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墓参りの話

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 私は高校時代にサークルでイラスト部に所属しており、活動内容は作成したイラストの展示や大会に応募することだった。基本的には部活は緩く、文化祭や大会がない時は空き教室でイラストを描きながら、みんなで好きな話をすることが多かった。その時に友人のA子ちゃんから聞いた怖い話である。

 お盆にA子ちゃんは家族と墓参りに行くことになりました。A子ちゃんには小学生の妹と保育園に通っている弟がいました。小さい兄弟にお墓参りはつまらなく、両親が墓掃除をしている間はかけっこやかくれんぼをして遊んでいました。掃除が終わり両親と一緒にお水や線香をあげている間も落ち着きがなく、妹と弟は走り回っていました。その日は暑く、兄弟も元気良く走り回るため、お墓参りも早めに済ませて帰宅しました。

 その日の晩、A子ちゃん宅では兄弟三人同じ和室で布団をひいて横並びで寝ていました。夜も寝苦しくA子ちゃんは中々眠ることが出来ず何度も目が覚めてしまいました。眠れない夜を過ごす中、ふっとして襖に目を向けると微かに開いておりました。「閉まっていた気がするけれどなんで開いているのかな」とA子ちゃんが思っていると襖から視線を感じました。次の瞬間A子ちゃんの体が動かなくなりました。

「(えっ!)」

 A子ちゃんは驚いて声を出そうとしましたが、全く口を動かすことができません。A子ちゃんはうつ伏せで寝ていましたが、背中に重みを感じていました。重みはどんどん増していきました。A子ちゃんは動かない首をなんとか動かし、背中を見ると着物を着た小さいお婆さんが自分の上に乗っていることに気が付きました。A子ちゃんは両親が法事の際に唱えていたお経を思い出し、必死に唱えました。

 唱えたままA子ちゃんは寝てしまい気が付いたら朝になっていました。目が覚めると弟が泣いており、両親が「どうしたのか」と弟に聞いていました。「夢で着物を着た怖い顔したお婆さんが出てきて怖かった」と弟が話すと両親は「私たちも同じ夢を見た」と話してくれました。私も妹も同じ夢を見たことを両親に話すとこれはただ事ではないということになりました。

 両親と私が昨日墓参りに行った時に何かしたのではないかという話になりました。その時に妹が「弟が何かポケットに入れていた」と言い、それだと確信しました。泣きぐずる弟を落ちつけさせながらも何を持ち帰ってきたのか聞くと「小石を持ち帰ってきて、庭に捨てた」と言います。弟に石の特徴を聞きながら家族全員で庭にある似た小石を拾い集めて、墓が置いてあるお寺に返しに行きました。

 その後、金縛りや着物を着たお婆さんが夢で出てくることはありませんでした。A子ちゃんは弟は欠けた墓石を持ち帰ってきたため、墓で寝ていたお婆さんが怒って出てきたのではないかと言っていました。




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