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第十一章 白鬼斬怪鳥事
11-6 白鬼斬怪鳥事
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「あぁ! 珀弥君、怪我してるよ!」
今気付いたのか、千真さんは珀弥先輩の腕を指さした。その腕には打撲の跡と歯形がくっきりと残っており、血も滲んできている。
「平気だよ」
「嘘だよ! こんなに腫れて……早く手当てしなきゃ!」
確かに、平気ということは無いだろう。怪我をしている方の腕は、力なく垂れ下がったままなのだから。
「心配しないで。それより、こっちを何とかしないと」
取り乱す千真さんを宥め、先輩は母の方に視線を向けた。母は今だに放心状態が続いている。
「何があったの?」
「ちょっとね」
そう誤魔化して、先輩は母の肩を軽く叩いた。すると、母は抵抗なく地面に座り込んでしまった。
「お母さん」
それだけが、口に出た。足も、動く。直感で『安全だ』と判断したからだろう。
自分を人に守らせて、安全なところから眺め、安全と判れば動くだなんて。私は卑怯だ。
「須藤さん、まだ待ってて……」
先輩はこちらを見ずに、私を制した。その言葉に、ピタリと足が止まる。
「ありがとう。千真さんも、僕の後ろに行ってくれる?」
「う、うん」
先輩は私が足を止めたことを確認すると、千真さんにも指示をした。
その声はトーンこそ普通であるが、有無も言わせないような、威圧感があった。
「さぁ、お聞かせ願いましょうか」
千真さんが先輩の視界から消えるであろう位置まで来ると、彼は再び口を開いた。母は一回肩を大きく震わせた。
今は、先輩に怯えているように見える。
「あ、あ、その……目……!」
「黙ってください」
先輩が静かに言い放つと、母は口をつぐんだ。彼の言葉は、お願いというよりは命令に近いような気がした。
先輩がどんな目をしているのか、私には想像できない。
「今から質問をしますので、正直に答えてください」
「はい」
母の声は裏返り、緊張感のあるものだった。
「あなたは何故、娘さんを襲ったのですか?」
母が私に襲い掛かってきた理由。
思い当たることは一つだけあるが、当たってほしくはない。
「……姑のことを、探ろうとしたからです」
私の希望は簡単に砕かれてしまった。祖母のことを探ろうとしたから。それが、理由。
「では、あなたが姑さんを隠したのですか?」
「……はい」
母が祖母を『行方不明』にしたのだ。
フッ、と周りの温度が低くなった。
おかしい。もう夏のはずなのに、どうして鳥肌が立つのだろう。
空高く照っていた筈の太陽が消え、代わりに蒼白い月が現れた。
「いつまで、いつまで」
……嘘、何で今ここに?
「いつまで、いつまで」
あれは、私の家の屋根にいた。
翼があり、鳥のようなものだとはわかる。しかし、胴は蛇のようで、顔はしわくちゃな人間だ。奇妙で不気味な出で立ちの怪鳥。
あれが——。
「以津真天!」
珀弥先輩は静かに、千真さんはアホ毛を真っ直ぐ立てて、コマちゃんは唸りながら、各々屋根の上にいる怪鳥を見上げている。
「いつまで、いつまで!」
以津真天は飛び上がり、こちらに向かって急降下してきた。
狙いは先輩。
「いやあ……ああああ!」
ではなく、母だ。
「お母さん!!」
全てがスローモーションに見えた。
以津真天は長い胴をしならせ、翼をはためかせる。それは真っ直ぐ、母に向かって。
「……はぁ」
バチンと弾けるような音がし、以津真天は宙に弾き飛ばされた。
「話の途中なんだけど」
珀弥先輩は細長い紙を掲げていた。御札というものだろうか。どこか不機嫌そうに見える。
先輩の声なのに口調が乱暴で、別の誰かが言っているのかと思った。
「いつまで!」
以津真天は体勢を立て直し、先輩に向かって吠えてきた。しわくちゃの顔は、不揃いな歯を剥き出しにしている。
「……丁度良いか」
「珀弥君!」
先輩は直進してきた怪鳥に何の抵抗もせずに押し倒され、千真さんは悲鳴を上げる。
これが一瞬の出来事で。
「あれ? 珀弥君?」
瞬きをする間に、先輩と以津真天は姿を消してしまった。
珀弥先輩が、消えた? 一体、どうやって……。
千真さんは焦りのあまり、先輩が入れそうにもないような傘立てを覗き込んでいるし、コマちゃんは地面を転がっている。
この場は混乱に包まれていた。
* * * * * * * *
僕は天から地面へと、半ば突き落とされる形で降下していた。
周りに広がるのは、白い月に照らされた闇の世界。しかし、この世界の主人は怪鳥ではない。
「そろそろ離せよ」
瞬時に鬼の姿に変化し、以津真天の顔面を殴りつける。奴は奇声を上げながら離れていき、俺は自由の身になった。
だが、落ちているというのは変わらない。
仰向けで地面に叩きつけられるのも癪だ。俺は足を振り上げ、逆上がりをする要領で宙返りした。
そして、地に咲き誇る彼岸花を何本か踏み潰し、着地する。
「いつまで、いつまで」
空で奇声を上げる以津真天は、醜い顔で俺を睨み付けてきた。
奴は南北朝時代の軍記物語『太平記』にも登場した、古い妖怪である。放置された死体の魂が怪鳥と化した、怨念の塊。
実物を見るのは初めてだ。
「物語の中の妖怪と戦うなんてな」
俺は刀を抜いた。
自分で口に出しておいて、滑稽だと思う。俺自身もまた、物語の中の妖怪と同じなのだから。
「いつまで!」
以津真天が奇声を発して襲いかかってくる。
広有が以津真天を射殺した話が『広有射怪鳥事』なら、俺は……まぁいいか。
「還れ」
振り抜いた刀は、怪鳥の胴を真っ二つに切り裂いた。生暖かい液体が顔や身体に飛び掛かる。
「いつ、ま……で……」
以津真天は細長い体の断面から血飛沫を撒き散らし、力なく地に落ちた。
彼岸花は下敷きにされ、茎が折れる。流れ出る血が、赤い花を更に赤く染め上げた。
「安心しろ」
血の伝う銀色の刃は白く光る。
奴の頭は微かに息をしており、首から下は無数の虫が蠢くように輪郭が揺れ動いている。境界線は捉えた。
「あんたのことは必ず見つけてやる」
白い刃はもう一度怪鳥を斬り付け、完全に息の根を止めた。
すると、亡骸から淡い光の玉が抜け出し、天へと消えて行く。あれは今回の『被害者』の魂だろう。
「……」
光を見送った後、袖で顔を拭ってみた。真っ白い狩衣が赤く染まる。髪にも血が付着しているようで、指先で触れると冷たくねっとりとしていた。
また、手が汚れた。しかし、何も感じることはない。
「化け物」
人間の域から外れた行為をすることで、自分は化け物に近付いているのだ。そう、嫌でも思い知らされる。
目蓋を閉じ、変化を解く。
表面上は、平和を好むような大人しく平凡な容姿の人間だ。鋭い爪も牙も、獣の眼も持っていない。
見た目だけが、ただの人間。
これでいい。普通に。何食わぬ顔で、誰かに接すればいいのだ。
「帰るか」
誰に話し掛けるわけでもなく、ぽつりと呟いた。
さて、どうやって登場しようか。
千真はきっと慌てて、とんちんかんな所を探しているだろう。コマはよくわからない。須藤さんはまだ固まっているかもしれない。
まぁ良い。裏の方から出ていこう。消えた理由を聞かれたら、以津真天に連れていかれたとでも答えて、後は適当にあしらおう。
普通に、何食わぬ顔で『珀弥』を演じれば良いのだ。
僕は腕を横に振り、閉ざされた空間を切り裂いた。
今気付いたのか、千真さんは珀弥先輩の腕を指さした。その腕には打撲の跡と歯形がくっきりと残っており、血も滲んできている。
「平気だよ」
「嘘だよ! こんなに腫れて……早く手当てしなきゃ!」
確かに、平気ということは無いだろう。怪我をしている方の腕は、力なく垂れ下がったままなのだから。
「心配しないで。それより、こっちを何とかしないと」
取り乱す千真さんを宥め、先輩は母の方に視線を向けた。母は今だに放心状態が続いている。
「何があったの?」
「ちょっとね」
そう誤魔化して、先輩は母の肩を軽く叩いた。すると、母は抵抗なく地面に座り込んでしまった。
「お母さん」
それだけが、口に出た。足も、動く。直感で『安全だ』と判断したからだろう。
自分を人に守らせて、安全なところから眺め、安全と判れば動くだなんて。私は卑怯だ。
「須藤さん、まだ待ってて……」
先輩はこちらを見ずに、私を制した。その言葉に、ピタリと足が止まる。
「ありがとう。千真さんも、僕の後ろに行ってくれる?」
「う、うん」
先輩は私が足を止めたことを確認すると、千真さんにも指示をした。
その声はトーンこそ普通であるが、有無も言わせないような、威圧感があった。
「さぁ、お聞かせ願いましょうか」
千真さんが先輩の視界から消えるであろう位置まで来ると、彼は再び口を開いた。母は一回肩を大きく震わせた。
今は、先輩に怯えているように見える。
「あ、あ、その……目……!」
「黙ってください」
先輩が静かに言い放つと、母は口をつぐんだ。彼の言葉は、お願いというよりは命令に近いような気がした。
先輩がどんな目をしているのか、私には想像できない。
「今から質問をしますので、正直に答えてください」
「はい」
母の声は裏返り、緊張感のあるものだった。
「あなたは何故、娘さんを襲ったのですか?」
母が私に襲い掛かってきた理由。
思い当たることは一つだけあるが、当たってほしくはない。
「……姑のことを、探ろうとしたからです」
私の希望は簡単に砕かれてしまった。祖母のことを探ろうとしたから。それが、理由。
「では、あなたが姑さんを隠したのですか?」
「……はい」
母が祖母を『行方不明』にしたのだ。
フッ、と周りの温度が低くなった。
おかしい。もう夏のはずなのに、どうして鳥肌が立つのだろう。
空高く照っていた筈の太陽が消え、代わりに蒼白い月が現れた。
「いつまで、いつまで」
……嘘、何で今ここに?
「いつまで、いつまで」
あれは、私の家の屋根にいた。
翼があり、鳥のようなものだとはわかる。しかし、胴は蛇のようで、顔はしわくちゃな人間だ。奇妙で不気味な出で立ちの怪鳥。
あれが——。
「以津真天!」
珀弥先輩は静かに、千真さんはアホ毛を真っ直ぐ立てて、コマちゃんは唸りながら、各々屋根の上にいる怪鳥を見上げている。
「いつまで、いつまで!」
以津真天は飛び上がり、こちらに向かって急降下してきた。
狙いは先輩。
「いやあ……ああああ!」
ではなく、母だ。
「お母さん!!」
全てがスローモーションに見えた。
以津真天は長い胴をしならせ、翼をはためかせる。それは真っ直ぐ、母に向かって。
「……はぁ」
バチンと弾けるような音がし、以津真天は宙に弾き飛ばされた。
「話の途中なんだけど」
珀弥先輩は細長い紙を掲げていた。御札というものだろうか。どこか不機嫌そうに見える。
先輩の声なのに口調が乱暴で、別の誰かが言っているのかと思った。
「いつまで!」
以津真天は体勢を立て直し、先輩に向かって吠えてきた。しわくちゃの顔は、不揃いな歯を剥き出しにしている。
「……丁度良いか」
「珀弥君!」
先輩は直進してきた怪鳥に何の抵抗もせずに押し倒され、千真さんは悲鳴を上げる。
これが一瞬の出来事で。
「あれ? 珀弥君?」
瞬きをする間に、先輩と以津真天は姿を消してしまった。
珀弥先輩が、消えた? 一体、どうやって……。
千真さんは焦りのあまり、先輩が入れそうにもないような傘立てを覗き込んでいるし、コマちゃんは地面を転がっている。
この場は混乱に包まれていた。
* * * * * * * *
僕は天から地面へと、半ば突き落とされる形で降下していた。
周りに広がるのは、白い月に照らされた闇の世界。しかし、この世界の主人は怪鳥ではない。
「そろそろ離せよ」
瞬時に鬼の姿に変化し、以津真天の顔面を殴りつける。奴は奇声を上げながら離れていき、俺は自由の身になった。
だが、落ちているというのは変わらない。
仰向けで地面に叩きつけられるのも癪だ。俺は足を振り上げ、逆上がりをする要領で宙返りした。
そして、地に咲き誇る彼岸花を何本か踏み潰し、着地する。
「いつまで、いつまで」
空で奇声を上げる以津真天は、醜い顔で俺を睨み付けてきた。
奴は南北朝時代の軍記物語『太平記』にも登場した、古い妖怪である。放置された死体の魂が怪鳥と化した、怨念の塊。
実物を見るのは初めてだ。
「物語の中の妖怪と戦うなんてな」
俺は刀を抜いた。
自分で口に出しておいて、滑稽だと思う。俺自身もまた、物語の中の妖怪と同じなのだから。
「いつまで!」
以津真天が奇声を発して襲いかかってくる。
広有が以津真天を射殺した話が『広有射怪鳥事』なら、俺は……まぁいいか。
「還れ」
振り抜いた刀は、怪鳥の胴を真っ二つに切り裂いた。生暖かい液体が顔や身体に飛び掛かる。
「いつ、ま……で……」
以津真天は細長い体の断面から血飛沫を撒き散らし、力なく地に落ちた。
彼岸花は下敷きにされ、茎が折れる。流れ出る血が、赤い花を更に赤く染め上げた。
「安心しろ」
血の伝う銀色の刃は白く光る。
奴の頭は微かに息をしており、首から下は無数の虫が蠢くように輪郭が揺れ動いている。境界線は捉えた。
「あんたのことは必ず見つけてやる」
白い刃はもう一度怪鳥を斬り付け、完全に息の根を止めた。
すると、亡骸から淡い光の玉が抜け出し、天へと消えて行く。あれは今回の『被害者』の魂だろう。
「……」
光を見送った後、袖で顔を拭ってみた。真っ白い狩衣が赤く染まる。髪にも血が付着しているようで、指先で触れると冷たくねっとりとしていた。
また、手が汚れた。しかし、何も感じることはない。
「化け物」
人間の域から外れた行為をすることで、自分は化け物に近付いているのだ。そう、嫌でも思い知らされる。
目蓋を閉じ、変化を解く。
表面上は、平和を好むような大人しく平凡な容姿の人間だ。鋭い爪も牙も、獣の眼も持っていない。
見た目だけが、ただの人間。
これでいい。普通に。何食わぬ顔で、誰かに接すればいいのだ。
「帰るか」
誰に話し掛けるわけでもなく、ぽつりと呟いた。
さて、どうやって登場しようか。
千真はきっと慌てて、とんちんかんな所を探しているだろう。コマはよくわからない。須藤さんはまだ固まっているかもしれない。
まぁ良い。裏の方から出ていこう。消えた理由を聞かれたら、以津真天に連れていかれたとでも答えて、後は適当にあしらおう。
普通に、何食わぬ顔で『珀弥』を演じれば良いのだ。
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