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101話

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 イーサン様はかなり驚いた様子で、いつもの顰めっ面のまま、ぽかんと口を開けて私たちを見ている。私たちの中に精霊が混じっていることは予想できていたようだが、私が聖女であることまでは予想がつかなかったらしい。
 イーサン様は小さくため息をついた。悪気はないのだろうが、ドキドキしているこちらは、そんな小さな行動にも反応してしまう。緊張しながらイーサン様の反応を待つ。イーサン様は頭を抱えて悩み込んでしまっているようで、部屋の中は嵐がさった後のように静まり返っていた。
「……わかった。話してくれてありがとう」
 いつも冷たく聞こえるイーサン様の声。仲間としてすらみられていないような気がして、私はその声が少し怖く感じる時があった。
 けれど、今のイーサン様の声は優しく、私の心に安堵をもたらしてくれた。滴り落ちるのではないかというほど溢れ出ていた汗が、そっと引いていく。
 受け入れてもらえた。それだけでもう嬉しくて、私は飛び上がりたい気分だった。私は案外、誰かに秘密を洩らされ、危険になることよりも、受け入れてもらえないことの方が心配だったのかもしれない。
 冬菜の方を振り返ると、冬菜はなんとも言えないような、むずむずしているような、落ち着いているような、不思議な表情でイーサン様をみていた。冬菜も、もしかしたら不安だったのかもしれない。
 スィーが受け入れてもらえたという前例はあったが、それはスィーがイーサン様と信頼関係にあったから。それが冬菜や私たちに適応されなかったら。冬菜もやはり、緊張し、怯えていたのかもしれない。冬菜は強いなあ。
「俺はお前達の秘密を誰かに話す気はないし、お前達の味方をしよう。だから、いつでも頼ってくれ」
 安心に涙が滲みそうになる。イーサン様がこんなことを言うなんて、感動だなあ。はじめてイーサン様に会った時と比べれば、大違いだ。けれど、もしかしたらこれが、イーサン様の本来の姿なのかもしれない。心を許した人にのみ見せる、本当の自分。そう言う自分を持っている人って、貴族社会では多かった。貴族でない人たちにも、きっと多くいると思う。
 イーサン様は、少なからず私たちに心を許してくれたようだ。……うん、きっと、たぶん。
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