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72話

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 今日、王様とイーサン王子は会議に出ている。人魚国で開かれた各国の王を集めたその会議は、緊急事態として開かれたものだ。王族やその重臣の集まりであるため、もともと貴族だった私の正体はばれやすくなってしまう。様々なことを考慮し、今回は留守番をすることになったのだ。
 エラの経験のためにも行ってもいいかなと思ったのだが、呪い事件のこともあるし、何かあっては大変だから仕方がない。
「ねえ、大丈夫かな。王様と王子様」
 エラが私たちを見上げて尋ねてきた。心配そうな目で拳を小さく握っている。
 私達は今、スィーの部屋に集まっている。魔力を分け与えるためでもあるが、王様達のことが心配でうずうずしてしまっていた、というのもある。
「大丈夫よ、きっと。うまくいくわ」
 私は笑ってエラの頭を撫でるも、正直なところどうなるかなんて分からない。うまくいくといいのだが。
 スィーは私たちがこの部屋に来た時から、というよりも、イーサン様が話してくれないなら教えてくれと催促した日から、ずっと様子がおかしい。ぼーっとしているというか、常に俯いている。どうやらずっと考えているようだ。話すべきか、話さないべきか。
 けれど、おそらくそれは私達が口を挟むべきことではないから。それはきっと、スィー本人が決めることだから。私達はあえて、気が付いていても何もいうことはなかった。

 早足くらいのスピードで、魔力反応が近づいてくる。ここ数日練習したおかげで、意識しただけでも魔力が読みとれるようになってきた。エラだけでなく、私も成長している証拠だ。安全のために、今後はエラにも覚えて欲しいものだ。
「戻ったぞ」
 少し静かな声と共に部屋に入ってきたのは、イーサン様一人だった。どうやら王様は一緒ではないらしい。
「おかえりなさい」
 冬菜は前世や精霊として生まれたことがあってか、身分の違いをほとんど気にしていないのだから恐ろしいものだ。私のように貴族社会で暮らしてこなかったのだから、当然と言えば当然なのだが。
「……どうなったかくらいは教えてやる」
 イーサン様はそういうと、イーサン様のために用意されたのであろう大きな椅子にどかっと腰掛けた。顔色を見るに、どうやら少しお疲れのようだ。
 いつも上から目線のイーサン様だが、報告に来てくれるあたりきちんとした人なのだろう。ほんと、上から目線なのは気になるが。
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