本日は性転ナリ。

ある

文字の大きさ
上 下
239 / 277

After Story…My Dearest.27

しおりを挟む
「はい…起きてます」

『ちょっと入ってもいいかな?』

私が答えると先生の声が少し暗い気がした。それはたぶん、私があの時に突然どうにかなってしまったのは明白で、もしかしたらその時に迷惑を掛けてしまったのかもしれない。

「はい…どうぞ」

「失礼するよ」と先生の声がしてカーテンが開く。
白衣姿のいつもと変わらない先生の姿、そしてその背景が目に映る。
そこで気づいた。ここは個室だったんだって。
まぁそんな事はどうでもいいとして、私が随分と待遇のいい事をしてくれるんだなぁ…なんて思っていると、先生が手に持っていた一枚の紙をベッドの脇に備え付けられた小さなテーブルの上に静かに置いた。

「えっとこれって?」

『勝手で申し訳ないけど、採血させてもらったんだ。なんせあの時、突然倒れてしまったもんだからね。瑠衣ちゃんの場合は推測で貧血だの一時的な疲労だの判断するのはどうかと思って』

"瑠衣ちゃんの場合は"
その言葉…やっぱり私が"普通じゃない"という事実に釘を刺されたみたいでなんだか悔しいような悲しいような変な気持ちだ。

「それで…なんで私に見せるんですか?」

そう言って私は数字の並んだ一枚の紙から剥がした強い視線を先生へと送る。
だって、先生が結果を見て問題無いって判断すればわざわざ私に血液検査の結果を見せる必要が無い筈だもん…
私の質問から先生が口を開くまでの数秒間、たったそれだけの時間で、心臓が静かにその鼓動を早めていくのが分かった。

『いや…あぁ、多分瑠衣ちゃんの思っている通りだよ…そんなに結果は良くない』

 「…そうですか」

『気にならないのかい?』

私は自分でも驚く程に冷静なまま、自分の足元をジッと見つめたまま頷いた。

「再検査とかしなくてもいいですから」

私のその言葉に、先生からほんの小さな溜息が聞こえた気がした。

『これはまだ簡易的なものだからしっかり検査はしてもらわないといけないな』

そして、なんでだろ。よくわからないけど私はその言葉に妙な憤りを感じた。

「それは私の為ですか?それとも私の病気の研究の為ですか?」

私の言葉に一瞬言葉を詰まらせた先生は、ぎこちない笑顔を作ってこう言った。

『勿論、両方だよ』と。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

TSしちゃった!

恋愛
朝起きたら突然銀髪美少女になってしまった高校生、宇佐美一輝。 性転換に悩みながら苦しみどういう選択をしていくのか。

君は今日から美少女だ

恋愛
高校一年生の恵也は友人たちと過ごす時間がずっと続くと思っていた。しかし日常は一瞬にして恵也の考えもしない形で変わることになった。女性になってしまった恵也は戸惑いながらもそのまま過ごすと覚悟を決める。しかしその覚悟の裏で友人たちの今までにない側面が見えてきて……

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

思春期ではすまない変化

こしょ
青春
TS女体化現代青春です。恋愛要素はありません。 自分の身体が一気に別人、モデルかというような美女になってしまった中学生男子が、どうやれば元のような中学男子的生活を送り自分を守ることができるのだろうかっていう話です。 落ちがあっさりすぎるとかお褒めの言葉とかあったら教えて下さい嬉しいのですっごく 初めて挑戦してみます。pixivやカクヨムなどにも投稿しています。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...