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あんなに勇気がある子だとは思わなかったよ。その名前もユウキっていうことを知ったときは驚いた。名は体を表す。ごく稀に実在するんだ。俺はその日をきっかけに、ユウキに恋をしているんだが、それは内緒だ。いまだに実っていない恋だからな。けれどもう、ユウキはケンジに恋をしていない。俺にもチャンスはあるってことだ。
最終回の表、俺たちの攻撃の際、ユウキは突然相手ベンチに走っていき、大声を出した。野球をしているときは別だが、普段は大人しい感じのユウキが、あんな風に大声を出すとは思わなかった。まぁ、これも野球の試合中だったし、ユウキにとっては自然な行動だったんだろうよ。見ていた俺たちには驚きだったけれどな。
あんた達ねぇ! やる気がないんなら今すぐ帰りな! 言っとくけど、私は怪我なんてしていないからね! ちょっと足を捻ったり血を流すのなんて、野球選手には日常でしょ!
ユウキの言葉に、甲子園のあいつを筆頭にした古巣の奴らが萎縮する。外国人の二人も、言っている意味は分からずともその言葉に圧倒されていた。するとユウキは、その二人に向かって英語を投げた。
ユウキの言葉の意味が分かっていたのはカナエだけだった。俺はその場でカナエからの耳打ちを受けていたけれど、その他にとってはチンプンカンプンだったはずだ。
続けてユウキは、日本語でも投げかけた。英語での言葉を和訳し、さらに言葉を足していた。
女の私に怪我させたと思っているなら責任をとってみな! 本気で向かってくるのが礼儀だろ!
そう言っていたそうだ。
ユウキの言葉に外国人の二人は立ち上がった。そして本気の顔つきでグランドに飛び出した。
あんたもさ、私のことが好きなら本気で向かってきなよ! こういう中途半端は嫌いなのよ!
ユウキは甲子園のあいつに向かってそう言った。あいつは一瞬苦い顔をしたが、一度深呼吸をし、すぐに真剣な表情を取り戻した。そしてグランドに走って行く。他の連中も後に続いたよ。
ユウキは走って俺たちの元に戻ってきた。足の痛みを感じさせない走りだったが、俺は気がついていたよ。ケンジに対し、無理はさせない方がいいと耳打ちした。するとケンジは、分かっている、だからタケシが自分で伝えてこいよ。そう言ったんだ。俺は内緒にしているんだが、ケンジは当初から俺の気持ちに気がついていたのかも知れない。
俺はユウキの側へ行き、バットは振らなくていい。無理して走ることはないよ。そう言った。ユウキは一瞬の沈黙の後、こう言った。
・・・・タケシ君って、優しんだね。でも大丈夫。もう痛くなんてないよ。
そう言われてしまうと、返す言葉がなかった。ユウキはヘルメットをかぶり、バッターボックスに向かった。俺はただ、その背中を見つめていた。
最終回の表、俺たちの攻撃の際、ユウキは突然相手ベンチに走っていき、大声を出した。野球をしているときは別だが、普段は大人しい感じのユウキが、あんな風に大声を出すとは思わなかった。まぁ、これも野球の試合中だったし、ユウキにとっては自然な行動だったんだろうよ。見ていた俺たちには驚きだったけれどな。
あんた達ねぇ! やる気がないんなら今すぐ帰りな! 言っとくけど、私は怪我なんてしていないからね! ちょっと足を捻ったり血を流すのなんて、野球選手には日常でしょ!
ユウキの言葉に、甲子園のあいつを筆頭にした古巣の奴らが萎縮する。外国人の二人も、言っている意味は分からずともその言葉に圧倒されていた。するとユウキは、その二人に向かって英語を投げた。
ユウキの言葉の意味が分かっていたのはカナエだけだった。俺はその場でカナエからの耳打ちを受けていたけれど、その他にとってはチンプンカンプンだったはずだ。
続けてユウキは、日本語でも投げかけた。英語での言葉を和訳し、さらに言葉を足していた。
女の私に怪我させたと思っているなら責任をとってみな! 本気で向かってくるのが礼儀だろ!
そう言っていたそうだ。
ユウキの言葉に外国人の二人は立ち上がった。そして本気の顔つきでグランドに飛び出した。
あんたもさ、私のことが好きなら本気で向かってきなよ! こういう中途半端は嫌いなのよ!
ユウキは甲子園のあいつに向かってそう言った。あいつは一瞬苦い顔をしたが、一度深呼吸をし、すぐに真剣な表情を取り戻した。そしてグランドに走って行く。他の連中も後に続いたよ。
ユウキは走って俺たちの元に戻ってきた。足の痛みを感じさせない走りだったが、俺は気がついていたよ。ケンジに対し、無理はさせない方がいいと耳打ちした。するとケンジは、分かっている、だからタケシが自分で伝えてこいよ。そう言ったんだ。俺は内緒にしているんだが、ケンジは当初から俺の気持ちに気がついていたのかも知れない。
俺はユウキの側へ行き、バットは振らなくていい。無理して走ることはないよ。そう言った。ユウキは一瞬の沈黙の後、こう言った。
・・・・タケシ君って、優しんだね。でも大丈夫。もう痛くなんてないよ。
そう言われてしまうと、返す言葉がなかった。ユウキはヘルメットをかぶり、バッターボックスに向かった。俺はただ、その背中を見つめていた。
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