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104話

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 木の精霊さん達と楽しく笑い合う。やっと手に入れた私たちの落ち着きと幸せを、私達は噛み締めていた。
 唐突に冬菜の動きがピタッと止まり、その顔からは笑顔が消える。
「……あー」
 私達は頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら、少し驚いたような顔をする冬菜を見守っている。何かまずいことでも思い出したのだろうか。冬菜は表情をコロコロ変えているが、どの表情も明るい気持ちを表すものではなさそうだ。
 冬菜はふとこちらを振り返ると、少し真剣な顔で私を見た。何か重要な話なのだろうかと、私達は唾を飲み込む。
「……闇の五大精霊が、来いってさ」
 ……まさか、今、闇の五大精霊と話をしていたの。急に話しかけられたから、驚いていたのね。
 それにしても、闇の五大精霊が来て欲しいというなんて、どういうことなのだろうか。五大精霊がそれぞれ、大きな問題に立ち向かっているとは聞いていたが、その件で私たちに助けを求めているのだろうか。
「ごめんね、ゆっくりできなくて。無理なら、私1人でも行くけど……」
 仲間思いの冬菜は、どうやら今すぐにでも行きたいようだ。私達は何がよく起こっているのかもわからないまま、冬菜を見ていることしかできない。
「えっと、みんな、行くよね」
 私が同意を求めてエラとゼラ達を振り返ると、4人はこくこくと頷いている。それを見て、冬菜は安心したように、ほっと息を吐いた。冬菜も1人で行くのは心細かったのだろうか。
「じゃあ、宿屋をチェックアウトしなきゃ」
 エラが冷静に町の方を振り返る。荷物は盗難防止のためにもってきているから、チェックアウトさえ済ませれば、すぐにでもここを旅立てる。
「ああ、それなら僕が済ませておくから、大丈夫だよ」
 町に戻ろうとしていると、フゥが元気よく手を挙げた。正直なところ、とても助かる。闇の五大精霊がどんな問題に立ち向かっているのかわからない以上、なるべく早めに行ってあげたほうがいいだろう。
「木の精霊さん、長くいられなくてごめんなさい」
 私が別れを惜しみ謝ると、木の精霊さんは首を横に振って綺麗に笑う。
「大丈夫ですよ。気が向いたら、たまにでいいので会いに来てくださいね」
 精霊のたまに、とはどのくらいなのだろうか。人間達の間でも感覚は少しずつ違うのに、人間と精霊ではもっと違うだろう。
「わかったわ。またね」
 私が了承の返事をすると、精霊さんは幸せそうに笑った。
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