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77話

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 フゥは楽しそうにラン達と話している。困っていることがあるのなら、そんなことをしている場合ではないのでは。私は少し心配になりながらも、4人を見守っていた。
「綺麗なところね」
 不意に冬菜が呟いた。振り返ると、冬菜は髪を風に委ねながら、輝く木の葉を見上げていた。緑に囲まれた森で、冬菜の赤い髪だけが一際目立つ。まるで森の中に凛と咲く一輪の花のように。
 エラはなんとも思っていないように冬菜を見ているが、私は少し見惚れていた。あまり見慣れていないというのもあるが、冬菜はかなりの美人さんだ。前世でも、今世でも。
「あの、お聞きしてもいいですか」
 ランが少し申し訳なさそうにそういうと、他の2人の小さな精霊達も思い出したように顔色を変える。
「なあに」
 それに対して、フゥは優しく問いかけた。フゥは本当に人懐っこい性格のようだ。
「お困りごとがあると聞いているのですが……」
 どうやら本題に入りたいらしく、ランはフゥの近くを飛びながら首をかしげている。私たちも話を聞こうと耳を傾けると、フゥは木の幹を背もたれに座り、私たちにも座るように促した。直接座ってしまうと服が汚れてしまうので、持っていたハンカチを敷いてから腰を下ろす。長い話になるのだろうか。
「この国には、一部の人からだけだけれど、神木として祀られている木があるんだ」
 顔から明るい笑みの消えたフゥは、少し寂しそうに目線を下に落としていた。あまりフゥとは関係のない話かとも思えるが、いったいどこにそんなに悲しむ要素があるのだろうか。続きにヒントがあるのだろうと、座り直して耳を集中させる。
「その木が今、切られそうになっているのだけれど、その木には精霊が宿っているんだ」
 ええっと最初に声を上げたのは、冬菜だった。ゼラ達の方を見ても、口を押さえたり、驚いているような仕草をしている。どうしてそんなに驚くのかがよくわからない私とエラは、キョロキョロと驚くみんなを見ていた。
「冬菜、えっと……」
 どういうことなのか尋ねようと冬菜の方を見ると、冬菜は驚いた表情をしたまま答えてくれた。
「精霊は基本、精霊の森以外では生まれないのよ……。もちろん、今回のように例外はあるけれど、それは極めて稀なケースなの」
 極めて稀なケース。それがどこまで稀なのかはわからないが、みんなの驚き具合を見る限り、ほとんど見られないのであろうことだけは分かった。そんなに見られないことが、どうして起こったのだろうか……。
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