17 / 32
ち
しおりを挟むさて、どういうことでしょうか。
目が覚めた私の目に入ってきたのは、むふふ、くくく、うふふ、と不気味にニヤニヤしている妖精2人。
え、なに?
「…なに?そんなににやけて。」
「ふふーん。覚えてないんだぜ?」
「あら!覚えていないのかしら!」
「なにをいっているの?」
「昨日の夜!あんなに可愛かったのに!覚えていないなんて残念!」
「確かに可愛かったんだぜ!」
むふむふ言っている2人には悪いけどなんの事か全くわからない。
「きのうのよる?きのうはあっていないでしょう?」
「それが会ったんだぜ!」
「寝ぼけてちょっとだけど甘えてきたのが可愛かったわぁ!」
「あの可愛いアリスともっと話しておくんだったぜ!」
な、な、なんてこと!
顔に熱が集まってくるのがわかる。
甘えてた…?
この2人にそんな恥ずかしいこと!するはずがないわ!!
もしかしたら昨日先生とあんなことを話した後だったからかしら。
もうもう!
キャイキャイはしゃぐ2人をよそに私は恥ずかしさでベッドをのたうち回ったのだった。
「それで?話ってなんだぜ?」
「そうね、昨日話したいことがあるって言っていたわ!」
「あ、そうなのね。わたしにはふたりしかほんとうのことをはなせるひとがいないの。それでね、さんにんでみらいのために、さくせんかいぎをしたくて。」
「ふむふむ。いいぜ!かっこいいもんな!作戦会議!」
「そのために、わたしのしらないこと、おしえてほしいの。
たとえばわたしがしんだあと、どうなったかとか。」
「なるほどね、その前に一つだけ伝えておかなければいけないことがあるわ。」
「なあに?」
「私たち、伝えてもいい事といけないことがあるの。」
「頼まれたこと、聞かれたこと以外の事は自発的に伝えられないんだぜ。
たとえばアリスが今尋ねた、死んだ後のことは細かく聞かれれば答えられるけれど、ルーが何しているか、とかカーラはアリスの死後何をしていたか、とかは聞かれていないから答えられないんだぜ!」
「勝手に追加で情報を出せないってことよ。だからよく考えてたくさん質問してね!」
「わかった。じゃあしつもん。わたしがしんだあと、こくみんは へいわにくらせた?まちのようす、おしえてほしい。」
「最初に聞くのがそれなんだぜ…?」
「そうね…、はじめのうちは良かったわ。
みんながそう信じて断罪したのだから。
多少変に思うことがあっても前よりはマシなはずって自分たちを誤魔化していたのかもしれない。
でも半年くらい経ってから、もう自分たちを誤魔化しきれなくなってきたのでしょうね。
毎日街には悲壮な顔をした人達が溢れていたわ。
みんな大っぴらには言わなかったけれど井戸端会議のおば様たちや、仕事帰りの酒場のおじ様たちからはヒソヒソとあなた達への断罪の後悔や、してはいけないことをしてしまったと謝罪の声が止まなかったわ。
それでもあなた達のお墓なんて存在しないから謝る場所すらなくて、みんな王宮に向かって涙を流して頭を下げていたの。」
「どうして?さいしょうはきちんとせいじをおこなわなかったの?」
「宰相までもおかしくなってしまったのよ。どうしてかしらね、急に戦争を始めるとか言って徴兵するし、税率も急に高くなったの。」
「貧民が増えてスラムも出来たんだぜ。治安がものすごく悪くなっていったんだぜ。
見回りの騎士たちももう対処出来ないくらいになってしまったんだぜ。
それに騎士の中にもガラの悪いやつが増えたんだぜ。」
「もうみんな何がしたいのか分からなくなっていたわ。」
そんな…。
正直、私たちが死んだ後でみんなが平和に暮らせていたのなら、ものすっっごく悲しいし悔しいけれど、それはそれで受け入れようと思っていた。
もう王族の時代じゃないのかもって。
けれど、私たちの大切な民たちがそんなに苦しい生活を強いられていたなんて。
それなら私は今世では絶対に王位を譲れない。
民を守ることが王族の役割だから。
幸せで暮らせる人を1人でも多くすることが私達の役割だから。
止まらなくなった涙をぐいっと袖で拭って決意した。
「ありがとう。ふたりとも。
わたし、やっぱりしねないね。
しんじゃだめだ。」
「当たり前なんだぜ!」
「ええ!私たちから見てもあれは酷かったわ。」
それにしても、よくわからない。
宰相は結局何がしたかったのかしら。
長い間宰相として勤めていたのだから、政治についてわからないはずがないのに。
まるで自ら破滅に向かっているみたいじゃない。
それにそんなに好戦的だったかしら。
私の知っている彼は、芯からじっくり腐らせて、気づいた頃にはもう外側まで手遅れにしてしまうようなタイプよ。
間違っても急に戦争を始めて他国を攻めたりしないわ。
「ねえ、その戦争ってどうだったの?勝ったの?」
「いいえ、ボロボロだったわ。
辛うじて国が残ったくらいの。」
「あれは世紀の大敗だったんだぜ。」
ありえないわ。まるで無計画じゃない。
一体どうして?
彼がやるならきっと相手の国に沢山間者を送り込んで内戦でも起こした後、経済を崩壊させたり国力の低下を促してから攻めるはず。
無駄に自国民を殺すなんてこともったいないからするはずないのに。
だめだ、どんどん頭がこんがらがってきた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる