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After Story…My Dearest.31
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…秋風は心地が良い。暖かいようで冷たいような、なんだか不思議な風だから。
昨日まで寂しげに散っていた樹々の葉たちも、今の私には楽しげに風に舞う子供の様に見える。きっとそれは心のレンズが透き通ったお陰で本当の景色をしっかりと映し出してくれているからだと思う。
そんな事を考えながら、私はいつもの道を莉結と二人並んで歩いている。
『ねぇ、何ニヤニヤしてるのっ?』
「んっ?別にっ、てか莉結だって気持ち悪いくらいニヤついてますけど?」
そう言って私は、下から覗き込む様に話しかけた莉結の頬をツンと指で押した。
すると莉結は"ふふッ"と微笑んでから、何故か少し寂しそうな顔になって空を見上げた。
『こうやって学校に行くのもあと少しなんだねぇ』
莉結は呟くようにそう言うと、小さく微笑んだ口元と寂しげな目元を私に向けた。
頭では分かっているそんな事実も実際に口にされるとなんとも寂しい気持ちになってしまう。今こうやって当たり前にしていることが過去となって二度と訪れる事の無い思い出になっていく…そんな寂しい気持ちが込み上がってきて、ふと私は莉結の手をギュッと握りしめたのだった。
そして私も遠く乾いた空を見上げて口を小さく開いた。
「それでも変わらないモノってあると思う。学校を卒業してもこうやって一緒に歩きたいなッ」
すると莉結は口元に手を当ててクスクスと笑いだした。私はてっきり"そうだね"とか"私もだよ"とか、そういう言葉を期待…とまでいかないけど、そういう言葉が返ってくるとばかり思っていたから、なんだか拍子抜けしてポカンと莉結の顔を見つめた。莉結はというと、少し下を向いたまま笑って、薄く開いた目のままこう言った。
『ちょっ…衣瑠ぅ、どうしたぁッ?別に私はそんな深刻な話してないって♪』
「えぇ?いいじゃん別にッ。だって今日って日は二度と来ないんだよ?」
『ふふ、だから急に手を握ったのっ?』
「別に関係無いしッ!!」
そんな二人の声が校門近くで響くと、学校から朝礼開始五分前を知らせるチャイムが鳴った。
昨日まで寂しげに散っていた樹々の葉たちも、今の私には楽しげに風に舞う子供の様に見える。きっとそれは心のレンズが透き通ったお陰で本当の景色をしっかりと映し出してくれているからだと思う。
そんな事を考えながら、私はいつもの道を莉結と二人並んで歩いている。
『ねぇ、何ニヤニヤしてるのっ?』
「んっ?別にっ、てか莉結だって気持ち悪いくらいニヤついてますけど?」
そう言って私は、下から覗き込む様に話しかけた莉結の頬をツンと指で押した。
すると莉結は"ふふッ"と微笑んでから、何故か少し寂しそうな顔になって空を見上げた。
『こうやって学校に行くのもあと少しなんだねぇ』
莉結は呟くようにそう言うと、小さく微笑んだ口元と寂しげな目元を私に向けた。
頭では分かっているそんな事実も実際に口にされるとなんとも寂しい気持ちになってしまう。今こうやって当たり前にしていることが過去となって二度と訪れる事の無い思い出になっていく…そんな寂しい気持ちが込み上がってきて、ふと私は莉結の手をギュッと握りしめたのだった。
そして私も遠く乾いた空を見上げて口を小さく開いた。
「それでも変わらないモノってあると思う。学校を卒業してもこうやって一緒に歩きたいなッ」
すると莉結は口元に手を当ててクスクスと笑いだした。私はてっきり"そうだね"とか"私もだよ"とか、そういう言葉を期待…とまでいかないけど、そういう言葉が返ってくるとばかり思っていたから、なんだか拍子抜けしてポカンと莉結の顔を見つめた。莉結はというと、少し下を向いたまま笑って、薄く開いた目のままこう言った。
『ちょっ…衣瑠ぅ、どうしたぁッ?別に私はそんな深刻な話してないって♪』
「えぇ?いいじゃん別にッ。だって今日って日は二度と来ないんだよ?」
『ふふ、だから急に手を握ったのっ?』
「別に関係無いしッ!!」
そんな二人の声が校門近くで響くと、学校から朝礼開始五分前を知らせるチャイムが鳴った。
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