滝川家の人びと

卯花月影

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11 君に引く弓

11-5 妻の思い

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 翌日、一益は河内から義太夫とともに近江に入り、日野中野城へ来た。待っていたのは忠三郎と細野藤敦だ。
「義兄上、無事のお戻り何よりで」
 忠三郎は何食わぬ顔で一益を広間へ通した。傍に控える細野藤敦を見て、義太夫も驚きを隠せない。
「鶴…これは、如何なることじゃ」
「細野殿は我が家の客将。丁重におもてなしをしておりますゆえ、どうか、ご安心を」
 一益を見た細野藤敦が、幾分緊張した面持ちで頭を下げる。
 つい先日、この日野中野城で細野藤敦の密書を見たばかりだ。明らかに二心のあるこの男を城に入れ、あろうことか、客将としてもてなしているとは。
「上様に咎め立てされたら何とする?」
「その時は…まことに旗揚げいたしましょう。義兄上もお力添えくだされ」
 忠三郎は明るく笑うが、謀反の嫌疑をかけられ、蟄居させられている身としては軽々と笑うことはできない。
「ご案じめさるな。三十郎殿は長野家の実権を握ることが目的。細野殿の命には何の興味もないはずにて。それよりも細野殿が、義兄上にお話があると申されるので、同席願いました」
 今回の騒ぎの元をたどれば、すべてこの細野藤敦にある。その細野藤敦を簡単に許して城に迎えたと言われては、一益としても面白からぬものがあるのだが。
「滝川殿。此度の一件、まことに申し訳なく存じあげる。八郎殿は賢き童。我が手元に置いて育てたいと願うておりましたが、城を追われてそれも叶わぬ身。それ故に八郎殿をお返しいたしまする」
「当たり前じゃ!全く、どの面さげて我が殿に目通り願うておるのか!」
 義太夫が怒鳴ると、忠三郎が笑って、まぁまぁと義太夫をなだめる。
「そう怒るな。その詫びにと、細野殿から話がある」
「話とは?」
「伊賀のことでござります」
「伊賀…」
 一年前、伊賀衆は甲賀衆の協力のもとに、伊賀に攻め入って来た北畠信雄を打ち負かし、追い返した。それ以来、度々小競り合いを続けていると聞く。
「伊賀・甲賀の素破どもは手を組み、織田家に対抗するために日々力を蓄えておりまする。北畠の小童などは取るに足らぬ相手。素破の敵ではない。したが、織田本隊が伊賀に攻め入って来た時に脅威となるのは同じ素破の滝川殿」
 大坂本願寺の兵糧の貯蓄もそろそろ尽きてきているという話がある。それを受けて、早くも和睦交渉の使者が行き来しているらしいが、本願寺と和睦が整った暁には、信長は満を持して伊賀攻めを決行すると思われた。
「それゆえ、滝川殿に謀反の嫌疑をかけ、旗揚げを余儀なくさせて味方に引き入れようと甲賀衆が動き、あらぬ風聞を流して歩いたのでござります」
 そんな風聞が流れている中で、運悪く、六郎の山犬が三十郎の使者を襲ってしまった。甲賀衆にとっては好機だっただろう。
「甲賀衆はいつから動いているのか、わかるか」
「恐らくは、有岡城が落ちたころからかと」
 思い当たる節がある。
(あの喧嘩の時…)
 妙だと思ったことが幾つもある。例えば、森勝蔵が忠三郎を殴ろうとしたときだ。
「確かに!あの狂人の拳を、ほけぇとしておる鶴が避けるなど、常であればあり得ぬことにて」
 義太夫が納得して大きく頷くと、忠三郎が苦笑して、
「待て、待て。それはどういう…」
「あの時、何故に姿を消した?」
「飲んだ水が、妙な味がした気がして…。吐き出しましたが、どうにも気分が悪く…義太夫と共に川へ行き…」
 忠三郎も気づいたらしく、ハッとして顔をあげる。
「もしや、あの水は…」
「然様。恐らくはそなたの父が飲んだ薬、篠山理兵衛のあやかしの薬が入っていたのであろう」
 そして水を飲んだものだけが幻を見て、刀を抜いた。森家の兵と滝川家の兵に諍いを起こさせるために、甲賀衆が水に仕込んだのだろう。
(刀を抜いたものは、おぼつかない足取りで刀を振り回し、幻を斬っていた。それゆえ死者がでなかった。ではあの煙は…)
「鳥の子を投げたのは?義太夫か?」
「鳥の子?はて、鳥の子を投げた者がおったので?」
 やはり違う。そもそも、鳥の子の煙とは少し違う気がした。ではあれば何で、誰が何を意図して投げたものなのか。
「わからぬな。理兵衛のやつ、さすが手強い」
 気づかぬうちに二重三重の罠が仕掛けられていた。
(甲賀者の敵は甲賀者か)
 このまま大人しく引き下がるとも思えない。織田家が大軍をもって伊賀を制圧するまで、何度でも罠を仕掛けてくるだろう。
「ともあれ、こうして戦さにならずに手打ちとなったことも何かの縁。まずは酒でも」
 忠三郎が手を打って酒宴の準備をさせる。
「なんやかや言うて、ようは酒が飲みたいだけではないか」
 そうは言っても義太夫も嬉しそうだ。
「義太夫、明日には伊勢に戻るが、そなたは供をせずともよい。このまま花城山へ行き、玉姫殿を連れて参れ」
「と、殿!それはまことで!嬉しや~。盆と正月が一度に舞い降りて来たわ~」
 義太夫が手放しで喜ぶと、忠三郎が笑って
「よかったのう。ようやく嫁取か。では前祝いに、たんと飲んでもらわねばのう」
「おう。今宵は飲むぞ。どんどん持って参れ!」
 義太夫の威勢のいい声が広間の外まで響き渡り、外に控える町野長門守が笑いを堪えて返事をする声が聞こえてきた。
 
 翌朝、忠三郎は喉の渇きを覚えて目覚めた。なぜか居間にいる。
(そうか、あの後、義兄上と細野殿が早々に引き上げ、飲みなおすために義太夫と二人で居間に来て…)
 その後のことを思い出せない。
「長門、水を」
 襖の外にいるであろう町野長門守に声をかけると、短い返事が返って来た。
(おや…)
 腰紐がない。
(何処かへいくようなものでもなし…)
 人を呼んで持ってこさせようかと思っていると、長門守が水を持ってきた。
「腰紐を知らぬか?」
 水をごくりと飲んで尋ねると、町野長門守が怪訝な顔をする。
「覚えておられぬので?若殿が釣りに使って…」
「釣り?」
 なんのことかと笑うと、
「池で釣りをすると仰せになり、義太夫殿とお二人で…」
「なに?」
 嫌な予感がして、腰紐も結ばずに池に飛んでいくと、池の端で一益と助太郎が話をしている。
(義兄上でよかった…これが父上であれば大目玉だ)
 賢秀は兎角、礼儀作法に厳しい。こんな格好で前に出れば、厳しく叱られる。
 一益は忠三郎を見ても動じず、
「鶴…腰紐くらい締めたらどうだ」
「いや、それが…」
 池の底に腰紐が沈んでいるのが見えた。
「義太夫は?」
「夜明けには助九郎を連れ、敦賀へ向かって出立しておる」
 玉姫を迎えにいったようだ。
 池の中がどうにも気になり、一歩一歩、そっと近づいていくと、恐れていた通り、鯉が一匹もいない。
「長門…鯉はどこへ行った?」
「昨夜、若殿が義太夫殿と供に召し上がるというので、膳奉行がさばいて…。無論、我らはお止めしましたが、若殿がかまわんと仰せになり…」
「やはりそうか」
 もしやとは思ったが吹雪が可愛がっていた鯉を食べたとは。吹雪や父、賢秀になんと言い訳しようか。
「早う腰紐を締めろ。北の方をお呼びしておる」
「雪を?それはまた…」
 長門守が差し出す腰紐を受け取り結んでいると、侍女を連れて吹雪が姿を現した。
「義太夫殿は早、城を出たというに、若殿は今頃お目覚めとは…」
 忠三郎は湯帷子のままで小袖も着ていない。寝起きと気づいたようだ。
 吹雪にやんわりと刺すように言われ、忠三郎が苦笑する。
「朝から手厳しいのう。義兄上の前じゃ、もう少し加減してくれ」
 呆れた様子の吹雪は何気なく池を見て、はたと気づいた。
「鯉が…おらぬ。若殿、輿入れの際に父上から賜った鯉はいずこへ…」
「な、何。おぉ、まことじゃ、鯉がおらぬな。長門、鯉は何処へ参った?」
 忠三郎が返事に困って長門守を振り返る。話を振られた長門守が焦って
「いや…それは…知らぬ間に…はて、どこへ行ったのか…はてさて不可思議なこともあるもので」
 長門守の芝居があからさまで、さすがの吹雪も気づいたようだ。
「長門守殿!」
「お許しくだされ!昨晩、若殿がお召し上がりになりました」
 長門守が白状すると、忠三郎が青くなる。
「長門、何もまことのことを言わずとも…」
 それを聞いた吹雪がわっと泣き出した。
「若殿、なんと心無いことをなされるのか…わらわが朝晩、愛でているのを承知で…あまりに酷い仕打ち…」
 忠三郎は困り果てて長門守と助太郎を振り返る。
「その方ら、川まで行けば、ドジョウか何かおろう。なんでもよい。取って参れ」
「は?ドジョウ?」
 長門守が目を丸くするのと、吹雪が泣きながら怒る。
「ドジョウが見たくて怒っているのではありませぬ」
 忠三郎は困り果てて、なんとか吹雪をなだめようとする。
「鯉であれば、そのうち、誰かに持ってこさせようほどに、そう泣くな」
 吹雪はそれには答えず、しばらく泣いていたが、やがて落ち着きを取り戻した。
「左近殿、お呼びとか」
 吹雪の口元が不自然にゆがみ、平静を装っているのが分かる。一益はそれと気づかぬように鯉のいない池を見て、
「吹雪殿も案じておる筈。鶴、そなたは事の顛末を吹雪殿に話してはおらぬじゃろう?」
 忠三郎は吹雪には何も話さない。吹雪の情報はすべて、侍女たちが城内で見聞きした話と、章姫や風花から来た便りだけだ。
「案ずるな。末の子らは柴田殿と丹羽殿の元へいく。件の二人は出家。八郎殿は今、この城におる。あと数日で義兄上の閉門も解けよう」
「それは…まことに祝着」
 吹雪がほっとした表情を見せると、一益は気遣うように
「何もご案じ召さるな。子らは皆、無事でござる」
 吹雪が驚いて顔をあげる。
「もしや左近殿は存じておられたのか…わらわが父上に…」
 吹雪の目から大粒の涙がこぼれた。
「わらわはただ、風のためにならぬと思うて…」
「委細はすべて、これなる我が家の家人、助太郎から聞き及んでおりまする。風は何も知らず、此度も吹雪殿へと土産を持たされ、八郎も優しき伯母上を慕っておる。どうかこのまま、優しき姉、優しき伯母として接してやってくだされ」
 一益が穏やかにそう言うと、吹雪が口元を抑えて俯き、肩を震わせる。忠三郎は何のことか分からず、二人を見て、長門守を振り返るが、長門守も首を傾げる。
「雪、如何いたした?」
 忠三郎が恐る恐るそう訊ねると、吹雪は下を向いたまま、踵を返して母屋の方へ去って行ってしまった。
「助太郎、その方、義兄上に何を話した?」
 傍に控える助太郎を振り返ると、助太郎が一益を見上げる。
「鶴、そなたは常より城にいながら、何を見ていた」
「何を…とは…」
 風花は日ごろから、子供たちとの取り留めのない日常を綴って吹雪に知らせていた。それを読んでいた吹雪は、風花と子供たちの結びつきの強さに違和感を感じて、信長に知らせた。
 信長は、風花が必要以上に子供たちに依存しているのを感じ取り、子供たちを風花から引き離したほうがいいと判断したのだろう。
「それでかようなことに…。これは、とんだ鬼嫁。虫も殺さぬ顔をして…」
 思いもよらぬ話に忠三郎が失笑する。
「吹雪殿もよもや、己の書いた文でここまで事が大きゅうなるとは思うてはおられなんだ筈。元をただせば、そなたにも責めがあることではないか」
「それがしに?それは…何故に?」
 忠三郎が目を丸くする。吹雪が忠三郎や風花をよく見ているのとは対照的に、忠三郎は吹雪に全く興味がないようだ。
「若殿、将監様の仰せの通りかと…。これまでの若殿のなさりようは、あまりに御台様が御気の毒じゃと皆々申しておりまする」
「欲しいというたものは何でも買い与えておる。それが、たかだか鯉を食ったことでそこまで大袈裟に言われようとは…」
 どうも分かっていない。一益は致し方なく口を開く。
「そなた、都や安土の南蛮寺に風と子ら、章まで連れて行ったが、吹雪殿を連れていったことはあるまい」
「それは…吹雪が可笑しと思うような場所でもなく…」
「そうやって常より吹雪殿に心を留めることがなければ、吹雪殿に何かあっても気づくことはあるまい」
 忠三郎は思い当たることがあるのかないのか、やれやれと頷き、
 
 花の色は移りにけりな 徒らに
             わが身世に経る ながめせしまに
             
 平安の歌人、小野小町の歌だ。世の様々なことに気をとられている間に、花の色が色あせるように自分の美しさも空しく色あせてしまったと詠う。
「此度のことは我が家の不始末。義兄上にも風花殿にもまことに面目ない次第でござります。どうかお許しを」
 まるで分かっていないようだ。二人の間の溝を深くするつもりはなかったのだが。
「八郎を連れて伊勢へ戻る。そなたは早う池に鯉を入れ、吹雪殿に詫びをいれて参れ」
「はい。風花殿にもよしなに」
 笑ってそう言う。懸念されることは多々残されるが、これ以上、深入りしても同じだろう。
(早う八郎を連れていかねば)
 子供たちが去った城に一人起こされ、風花は寂しい思いをしているだろう。蟄居させられている間は、風花や家中に目を向けるときかもしれない。
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