことなんてひとつもない。

何もかもおんぶにだっこだ。深いため息が漏れ出す。

ふたりを手伝いたい、助けたい。なのにどうすることも出来ない自分がもどかしい。僕は...

「レイくん!」

ティアちゃんに急に手を握られ、物思いからさめる。

「ど、どうしたの?」

「ちょっと寄り道しよ?デートだよ♡」

「…え?」

突然のお誘いに戸惑うが、彼女はただ笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

処理中です...