想色40season's

ある

文字の大きさ
上 下
11 / 19

神様なんていない2

しおりを挟む
   そんな事を思い出しながら、今もこうやってしーちゃんの背中に付いて行く私は、やっぱり妹みたいだな、なんて思ってしまう。
    そこで突然しーちゃんが「どうかした?」と足を止めて振り返る。キョトンとした顔を上げた私を見てしーちゃんは「なんだよ、また思い出し笑い?」と子供みたいに無邪気な笑顔で言ったのだった。

    暫くすると、あちらこちらに軒花が飾り付けられているのが見えてくる。この軒花が見えてきたという事は、もう少しで神社の入り口だ。
    そこで私は、ふと視線の先に映ったお揃いの浴衣を着た小さな女の子達を見て、ある事を思い出したのだった。

「あっ」

    私から漏れた声にしーちゃんが振り返る。

「えっ?    どうかした?」

「いや……まぁ、いいかな」

「何?     忘れ物?」

「まぁ……そんなとこ。けどいいよ、ごめんね」

    いいと言いつつも私は心の中で大きく肩を落とした。
    というのも、この前浴衣を選んだ時に目に入ったイニシャル入りの携帯のストラップが可愛くて、今日しーちゃんにも渡すつもりでお互いのイニシャルの物を買っていたのだ。そんな大切な物を忘れるなんて、ほんと私は大馬鹿者だ。

「取り帰る?」

「いやっ、いいよ。ここまで来ちゃったし……大丈夫」

     今日お揃いで付けたかったのに。
     そんな気持ちを押し込んで私はしーちゃんに笑顔を向けた。
    するとしーちゃんは何故か大きく溜息を吐いて「下手くそ」と言葉を投げ捨てた。

「いいよ、俺取ってきてやるからどっか明るいとこで待ってろよ」

「だめだよ!    本当にいいからっ」

「何か分かんないけどさ、今日じゃないとだめって顔してんだよ。それに明日は一緒に来れないし」

「そんな……顔、してる?」

「してるっつーの。で、何持ってくんの?」

    そう言われて私は少し焦ってしまう。たぶん、しーちゃんは何がなんでも取りに行くって聞かないだろうし……
    そんな事よりも渡す前に見られちゃったらなんかやだな。たかがストラップ、されどストラップ……どうしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

処理中です...