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After Story…My Dearest.27
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「はい…起きてます」
『ちょっと入ってもいいかな?』
私が答えると先生の声が少し暗い気がした。それはたぶん、私があの時に突然どうにかなってしまったのは明白で、もしかしたらその時に迷惑を掛けてしまったのかもしれない。
「はい…どうぞ」
「失礼するよ」と先生の声がしてカーテンが開く。
白衣姿のいつもと変わらない先生の姿、そしてその背景が目に映る。
そこで気づいた。ここは個室だったんだって。
まぁそんな事はどうでもいいとして、私が随分と待遇のいい事をしてくれるんだなぁ…なんて思っていると、先生が手に持っていた一枚の紙をベッドの脇に備え付けられた小さなテーブルの上に静かに置いた。
「えっとこれって?」
『勝手で申し訳ないけど、採血させてもらったんだ。なんせあの時、突然倒れてしまったもんだからね。瑠衣ちゃんの場合は推測で貧血だの一時的な疲労だの判断するのはどうかと思って』
"瑠衣ちゃんの場合は"
その言葉…やっぱり私が"普通じゃない"という事実に釘を刺されたみたいでなんだか悔しいような悲しいような変な気持ちだ。
「それで…なんで私に見せるんですか?」
そう言って私は数字の並んだ一枚の紙から剥がした強い視線を先生へと送る。
だって、先生が結果を見て問題無いって判断すればわざわざ私に血液検査の結果を見せる必要が無い筈だもん…
私の質問から先生が口を開くまでの数秒間、たったそれだけの時間で、心臓が静かにその鼓動を早めていくのが分かった。
『いや…あぁ、多分瑠衣ちゃんの思っている通りだよ…そんなに結果は良くない』
「…そうですか」
『気にならないのかい?』
私は自分でも驚く程に冷静なまま、自分の足元をジッと見つめたまま頷いた。
「再検査とかしなくてもいいですから」
私のその言葉に、先生からほんの小さな溜息が聞こえた気がした。
『これはまだ簡易的なものだからしっかり検査はしてもらわないといけないな』
そして、なんでだろ。よくわからないけど私はその言葉に妙な憤りを感じた。
「それは私の為ですか?それとも私の病気の研究の為ですか?」
私の言葉に一瞬言葉を詰まらせた先生は、ぎこちない笑顔を作ってこう言った。
『勿論、両方だよ』と。
『ちょっと入ってもいいかな?』
私が答えると先生の声が少し暗い気がした。それはたぶん、私があの時に突然どうにかなってしまったのは明白で、もしかしたらその時に迷惑を掛けてしまったのかもしれない。
「はい…どうぞ」
「失礼するよ」と先生の声がしてカーテンが開く。
白衣姿のいつもと変わらない先生の姿、そしてその背景が目に映る。
そこで気づいた。ここは個室だったんだって。
まぁそんな事はどうでもいいとして、私が随分と待遇のいい事をしてくれるんだなぁ…なんて思っていると、先生が手に持っていた一枚の紙をベッドの脇に備え付けられた小さなテーブルの上に静かに置いた。
「えっとこれって?」
『勝手で申し訳ないけど、採血させてもらったんだ。なんせあの時、突然倒れてしまったもんだからね。瑠衣ちゃんの場合は推測で貧血だの一時的な疲労だの判断するのはどうかと思って』
"瑠衣ちゃんの場合は"
その言葉…やっぱり私が"普通じゃない"という事実に釘を刺されたみたいでなんだか悔しいような悲しいような変な気持ちだ。
「それで…なんで私に見せるんですか?」
そう言って私は数字の並んだ一枚の紙から剥がした強い視線を先生へと送る。
だって、先生が結果を見て問題無いって判断すればわざわざ私に血液検査の結果を見せる必要が無い筈だもん…
私の質問から先生が口を開くまでの数秒間、たったそれだけの時間で、心臓が静かにその鼓動を早めていくのが分かった。
『いや…あぁ、多分瑠衣ちゃんの思っている通りだよ…そんなに結果は良くない』
「…そうですか」
『気にならないのかい?』
私は自分でも驚く程に冷静なまま、自分の足元をジッと見つめたまま頷いた。
「再検査とかしなくてもいいですから」
私のその言葉に、先生からほんの小さな溜息が聞こえた気がした。
『これはまだ簡易的なものだからしっかり検査はしてもらわないといけないな』
そして、なんでだろ。よくわからないけど私はその言葉に妙な憤りを感じた。
「それは私の為ですか?それとも私の病気の研究の為ですか?」
私の言葉に一瞬言葉を詰まらせた先生は、ぎこちない笑顔を作ってこう言った。
『勿論、両方だよ』と。
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