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【33】実技試験

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 放たれた火球ファイアボールは真っすぐまとに向かって飛んで行く。的に直撃した火球ファイアボールは弾けて人型の的を覆い、消えた。

 へぇ……あの的すごいな。どんな仕組みなんだろう……。

 あそこにある的はただの木でできた的で燃えるんじゃないかと考えていたのだが、魔法なのか、それとも魔法以外の何かがあの的にほどこされているのか、人型の的は燃えずに原型をとどめていた。

 試験官が何か言うのを待っていたのだが、一向に何の反応もない。不思議に思って試験官の方を見てみると、どうやらこちらの方を見ていたようで目が合った。

 ん?どうしたんだ?

 目が合っているのにも関わらず試験官は何も言葉を発さず、口を軽く開けてただただこちらを見てくるだけであった。しばらく見つめ合う時間が続いたのだが、流石に気まずくなって声を掛けることにした。

「あのー、何か問題でもありましたか?」

 俺が声を掛けたことでハッとしたのか、試験官は頭を軽く振って口を開いた。

「あ、いえいえ問題ありません!! 少し考え事をしてまして……」

「そうですか……」

 何か気まずいものを感じるものの、試験官が問題無いと言っているので気にしないようにすることにした。

「えーと……、そうですねー。次は、毒針ポイズンニードルをお願いします」

「はい」

 返事をすると共に魔力を練り上げて、魔力でできた毒針を生成して的に向かって放った。毒針が的に当たると、元々は白色であった的の色が毒々しい紫色に徐々に変色していった。

 なるほどなぁ。色の変化で状態の変化を表しているのか

 王国の技術の高さに感動していると、

「それでは、的の方まで行きましょうか」

 そう言って試験官が的に向かって歩いて行ったため慌てて付いていくと、的から1mほどの距離まで歩いて行った立ち止まった。

「次は、毒治療ポイキュアをお願いします。的の色は変わっていますが、触っても毒が漏れ出すことは無いので大丈夫ですよ」

 試験官が大丈夫だと言っているものの、やはり色が色なので触ることに躊躇ちゅうちょする。恐る恐る触れると、的はすべすべしており生物には感じられない冷たさを感じたが、特に嫌な感覚は無くて安心した。毒治療ポイキュアを発動させると、的の色は手を当てた部分から広がっていくように元の白色へと変わっていく。

 時間がかかったものの、的全体の色が元の色へと変わったところで試験官が話しかけてきた。

「ありがとうございます。次は――――」

 その後も試験官に言われるがままにスキルや魔法を発動させて、結局自分が覚えた全ての魔法とスキルを見せることになった。ただ、短時間で何度も魔法とスキルを発動させる経験が無かったため、終わったころには試験の緊張もありどっと疲れた。

「これで実技試験は以上となります。結果は後日郵送されますので、本日はお疲れさまでした」

 試験官にお礼を言って試験会場を後にする。試験会場から出た俺は想定よりも時間がかかったなぁと思いつつ、ガレント達とあらかじめ決めておいた集合場所へと向かう。

 なんで俺だけあんなに長かったんだろう……。やっぱり何か問題があったのかなぁ……。

 集合場所へ向かう途中、実技試験のことを思い出す。チラチラ周りの受験生を見ていたのだが、明らかに自分よりも試験が終わるのが早かった。というのも、両隣の受験生に至っては、自分が試験を受けている最中に2、3回受験生が入れ替わっており、そのことに不安を感じながらも歩いていると集合場所にたどり着いた。

「お、やっときたか」

「長かったねぇ」

 3人の顔を見てみるとどこかやりきった感があり、特に問題は無さそうだなと安心した。

「あのさぁ――――」

 俺は着いて早々、3人の試験内容を聞いてみたのだが、やはり全部の魔法とスキルは試験されなかったようで、俺みたいにそれほど時間はかからなかったとのことだ。そのため、より一層自分の試験内容に対する不安がつのってくるが、3人に心配させてもあれなので黙っておくことにした。

「この後どうする?村行の馬車は17時発らしいけど」

 レシリアに言われて街の時計を見てみると、時計の針は16時少し過ぎを指している。

「そうだなぁ……」

 食事の時間にしては早すぎるし、かといって街で遊べるほどのお金なんて持っていない。どうしたものかなぁとこの後のことを考えていると、スレイアが手を上げた。

「はいはい!!皆が特に行きたいところが無かったら、うちが行きたいところがあるんだけど、そこに行かない?」

「行きたいところ?」

「うん。本屋さんに行ってみたいんだ」

 まさかスレイアの口から本屋に行きたいなんて言葉が出てくるとは予想していなかったが、村には本屋が無かったため行ってみてもいいなと思った。

「本屋かぁ……。いいね、私も行ってみたいかも」

「ガレントはどう?」

「うーん、そうだなぁ……。まぁ、行きたいところも無いし、別にいいぜ」

「よし!! それじゃあ、行こう!!」

 そう言ってスレイアは歩き出したため、付いていくことにした。

 本屋に向かう途中、先程浮かんだ疑問をスレイアに聞いてみることにした。

「でも、何で本屋に行きたいの?」

「えっとねぇ、うちってまだ行きたい学校が決まってないでしょ?」

「あぁ、そんなこと言ってたね」

「だから、スキルとか魔法の本でも見て参考にしようかなぁって」

「なるほどね。確かにそれはありだね」

 自分も魔法関係の学校に行きたいとは思ってはいるが、どの魔法学校に通うかは決めてはいなかった。そのため、本屋で色々見てみて参考にするというのはいい案だなと感じた。

 スレイアに付いていく形で街の中を歩いていると、裏路地に入って少し歩いたところにある建物の前で足を止めたので、俺達も足を止める。

「ここだよ」

 案内された建物はこの街では珍しい木造の建物で、焦げ茶色の木が目を引く。そして、扉の少し上には『レウェイン書店』と書かれている看板がかかげられていた。

 いつの間にこんなところにある本屋を見つけたんだろう……。

 明らかに街の通りから外れた場所にある本屋の場所をスレイアが知っているんだろうと不思議に思っていると、

「よーし、入ろう!!」

 スレイアは意気揚々と建物の中に入って行くので、俺達も付いていく。

 店の中は裏路地にあることもあって少し薄暗く、まだ日が落ちていないのにも関わらず、店内ではロウソクがゆらゆらと燃えていた。

「……なんか、怪しい感じだね」

 レシリアが耳打ちをしてきた。確かに、店内には本棚が所狭しと立っており、本もびっしりと並べられているのだが、本屋というよりは何か怪しい店のようだなと感じた。

 店内を見ていると、

「あら、珍しいお客さんね」

 店の奥から声がしたことでビックリしながらそちらの方を見る。すると、そこには真っ黒なローブを身にまとい、怪しい雰囲気をかもし出す人物が立っていた。
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