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2話 お、ね、が、い

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 いつだってあの子は私の一番だったし、それで笑顔が見れるなら、私はなんだってする勢いだった。そのくらい、ノアのことが大切なのだ。もちろんそれは、今も。
 それで、次はなんだったかな。確か次は……。
「……ラ、イザベラっ。イザベラ・カランコエっ」
 ビクッと肩を飛び上がらせる。顔を動かさずに目だけで横を見ると、ノアが頬を膨らませてこちらを見ていた。どうやら何度も私の名前を呼んでいたらしく、ご立腹の様子で私のお腹を抱き締めている。
「ご、ごめんっ。なに」
 慌てて返事をすると、ノアは満足したように笑う。どうやら私に用があるわけではなく、なんとなく呼んでみたら、私が返事をしなかったのが気に食わなかったらしい。
「あ、そういえばさあ。お願いがあるんだけど」
 ふと思い出したかのようにノアは私から手を離すと、急に立ち上がった。私は膝の上から落ち、滑り落ちる。なんとか手をつくことができたのだが、手と膝が少し痛い。いつものことだし、文句を言っても仕方がないので、私は素直に立ち上がると、首を傾げてノアが言葉を発するのを待った。
「あのね、今僕、婚約者がいるでしょう」
 婚約者……。仲違いでもしたのだろうか。それで、間を取り持って欲しい、とか。私がいうのもなんだが、私とノアのいる時間はかなり長いし、浮気をしているのでは、と喧嘩になっても仕方がないだろう。
「あの子と結婚、したくないの。だから、婚約破棄、させて」
 させてったって……。彼のわがままに、私は大して驚くことなく悩み始めた。喧嘩の仲直りのお手伝いかとも思ったが、ノアの話を聞く限り、もとより2人はそんなに仲が良いわけではない。だから、そこまで不自然に感じることはないのだが。
 ……えっ、どうすればいいの。今回のお願い、わかりにくっ。具体的に何をすればいいのよっ。と、とりあえず、身辺調査でもしてみようかな。
「ねーねー、おねがーい」
 うっ、可愛い……。下から目線のそのあどけなさ、私に10,000のダメージっ。
「わかったわ。私に任せてっ」
 こんな難しいおねだり、いつぶりだろう。ああ、そんなことどうでもいいから、早くなんとかしてあげないと。ノアに、望まない結婚はしてほしくないし……。うん、やっぱり私がなんとかしないと、ね。
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