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8 一期一会
8-4 迂直《うちょく》の計
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北伊勢四日市にある滝川家の菩提寺、実蓮寺。
甲賀から連れてきた母、滝御前の隠居所として寺を改装し、そこに住まわせている。
一益が甲賀を出て以来、十八年ぶりに滝御前と再会したのは昨年。滝御前は孫である八郎、葉月に会わせると手を取って喜んだ。しかし一番喜んだのは、偶然その場に居合わせた忠三郎を見た時だ。
「なんとも高貴な若武者。まるで絵巻から飛び出したような雅な姿。さすが我が孫。どこぞの公達かと思うたわ」
と皺だらけの手で忠三郎の手を取り、その顔をまじまじと見た。
滝御前の孫にあたる三九郎、義太夫、佐治新介は互いに顔を見合わせた。
「目も耳も悪うなっただけではなく、お頭も悪うなられたのう」
新介が目を点にしてそう言うと、義太夫が苦笑する。
「一人だけ、やけに派手な装いをしておるのが、分からぬかのう…。だいたい、あの山姥のような婆様の孫が鶴のようになる筈がないと、誰もが思う筈じゃが」
「待て待て、義太夫。我らはその山姥の真の孫ではないか」
「おぉ、忘れておったわ。そうじゃ、そうじゃ。わしも孫であったな。いや、わしは別じゃ。わしはトンビが鷹を生んだ典型にて。見よ、この誰もが振り向く男振りを」
「誰彼構わず、女子とあれば声をかけて歩けば、誰でも奇異に思うて振り向くわ」
後ろでひそひそと話している。三九郎は言いたい放題の二人を横目で見ながら、一益の顔色を窺った。
滝御前の思わぬ勘違いに一益が困惑しているのがわかる。しかし忠三郎は気に留める様子もなく、滝御前に穏やかに微笑みかける。
「御婆様。あまり無理なされぬよう、そろそろお休みくだされ」
と労わったので滝御前は感極まり涙ぐんだ。
「なんと心根の優しい子じゃ。久助の子とは思えぬ」
一益の子だと思われている。後ろに控える三人はうつむいて笑いを堪える。
「似ても似つかぬ風貌にて…何故の思い違い…。殿から鶴が生まれるなど、閻魔大王から菩薩が生まれるようなものじゃ」
「いやいや年寄りの儚い夢を壊すまい。鶴殿もあのように合わせてくれておる」
すっかり忠三郎を気に入った滝御前は、部屋に忠三郎を連れて行ってしまった。そのままよもやま話に花が咲き、忠三郎が解放されたのは夜も遅くなってからだ。
二月に入り、紀州攻めの号令が下った。兵を集め、長島を出立しようとしていたとき、滝御前がいよいよ危ないと知らせが届いた。一益は風花に頼んで六郎、九郎、葉月を実蓮寺に向かわせ、自身は兵を率いて紀州に着陣している。
本願寺攻めのたびに紀州から邪魔が入る。兵糧攻めしようにも、武器弾薬をはじめとして、大量の兵糧が運ばれているので手の打ちようがない。
この紀州という国は歴史が古く、国の興りは律令制施行以前からという。平安期に入ってからは独立自治を謳う伊賀・甲賀と同じように複数の傭兵軍団により成り立っており、その中でも一向衆の影響下にある一部の雑賀衆が遊撃戦を展開してくる。そこで一向衆の門徒以外の雑賀衆に調略をしかけ、寝返りを約束させたが、まだ一部手強い勢力が残っていた。
雑賀の孫一。
紀州、雑賀でも鉄砲の名手と言われた鈴木孫一。狙った的は外さないという評判のこの男は、本願寺の下間頼廉と並んで「石山本願寺、左右の将」ともいわれている。敵に回すと面倒な相手だ。
雑賀に滝川助九郎、木全彦一郎を送り込み、何度か鈴木孫一に接触して調略を試みたが、少し時間をかけなければ難しい。それを伝えると信長が痺れを切らして兵を挙げるといいだした。
総大将は織田家の家督を継いだ秋田城介こと織田信忠。総勢十万の大軍勢は泉州信達まで進んだ。そこで軍議が開かれ、二手に分かれて紀州を目指すことになる。
「城介殿率いる本隊は海岸沿いを進んで途中にある城を落としつつ雑賀を目指し、別動隊は根来・雑賀衆、摂津衆ら先鋒に山の手を案内させて雑賀城まで攻め入りましょう」
と提案すると、待っていたかのように忠三郎が名乗りを上げる。
「では我が蒲生勢は先に雑賀城へ向かいとうござりまする」
馬廻から出世し、一軍を率いるようになった堀久太郎が忠三郎を睨み、
「お待ちを。我らが別動隊とともに雑賀へ参りとうござります」
この二人は総大将の信忠に負けず劣らず華やかな装いで、ひと際人目を引いている。功を焦る若い二人に、重臣たちは一様に顔を見合わせ、一益を見る。
「左近、如何すべきか、存念を述べよ」
信忠がそう言うと、一益は血気盛んな二人を見ながら、
「では別動隊には堀殿を送り、我らはこの先にある中野城を目指すことといたしましょう」
と言ったので、久太郎は喜び勇んで力強い返事を返し、忠三郎は大きく落胆して肩を落とした。
「すぐに出立いたそう。皆々、心してかかれ」
信忠が床几から立ち上がると、一同、立ち上がって短く返事をする。
一益は信忠本隊とともに峠を越えて海沿いを進んだ。
「殿。何故に堀殿は別動隊に加わることを許され、鶴にはお許しにならなかったので?」
義太夫が尋ねると、新介が
「それは、あの子倅に行かせれば、鉄砲の的になるのが火を見るよりも明らかだからじゃ」
と笑っていると、忠三郎が馬を寄せてきたので二人が慌てて口を閉じる。
「義兄上」
常と変わらぬ笑顔ではあるが、何か言いたいことがあって来たのは目を見ればわかる。
「久太郎は別動隊に加わり、我らは何故に本隊に留められたのでありましょうや」
義太夫と同じことを言った。余程、悔しかったのだろう。一益は笑って、
「そなたは先に雑賀に行きたいと言うた。久太郎は別動隊に加わりたいと言うた。わしは各々の望み通りにさせたまで」
「はて…?本隊が先に雑賀城につくと、そう仰せで?」
忠三郎が不思議そうに首を傾げる。
「鶴、迂直の計を存じておるか」
「はい。孫子でござりましょう」
軍争の難きは、迂を以て直と為し、患を以て利と為す。つまり戦闘の難しいのは、弱点は長所に、遠回りは近道になることだ。これを迂直の計という。
「故に其の途を迂にしてこれを誘うに利を以てし、人に後れて発して人に先んじて至る」
そこまで言うと、ようやく気付いた忠三郎が一益を見る。
「義兄上、もしやそれは…、では別動隊は最初から…」
そう。別動隊は最初から囮だ。別動隊に編成した根来・雑賀衆及び佐久間信盛、羽柴秀吉、荒木村重、別所長治、堀久太郎を囮にして鈴木孫一率いる鉄砲隊を引き付け、その隙に信忠率いる織田本隊で雑賀の出城を降し、雑賀城まで攻め上る計略だ。無論、自分たちが囮にされていることを、別動隊の諸将は気づいてはいないだろう。
「気づいたら、腹をたてて怒るのでは?」
「されどそのときは敵の術中であろう」
そこまで考えて囮にしたのか。全ては信忠を危険に晒したくない思いからきているのだろう。忠三郎は舌を巻いて自陣に戻っていった。
一方、別動隊は、根来・雑賀衆の道案内で峠を越え、雑賀城まであと一歩のところまで突き進んでいた。
「是非とも我らに先陣を仰せつけくだされ」
功を焦った堀久太郎が、別動隊を率いる大将佐久間信盛の前に進み出る。
目の前の小さな川を渡れば、目指す雑賀城は目と鼻の先にある。丁度満潮で川の水が少し増水してはいるが、馬に慣れたものであれば騎乗したまま渡れる程度であり、攻め上ることはそう難しくないと思われた。
「では堀殿に先陣をお任せし、我らはそのあとに続くとしよう」
佐久間信盛の許しがでたところで、久太郎が軍勢を率いて川を渡ろうとする。
この程度の川であれば、難なく渡れる筈だった。それがどう御しても馬が途中で言うことをきかない。
(おかしい…これは一体…)
日に照らされて川底がよく見えない。周りを見ると、騎馬兵たちがみな、立ち往生している。
「久太郎様。川になにか仕掛けがござります」
誰かの声がして、よくよく見ると、川底に桶やら瓶やら逆茂木やらがうっすらと見えた。
川から目を離して辺りを見れば堀勢だけではない。他の諸将も兵をすでに進めてしまっており、川で足止めされている。
「しまった!罠じゃ!みな、退け!」
気づいて引き返そうとしたとき、対岸に八咫烏の旗印が閃いて見えた。
(あれは雑賀の孫一…)
熊野の神官一族である鈴木孫一は、熊野神社の使いといわれている八咫烏を旗印にしている。一発の銃声が山間にとどろき、それを合図におびただしい数の銃口がこちらに向けられ、一斉に火を噴いた。
兵がばたばたと倒れ、残っているものも大混乱に陥る。
「早う引き上げよ!このまま留まれば全滅じゃ!」
久太郎は慌てて兵を引こうとするが、そこを無数の弓が放たれ、兵が倒れていく。
堀勢をはじめとする別動隊は鈴木孫一率いる鉄砲隊の的となり、おびただしい犠牲を払って退却した。
別動隊敗走の知らせはその日のうちに信忠の本隊に届けられる。信忠率いる本隊は一日で出城を落とし、翌日、雑賀城に向かって突き進んだ。
そこへ都にいる信長から知らせが入る。
「毛利が動き出したようじゃ。面目を保ち、急ぎ退却せよとの父上の仰せであるが…面目を保ちとは如何なことか」
織田勢が雑賀衆に勝った形にして兵を退けと言っているようだ。
「秋田城介ともあろうお方が、雑賀衆如きを相手に手古摺ったというは天下に面目がたちませぬ。幸いにも雑賀は我が大軍を前に小城ひとつ残すのみ。使者を出し、雑賀衆に詫びを入れさせて和睦を結び、早々に兵を退き上げましょう」
「そのように我が方に都合よく、事が運ぶのか?」
信忠が不思議そうに尋ねる。
「ご案じめさるな。この左近にお任せを」
一益は一旦信忠のもとを下がると、義太夫、新介を鈴木孫一の元へ送った。
紀州の雑賀荘と呼ばれる海側の土地には一向宗が多い。雑賀門徒とも呼ばれ、かつての伊勢長島の戦の時も大勢の傭兵が長島に送り込まれていた。
雑賀城に入った義太夫と新介は広間に通され、鈴木孫一が現れるのを待った。やがて熊の毛皮を纏った目つきの鋭い猟師のような出で立ちの男が片手に銃を持って現れる。
「いやいや、鈴木殿。まこと見事なお手並み拝見仕った。あの堀久太郎がほうほうの体で逃げ帰ったと聞き及びましたぞ。流石は天下に名高い鉄砲集団の頭領じゃ」
義太夫がひとしきりお世辞を言う。鈴木孫一は眉一つ動かさずに義太夫を見ている。義太夫の方は愛想のない孫一の態度を意に介する様子もなく、話し続ける。
「鈴木殿。お互い何か恨みがあっての戦さでもなし。雑賀の皆々様も自国で戦では儲けもなく、軍費も嵩み、兵が疲弊するばかりじゃろう。そろそろ手打ちといたしませぬか」
義太夫がにこやかに言うと、鈴木孫一はじろりと睨んで
「我が領内に攻め入ったは織田勢じゃ。それを手打ちとは?」
その言葉を受けて、今度は佐治新介がふむふむ、尤も、と頷きながら、
「したがこれ以上の戦さは詮無きこと。田植えの季節も近い。我らも兵を退きたいというのが真のところ。さりながら、あの通り、織田の殿は我がままで頑固なお方。雑賀衆が負けを認めぬのであれば、長島や越前同様、雑賀荘全土を焼き払い、皆殺しにせよと仰せじゃ」
孫一の目の色がわずかに変わった。義太夫はそれを見逃さず、
「恐ろしいや~。まっこと恐ろしいのは第六天魔王じゃ~。人の生き血を啜る伴天連を従え、怪しげな南蛮の妖術と業火の炎で逆らうものを焼き尽くし、地獄に落とすのじゃ~。くわばらくわばら」
義太夫が震え上がってそう言う。いささか芝居が過ぎて、全て壊しかねない。新介は内心舌打ちしながらも少し相好を崩し、
「されどこれは我らの本意にあらず。ここはひとつ、如何であろうか。一筆、負けましたと入れていただければ、我らも兵を退きましょう」
「鈴木殿。我らも早う国に戻り、女房の顔が見たい。どうじゃ、ひとつ我らを助けると思うて」
鈴木孫一は終始怪訝な顔をしていたが、しばしお待ちを、と言って奥へ下がった。和睦について、雑賀衆と協議すると思われた。
「相手に負けましたと言わさねば帰るなとは、御曹司はいつまでも童扱いじゃな」
新介が白々となって言うと、義太夫は、
「ほんにのう。阿保らしゅうなるわ。早う伊勢に帰りたいのう」
義太夫が足を投げ出して言う。すっかりくつろぐその姿に新介は眉をひそめて
「義太夫、おぬしの大袈裟な芝居はどうにも嘘くさい。もう少し、大人しくできぬか」
新介が迷惑そうに言う。義太夫は目を向いて、
「何を申す。わしの鬼気迫る訴えが、孫一の心を動かしておるのが分からぬか」
「鬼気迫る?どの口が言うておるのじゃ。そなたの猿芝居で心を動かすのは蒲生の子倅と、せいぜい葉月様くらいのものじゃ」
「どっちも小童ではないか」
二人が小声でもめていると、鈴木孫一が戻ってきたので義太夫が慌てて座りなおす。
「お待たせした。これを、総大将、秋田城介殿にお渡しあれ」
と一枚の誓紙を取り出した。
義太夫が中を改めてみると信長に対する詫び状で、雑賀衆七名の連名だった。
「鈴木殿、まことに忝い」
義太夫はありがたく押し戴き、大事そうに胸元にしまう。
孫一の気が変わらぬうちに、と急いで雑賀城を出た二人は、そそくさと城門をくぐると、ひそひそ話し始めた。
「義太夫、見たか」
「見た見た。殿の仰せの通りじゃな」
おびただしい鉄砲の数。それに、あちらこちらに見える鍛冶屋。あれでは武器も弾薬も尽きることがない。いかに大軍といえど、まともにやり合えば攻略には時間がかかると思われた。
「やはりおったな」
「おった、おった」
城内は女子供の姿が目に付いた。立て籠っていたのは兵だけではない。織田勢が村を襲うことを恐れて、皆、避難しているのだろう。
「焼き払うと言うたときに、かすかに、孫一の目の色が変わったのは、あやつの妻子が城におるからじゃろう」
「然様。脅しとは思わぬじゃろう。第六天魔王がお怒りになれば、まことにそうなりかねん」
「であれば、殿の仰せの通り、時間をかければあるいは、織田になびくやもしれぬな」
「いかにも。上様はおっそろしいお方じゃが、金払いがよいからのう」
なんとかこの場は鈴木孫一を説き伏せ、和睦にこぎつけることができた。雑賀衆の詫び状を手にした信忠は全軍に退却を命じ、諸将は各々の国に帰っていった。
そして北伊勢四日市、実蓮寺。
紀州からの引き上げ時、忠三郎が滝御前を弔いたいというので、連れ立って実蓮寺に来た。
滝御前が孫たちに手を取られて静かに息を引き取ったのは、滝川勢が紀州に着陣して間もなくのことだ。留守居を任せた篠岡平右衛門と風花によって葬儀は滞りなく執り行われたと連絡を受けた。
実蓮寺に近づくと、近隣の子供たちだろう。輪になって踊っているのが見えた。
「これは懐かしや。つんつく踊りでは?」
義太夫が嬉しそうに言う。
「つんつく踊り?」
忠三郎が首を傾げる。
「確かにあれは、つんつく踊りじゃ。こうしてみると、妙な踊りじゃなぁ」
佐治新介も目を細めて踊る子供たちを見ている。
「そんな名の踊りであったな」
一益も言われて思い出した。遠い昔、こんな拍子の踊りを見たことがある。
「皆、そのつんつくなるものを存じておるのか」
義太夫がウムウムと頷き、
「何かを建てるとき、みなで地を踏み固めるじゃろう。ただ踏み固めるのはつまらぬので、太鼓を叩き、皆で手を取り輪になって、ツンツクツンツク言いながら伸びたり屈んだりするのが、つんつく踊りじゃ」
忠三郎に話して聞かせる。
寺の増築を見守っていた滝御前が誰かに教えたのだろう。
「そうじゃ、婆様は童が好きじゃったな」
「わしらは叱られてばかりであったが」
二人の会話を聞いていた忠三郎が
「心あたたかなお婆様でありました。皆が羨ましい」
と、微笑んでそう言う。義太夫も新介も、エッとなって言葉に詰まる。昔の鬼のような滝御前を知っているだけあり、一益の顔をチラチラと見るばかりで、同意しかねるようだが。
「鶴、母上に合わせてもろうて、まこと痛み入る。母上は随分とそなたを気に入っておった。耄碌したとはいえ、そなたをわしの子と思うとは」
忠三郎が恥ずかしそうに笑って、いえ、と言い、
「それがしは祖父母なるお方に、あのように親しげに、温かく声をかけていただいた覚えもなく、このお方がまことのお婆様であればと、そう思うてお話をお聞きしておりました」
忠三郎の祖父快幹の顔が浮かぶ。滝御前も昔は、快幹に負けず劣らず身内に冷たかったことを思い出す。そんな滝御前であっても幼子や忠三郎のような邪心なき者は好ましく思えたのだろうか。
「然様か…。鶴や風、子らのお陰で、最期に思わぬ孝行ができた」
「いえ。お婆様を伊勢にお迎えしたのは義兄上。そのことはお婆様もお分かりであった筈」
遅咲きの桜が風に舞い散る。その中で踊る子供たちの姿は、幻のようでもあり、夢のようでもある。
「今は来じと 思ふものから忘れつつ
待たるることの まだも止まぬか」
古今集巻第十五。今際《いまわのきわ》、つまり臨終を迎え、亡くなった人を待つ心がいつまでも続いてしまう、と詠った歌だ。
「お婆様の優しき思いとともに、いつまでも、この地につんつく踊りが続いていきましょう」
忠三郎が笑顔でそう言う。義太夫も新介も再度、エッとなる。
「この妙な踊りが?まことかや」
伊勢湾から吹く柔らかい風が頬にあたる。
四日市日永。皆の祖母の怒りも、悲しみも、喜びも、温かく包み、優しく迎えてくれたこの地が、どうか、つんつく踊りと共にいつまでも人の心をあたためてくれますように。
甲賀から連れてきた母、滝御前の隠居所として寺を改装し、そこに住まわせている。
一益が甲賀を出て以来、十八年ぶりに滝御前と再会したのは昨年。滝御前は孫である八郎、葉月に会わせると手を取って喜んだ。しかし一番喜んだのは、偶然その場に居合わせた忠三郎を見た時だ。
「なんとも高貴な若武者。まるで絵巻から飛び出したような雅な姿。さすが我が孫。どこぞの公達かと思うたわ」
と皺だらけの手で忠三郎の手を取り、その顔をまじまじと見た。
滝御前の孫にあたる三九郎、義太夫、佐治新介は互いに顔を見合わせた。
「目も耳も悪うなっただけではなく、お頭も悪うなられたのう」
新介が目を点にしてそう言うと、義太夫が苦笑する。
「一人だけ、やけに派手な装いをしておるのが、分からぬかのう…。だいたい、あの山姥のような婆様の孫が鶴のようになる筈がないと、誰もが思う筈じゃが」
「待て待て、義太夫。我らはその山姥の真の孫ではないか」
「おぉ、忘れておったわ。そうじゃ、そうじゃ。わしも孫であったな。いや、わしは別じゃ。わしはトンビが鷹を生んだ典型にて。見よ、この誰もが振り向く男振りを」
「誰彼構わず、女子とあれば声をかけて歩けば、誰でも奇異に思うて振り向くわ」
後ろでひそひそと話している。三九郎は言いたい放題の二人を横目で見ながら、一益の顔色を窺った。
滝御前の思わぬ勘違いに一益が困惑しているのがわかる。しかし忠三郎は気に留める様子もなく、滝御前に穏やかに微笑みかける。
「御婆様。あまり無理なされぬよう、そろそろお休みくだされ」
と労わったので滝御前は感極まり涙ぐんだ。
「なんと心根の優しい子じゃ。久助の子とは思えぬ」
一益の子だと思われている。後ろに控える三人はうつむいて笑いを堪える。
「似ても似つかぬ風貌にて…何故の思い違い…。殿から鶴が生まれるなど、閻魔大王から菩薩が生まれるようなものじゃ」
「いやいや年寄りの儚い夢を壊すまい。鶴殿もあのように合わせてくれておる」
すっかり忠三郎を気に入った滝御前は、部屋に忠三郎を連れて行ってしまった。そのままよもやま話に花が咲き、忠三郎が解放されたのは夜も遅くなってからだ。
二月に入り、紀州攻めの号令が下った。兵を集め、長島を出立しようとしていたとき、滝御前がいよいよ危ないと知らせが届いた。一益は風花に頼んで六郎、九郎、葉月を実蓮寺に向かわせ、自身は兵を率いて紀州に着陣している。
本願寺攻めのたびに紀州から邪魔が入る。兵糧攻めしようにも、武器弾薬をはじめとして、大量の兵糧が運ばれているので手の打ちようがない。
この紀州という国は歴史が古く、国の興りは律令制施行以前からという。平安期に入ってからは独立自治を謳う伊賀・甲賀と同じように複数の傭兵軍団により成り立っており、その中でも一向衆の影響下にある一部の雑賀衆が遊撃戦を展開してくる。そこで一向衆の門徒以外の雑賀衆に調略をしかけ、寝返りを約束させたが、まだ一部手強い勢力が残っていた。
雑賀の孫一。
紀州、雑賀でも鉄砲の名手と言われた鈴木孫一。狙った的は外さないという評判のこの男は、本願寺の下間頼廉と並んで「石山本願寺、左右の将」ともいわれている。敵に回すと面倒な相手だ。
雑賀に滝川助九郎、木全彦一郎を送り込み、何度か鈴木孫一に接触して調略を試みたが、少し時間をかけなければ難しい。それを伝えると信長が痺れを切らして兵を挙げるといいだした。
総大将は織田家の家督を継いだ秋田城介こと織田信忠。総勢十万の大軍勢は泉州信達まで進んだ。そこで軍議が開かれ、二手に分かれて紀州を目指すことになる。
「城介殿率いる本隊は海岸沿いを進んで途中にある城を落としつつ雑賀を目指し、別動隊は根来・雑賀衆、摂津衆ら先鋒に山の手を案内させて雑賀城まで攻め入りましょう」
と提案すると、待っていたかのように忠三郎が名乗りを上げる。
「では我が蒲生勢は先に雑賀城へ向かいとうござりまする」
馬廻から出世し、一軍を率いるようになった堀久太郎が忠三郎を睨み、
「お待ちを。我らが別動隊とともに雑賀へ参りとうござります」
この二人は総大将の信忠に負けず劣らず華やかな装いで、ひと際人目を引いている。功を焦る若い二人に、重臣たちは一様に顔を見合わせ、一益を見る。
「左近、如何すべきか、存念を述べよ」
信忠がそう言うと、一益は血気盛んな二人を見ながら、
「では別動隊には堀殿を送り、我らはこの先にある中野城を目指すことといたしましょう」
と言ったので、久太郎は喜び勇んで力強い返事を返し、忠三郎は大きく落胆して肩を落とした。
「すぐに出立いたそう。皆々、心してかかれ」
信忠が床几から立ち上がると、一同、立ち上がって短く返事をする。
一益は信忠本隊とともに峠を越えて海沿いを進んだ。
「殿。何故に堀殿は別動隊に加わることを許され、鶴にはお許しにならなかったので?」
義太夫が尋ねると、新介が
「それは、あの子倅に行かせれば、鉄砲の的になるのが火を見るよりも明らかだからじゃ」
と笑っていると、忠三郎が馬を寄せてきたので二人が慌てて口を閉じる。
「義兄上」
常と変わらぬ笑顔ではあるが、何か言いたいことがあって来たのは目を見ればわかる。
「久太郎は別動隊に加わり、我らは何故に本隊に留められたのでありましょうや」
義太夫と同じことを言った。余程、悔しかったのだろう。一益は笑って、
「そなたは先に雑賀に行きたいと言うた。久太郎は別動隊に加わりたいと言うた。わしは各々の望み通りにさせたまで」
「はて…?本隊が先に雑賀城につくと、そう仰せで?」
忠三郎が不思議そうに首を傾げる。
「鶴、迂直の計を存じておるか」
「はい。孫子でござりましょう」
軍争の難きは、迂を以て直と為し、患を以て利と為す。つまり戦闘の難しいのは、弱点は長所に、遠回りは近道になることだ。これを迂直の計という。
「故に其の途を迂にしてこれを誘うに利を以てし、人に後れて発して人に先んじて至る」
そこまで言うと、ようやく気付いた忠三郎が一益を見る。
「義兄上、もしやそれは…、では別動隊は最初から…」
そう。別動隊は最初から囮だ。別動隊に編成した根来・雑賀衆及び佐久間信盛、羽柴秀吉、荒木村重、別所長治、堀久太郎を囮にして鈴木孫一率いる鉄砲隊を引き付け、その隙に信忠率いる織田本隊で雑賀の出城を降し、雑賀城まで攻め上る計略だ。無論、自分たちが囮にされていることを、別動隊の諸将は気づいてはいないだろう。
「気づいたら、腹をたてて怒るのでは?」
「されどそのときは敵の術中であろう」
そこまで考えて囮にしたのか。全ては信忠を危険に晒したくない思いからきているのだろう。忠三郎は舌を巻いて自陣に戻っていった。
一方、別動隊は、根来・雑賀衆の道案内で峠を越え、雑賀城まであと一歩のところまで突き進んでいた。
「是非とも我らに先陣を仰せつけくだされ」
功を焦った堀久太郎が、別動隊を率いる大将佐久間信盛の前に進み出る。
目の前の小さな川を渡れば、目指す雑賀城は目と鼻の先にある。丁度満潮で川の水が少し増水してはいるが、馬に慣れたものであれば騎乗したまま渡れる程度であり、攻め上ることはそう難しくないと思われた。
「では堀殿に先陣をお任せし、我らはそのあとに続くとしよう」
佐久間信盛の許しがでたところで、久太郎が軍勢を率いて川を渡ろうとする。
この程度の川であれば、難なく渡れる筈だった。それがどう御しても馬が途中で言うことをきかない。
(おかしい…これは一体…)
日に照らされて川底がよく見えない。周りを見ると、騎馬兵たちがみな、立ち往生している。
「久太郎様。川になにか仕掛けがござります」
誰かの声がして、よくよく見ると、川底に桶やら瓶やら逆茂木やらがうっすらと見えた。
川から目を離して辺りを見れば堀勢だけではない。他の諸将も兵をすでに進めてしまっており、川で足止めされている。
「しまった!罠じゃ!みな、退け!」
気づいて引き返そうとしたとき、対岸に八咫烏の旗印が閃いて見えた。
(あれは雑賀の孫一…)
熊野の神官一族である鈴木孫一は、熊野神社の使いといわれている八咫烏を旗印にしている。一発の銃声が山間にとどろき、それを合図におびただしい数の銃口がこちらに向けられ、一斉に火を噴いた。
兵がばたばたと倒れ、残っているものも大混乱に陥る。
「早う引き上げよ!このまま留まれば全滅じゃ!」
久太郎は慌てて兵を引こうとするが、そこを無数の弓が放たれ、兵が倒れていく。
堀勢をはじめとする別動隊は鈴木孫一率いる鉄砲隊の的となり、おびただしい犠牲を払って退却した。
別動隊敗走の知らせはその日のうちに信忠の本隊に届けられる。信忠率いる本隊は一日で出城を落とし、翌日、雑賀城に向かって突き進んだ。
そこへ都にいる信長から知らせが入る。
「毛利が動き出したようじゃ。面目を保ち、急ぎ退却せよとの父上の仰せであるが…面目を保ちとは如何なことか」
織田勢が雑賀衆に勝った形にして兵を退けと言っているようだ。
「秋田城介ともあろうお方が、雑賀衆如きを相手に手古摺ったというは天下に面目がたちませぬ。幸いにも雑賀は我が大軍を前に小城ひとつ残すのみ。使者を出し、雑賀衆に詫びを入れさせて和睦を結び、早々に兵を退き上げましょう」
「そのように我が方に都合よく、事が運ぶのか?」
信忠が不思議そうに尋ねる。
「ご案じめさるな。この左近にお任せを」
一益は一旦信忠のもとを下がると、義太夫、新介を鈴木孫一の元へ送った。
紀州の雑賀荘と呼ばれる海側の土地には一向宗が多い。雑賀門徒とも呼ばれ、かつての伊勢長島の戦の時も大勢の傭兵が長島に送り込まれていた。
雑賀城に入った義太夫と新介は広間に通され、鈴木孫一が現れるのを待った。やがて熊の毛皮を纏った目つきの鋭い猟師のような出で立ちの男が片手に銃を持って現れる。
「いやいや、鈴木殿。まこと見事なお手並み拝見仕った。あの堀久太郎がほうほうの体で逃げ帰ったと聞き及びましたぞ。流石は天下に名高い鉄砲集団の頭領じゃ」
義太夫がひとしきりお世辞を言う。鈴木孫一は眉一つ動かさずに義太夫を見ている。義太夫の方は愛想のない孫一の態度を意に介する様子もなく、話し続ける。
「鈴木殿。お互い何か恨みがあっての戦さでもなし。雑賀の皆々様も自国で戦では儲けもなく、軍費も嵩み、兵が疲弊するばかりじゃろう。そろそろ手打ちといたしませぬか」
義太夫がにこやかに言うと、鈴木孫一はじろりと睨んで
「我が領内に攻め入ったは織田勢じゃ。それを手打ちとは?」
その言葉を受けて、今度は佐治新介がふむふむ、尤も、と頷きながら、
「したがこれ以上の戦さは詮無きこと。田植えの季節も近い。我らも兵を退きたいというのが真のところ。さりながら、あの通り、織田の殿は我がままで頑固なお方。雑賀衆が負けを認めぬのであれば、長島や越前同様、雑賀荘全土を焼き払い、皆殺しにせよと仰せじゃ」
孫一の目の色がわずかに変わった。義太夫はそれを見逃さず、
「恐ろしいや~。まっこと恐ろしいのは第六天魔王じゃ~。人の生き血を啜る伴天連を従え、怪しげな南蛮の妖術と業火の炎で逆らうものを焼き尽くし、地獄に落とすのじゃ~。くわばらくわばら」
義太夫が震え上がってそう言う。いささか芝居が過ぎて、全て壊しかねない。新介は内心舌打ちしながらも少し相好を崩し、
「されどこれは我らの本意にあらず。ここはひとつ、如何であろうか。一筆、負けましたと入れていただければ、我らも兵を退きましょう」
「鈴木殿。我らも早う国に戻り、女房の顔が見たい。どうじゃ、ひとつ我らを助けると思うて」
鈴木孫一は終始怪訝な顔をしていたが、しばしお待ちを、と言って奥へ下がった。和睦について、雑賀衆と協議すると思われた。
「相手に負けましたと言わさねば帰るなとは、御曹司はいつまでも童扱いじゃな」
新介が白々となって言うと、義太夫は、
「ほんにのう。阿保らしゅうなるわ。早う伊勢に帰りたいのう」
義太夫が足を投げ出して言う。すっかりくつろぐその姿に新介は眉をひそめて
「義太夫、おぬしの大袈裟な芝居はどうにも嘘くさい。もう少し、大人しくできぬか」
新介が迷惑そうに言う。義太夫は目を向いて、
「何を申す。わしの鬼気迫る訴えが、孫一の心を動かしておるのが分からぬか」
「鬼気迫る?どの口が言うておるのじゃ。そなたの猿芝居で心を動かすのは蒲生の子倅と、せいぜい葉月様くらいのものじゃ」
「どっちも小童ではないか」
二人が小声でもめていると、鈴木孫一が戻ってきたので義太夫が慌てて座りなおす。
「お待たせした。これを、総大将、秋田城介殿にお渡しあれ」
と一枚の誓紙を取り出した。
義太夫が中を改めてみると信長に対する詫び状で、雑賀衆七名の連名だった。
「鈴木殿、まことに忝い」
義太夫はありがたく押し戴き、大事そうに胸元にしまう。
孫一の気が変わらぬうちに、と急いで雑賀城を出た二人は、そそくさと城門をくぐると、ひそひそ話し始めた。
「義太夫、見たか」
「見た見た。殿の仰せの通りじゃな」
おびただしい鉄砲の数。それに、あちらこちらに見える鍛冶屋。あれでは武器も弾薬も尽きることがない。いかに大軍といえど、まともにやり合えば攻略には時間がかかると思われた。
「やはりおったな」
「おった、おった」
城内は女子供の姿が目に付いた。立て籠っていたのは兵だけではない。織田勢が村を襲うことを恐れて、皆、避難しているのだろう。
「焼き払うと言うたときに、かすかに、孫一の目の色が変わったのは、あやつの妻子が城におるからじゃろう」
「然様。脅しとは思わぬじゃろう。第六天魔王がお怒りになれば、まことにそうなりかねん」
「であれば、殿の仰せの通り、時間をかければあるいは、織田になびくやもしれぬな」
「いかにも。上様はおっそろしいお方じゃが、金払いがよいからのう」
なんとかこの場は鈴木孫一を説き伏せ、和睦にこぎつけることができた。雑賀衆の詫び状を手にした信忠は全軍に退却を命じ、諸将は各々の国に帰っていった。
そして北伊勢四日市、実蓮寺。
紀州からの引き上げ時、忠三郎が滝御前を弔いたいというので、連れ立って実蓮寺に来た。
滝御前が孫たちに手を取られて静かに息を引き取ったのは、滝川勢が紀州に着陣して間もなくのことだ。留守居を任せた篠岡平右衛門と風花によって葬儀は滞りなく執り行われたと連絡を受けた。
実蓮寺に近づくと、近隣の子供たちだろう。輪になって踊っているのが見えた。
「これは懐かしや。つんつく踊りでは?」
義太夫が嬉しそうに言う。
「つんつく踊り?」
忠三郎が首を傾げる。
「確かにあれは、つんつく踊りじゃ。こうしてみると、妙な踊りじゃなぁ」
佐治新介も目を細めて踊る子供たちを見ている。
「そんな名の踊りであったな」
一益も言われて思い出した。遠い昔、こんな拍子の踊りを見たことがある。
「皆、そのつんつくなるものを存じておるのか」
義太夫がウムウムと頷き、
「何かを建てるとき、みなで地を踏み固めるじゃろう。ただ踏み固めるのはつまらぬので、太鼓を叩き、皆で手を取り輪になって、ツンツクツンツク言いながら伸びたり屈んだりするのが、つんつく踊りじゃ」
忠三郎に話して聞かせる。
寺の増築を見守っていた滝御前が誰かに教えたのだろう。
「そうじゃ、婆様は童が好きじゃったな」
「わしらは叱られてばかりであったが」
二人の会話を聞いていた忠三郎が
「心あたたかなお婆様でありました。皆が羨ましい」
と、微笑んでそう言う。義太夫も新介も、エッとなって言葉に詰まる。昔の鬼のような滝御前を知っているだけあり、一益の顔をチラチラと見るばかりで、同意しかねるようだが。
「鶴、母上に合わせてもろうて、まこと痛み入る。母上は随分とそなたを気に入っておった。耄碌したとはいえ、そなたをわしの子と思うとは」
忠三郎が恥ずかしそうに笑って、いえ、と言い、
「それがしは祖父母なるお方に、あのように親しげに、温かく声をかけていただいた覚えもなく、このお方がまことのお婆様であればと、そう思うてお話をお聞きしておりました」
忠三郎の祖父快幹の顔が浮かぶ。滝御前も昔は、快幹に負けず劣らず身内に冷たかったことを思い出す。そんな滝御前であっても幼子や忠三郎のような邪心なき者は好ましく思えたのだろうか。
「然様か…。鶴や風、子らのお陰で、最期に思わぬ孝行ができた」
「いえ。お婆様を伊勢にお迎えしたのは義兄上。そのことはお婆様もお分かりであった筈」
遅咲きの桜が風に舞い散る。その中で踊る子供たちの姿は、幻のようでもあり、夢のようでもある。
「今は来じと 思ふものから忘れつつ
待たるることの まだも止まぬか」
古今集巻第十五。今際《いまわのきわ》、つまり臨終を迎え、亡くなった人を待つ心がいつまでも続いてしまう、と詠った歌だ。
「お婆様の優しき思いとともに、いつまでも、この地につんつく踊りが続いていきましょう」
忠三郎が笑顔でそう言う。義太夫も新介も再度、エッとなる。
「この妙な踊りが?まことかや」
伊勢湾から吹く柔らかい風が頬にあたる。
四日市日永。皆の祖母の怒りも、悲しみも、喜びも、温かく包み、優しく迎えてくれたこの地が、どうか、つんつく踊りと共にいつまでも人の心をあたためてくれますように。
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