あいうえおんがく

紫月侑希

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オーヴァチュア

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 愛だとか、恋だとかわからない。
 人間は生まれ落ちた瞬間から、性別という檻に縛られる。女だから、男だからって言われたくない。どちらにも属したくない私は私という区分でいたいと、幼い頃から今現在に至るまで思っている。
 だから、私は天使になりたいんだ。性別がない、天使に。何にも、縛られずに羽ばたきたい。
 昔から、見た目や性別で判別されるのが嫌だった。取り繕わずに言うなれば、外見の印象でナメられるのがとてつもなく腹が立つ。私の中の、押してはいけないスイッチ。
 人よりひとまわり以上身体が小さくて、でも小さいだけで他はなにも変わらない。だって、小さいのは私のせいではない。生まれついての特徴をとやかく言う人間の気持ちがわからなかった。きっと言ってくる方も私が怒る気持ちがわからないのだろう。
 小さいくせに生意気だとか理不尽極まりない、いじめを受けることが高校を卒業するまでしばしばあった。しかし泣き寝入りするような性格ではなく、むしろいつしか言いくるめてしまうような……舌鋒鋭いクソ生意気なガキに育ってしまった。何か言われれば、正論で叩きのめす。再起不能になるまでとばかりに。我ながら、可愛さのカケラもない子供である。
 その上、生来の気の強さと口の悪さも災いして、エグい理論責めをする超攻撃的な性格が形成されることになる。それは、年々研ぎ澄まされていくばかりだった。もちろん、友達は少ない。高校を卒業するまでに、仲の良いクラスメイトってあまりいなかったような気がする。
 小さい上に、なまじ親がそこそこ整った顔で生み出してくれたおかげで、他人からは見た目と中身のギャップが激しい子になってしまったようだ。ギャップが激しいと、言われてもと言うのが正直な本音だ。「ぱっと見の印象は、可愛らしい守ってあげたい女の子なのにね」とよく言われる。それは、手前の感じた勝手な印象だろ? と思うんだけど。人間とは、かくも身勝手な生き物である。
 そもそも背丈が小さいというだけでかわいいと思うのはどうかと、私は思うのだ。人は見た目じゃないし、人となりなんて話してみないとわからないのに、どうしてこの世の中は一目みただけで、わかった気になれるんだろうか?その上、日本とイギリスの血が半分ずつ混ざっている。金色の髪と、緑の瞳の色もあれこれ言われる。生まれつきだ、放っておいてほしい。
 おまけに、守ってあげたいとか小さくて可愛いと言われて恋愛感情を持たれる。他人に恋愛感情を抱かないかつ、そう思われてしまうことも苦痛で仕方ない自分にとっては身を削がれるような痛みを強いられているようだった。老いも若きも共通の話題だから仕方ないとか言うけれど、カレーはみんな好きかもしれないが嫌いな人だっているわけだ。表裏一体、反対のことがあってこの世が成立しているのにどうしてそこまで想像力が働かないんだろうといつも思う。
 なんて、20歳になっても解決できない鬱屈とした思いを抱えながら今日も生きている。これは、ある種の中二病なのかもしれない。
 しかしながら、創作活動において負のエネルギーは必要不可欠というか……この感情があるからこそ、生まれるものはたくさんある気がする。
 私は雨宮千鞠あまみやちまり、20歳。大学生で音楽を生業として、生活をしている。音楽はギターとボーカルがメインだが、ピアノとヴァイオリンとベースもできる。作詞作曲だってする。この世の不条理に息を詰まらせながらも、音楽と共に生きていくんだという決意を持っている。
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