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第十三章 人はサイズじゃないんだよ
13-4 謎の早押しクイズ
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チャラ男の友達らしき人が『いきなりナンパか?』と茶化すように口笛を吹くと、『ちげぇよ』と声を荒げる。
「覚えてねぇか? 俺だよ、榊 明人」
彼は私に向き直り、知らない名前を名乗ってきた。
「すみません、わからないです……」
そんな名前の知り合いなんて居なかった気がする。
でも、あっちは私のことを知ってるみたいなんだよなぁ。誰だろう。
榊と名乗る人は、困ったように笑って話を続ける。
「あの時のこと、怒ってんのか、神凪? あれはその、周りが——」
「この子に何の用ですか?」
榊さんの要領を得ない話を、珀弥君の鋭い声音がばっさりと切り捨てた。
彼は私を背中に隠すように前に出る。
「は? あんた誰?」
珀弥君の広い背中越しに聞こえるのは、榊さんの不機嫌そうな声。
あんな不良みたいな人を怒らせちゃったら、珀弥君が正当防衛で逆に相手をボコボコにしちゃう……!
「珀弥く——」
「保護者みたいなものです。ナンパなら他を当たってくれませんか?」
「保護者? へぇ、彼氏じゃねぇんだ?」
榊さんは『保護者』という単語を聞き、せせら笑う。
確かに、異性の同級生なのに、彼氏じゃなくて保護者というのもおかしいかもしれないけれど……。
い、いや、別に私は珀弥君の彼女になりたいなんて、そんなおこがましいことは考えていない。
「えぇ、そうです。馬鹿にして気が済んだなら、どうぞお引き取りください」
「お前さ、さっきから俺のことナメてるだろ?」
煽られても冷静なままの珀弥君に、榊さんは青筋を立てる。
これはマズい展開になってきているのではないか?
「あのっ!」
「はいはいはいはい、ストォーップ!」
また私が言いかけたいところで、今度は翼君が遮ってきた。台詞を言わせてください。
翼君は珀弥君と榊さんの間に割り込み、へらへらと笑う。
「せっかくの楽しー休日なんだし? こんな喧嘩で終わらせるのは勿体無くない?」
「は? 何だお前」
榊さんは声を低くするが、翼君は動じない。
「ダチでーす。こいつ珀弥っていうんだけどぉ、千真ちゃんのことになると、ついムキになっちゃうんだよねー」
「おい、翼——」
珀弥君を押し退け、翼君はペラペラと喋る。
「んでんで、キミも千真ちゃんのことが気になってるみたいだし? ……折角だから、千真ちゃんを賭けて勝負しない?」
何でそうなるの?
「ちょっと待って! 勝負って何を!?」
入学したときもこんな展開になったっけ? あの時は先輩と剣で勝負だったけれど……。
「なぁに、バイオレンスなコトはしねーよ。ここはプールだし——」
翼君は腕を組み、フフンと鼻を鳴らす。
「全部当てるまで帰れまセン! フューチャリング千真ちゃん!」
「どこら辺がプールに関係あるのかな?」
「あだだだだだ!」
翼君が題目を発表した瞬間、彼の顔に珀弥君のアイアンクローが炸裂した。
確かに、プールに全然関係ない。
「待て待て! 千真ちゃんを賭けるんだし、彼女メインの勝負の方が良いべ!?」
「どこが良いんだ? まず、千真さんを賭けることがおかしい」
そ、そーだそーだ! 賭けは断固反対だあ! 何で一時的に私の人権が失われるんだあ!
珀弥君が抗議をする中、榊さんはニヤリと不敵な笑みを見せた。
「俺は別に構わねぇよ?」
「……なんだって」
珀弥君は声を低め、榊さんに聞き返す。
「タイトル的に、神凪についての問題に正解すれば良いって事だろ?」
「話が早いねェ、そゆこと」
勝負の趣旨を言う榊さんに、翼君はうんうんと頷く。
っていうか私は拒否権無いんですか?
「千真ちゃんについてのお題を出すから、お前等はそれに答える。んで、その解答を千真ちゃんが正誤判定するってカンジで。あ、千問当てるのとか面倒だから三点先取な」
「最早帰れまセンも関係ないじゃない」
なっちゃんの言う通り、題目と内容が噛み合ってない。
とりあえず、翼君がお題を出して、珀弥君たちがそれに答えて、私が判断すれば良いってことだけど……。
一見、珀弥君に有利に見えるこの勝負。榊さんは何故か自信満々だ。
出来れば珀弥君に勝って欲しいんだけど、少し心配だ。
「まぁまぁ、気軽にやろうぜ」
翼君は私の肩を軽く叩き、ニヤニヤとしているだけだった。
***
嫌がる珀弥君を翼君が無理矢理引っ張り、またファーストフード店の席に着く。
翼君はどこから調達したのかわからない早押しボタンを、珀弥君と榊さんの間に設置していた。
「ねぇ、おねーさん。明人が勝ったらさ、俺たちと一緒に遊ばない?」
榊さんの取り巻きが、なっちゃんの肩に手を回そうとする。
彼らはなっちゃんのワガママばでぃを舐め回すように見ていたし、いやらしいことを考えているのだろう。
「触らないでくれる?」
なっちゃんは手を回される前に、素早く叩き落とす。
その強気な態度に、取り巻きの人たちは大いに盛り上がっていた。
「良いね良いね! そういう強気なトコロ、結構タイ——」
と一人が言いかけたところで、瞬時に彼の首筋に何かが突きつけられた。
これは、テーブルに置いてあるアンケート用のペンだ。その先端が、彼の首の皮を突き破らんとしている。
私が何よりも驚いているのは、それを突きつけている人物が……。
「オイオイ、そーゆーのは良くないぜ? 男なら、欲しい女は自分で勝ち取らなきゃ、な?」
先程までヘラヘラしていた翼君だったからだ。
彼の顔は笑っていたが、つり気味の目には猛禽類を連想させる鋭い光が灯っていた。
「ひっ!」
取り巻きは翼君の殺気に圧され、後退りする。
「……貸しなんて思わないでよね」
「へいへい」
腕を組むなっちゃんに、翼君はヘラヘラと返した。
チャラ男だからそういうのは緩いと思ってたけど、許さないんだなあ。ちょっと見直しちゃったかも。
「んじゃ、始めよーぜ?」
彼はテーブルい向き直り、声を掛けたのだった。
ついに始まる、私を賭けた理不尽な勝負が——!
「第一問! 千真ちゃんの身長は?」
思いのほか普通の質問だ。
早押しボタンにいち早く触れたのは珀弥君。榊さんは先手を取られて悔しそうに歯噛みしていた。
「百四十五センチ」
彼はまだ不機嫌なのか、吐き捨てるようにぼそりと呟くだけ。
「千真ちゃん、正解は?」
「あ、はい、その通りです」
私が神社に来たばっかりの頃、服のサイズ合わせのために教えたっけ。
「ういーっす。まずは珀弥が一点先取! 次の質問! 千真ちゃんの血液型は?」
「AB」
次に答えたのは榊さん。これも正解だった。どうして知っているのだろう。
珀弥君は『へぇ~』と言いながら何故かメモっていた。何のデータベースにする気だ。
「はい、これで一対一ね! 次の問題!」
翼君のことだから、何か変な問題を考えてくるかと思ったけれど、この流れなら大丈——。
「千真ちゃんが風呂に入るとき、右足と左足、どっちから入る!?」
……はい? い、いきなりマニアックじゃないですか?
解答者二人もギョッとした顔で固まり、答えようか答えまいかを迷っている。
「珀弥ァ! あと十秒で答えなかったら、明人クンの勝ちな」
翼君が悪人のような笑みを浮かべると、珀弥君は速攻でボタンを殴った。
「えぇっと……多分右!」
彼が半ば叫ぶように答えると、冷たい視線(主になっちゃんの)が突き刺さる!
「はい千真ちゃん、正解は?」
「確かに右です……」
よく当てたなぁ。
珀弥君が小さくなっちゃったときに、一度だけ一緒に入ったことはあるけれど、まさかあの時に把握したのかな?
殆どこっちを見てくれなかった気がするけど。
「黎藤、わかってるわよね?」
「はい……」
声を低めるなっちゃんに、珀弥君は両手で顔を覆い隠しながら頷いた。耳まで真っ赤になってる。
何か、私が悪い訳じゃないのに申し訳なくなった。ごめんね。
「はーい! これで珀弥にリーチが掛かりましたーっ! では次の問題!」
翼君は悪びれもなく、質問を始める。
「千真ちゃんがソプラノリコーダーで吹けない音は何ですか!」
さっきとは違うベクトルでマニアック!!
まだ回復してない珀弥君をよそに、早押しボタンを押したのは榊さん。これを正解しないと、珀弥君の勝ちになる。
「低いド」
「はい正解は?」
「うん、低いドは苦手だったかな……」
私の手が小さかった所為か、全ての穴を塞ぐのが難しかった記憶がある。
何で知っているのだろう。勘だとしても、あの目には迷いが無く、自信に満ち溢れている。
『よぉ、神凪! 今日もちっちぇーな!』
「っ!」
あ、れ? 今の、記憶……?
「はーい! 二対二! 次の勝負で決着がつくぜ!」
翼君はニヤニヤしつつ、最後の問題を口にする。
「千真ちゃんの初恋の人は、誰でっしょう!」
「覚えてねぇか? 俺だよ、榊 明人」
彼は私に向き直り、知らない名前を名乗ってきた。
「すみません、わからないです……」
そんな名前の知り合いなんて居なかった気がする。
でも、あっちは私のことを知ってるみたいなんだよなぁ。誰だろう。
榊と名乗る人は、困ったように笑って話を続ける。
「あの時のこと、怒ってんのか、神凪? あれはその、周りが——」
「この子に何の用ですか?」
榊さんの要領を得ない話を、珀弥君の鋭い声音がばっさりと切り捨てた。
彼は私を背中に隠すように前に出る。
「は? あんた誰?」
珀弥君の広い背中越しに聞こえるのは、榊さんの不機嫌そうな声。
あんな不良みたいな人を怒らせちゃったら、珀弥君が正当防衛で逆に相手をボコボコにしちゃう……!
「珀弥く——」
「保護者みたいなものです。ナンパなら他を当たってくれませんか?」
「保護者? へぇ、彼氏じゃねぇんだ?」
榊さんは『保護者』という単語を聞き、せせら笑う。
確かに、異性の同級生なのに、彼氏じゃなくて保護者というのもおかしいかもしれないけれど……。
い、いや、別に私は珀弥君の彼女になりたいなんて、そんなおこがましいことは考えていない。
「えぇ、そうです。馬鹿にして気が済んだなら、どうぞお引き取りください」
「お前さ、さっきから俺のことナメてるだろ?」
煽られても冷静なままの珀弥君に、榊さんは青筋を立てる。
これはマズい展開になってきているのではないか?
「あのっ!」
「はいはいはいはい、ストォーップ!」
また私が言いかけたいところで、今度は翼君が遮ってきた。台詞を言わせてください。
翼君は珀弥君と榊さんの間に割り込み、へらへらと笑う。
「せっかくの楽しー休日なんだし? こんな喧嘩で終わらせるのは勿体無くない?」
「は? 何だお前」
榊さんは声を低くするが、翼君は動じない。
「ダチでーす。こいつ珀弥っていうんだけどぉ、千真ちゃんのことになると、ついムキになっちゃうんだよねー」
「おい、翼——」
珀弥君を押し退け、翼君はペラペラと喋る。
「んでんで、キミも千真ちゃんのことが気になってるみたいだし? ……折角だから、千真ちゃんを賭けて勝負しない?」
何でそうなるの?
「ちょっと待って! 勝負って何を!?」
入学したときもこんな展開になったっけ? あの時は先輩と剣で勝負だったけれど……。
「なぁに、バイオレンスなコトはしねーよ。ここはプールだし——」
翼君は腕を組み、フフンと鼻を鳴らす。
「全部当てるまで帰れまセン! フューチャリング千真ちゃん!」
「どこら辺がプールに関係あるのかな?」
「あだだだだだ!」
翼君が題目を発表した瞬間、彼の顔に珀弥君のアイアンクローが炸裂した。
確かに、プールに全然関係ない。
「待て待て! 千真ちゃんを賭けるんだし、彼女メインの勝負の方が良いべ!?」
「どこが良いんだ? まず、千真さんを賭けることがおかしい」
そ、そーだそーだ! 賭けは断固反対だあ! 何で一時的に私の人権が失われるんだあ!
珀弥君が抗議をする中、榊さんはニヤリと不敵な笑みを見せた。
「俺は別に構わねぇよ?」
「……なんだって」
珀弥君は声を低め、榊さんに聞き返す。
「タイトル的に、神凪についての問題に正解すれば良いって事だろ?」
「話が早いねェ、そゆこと」
勝負の趣旨を言う榊さんに、翼君はうんうんと頷く。
っていうか私は拒否権無いんですか?
「千真ちゃんについてのお題を出すから、お前等はそれに答える。んで、その解答を千真ちゃんが正誤判定するってカンジで。あ、千問当てるのとか面倒だから三点先取な」
「最早帰れまセンも関係ないじゃない」
なっちゃんの言う通り、題目と内容が噛み合ってない。
とりあえず、翼君がお題を出して、珀弥君たちがそれに答えて、私が判断すれば良いってことだけど……。
一見、珀弥君に有利に見えるこの勝負。榊さんは何故か自信満々だ。
出来れば珀弥君に勝って欲しいんだけど、少し心配だ。
「まぁまぁ、気軽にやろうぜ」
翼君は私の肩を軽く叩き、ニヤニヤとしているだけだった。
***
嫌がる珀弥君を翼君が無理矢理引っ張り、またファーストフード店の席に着く。
翼君はどこから調達したのかわからない早押しボタンを、珀弥君と榊さんの間に設置していた。
「ねぇ、おねーさん。明人が勝ったらさ、俺たちと一緒に遊ばない?」
榊さんの取り巻きが、なっちゃんの肩に手を回そうとする。
彼らはなっちゃんのワガママばでぃを舐め回すように見ていたし、いやらしいことを考えているのだろう。
「触らないでくれる?」
なっちゃんは手を回される前に、素早く叩き落とす。
その強気な態度に、取り巻きの人たちは大いに盛り上がっていた。
「良いね良いね! そういう強気なトコロ、結構タイ——」
と一人が言いかけたところで、瞬時に彼の首筋に何かが突きつけられた。
これは、テーブルに置いてあるアンケート用のペンだ。その先端が、彼の首の皮を突き破らんとしている。
私が何よりも驚いているのは、それを突きつけている人物が……。
「オイオイ、そーゆーのは良くないぜ? 男なら、欲しい女は自分で勝ち取らなきゃ、な?」
先程までヘラヘラしていた翼君だったからだ。
彼の顔は笑っていたが、つり気味の目には猛禽類を連想させる鋭い光が灯っていた。
「ひっ!」
取り巻きは翼君の殺気に圧され、後退りする。
「……貸しなんて思わないでよね」
「へいへい」
腕を組むなっちゃんに、翼君はヘラヘラと返した。
チャラ男だからそういうのは緩いと思ってたけど、許さないんだなあ。ちょっと見直しちゃったかも。
「んじゃ、始めよーぜ?」
彼はテーブルい向き直り、声を掛けたのだった。
ついに始まる、私を賭けた理不尽な勝負が——!
「第一問! 千真ちゃんの身長は?」
思いのほか普通の質問だ。
早押しボタンにいち早く触れたのは珀弥君。榊さんは先手を取られて悔しそうに歯噛みしていた。
「百四十五センチ」
彼はまだ不機嫌なのか、吐き捨てるようにぼそりと呟くだけ。
「千真ちゃん、正解は?」
「あ、はい、その通りです」
私が神社に来たばっかりの頃、服のサイズ合わせのために教えたっけ。
「ういーっす。まずは珀弥が一点先取! 次の質問! 千真ちゃんの血液型は?」
「AB」
次に答えたのは榊さん。これも正解だった。どうして知っているのだろう。
珀弥君は『へぇ~』と言いながら何故かメモっていた。何のデータベースにする気だ。
「はい、これで一対一ね! 次の問題!」
翼君のことだから、何か変な問題を考えてくるかと思ったけれど、この流れなら大丈——。
「千真ちゃんが風呂に入るとき、右足と左足、どっちから入る!?」
……はい? い、いきなりマニアックじゃないですか?
解答者二人もギョッとした顔で固まり、答えようか答えまいかを迷っている。
「珀弥ァ! あと十秒で答えなかったら、明人クンの勝ちな」
翼君が悪人のような笑みを浮かべると、珀弥君は速攻でボタンを殴った。
「えぇっと……多分右!」
彼が半ば叫ぶように答えると、冷たい視線(主になっちゃんの)が突き刺さる!
「はい千真ちゃん、正解は?」
「確かに右です……」
よく当てたなぁ。
珀弥君が小さくなっちゃったときに、一度だけ一緒に入ったことはあるけれど、まさかあの時に把握したのかな?
殆どこっちを見てくれなかった気がするけど。
「黎藤、わかってるわよね?」
「はい……」
声を低めるなっちゃんに、珀弥君は両手で顔を覆い隠しながら頷いた。耳まで真っ赤になってる。
何か、私が悪い訳じゃないのに申し訳なくなった。ごめんね。
「はーい! これで珀弥にリーチが掛かりましたーっ! では次の問題!」
翼君は悪びれもなく、質問を始める。
「千真ちゃんがソプラノリコーダーで吹けない音は何ですか!」
さっきとは違うベクトルでマニアック!!
まだ回復してない珀弥君をよそに、早押しボタンを押したのは榊さん。これを正解しないと、珀弥君の勝ちになる。
「低いド」
「はい正解は?」
「うん、低いドは苦手だったかな……」
私の手が小さかった所為か、全ての穴を塞ぐのが難しかった記憶がある。
何で知っているのだろう。勘だとしても、あの目には迷いが無く、自信に満ち溢れている。
『よぉ、神凪! 今日もちっちぇーな!』
「っ!」
あ、れ? 今の、記憶……?
「はーい! 二対二! 次の勝負で決着がつくぜ!」
翼君はニヤニヤしつつ、最後の問題を口にする。
「千真ちゃんの初恋の人は、誰でっしょう!」
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