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23話
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小さな精霊の言う通りに手で器を作ると、彼女は私の手の上にひらりと舞い降りた。
「準備はいい、クロエちゃん」
自信たっぷりな表情をしてその火の精霊は私に笑いかける。私が家主に小さく会釈をすると、瞬きをしたその一瞬で景色が変わった。
どうやらここは平民の暮らす町の中の路地裏のようだ。いきなり道の真ん中に人が現れた、なんてことがないように気を遣ってくれたようだ。
「本当に一瞬ね……」
転移魔法に関する言い伝えではその魔法は光を発することも、時間がかかることもなく一瞬の出来事なのだと聞かされている。どうやらそれは嘘ではなかったらしい。
「町中では私に話しかけちゃダメよ。念話は使えるでしょう」
当然のように精霊は私にそう言うが、人間にとって念話はかなりの高等魔法だ。悪役令嬢クロエは魔法に特化していて、それを使って主人公をいじめると言う設定だからこそ、私は念話が使えるけれど、普通の人なら使えないだろう。もしかしたら、クロエが魔法に特化していると言うのも、私が聖女であると言う裏設定があったからこその話なのかもしれないけれど。
さあ、行こう。
頭の中で精霊さんの声が響く。周りに念話を使える者がいなかったので初めての感覚だ。頭の中で直接声が聞こえるなんて、普通であればおかしな感覚のはずだが、何故だか違和感はない。魔法とは不思議な物だ。
わかったわ。どのあたりに行けばいいのか教えてくれる。
ええ、こっちよ。
頭の中で返事をすると、精霊さんはすぐに返事をしてくれた。もうすでに同じ精霊の気配を見つけているのだろう。
町の中を自由に歩く。少しだけ歩くスピードを速くしてみたり、空を見上げてみたり。貴族だった頃はできなかったことだ。平民の町など、馬車に乗り通り過ぎていくだけで、降りることすら許されなかった。自分の足で歩くこともできないどころか、馬車の屋根に邪魔されて空さえ見えなかったのだ。
それが、今は。自分の足で歩き、窓越しではなく直接みて、触って。なんで素晴らしいんだろう。貴族という立場上、狙われているかもしれないという言い分もわかるが、上に立つ物であるからこそ平民たちの暮らしもきちんと知らなければいけないのではないだろうか。食べ物一つの値段を知って、それの使い道、主な調理方法や加工方法を知る。そうしなければ人々の上に立つのはかなり難しいだろう。
「準備はいい、クロエちゃん」
自信たっぷりな表情をしてその火の精霊は私に笑いかける。私が家主に小さく会釈をすると、瞬きをしたその一瞬で景色が変わった。
どうやらここは平民の暮らす町の中の路地裏のようだ。いきなり道の真ん中に人が現れた、なんてことがないように気を遣ってくれたようだ。
「本当に一瞬ね……」
転移魔法に関する言い伝えではその魔法は光を発することも、時間がかかることもなく一瞬の出来事なのだと聞かされている。どうやらそれは嘘ではなかったらしい。
「町中では私に話しかけちゃダメよ。念話は使えるでしょう」
当然のように精霊は私にそう言うが、人間にとって念話はかなりの高等魔法だ。悪役令嬢クロエは魔法に特化していて、それを使って主人公をいじめると言う設定だからこそ、私は念話が使えるけれど、普通の人なら使えないだろう。もしかしたら、クロエが魔法に特化していると言うのも、私が聖女であると言う裏設定があったからこその話なのかもしれないけれど。
さあ、行こう。
頭の中で精霊さんの声が響く。周りに念話を使える者がいなかったので初めての感覚だ。頭の中で直接声が聞こえるなんて、普通であればおかしな感覚のはずだが、何故だか違和感はない。魔法とは不思議な物だ。
わかったわ。どのあたりに行けばいいのか教えてくれる。
ええ、こっちよ。
頭の中で返事をすると、精霊さんはすぐに返事をしてくれた。もうすでに同じ精霊の気配を見つけているのだろう。
町の中を自由に歩く。少しだけ歩くスピードを速くしてみたり、空を見上げてみたり。貴族だった頃はできなかったことだ。平民の町など、馬車に乗り通り過ぎていくだけで、降りることすら許されなかった。自分の足で歩くこともできないどころか、馬車の屋根に邪魔されて空さえ見えなかったのだ。
それが、今は。自分の足で歩き、窓越しではなく直接みて、触って。なんで素晴らしいんだろう。貴族という立場上、狙われているかもしれないという言い分もわかるが、上に立つ物であるからこそ平民たちの暮らしもきちんと知らなければいけないのではないだろうか。食べ物一つの値段を知って、それの使い道、主な調理方法や加工方法を知る。そうしなければ人々の上に立つのはかなり難しいだろう。
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