滝川家の人びと

卯花月影

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15 武田滅亡

15-1 白羽の矢

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 十一月 伊勢長島城 
一益の次男、八郎の傅役を務める道家彦八郎は、一益からの知らせを受けて風花の元へ伺候した。道家彦八郎は一益の母方の甥にあたり、元は美濃の斎藤家の家来だった。信長が美濃を制圧したのちに滝川家に与力として連なっている。
「年明けには八郎様を元服させ、戦場にお連れしたいと仰せにござりまする」
 年明け早々、安土では恒例の左義長が行われる。安土にいる章姫から誘いの知らせを受けて、八郎を連れて安土に行こうかと考えていたところだった。
「八郎が元服とは。早いものじゃ」
 八郎は一益と風花にとっては第一子になる。その下の六郎、九郎はともにキリシタン大名の三箇老人の元から、京に新しく暘谷庵と名付けた庵を作ってそこに住まわせている。末の七郎は丹羽長秀の元で育てられているし、葉月は柴田勝家の嫡男の元へ嫁いだので、八郎が元服すると、風花の傍には子供たちは誰もいなくなることになる。
 寂し気な表情を受けべる風花に、彦八郎も返す言葉がない。
「次の戦さ場は何処になる?」
「恐らくは甲斐の武田かと」
 武田信玄没後から、武田勝頼と一門衆・家老たちとの不仲がささやかれていた。設楽が原の合戦以後、織田・徳川両方から武田家への調略の手を伸ばしていたが、数年がかりの計画がここにきて実を結びつつある。
「甲斐は強国と聞き及びました。かような遠国まで行って、八郎は大事ないのか」
「城介様が大将、わが殿が副将として出陣なさるよし。何も案ずることはありますまい。甲斐が強国だったのは昔のこと。今や我らの調略により骨抜きにされておりまする」
 味方の損害が大きい武田との決戦を避け、数年がかりで少しずつ切り崩してきている。いかにも一益らしい。素破は表立った行動を嫌う。己の手柄を吹聴することもないので、武田家への調略に一益が裏で絡んでいることは織田家家中でもわずかなものしか知らない。
「もう殿もいい加減なお年じゃ。そろそろ戦場は若い方々にお任せして、父上のように居城に構えておられてもよいのではないか」
「は…さりながら、まだまだ若殿お一人ではなんと申し上げたらよいやら…やはり殿の御出馬なくば…」
 道家彦八郎が言いにくそうに言葉尻を濁した。三九郎では大軍を指揮することは難しいと、そう思っているのだろう。
「父上も父上じゃ。殿を死ぬまで戦場に出すおつもりなのであろうか…」
 これまでは疲れを顔にだすようなこともなかった一益だが、最近では目に見えて衰えを感じさせることが増えた気がする。
「御台様。実は岐阜から斎藤新五郎がまかり越し、お目通りを願っておりまする」
「斎藤、とは、マムシ殿のお子の?」
「はい」
 信忠の家臣、斎藤新五郎は美濃のマムシこと斎藤道三の末子になる。信長の正室、帰蝶の弟なので親族衆の扱いを受けている譜代の臣だ。
 道家彦八郎とは旧主からの付き合いなので、何か頼みごとがあって彦八郎のもとにやってきたのだろう。
「城介様のことで何やら困りごとがある様子にて」
「はて…。かまわぬ。ここへ連れてまいれ」
「有難き幸せ」
 道家彦八郎が喜んで斎藤新五郎を連れてくる。
 信忠も風花も、帰蝶の子ではないが、側室の子は皆、正室の子として育てられる。つまり斎藤新五郎は風花にとっては叔父になるが、人知れず育てられた風花は数回しか、顔を見たことがない。それがわざわざ訪ねてきたからには余程のことだろう。
「珍しや。如何なされた」
 風花が驚いて訊ねると、新五郎は困り果てたといった顔をする。
「城介様が上様から厳しくお叱りを受け、岐阜城で謹慎を申し付けられました」
「父上から?何があったのじゃ」
 斎藤新五郎の顔色を見るに、只事ではないようだ。
「是非とも風花様のお力をお借りしたく、まかり越してこざりまする」
「わらわに?父上に取りなせと申すか?」
「それもありますが、もう少し難儀なお願いがござりまする。風花様と…滝川左近様にもぜひ…」
 風花が首を傾げる。一益は安土にいる。一両日中に戻ると連絡を受けていたが。
「織田家の家督を継いで以来、城介様は常に上様のご命令に従って参りました。それが此度は、如何に上様からお叱りを受けようとも一歩も譲れぬと仰せで、廃嫡も厭わぬと」
 信忠は幼い時から常に他の兄弟とは別格の扱いを受けて育った。織田家の内外でも明確に嫡子と認識され、先年、家督を譲られてからも忠実に責務をこなしてきた。それが、武田攻めも近いという時に、信忠が織田家の家督を投げ出す覚悟で信長に逆らっているという。
「それは由々しきこと。一体なにごとか。話して聞かせよ」
 風花が心配そうに訊ねる。斎藤新五郎は胸元から懐紙を出し、額の汗を拭くと、実は…と話し始めた。
 
 一益が長島に戻ったのは十一月下旬だった。
(年明けには八郎を元服させ、戦さに連れて行かねばなるまい)
 年が明ければ八郎は十三歳になる。道家彦八郎を傅役につけていたが、最近少しずつ体調を回復してきた佐治新介も、時々顔を出しては武芸を教えているようだ。
 風花に元服の話をするため、奥へ行ってみたが、風花も八郎も姿が見えない。
「皆、いずこへ参った?」
 侍女を呼ぶと、風花は八郎を連れて城を出て、大川にある西川輪中に向かったと分かった。
(西川輪中に…わざわざ何故そのような場所へ)
 輪中とは木曽三川(木曽・長良・揖斐川)の下流、真中にある堤防に囲まれた中洲のことだ。いにしえの昔、この地に人が住み、集落が形成された。それから長い時の間に、何度も水害にみまわれたため、川の流路を変えるなどしてきたらしい。集落があるところには堤を作り、水害を防いでいる。
 川に挟まれた輪中のうち、小島のように面積の広い七つの輪中を七島と呼び、それが長島になったと言われている。
 毎年夏から秋にかけて川の氾濫に脅かされる反面、水はけがよく、枯水の心配のない自然堤防上には人が集まり、田畑が耕された。一反(九九〇㎡)あたり四俵。洪水の翌年はその倍の米がとれる。また川に挟まれ、沼地も多いために魚がよく採れた。
 この肥沃な土地を発展させるため、輪中に住む民には手厚い保護を与えた。築城術は一益の特技のひとつだが、土を盛って土塁を築き、出丸を作るといった築城術は治水工事とも共通点が多い。一益は何度も輪中を見回り、大水の際の川の流れを詳細に調べさせて治水工事を命じた。道や堤の普請にあたり、この地に住む人々に智慧を出させ、力を出し合った。
 このように長島に居を構えて以来、洪水から民を守り、耕作地を広げる努力を続けている。
 木全彦次郎を連れて西川輪中に向かっていくと、遠目に供をつれた一群が見えた。風花、八郎の他、佐治新介の姿も見える。
「風、ここで何をしておる」
 馬を下りて風花に歩み寄ると、風花が明るい笑顔を見せる。
「あれなる地蔵。川立ち地蔵と呼ばれておりまする」
 堤の前の沼地に立つ地蔵を指さし、そう答える。
「川立ち地蔵?」
「あの沼地は輪中の中でも特に低い場所。それゆえ地蔵は、大雨で堤から水が溢れるたびに水につかりまする。それを見た里人が、あの地蔵を川立ち地蔵と呼んでおったと。ある日、その地蔵を哀れんだ里人が、堤の上に地蔵を動かすと、地蔵が夢に現れ、元の沼地に帰せと言うたそうでござります」
「地蔵は沼地がよいと、そう言うたか」
「はい。大水が溢れ、溺れて命を奪われる者を救わんがために、沼地におるのじゃと。それゆえ沼地に戻せと言うたとか。なんとも不思議な話を耳にして、地蔵をこの目で確かめにきたのでござります」
 城の侍女あたりに話を聞き、興味をひかれてここまで見に来たのだろう。
 この話の所以に、心当たりがある。
 西川輪中の堤を作るときに人柱を立てる話がもちあがっていた。堤の他、橋や城を作る時も人柱を用い、神への護りを祈願することがある。この辺りでは、村を見下ろす小高い丘から白羽の矢を放ち、矢が刺さった家の娘を人柱とするのがしきたりだった。
 この辺りの土地の暮らしの有り様や自然は他の地域とは一線を画する。大水のたびに流れを変える川。この地に住む人々は古来から先人たちの智慧をもってその営みを続け、風土を守って来た。しきたりや祭りは先祖とのつながりを思い起こさせる、人々にとっては大切なものだ。感心しないしきたりではあるが、悪戯に禁制をだして止めさせることもはばかられた。領主が出す掟は、そこに住む人々の暮らしを土台とし、土地と一体とならなければ意味がない。
 話を聞いた一益は、義太夫に命じて付近にあった地蔵に細工を施し、予め矢をさした状態で人目につかぬところに地蔵を隠した。義太夫も心得て、里人の前で矢を射るときも、うまく助九郎が潜んでいる場所へ放ったので、皆が確かめに来る前に矢の刺さった地蔵を設置することができた。
『なんと、お地蔵さまに白羽の矢が立っておるぞ!』
 助九郎がそう叫ぶと、里人が集まり、大騒ぎになった。
『お地蔵さまが川でおぼれ死ぬ者を救うため、自ら人柱になるというておるのじゃ』
 思惑通り、地蔵を人柱の代わりに堤の下に埋めたが、それが度重なる洪水で地表が削られ、表にでてきてしまったのだろう。
 それを見た里人が、白羽の矢の一件を思い出し、川立ち地蔵の話を作り上げたと思われた。
(やはりそうか)
 近寄って見てみると、やはり地蔵の肩に穴が開いている。矢を立てるために開けさせた穴だ。
「殿。如何なされた。この地蔵が何か?」
 風花が駆け寄ってきた。一益はふっと笑って、
「いや。今年も大水が押し寄せた故、地蔵も人助けで忙しかったろう」
「この地蔵が、長島の地をあらゆる厄災から守ってくれましょう」
 風花が地蔵の頭を撫でる。そのしぐさがなんとも愛らしかった。
「変わらぬな、そなたは」
 あの岐阜の千畳敷館で会った時から、風花だけはずっと変わらず傍にいるような気がする。
「殿はここ最近、お疲れのご様子。父上は殿をこき使いすぎじゃ」
 周りに気づかれる程、疲れた顔をした覚えはなかったが、知らず知らずのうちに疲れが顔にでていたようだ。
「そのことじゃが…」
 考えていたことを話してみようかと思い立ったとき、風花が思い出したように口を開いた。
「殿。岐阜から齋藤新五郎殿が参られました」
「斎藤?城介殿の家臣の?」
「はい。内々に、わらわと殿に頼みごとがあって、岐阜からここまで参ったようにござりまする」
 城介の家臣が一益ではなく風花に話をしたのは、ことが表にでることを避けたためだろう。
「では城に戻ろう」
 この場で話すのは望ましくないと判断し、一旦城に戻ることにした。
 輿が見えない。風花は歩いてここまできたのだろうか。どうやって戻るのかと見ていると、風花はつかつかと馬を繋いである松まで歩き、ひらりと馬に跨った。
「風…いつから馬に乗れるようになった?」
 馬に乗った姿を見て気づいた。先ほどから違和感を感じていたのは風花が珍しく袴を履いていたからだ。
「玉姫殿から手ほどきを受け、日々、励んでおりました」
 驚く一益を尻目に、風花が明るく笑って馬上から見下ろす。手綱を持つその姿は、なかなかどうして様になっていた。
「玉姫?義太夫の女房か」
「はい。薙刀も使えるようになりました。これでいつ敵に攻められても戦えまする」
 誇らしげに言うと、颯爽と馬を走らせていく。
(大したものじゃ)
 少し危なっかしいところもあったが、きちんと馬を御している。玉姫の指導の賜物だろうか。
 城に戻ると、義太夫の姿がなかった。
「義太夫は如何した?」
 出迎えに出た津田小平次に聞くと、
「何やら奥方に叱られたとかで、大和に鏡を返しにいくとかなんとか申され、助九郎を連れて行かれました」
 玉姫の土産にと持ち帰った品が、正倉院から盗み出したものと露見して、返しにいったのだろう。玉姫のお陰で義太夫が日々、真っ当な人間に生まれ変わっているように思える。
 一益は笑って居間に戻り、風花を呼んだ。
「殿は武田入道の末娘、松姫殿のことを存じておいででしょう?」
 松姫は、武田信玄の娘だ。今を遡ること十五年前、当時、織田家は美濃を攻略したばかりで、一益は北伊勢攻略を進めていた。同盟者であった武田との絆を強くするために、織田家の嫡男であった信忠の正室に信玄の娘を迎えたいと申し出たのだ。
 信玄は快諾し、二人が未だ幼いので、信忠が元服したのちに輿入れすることになった。当時七歳だった松姫は、武田家に信忠の正室を預けているという形にして甲斐に留め置かれた。
「それも武田との手切れとともに、破談となっておろう」
「家と家は手切れとなっても、二人の心は未だ固く結びついておるのでござります」
 風花の言う意味がわからない。これから武田攻めというときに何を言っているのだろうか。
「風。武田入道の姫は輿入れすることなく両家は手切れとなっておる。城介殿は松姫に会うたこともないはずじゃ。それが固く結びついているとは如何なることか」
「縁組が決まって以来、互いに肖像画を交換し、文を交わし、城介殿からは折々に贈り物も届けられていたとか。それゆえ城介殿は未だ正室をもたず、松姫殿も縁談の話を全て断っていると聞き及びました」
「では、武田の娘を正室に迎えると、城介殿はそう仰せなのか」
 それでは信長が怒ったとしても不思議はない。
「これから武田を攻め滅ぼそうというときではないか。城介殿は織田家のご当主。かような戯けた話を上様がお許しくださる筈もない。頭を冷やし、武田の姫のことなど忘れていただくように伝えよ」
 今更そんなことを言い出すとは、信忠に織田家の当主としての自覚があるとは思えない。武田と慣れあっていると思われても文句のいいようがないことだ。
(そんな話をするためだけに、わざわざ家臣を遣わしてくるとは…)
 信忠に期待をかけていただけに失望も大きい。今回の武田攻めのために、何年もかけて根気強く武田家家臣を調略し、同盟者の北条家とやりとりを重ねて準備してきた。それらをすべて無にしかねない話だ。
 冷たく言い放たれた風花は、寂し気な表情を浮かべて手元を見ている。
(少し厳しく言い過ぎただろうか)
 八郎の件もあり、風花の心にも思うところがあるのだろう。あるいは信忠の姉として、少しでも力になってやりたいという気持ちがあるのかもしれない。
「風…心根の優しいそなたが、姉として城介殿の願いを叶えてやりたいと思うその気持ちは分からぬでもないが…」
 恐る恐る話しかけると、風花が顔をそむける。
「殿が城介殿で、わらわが松姫殿だとしても、殿は同じことを仰せになるのか」
「いや、それは…」
 痛いところを突かれて返事に詰まる。しかし肖像画や文のやりとりだけで、そこまで思い詰めるものだろうか。
(文のやりとり…)
 思い出した。
 風花がまだ岐阜の信長の元にいたときのことを。
 章姫からの文に添えられていた折鶴。その折鶴を見るたびに、風花はどうしているだろうかと考えていた。一益に縁談の話が出て、風花から折鶴が送られてこなくなったときの何とも言えぬ寂しさ。岐阜で再会したときの風花の涙。
 風花の涙を見て、折鶴に想いを託すだけで精一杯だった風花の健気な気持ちを理解した。あのとき、風花に何と言葉を返したか。
(神仏も呪いも、何も恐れないと、確かそう言ったような)
 はっきりとは覚えていない。それほど、風花が泣いたことで動揺していた。ただ、あの日を境に、自分の中の何かが変わったような気がする。
(城介殿も、あのときのわしと同じ思いだと、風はそう言うておるのか)
 これまで一度も信長に逆らったことがなかった信忠の、初めての反抗。そこにはどうしても譲れない想いがあるのだろう。
 八郎を取り戻したものの、六郎・九郎をはじめとした子供たちを手放してから、風花の元気がない。その上、唯一残った八郎までも、もうすぐ初陣に連れ出さなければならない。
「そなたの想いも、城介殿の想いも、よう分かった。して、わしに何をしろと?」
 風花が顔をあげ、訴えるような目で一益を見る。
「松姫殿は仁科五郎の同母弟とのことでござりまする」
「何、高遠城主、仁科五郎の?」
 仁科五郎盛信は武田信玄の五男。現武田家当主、武田勝頼の異母弟にあたる。これから信忠率いる織田勢が攻め込もうとしている高遠城の城主だ。
「では松姫は高遠城におるのか」
「はい。それゆえ城介殿は、仁科五郎が降るのであれば、本領安堵すると、そう言うておると」
「な、なに。そのようなことを上様がお許しになるとは思えぬが…」
「父上にはわらわからも願い出まする。わらわだけではない。雪も章姫も、皆、父上に取り成すと申しておりました」
 兄弟そろって、信長に対抗するつもりらしい。
(言い出したのは風であろうな)
 風花にはこうした芯の強さがある。
「されど、例え父上が許したとしても、仁科五郎が降伏を潔しとせず、城を枕に戦うと言うたとき、松姫殿の身が案じられる。殿。どうか松姫殿をお救いくだされ」
 風花の真摯な訴えに、一益は目を閉じ、思案する。
 見知った家中の者を救い出すのとは勝手が違う。滝川家の家人たちは誰も、松姫を見たことがない。それを探し当て、戦さの只中から救い出すのは容易なことではない。
(これはまた難題をもちかけられたものよ)
 武田攻めはまだ確定していないが、年明けには動きがあるだろう。武田側でもそのつもりで警戒している。城に忍び込んで連れ出すのは無理だ。となると、やはり、降伏を拒んで開戦となり、寄せ手が攻め込んだときに、隙を見て助け出すしかない。
「義太夫、新介を呼び、協議せねばなるまい」
「では松姫殿を救ってくださると?」
 風花の顔がパッと明るくなった。
「うまくいくとは限らぬが、やるだけやってみようではないか。それゆえ、そなたから上様へとりなしの文を送っておけ。わしからでは申し上げにくい」
「流石は我が殿じゃ。天下一の、素破の頭領じゃ」
 嬉しそうにはしゃぐ風花の顔を見て、一益はホッと胸をなでおろした。
(高遠城攻めは早くても信濃の雪が解けてから。まだ時はある。まずは武田攻めに供えねばなるまい)
 武田攻めという大仕事と合わせ、新たな仕事が舞い込んできた。
 
 信濃の国伊那の月蔵山にある、高遠城。この地の土豪だった高遠氏が築き、その後、武田領となった。武田信玄は高遠城を信濃の要所と捉え、築城の名手であった軍師の山本勘助に命じて大改修を行った。二つの川に挟まれた天然の要害で、忍び込むのは至難の業だ。
「城介様の先鋒が城に討ち入る際にまぎれて忍び込み、連れ出す以外はありますまい」
 佐治新介が言うと、義太夫はうーむと唸る。
「城介様の先鋒とは、あの気狂いの無法者であろう。下手をすれば誤って我らも討たれるのではないか」
 義太夫が恐れる気狂いの無法者とは先年の浅井・朝倉との合戦で討死した森三左衛門の次男の森武蔵守長可のことだ。普段から血走った目をギラつかせているが、戦場ではまさに血に飢えた狼のごとく、狂ったように暴れている。
「我らが松姫を救出に入ることは、家人どもによく言ってきかせて頂くが、松姫救出には木全彦一郎、彦次郎親子に何名かつけて送りだせ」
「なるほど、あの二人であれば抜かりはありますまい。して、先鋒が高遠に向かうのはいつ頃のことで?」
 まだ武田攻めの号令がでていない。未だ時を待っている段階だ。
「時とは?」
「信濃の入り口、木曽谷にいる木曾伊予守。伊予守は勝頼の妹婿であるが、勝頼から岩村城へ救援へ向かよう命じられたときに、金がないといって出兵要請を拒み、城主の秋山虎繁を見殺しにしておる」
 武田の前線になる木曾谷は何度も戦さ場となっている。金がないというのも本当のことだろう。ところが、勝頼は新府に新しく巨大な城を作って居城を移すと決めた。反対する家臣たちもいる中、家臣たちには築城のために重税と賦役が命じられ、木曾義昌も相当、不満を漏らしているようだ。
 それというのも武田領は元々貧しい国で甲斐・信濃を合わせても六十万石しかない。信玄の代から他国よりも税が重い上、度重なる戦さ、さらに築城で税を課したために民百姓は生活に困窮し、勝頼を恨んでいると聞く。
 一方、織田領は美濃一国だけでも六十万石。伊勢も六十万石。近江に至っては北・南を合わせると八十万石。その上、堺、熱田、桑名といった港湾都市を抑えており、軍費には事欠かない。
「領国を富ませるのも、戦に勝つのも全ては金じゃ。したが甲斐の金山はすでに枯渇している。武田にはもはや、我らと互角に戦うだけの金はない」
 武田の疲弊を知った一益は、この八月に信忠に進言し、木曾義昌へ密使を送っている。
「あと一押しで、武田の重臣、木曾伊予守がこちらに寝返る。義太夫、助九郎と共に木曾谷へ行き、一押しして参れ」
「あと一押し、でござりまするか。フム。では木曽谷へ向かい、グッと一押しして参りましょう」
 義太夫が二つ返事で引き受ける。
「新介、その方は木全親子と供に高遠城の縄張り図を手に入れ、攻め入ったときの算段を致せ」
「委細承知」
 雪が解けたころには奥美濃・信濃あたりが騒がしくなってくる。手はずを整えて、来年にはいよいよ武田を攻め滅ぼす大戦さになるだろう。
 
 明けて天つ正しき十の年。新春を迎えた安土では毎年恒例の天下の奇祭、左義長が行われた。今年も忠三郎他、南近江の武将たちが集められて爆竹を鳴らして馬を走らせ、信長も町の者たちに交じって踊り、祭りを盛り上げた。
 賑やかな正月を終え、謹慎を解かれた織田信忠、一益、信忠の目付役の河尻秀隆の三名が安土城の信長の前に伺候し、甲州攻めの軍議を開いていた。
「左近。木曾の首尾は如何相成っておる」
 城内はことごとく金箔が張られ、襖には狩野永徳の筆により鮮やかな写し絵が描かれている。
「我が手の者を遣わし、最後通牒を突き付けておりまする。上様のご威光により我が方に寝返るのも時間の問題かと」
「関東の動きはどうじゃ。北条は?」
「武田を打ち滅ぼしたとしても、北条に武田領を奪われては、この先の東国支配が面倒になりまする。北条には我らの動きを知らせず兵を進め、武田を倒したのちは速やかに上野まで兵を進めることが肝要かと」
 信長は頷き、
「徳川の手の者も調略を仕掛け、武田にはすでに内応を約束したものがおるようじゃ」
 武田家の重臣の一人、穴山梅雪が駿河口から徳川勢を手引きする算段になっている。
「武田の重臣が二人までも寝返ったとなれば、兵の士気も下がりましょう。大軍をもって敵の機先を制すれば、更に降ってくるものもおる筈にござりまする」
「よかろう。城介、松姫の件は許したが、武田攻めに手心加えることは許さぬぞ」
 信忠は堅い表情で頷き、もの言いたげにちらりと一益の顔を見た。信長はそれに気づいたか、気づいていないのか、二人を一瞥したあと
「その後の国割りであるが、甲斐一国を与四郎、その方に任せる」
 河尻与四郎秀隆は古くからの信長直参家臣で、黒母衣衆の筆頭から信忠の重臣として働いていた。信長の信頼が厚いとはいえ、甲斐一国丸ごと与えるとは大出世だ。
「有難き幸せにて!」
 河尻秀隆が驚きと喜びで震えて両手をつく。信長は満足そうにうなずき、
「東国支配のことであるが…」
 甲斐の先、関東以北のことだ。
「滝川左近に上野を与える。左近を我が名代と致すゆえ、上野まで兵を進め、関東・東北の諸大名を従わせよ」
 上野は甲斐とは比較にならない位の広大な領地だ。一益が咄嗟に返事に詰まっていると、信長は扇子で脇息を叩き、
「武田が動くのを待ち、我らも兵をあげる。皆、心して供えよ」
 信忠と河尻秀隆がハハッと平伏する。致し方なく、一益も平伏した。
 
(東国の仕置きとは…)
 一益は複雑な面持ちで屋敷に戻り、しばし思案していた。武田攻めがいつまで続くのかはまだ見えていない。その先に兵を進め、上野へ入ったとして、関東以北の諸大名が素直に一益の求めに応じて信長に恭順してくれば、さして問題はない。しかし、兵を挙げてくれば、まだまだ戦さが続くことになる。
(どうしたものか)
 上野へ向かえば、数年は戻ってくることはできなくなる。風花は何というだろうか。伊勢を領して以来、一度も伊勢で腰を落ち着けたことがない。長島に戻って風花に話した方がいいのかもしれない。
(東国に向かうのであれば、しばし章にも会えなくなるな)
 老臣の谷崎忠右衛門を傍につけているとはいえ、章姫はずっと安土の屋敷に置いたままだ。久しぶりに章姫の顔を見て考えようかと、母屋へ足を向けた。
 廊下の先の章姫の部屋の前を見ると、意外な者の姿が見えた。 神妙な顔をして控えているのは蒲生家の町野長門守だ。
「鶴が参っておるのか」
 声をかけると、町野長門守は、あっと驚き、
「将監様。お戻りとは…」
 青ざめて床にぺたりと平伏する。どうも不審な態度だと訝しく思って障子を開けた。
「章、おるか」
 部屋の中では盃を傾ける忠三郎と、酌をする章姫がおり、どちらもほどほどに酔いが回っているのがわかる。
「叔父上」
「おぉ、義兄上。お戻りで」
 忠三郎が悪びれる様子もなく、機嫌よく一益を見る。その様子を見るに、今日が特別なわけでもなく、こうして頻繁に章姫の部屋に入り浸っているようだ。
「章、少し外せ」
 章姫と侍女を部屋から出して、襖を閉めさせる。忠三郎はおや、という顔をして、仕方がなく、手酌で酒を啜っている。一益はその手を掴み、盃を取り上げた。
 忠三郎は少し驚いて、
「義兄上、何を…」
「鶴、よい加減、酒を控えてはどうか」
「何をそのように怒っておられる?」
 常と変わらぬ笑顔で一益を見る。
「笑うておる場合ではない。章は我が姪なれど上様の子。かようなことをしておれば、妙な噂がたち、上様からお咎めをうけると思わぬか」
 苦言を呈する一益に、忠三郎は明るく笑う。
「これはとんだ取り越し苦労にて。章姫殿は吹雪の妹。我が義妹でござりまする。それがしは日夜寂しい思いをしている章姫殿をお慰めしようと…」
「詭弁を申すな。そなたの態度を見ておれば、章を憎からず思うておること位はわしにも分かる。もう章には近づくな。聞き分けぬのであれば、我が屋敷への出入りを禁ずる」
 忠三郎は、信長の寵愛を受け、今後の織田家の中核を担う近臣として認められている。それは忠三郎自身もよく分かっているだろう。周りの者たちが皆、腫れ物を扱うようにしているのをいいことに、以前にもまして奔放な態度が目立ってきている。
 そして、誰も止めることができないのを知っていて、章姫の部屋へ我が物顔で出入りしているようだ。
「吹雪殿とは如何相成った?最後に吹雪殿の顔を見たのは何時じゃ?」
 何か月も前だろう。
 忠三郎は聞いているのか、いないのか、黙って目を閉じていたが、ふと思い出したように顔をあげて、
「義兄上。東国支配を一任されたと聞き及びました。武田攻めののちは上野一国を含む六十万石を与えると、上様はそう仰せでござりました。まことにおめでとうござりまする」
 話をはぐらかせて、恭しく頭を下げる。
「六十万石…上様はそのように仰せか」
 上野は兎も角、六十万石の話は初耳だ。信長の近くにいる忠三郎は、他の側近たち同様、諸国に散らばる重臣たちよりも余程、織田家の内情に詳しい。
「六十万石と言えば、織田家筆頭家老の柴田殿に続く大身。滝川家も安泰でござりまする。言うなればこれは祝宴にて」
 手放しでは喜べない話だが、忠三郎は我が事のように嬉しそうだ。
(快幹顔負けということか)
 ここ数年の忠三郎を見ていると、祖父の快幹に似てきたように思える。周りが思っている以上にしたたかで、野心家だ。
「義兄上には野心も野望もない。それは共にいてようわかっておりまする。織田家中では盤石の地位があり、それほどの才に恵まれているにも関わらず、高い望みをお持ちではない。此度も大身になるというに、少しも嬉しそうではない。何故に、かように力を出し惜しみされておるのか、分かりませぬ」
「鶴。人には天分というものがある。わしはそれを心得ているだけのこと」
「なんとも不甲斐なき仰せ。されど、それがしは違いまする。天下に我が名を轟かせ、未来永劫、我が家を繁栄させることこそ、我が願い。武田を降せば、義兄上は関東以北において広大な領地を手に入れ、その権勢は織田家筆頭家老、柴田殿を凌ぐ勢いとなりましょう。その時こそ、我ら力を合わせ、織田家中において実権を握るときではありませぬか」
 そうだろう。信長や織田家の重臣たちが世を去った後、忠三郎が本気を出せば、やがては三九郎も、信忠でさえも、抑えつけて権勢を誇ることも可能になるだろう。思い描いているのは鎌倉幕府でいうなれば、源氏と北条氏の関係だろうか。
「やめておけ。そなたには汚い手を使うことはできない。虚勢を張るな。如何に上様の真似ばかりしていようとも、所詮は真似事。それは本来のそなたではない」
 名家の嫡男として育った忠三郎は、幼い頃から家を守れと教えられてきている。家を守り、土地を守れと。それが自分の存在意義だと。忠三郎のその想いに応えて、一益は長年、忠三郎によき君主たれと物事を教えてきた。
(その結果が、上様の真似事と、女と酒に逃げる生活か)
 ことここにきて、教えてきたことが正しかったのかと自問自答する。忠三郎は信長の真似をするには、あまりに感性豊かで、それ故に人の痛みに敏感過ぎる。信忠を牛耳って権力を手にしたとしても、憂いが増すだけではないだろうか。
「本来のそれがしとは?皆が言うように、それがしの武芸は所詮、公家の手慰みと、そう仰せか」
「そうではない。したが、そなたはそなたではないか。つまらぬ野心をもてば身を亡ぼすことになりかねん。 人は火をふところにかき込んで、その着物が焼けないだろうか。また人が、熱い火を踏んで、その足が焼けないだろうか。わきまえのないことを捨てて、生きよ。悟りのある道を、まっすぐ歩め」
 功名心や野心は父祖から受け継いだものなのかもしれない。蒲生家はそうやって何百年も家を残して来た。しかし、戦国はもう終わりを迎えようとしている。
 忠三郎は納得のいかない顔をする。
(今はまだ、分からぬであろう)
 悟りを得るには若すぎる。
 一益は仕方なく、本心を打ち明けることにした。
「鶴、わしはのう。この武田攻めを終えた後、三九郎に家督を譲って隠居するつもりなのじゃ」
 ずっと考えてきたことだ。最初に風花に話そうかと思っていたが、機会を得られず、話すことができなかった。
 忠三郎は酔いが醒めように、真顔になって一益を見た。
「隠居とは…。正気の沙汰とは思えませぬ。義兄上は一体、如何なされたのか。義兄上よりも年上の柴田殿でさえ、未だ上杉と対峙されているというに。三九郎では関東の抑えにはなりませぬ」
「三九郎でなくとも、織田家にはいくらでも人はおる。拝領する上野他六十万石は返上し、後のことは若い者どもに任せたい」
「領地を返上?納得いかぬ!そのような戯けたこと、許せぬ!」
 忠三郎が顔色を変えて立ち上がった。
「なんと義兄上らしからぬことを仰せか。それがしは認めませぬ」
「鶴。そなたの父も、早、そなたに家督を譲って隠居しようとしておると聞く。わしはそなたの父よりも年長である」
「義兄上は織田家の重臣。我が父とは家格が違う。それをいとも容易く隠居などと…。あり得ぬ。断じてあり得ぬ」
 酔いも手伝ってか、忠三郎は珍しく声を荒げると、腹立ちまぎれに音を立てて部屋を出て行った。あの様子では信長に隠居の話を伝えるつもりだろう。
(諭すつもりが、誤算であったな)
 温厚な忠三郎が、あそこまで怒るとは思っていなかった。織田家の一武将として終わるつもりはないようだ。若い時とはあのようなものかもしれない。
「忠三郎殿は何をあのように怒っておいでで?」
 忠三郎を見送って来た章姫が不思議そうに訊ねる。
「案ずるな。寝て起きれば酔いとともに怒りも冷めよう」
「然様で」
 章姫が艶やかに笑う。
 その章姫の顔を見て、ふと、妙だな、と思った。
 織田家との縁であれば、正室の吹雪がいる。忠三郎があえて章姫に執着している理由がわからない。賢い忠三郎が、わざわざ信長の機嫌を損ねるようなことをするにはそれなりの理由があると思ったが。
「叔父上、次の戦さには爺が御供したいと申しておりまする」
「忠右衛門が?」
 谷崎忠右衛門。尾張以来の老臣だが、章姫のそばに付けて以来、戦場に連れ出していない。
「滝川の方々が関東に赴かれるのであれば、早々お戻りではありますまい。忠右衛門も連れて行ってくださりませ」
「章はそれでよいのか」
「わらわは暘谷庵に行きます。安土にいても何もよいことはありませぬゆえ」
 暘谷庵は京の外れに一益が作った庵で、二人の子、六郎と九郎を住まわせている。
 忠三郎から逃れるためかとも思われたが、そこは敢えて訊ねなかった。
「上様にはわしから話しておこう。あちらには我が家の山村一郎太、滝川藤九郎もおる。都の屋敷も近いゆえ、不足があれば申し伝えよ」
 章姫が嬉しそうに頷く。一人で安土の屋敷にいるよりは、子供たちと共に過ごしていたいようだ。子供たちのために作った屋敷だが、こんなことで役に立つとは思ってもみなかった。
(にしても鶴の奴、困ったものだ)
 この先が思いやられる。留守中、何事もなければよいが。
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