悪役令嬢、まさかの聖女にジョブチェンジ！？

45話

　幸福。その花言葉を必ず入れたのは、私の小さな想いからだ。
　この世界でできた初めての友達。それが3人だ。不安だった気持ちも消え、私は人生の楽しさを思い出した。あの時、私は確かに、3人に救われたんだ。そんな私が3人の幸福を願うのは、当然のことと言っていいだろう。
　3人には、幸せになって欲しい。きっと、私がそんなことを願わなくても、3人はもう幸せだと笑うのだろうけれど。
「気に入ってくれた」
　私が問うと、3人は笑った。それはもう、幸せそうに。
「もちろんよ、スノー」
　ゼラは私を優しくそう呼んだ。フィーは、ランと手を取り合ってクルクルと回っている。
「良かったわね、雪菜」
　冬菜は私をぎゅっと抱きしめて笑っているのだが、その顔はどこか不服そうだ。エラはそんな冬菜を見て、明るく花のように声を出して笑った。

　さて、愛称を与え合い、どう言う経緯で旅をすることになったのかを説明したら、いよいよ素晴らしい旅の幕開けだ。どこに向かうかなんて決まっていない、終わりのないこの旅は、いつまで続くのだろうか。正直、不安よりも楽しみが勝っている。
「まずどこにいくの」
　ゼラが私の横で羽ばたきながら、首を傾げてエラに尋ねると、エラはハッとしたように悩み始めた。
「考えてなかった。どんな国があるのかもわからないし……」
　そういえば、エラはずっと呪いに苦しんでいたのだから、勉強も碌にできなかったはずだ。この国では学校に通う者は貴族であることがほとんどだし、前世よりは学ぶ機会も少ない。最低限のことは親から教えてもらうのが普通なのだ。
「わかったわ。まずはこの世界にどんな国があるかを勉強しましょう」
　母親なんだから、と意気込むように冬菜は楽しそうだ。母親らしいことをしてあげられることが嬉しいのだろう。
「まず、この世界には4つの大きな国があるわ。その下に、属国などがある感じね」
　人間の国も、人間国、と一言でいうが、細かく分ければいくつもの国に分かれている。それをまとめているのが、私の元婚約者の父、王様だ。あまり思い出したくはない話だが、国のことを思い出すとどうしてもあの人たちの顔が浮かんでしまう。困ったものだ。
「その4つの国の名前は、それぞれ人間国、魔国、獣人国、人魚国よ」