12 / 34
12
しおりを挟む
中学時代のケンジは、一部のおかしな連中から嫌がらせを受けていた。俺達の中学校には、近隣にある四つの小学校から集まるそこそこ巨大な学校だったんだ。全校生徒数が千二百人程度だったはずだよ。一学年に四百人もいるんだ。おかしな連中がいて当然なんだよな。
もちろんケンジがやられっ放しってはずもなく、おかしな連中は仕返しをされているんだが、奴らは本当に馬鹿だから、やられてもなお威張り腐っていた。そんな奴らをケンジは、それ以上は相手にしていない。俺達にも助けは求めてこなかったから、正直詳細は知らないんだ。ただ俺は、何度かそんな連中が大勢でケンジを囲っていたのを見たことがある。ケンジはまるでそんな連中が見えていないかのような態度をとる。数に任せてケンジに絡んでいるようだが、ケンジが少しでも本気になり睨みつけると、そいつらはまるで十戒の海のように真っ二つにケンジの通り道を割って作っていた。
陸上部内でのケンジは、とても一生懸命だった。全体練習が終わると、ひたすら飛び続けていたよ。俺は正直、ケンジがなにを目指しているのかが理解できなくなっていた。ほとんど休みのない部活動の合間に、どうやって空を飛ぶんだって思ったよ。走り高跳びで満足しているじゃないかとも感じ始めていた。
けれどケンジは、確かにそのブレない意思を形にしようとしていたんだ。五時過ぎまでの練習後、一度家に帰ってから自転車で山を駆け登る。土日も部活はある。しかし、それ以外の時間はひたすら自転車を漕いでいた。
ケンジが本格的に空を目指して動き出したのは、最後の年の県大会が終わってからだった。陸上部の全体としての大会は秋で終わりだが、冬には駅伝が待っている。ヨシオ以外の俺達四人は、半ば引退状態だったんだ。好きなときに来て、練習に参加をする。それが許されていた。
ケンジは山の頂上に広がる公園で、自転車に羽根とプロペラをつけての練習を始めた。プロぺラは前カゴの前に取り付けてあった。直径で一メートルはあったんじゃなかと思うよ。動力はゴムだが、風の力で回転は増していく。羽根は二組、前カゴから突き出ている大きめの羽根と、後ろの荷台に小さめの羽根が取り付けてある。ケンジは公園内の坂道を、何度も降りてはその角度などの調整をしていた。
ママチャリを使用していたのは、ケンジなりのこだわりだったようだ。適度な重みとバランスの良さが空を飛ぶにはピッタリだと言っていたよ。
ケンジの計画では、頂上から一気に駆け下り、中腹の崖から空へと舞い上がる予定になっていた。崖の下には田んぼが広がっていて、その先が川になっている。失敗しても大きな怪我にはならないだろうと笑っていたよ。
もちろんケンジがやられっ放しってはずもなく、おかしな連中は仕返しをされているんだが、奴らは本当に馬鹿だから、やられてもなお威張り腐っていた。そんな奴らをケンジは、それ以上は相手にしていない。俺達にも助けは求めてこなかったから、正直詳細は知らないんだ。ただ俺は、何度かそんな連中が大勢でケンジを囲っていたのを見たことがある。ケンジはまるでそんな連中が見えていないかのような態度をとる。数に任せてケンジに絡んでいるようだが、ケンジが少しでも本気になり睨みつけると、そいつらはまるで十戒の海のように真っ二つにケンジの通り道を割って作っていた。
陸上部内でのケンジは、とても一生懸命だった。全体練習が終わると、ひたすら飛び続けていたよ。俺は正直、ケンジがなにを目指しているのかが理解できなくなっていた。ほとんど休みのない部活動の合間に、どうやって空を飛ぶんだって思ったよ。走り高跳びで満足しているじゃないかとも感じ始めていた。
けれどケンジは、確かにそのブレない意思を形にしようとしていたんだ。五時過ぎまでの練習後、一度家に帰ってから自転車で山を駆け登る。土日も部活はある。しかし、それ以外の時間はひたすら自転車を漕いでいた。
ケンジが本格的に空を目指して動き出したのは、最後の年の県大会が終わってからだった。陸上部の全体としての大会は秋で終わりだが、冬には駅伝が待っている。ヨシオ以外の俺達四人は、半ば引退状態だったんだ。好きなときに来て、練習に参加をする。それが許されていた。
ケンジは山の頂上に広がる公園で、自転車に羽根とプロペラをつけての練習を始めた。プロぺラは前カゴの前に取り付けてあった。直径で一メートルはあったんじゃなかと思うよ。動力はゴムだが、風の力で回転は増していく。羽根は二組、前カゴから突き出ている大きめの羽根と、後ろの荷台に小さめの羽根が取り付けてある。ケンジは公園内の坂道を、何度も降りてはその角度などの調整をしていた。
ママチャリを使用していたのは、ケンジなりのこだわりだったようだ。適度な重みとバランスの良さが空を飛ぶにはピッタリだと言っていたよ。
ケンジの計画では、頂上から一気に駆け下り、中腹の崖から空へと舞い上がる予定になっていた。崖の下には田んぼが広がっていて、その先が川になっている。失敗しても大きな怪我にはならないだろうと笑っていたよ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる