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28話

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 私が質問を投げかけると、冬菜は少し悲しそうな顔をして私の後ろにある家の方を見た。どうやら冬菜の困りごとは家の中にあるらしい。
「それがね、私じゃどうにもできなくって……」
 不安げな冬菜について家の中に入る。ここは冬菜が人間に化けて手に入れた家らしく、冬菜個人の持ち物だそうだ。
「この部屋よ」
 冬菜が扉をノックする。中に誰かいるのだろう。
「入るわよ」
 返事はない。冬菜が扉を開けると、部屋のカーテンはしめきられ、明かりもなく暗闇に包まれていた。
「もう、またカーテンを閉めて……」
 冬菜が文句を言いながらカーテンを開ける。日の光に照らされて、ベッドに誰かがいるのが見えた。
「紹介するわ、私の娘、エラよ」
 もう皮と骨しかないのではないかと思うほどにガリガリに痩せ細り、顔色の悪い女の子が目だけで私の方を見る。誰だと訴えかけるように、警戒しているように、警戒する元気も残っていないように、その女の子は私を見ていた。
「え、待った。……冬菜、娘さんいるの」
 しかも親友の娘だというその女の子は、今にもどこかへいってしまいそうなほど弱々しい。とても精霊である冬菜の娘だとは思えない。
「赤ん坊の頃、この森で拾ったのよ。全く、人間はどの世界でも変わらないわね」
 そう言って冬菜は寂しそうにエラの頭を撫でる。その目には小さな怒りの炎が燃えていた。私は貴族だったからあまり関わりのない話ではあったが、こう言うことはどの世界になっても変わらない。もちろん、事情があって育てられずに手放す人もいるだろう。けれど、いくらなんでも獣が出てくることのあるであろう森に捨てることはないのに。
「はじめまして、私の名前は雪菜よ。よろしくね」
精一杯の優しい笑顔で笑いかける。けれど、彼女は起き上がり私たちに背を向けた。
「あ、こらっ」
 冬菜がエラの体に触れようとしたところで止める。エラも辛いのだろう。しんどくて、苦しくて。
 私達はそっとエラの部屋を出ると外に出た。家の中の閉鎖的な空間にいると、悪いことを考えてしまいそうになるのだと冬菜はいう。けれど、エラのためにあまり家から離れられない。私達は家のすぐそばの木を背もたれに、地面に座り込んだ。もう立ち上がることが難しいほど、私達の気持ちも沈んでいた。
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