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17.あだし野の露
17-4. 我らの誇り
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そのころ、伊賀の猛者と呼ばれる将たちが籠る壬生野城を降した滝川勢は、その足を早め、続く柏野城を降し、一路、比自山城を目指していた。
道すがら見えてくるのは、ただ荒れ果てた田畑ばかりであった。その土地は何年も手入れされず放り出されたかのようで、寂寥とした風景が広がっている。
三九郎は、初めて伊賀の地に足を踏み入れたためか、その荒涼とした光景に思わず目を見開いた。そして、深く溜息をつきつつも口を開く。
「それにしても…目に映るのは、何年も前に苅田して以来、打ち捨てられた土地ばかり。これは甲賀以上に貧しき地と見える」
隣で耳を傾けていた義太夫は、フムフムと頷きながら、穏やかに笑みを浮かべて言葉を返した。
「いやはや、まことに。それにしても、この荒地を目にした玉瀧方面から来た鶴は、さぞ驚いておりましょう。日野の地はこことは打って変わり、見渡す限りの水田が広がる豊穣の地でござりまするゆえ」
三九郎も、義太夫の言葉に思いを巡らせて頷いた。日野の地は、豊かさの象徴のごとく広がる水田が、陽光を浴びてきらきらと輝いていた。三九郎にとって、それほどまでに贅沢な地は、日野を除けば目にすることはなかったであろう。
滝川助九郎もまた、二人の話に耳を傾けながら、遠くを見やる。その眼差しはどこか憂いを帯び、豊かな日野の風景が心に浮かんでいるかのようだった。
「おや、あれは…」
遠くから微かに視界に捉えられた異様な光景に、兵たちはにわかにざわめき立ち、その声が耳に届くや否や、滝川助九郎は慌ただしくその場へと駆けて行った。
進んだ先に広がるのは、無惨な痕跡だった。地に倒れ伏す折れた旗指物の残骸があちらこちらに散らばり、鮮やかだったはずの布が泥と血にまみれ、くすんだ赤黒い色へと変わり果てていた。足元にはおびただしい血しぶき、その流れが土にしみ込み、生々しく視界を侵していた。
「これは…お味方の…」
滝川助九郎は、折れた旗指物と血痕を見つめながら、眉をしかめた。玉瀧口から進んだ味方が、無惨にも襲撃を受けた跡であるのは明らかだった。
「また派手にやられたのう」
義太夫が息を切らせながら追いつき、辺りを探る。視線を落とし、旗の紋を確かめると、低く呟いた。
「これは甲賀者じゃ。鶴の身内の美濃部ではなかろうか」
「美濃部が討たれたか?」
にわかに背後から響く声に、助九郎と義太夫が振り向けば、そこには馬上の一益の姿があった。
「おぉ、殿。さすが早い…」
助九郎が恭しく頭を下げる。
「はい。この様子では美濃部殿が無事とは到底思えませぬ」
一益は鋭い目つきで、散らばる血痕と折れた旗指物を見渡し、深く息をついた。無念さと怒りが入り混じるようなその眼差しに、助九郎や義太夫も無言で頷き、視線を交わした。伊賀の地に深まる緊張の気配は、肌に刺さるような冷たさであり、まるで闇がひとつ、さらに深まったかのようであった。
「それゆえの、あの残骸か」
一益が遠くを見据え、静かに呟いた。その鋭い視線の先に義太夫と助九郎も目を向けると、そこには焼き払われ、黒煙が立ちのぼる寺院や家屋が広がっていた。燃え尽きた家々は骨のように残り、風が吹くたびに灰が舞い上がり、あたりは重苦しい静寂に包まれている。
まもなく追いついてきた三九郎も、皆の見る方角を見て、言葉を発せずにいた。
「あれは平楽寺であろう」
一益の視線の先、比自山のほど近くに、かつてより伊賀の者たちが集うと伝えられる古刹、平楽寺と思しき残骸が見えた。
三九郎はただ黙って焼け跡を見つめ、荒れ果てた境内に目をやる。かつての石塔の残骸が、今は黒く焼け焦げ、無惨にも崩れ落ちている。それでも古代よりこの地に根を張ってきた寺の面影が、僅かに残る苔むした石に宿っているように思えた。
「評定所として伊賀衆が籠っておったという寺で?」
戦支度を整える者、策を練る者の声が夜の静けさを破り、寺の周囲には警戒の目が光っていると聞いた忠三郎は、堀久太郎、脇坂安治らの軍勢をあわせた総勢七千の兵をもって寺を制圧しようとした。
寺に籠っていたのは僧兵が三百あまり、後は寺男と高僧、付近の村落から逃れてきた女子供をあわせて七百あまりだったという。当然、やすやすとこれを降す筈だったようだが、そう上手くはいかなかった。
「思いの外、寺に篭る者たちは強かに抵抗したとか」
平楽寺に籠っていた僧兵たちは、ただの守り手ではなかった。伊賀者の鍛え抜かれた手だれが混じっており、夜陰にまぎれて奇襲を仕掛けては逃げ、闇に溶け込むように姿を消していった。
攻めあぐねた寄せ手の将たちは、一益に知らせを送ってきた。一益は、戦況を見極め、なるべく民の犠牲を避けるべく戦を進めたいとの思いも抱いていたが、事ここに至っては守勢に回るのは得策ではない。
道家彦八郎に命じ、即座に援軍を整えて平楽寺へと向かわせた。
援軍を得た忠三郎は、勢いを取り戻し、再度寺へ攻め入った。そして容赦なく制圧を強行し、寺に火をかけたようだ。
やがて、一益が感心したようにつぶやいた。
「火のつけかたに無駄がない。見事に寺社や家屋だけを狙い定め、火を放っておる」
指を差し、風に揺らめく炎の方向を指摘する。
「あれを見よ。風上がよく燃えておるのは、風の動きを読んで火を放った証拠じゃ」
義太夫は、かすかな震えを押し殺しつつ言葉を紡いだ。
「殿、これは、敵が村を焼き払うことで我らに挑んでおるのでございましょうか」
一益は目を細め、未だ微かに立ち上る煙を見据え、静かに首を振った。
「いや、そうではあるまい。これは、身内を討たれた鶴が怒りに駆られ、村ごと焼き払うたのであろう」
その一言に、義太夫と三九郎は互いに顔を見合わせ、無言で息を飲んだ。忠三郎は従兄を討たれた怒りを抑えきれず、この荒れ果てた村全てにその矛先を向け、容赦なく焼き払ったのだ。焼き払われた村の瓦礫が、真紅に染まりながら沈む夕陽に照らされ、村の名残を包むかのように燃え続ける炎の気配が、静寂の中に凄まじい激情を浮かび上がらせている。
義太夫は、呆然と炎の揺らめきを見つめながら、戸惑いを隠せぬ様子で呟いた。
「あの鶴が、かようなことを…。火攻めとは熟練の者がなす技。見よう見まねでやったにしては、わずかな手抜かりさえもなく…」
一益はそんな義太夫の言葉に静かに頷き、深い目で火のくすぶる村を見つめ続けた。
「そこがあやつの恐ろしいところよ」
静かな言葉の奥には、忠三郎の底知れぬ執念と冷徹さに対する畏れが滲んでいた。忠三郎がその激しき怒りを理で押さえ込み、計算すらも狂わせぬほどの精緻さで火攻めを成し遂げたことが、心の底にある冷ややかさを物語っているかのようだ。
「なんとも意外な…。あの温厚な忠三郎が、かようなことをするとは…」
三九郎は、その驚きを隠せぬまま、燃えさかる村の残骸に目を向けた。普段の忠三郎を知る者には、到底信じられぬ光景が目の前に広がっている。
義太夫もまた、目を細めてその様子を見つめつつ、ふぅと重いため息をついた。
「普段、怒らぬ者が怒ったときこそ、最も恐ろしいとは、よく言ったものじゃのう」
この凄惨な光景には、普段の温厚な姿と、それに反するかのような深い怒りが秘める凄まじさが感じられた。普段の姿がいかに柔和であろうとも、その心の底に眠る激情が、いざ解き放たれた時には、理をも超えて冷徹な行動へと突き動かす――まさに今の村の光景が、その一端を物語っている。
「怒った鶴は、あやつの祖父、快幹以上の妖魔になるやもしれぬな」
義太夫は軽く笑みを浮かべ、冗談めかしてそう言った。しかし、その言葉の裏に秘められた意味を、三九郎はただの笑い事では済ませられなかった。義太夫の笑いに合わせることもせず、ただ黙ってその表情を曇らせた。
蒲生快幹――謀将の悪名高き祖父の影が、忠三郎にも重く覆いかぶさっているかのように思える。快幹はかつて、冷徹な智謀をもってその勢力を拡大し、あまたの身内を犠牲にしてきた。三九郎は、その冷酷さが忠三郎にも宿るのではないかと、ふとした不安に胸を締めつけられた。
(父上は如何お考えなのであろうか…)
三九郎はそう胸中で呟き、そっと一益の顔を覗き見た。しかし、もとより滅多に感情を表に出さぬ父の面持ちは、いつもの冷静さを保ったままであり、忠三郎の行動を目にしても、普段と変わらぬように見える。
一益はただ静かに、燃え残った村を見つめていた。その目には、忠三郎の怒りも、その行動の冷徹さも見極めようとするような厳しい光が宿っているが、何かを語るわけでも、何かを咎める様子もない。その瞳の奥に何があるのか、三九郎には掴み切れなかった。
一益は燃え残った村の向こうを見据え、ふと低く呟いた。
「この分では大人しゅう比自山で待ってなどはおらぬであろう。助九郎、先に行き、様子を見て参れ」
その声に気を引き締めた助九郎は、即座に膝をつき、一益に恭しく一礼する。
「ハハッ。では早速に」
指示を受けるや否や身を翻し、迷いなく先行して駆け出した。滝川勢が進む道を確認し、比自山に待つであろう味方の様子を探るため、助九郎はその影を長く引きながら、静寂の中を駆け抜けていった。
「父上の仰せの通り、他の者はともかく、忠三郎が大人しく待っているとは思えませぬ」
三九郎がそう言うと、義太夫も頷いて同調する。
「軍目付の安藤も、鶴に騒ぎ立てられて抑えきれる器でもなし。むしろ、押し切られて共に城を攻めておるやもしれませぬぞ」
義太夫は遠くを見やりながら、ひと息ついた。
「このままでは、向こうで何かしら騒動が起こっても不思議ではありませぬ。ともあれ、我らも早く駆けつけねばなりますまいて」
二人の視線は山道の向こう、比自山の方角へと注がれていた。
秋の夜が近づき、遠くの山々が朱に染まる。山を背に野営していると、助九郎が、蒲生勢とともにいた兄の助太郎を連れて戻ってきた。
「おっ…と、助太郎ではないか。如何した?」
二人の姿をいち早く見つけた義太夫が、二人の元に駆け寄る。助太郎は義太夫の顔を見ると、口を開くのもためらうように、険しい表情で言葉を詰まらせた。助九郎がそれを察し、兄の肩を軽く叩いて背を押すように促す。
「殿の到着を待たず、比自山に攻め入ったのでござります」
助太郎はそれだけ言うと、息を切らせる。義太夫は気づいて腰に括り付けた竹筒を渡した。
「落ち着け。まずは飲め」
助太郎は義太夫から竹筒を受け取ると、喉をうるおすように一息に飲み干した。その動作には、長い道中を駆けてきた疲れと焦燥がにじんでいる。息を整えた助太郎は、再び厳しい表情で義太夫に向き直る。
「比自山の守りが日増しに固められてゆくのを見て、忠三郎様は待つことをよしとされず…昨日未明、ついに攻め入られたのです。しかし、敵は巧妙に罠を張り巡らし、我らは思いのほか苦戦を強いられ、蒲生勢をはじめ、堀様、筒井様の軍勢も少なからぬ被害を…」
義太夫はその報告に深く頷きながら、複雑な思いを飲み込むように口を閉ざした。
「されど、それだけではありませぬ。その夜、比自山から夜襲をしかけた伊賀衆により、筒井勢が大打撃を受け、ご家老が討死。筒井様は兵を引きました」
義太夫はその知らせに目を見開き、しばし言葉を失った。助太郎の緊張した面持ちが、その事態の重大さを物語っている。
「…筒井勢が討ち破られた、か。そして家老までもが討死とは…」
思っていたよりも被害が大きい。これは大変なことになった、と義太夫はあわてて一益の元へと走った。足元の地面は夜露に濡れて滑りやすくなっていたが、そんなことを気にしている暇もない。
「殿!一大事にござりまする」
一益が静かに振り返り、その鋭い眼差しが義太夫を捉えた。義太夫はあふれる言葉を抑えきれず、一気に筒井勢の壊滅と家老の討死、忠三郎の急攻が原因となった事態の深刻さを伝えた。話が進むごとに、一益の表情は一層険しくなり、静かな怒りとともに深い憂いが滲んでいるようだった。
「鶴、急く余りに賢慮を欠いたか」
「これは思うていたよりも、よろしからぬ雲行きで」
一益は静かに目を伏せ、言葉少なに思案している。そのまま黙して語らぬ主の姿に、周囲の空気はまるで霧深き山間のごとく、重苦しきものと化した。
「ま…まずは、丹羽殿にもこの件をお知らせせねばなるまいな。助九郎、急ぎ丹羽殿の元へ行って参れ」
「ハハッ」
助九郎は小気味よく返事し、義太夫を一瞥してすぐさま駆け出した。
義太夫はこの重たい空気にどうにも耐えられぬ気持ちが募り、助九郎に続くようにその場を立ち去ろうと帷幕を後にした。が、そこに待ち受けていた声が背後から響く。
「義太夫」
ぴたりと足を止め、ぎくりと肩を震わせて振り向けば、そこには三九郎が立っている。
「若殿…はぁ、驚きました」
義太夫は額の冷や汗をぬぐいながら、なんとか笑みを浮かべた。
「逃げるように父上の元を下がって参ったな」
三九郎が微笑交じりに言うと、義太夫はばつが悪そうに頭を掻いて笑った。
「若殿。まずは飯でも。腹が減っては戦さはできませぬ」
と義太夫はおどけた口調で返し、うっすらと腹をさすった。
三九郎は道家彦八郎たちの鍋の輪へと歩み寄り、差し出された椀の中を覗き込んで、少しばかり驚いた。
「赤米ではないか」
長く大船に乗っていた三九郎は知らなかったが、陸の滝川勢は常より通常の米を食べることはなく、赤米を食べていたようだ。
三九郎は椀の赤米をじっと見つめる。赤米、別名「大唐米」とも称され、大陸から渡り来たこの米は、炊き上げれば増量が利くものの、その食味は白米には及ばぬため、百姓が口にする米とされている。
「年貢米は如何した?」
ふとそう尋ねると、道家彦八郎が微かに笑みを浮かべ、
「それは皆、鉄砲に化けておりまする」
と答えた。つまり、納められた年貢米は鉄砲の費用とされ、戦のための武器へと姿を変えたということだ。
三九郎は思わず目を伏せた。
(知らなかった)
大船にいる間、父・一益から常に十分すぎるほどの白米が送られていた。それは信長からの厚き配慮の賜物であり、飢えることなど一度もなく、何不自由ない日々を過ごせていたのだ。自分が赤米に触れることなく今日まで過ごせたのも、すべて父の計らいがあってこそ――三九郎は今さらながら、胸の奥が静かに痛むのを感じた。
(それを皆、不満ひとつ漏らさず、さも当然のように受け入れて…)
目の前には、黙々と赤米を口に運ぶ家臣たちの姿があった。今もなお、黙々と赤米を口に運び、鍋を囲むその姿には、日々の労苦や犠牲がにじんで見えた。
義太夫が笑みを浮かべ、明るく声をかけた。
「若殿。腹が減れば、なんでも美味いものでござります」
その笑顔に、三九郎の胸が熱くなる。傍らで道家彦八郎も生真面目な顔をして頷いた。
「然様。これが我らの誇りにて」
「これが我らの誇りか」
心の中でその言葉をそっと繰り返す。家臣たちが黙々と受け入れるその誇りは、土の香りを含んだ素朴なものであったが、何故か三九郎の心に安堵の色を広げ、静かに染み入ってくるのを感じる。
三九郎は家臣たちの姿を見つめながら、胸の奥でじわりと湧き上がるものを感じた。戦場での厳しい日々の中、自身が贅沢な白米を口にしていたことで、彼らの労苦からどれほど遠く隔たっていたかを、秋風が伝えるようにそっと教えてくれているかのようだった。
義太夫や道家彦八郎をはじめとする家臣たちが黙々と赤米を食す姿。そのひと粒ひと粒には、ただ飢えを凌ぐだけでなく、季節ごとの厳しい労苦と、静かなる誇りが込められている。赤米を口に運ぶ家臣たちの背後に、枯れゆく草が一面に広がり、黄昏の風にそよいでいる。その風は、秋の涼やかな香りと共に、彼らの忍耐と無言の忠義を三九郎の心へと運び、じんわりと染み入っていく。
三九郎は黙々と鍋を平らげていく家臣たちを見ながら、夕映えに染まる空を見上げ、心の中でひとりごとを呟いた。
(父上、この世を知り、我が身を知るのは未だ至らぬ我が身なれど、いずれ滝川家にふさわしい当主となるよう、精進いたしまする…)
秋の夜が次第に近づき、遠くの山々が朱に染まる頃、家臣たちが赤米を噛みしめながら鍋を囲む姿は、いつになく尊いものに見え、三九郎の胸に深く刻まれていった。そのひとりひとりの顔には、ただただ己の務めに励む静かな決意が宿り、夕暮れの空気の中で、それがかすかに輝いているように感じられた。
その風景は、秋が終わりを告げ、冬が近づいてくる寂しさとは異なり、心の内に暖かい灯がともるような不思議な感覚を三九郎にもたらした。彼らと共に歩む道、共に分かち合う時間、そのひとつひとつが、まるで凛と冷たくなる秋の空気の中にほんのりと残る温もりのように、三九郎の胸に確かに燃えていた。
道すがら見えてくるのは、ただ荒れ果てた田畑ばかりであった。その土地は何年も手入れされず放り出されたかのようで、寂寥とした風景が広がっている。
三九郎は、初めて伊賀の地に足を踏み入れたためか、その荒涼とした光景に思わず目を見開いた。そして、深く溜息をつきつつも口を開く。
「それにしても…目に映るのは、何年も前に苅田して以来、打ち捨てられた土地ばかり。これは甲賀以上に貧しき地と見える」
隣で耳を傾けていた義太夫は、フムフムと頷きながら、穏やかに笑みを浮かべて言葉を返した。
「いやはや、まことに。それにしても、この荒地を目にした玉瀧方面から来た鶴は、さぞ驚いておりましょう。日野の地はこことは打って変わり、見渡す限りの水田が広がる豊穣の地でござりまするゆえ」
三九郎も、義太夫の言葉に思いを巡らせて頷いた。日野の地は、豊かさの象徴のごとく広がる水田が、陽光を浴びてきらきらと輝いていた。三九郎にとって、それほどまでに贅沢な地は、日野を除けば目にすることはなかったであろう。
滝川助九郎もまた、二人の話に耳を傾けながら、遠くを見やる。その眼差しはどこか憂いを帯び、豊かな日野の風景が心に浮かんでいるかのようだった。
「おや、あれは…」
遠くから微かに視界に捉えられた異様な光景に、兵たちはにわかにざわめき立ち、その声が耳に届くや否や、滝川助九郎は慌ただしくその場へと駆けて行った。
進んだ先に広がるのは、無惨な痕跡だった。地に倒れ伏す折れた旗指物の残骸があちらこちらに散らばり、鮮やかだったはずの布が泥と血にまみれ、くすんだ赤黒い色へと変わり果てていた。足元にはおびただしい血しぶき、その流れが土にしみ込み、生々しく視界を侵していた。
「これは…お味方の…」
滝川助九郎は、折れた旗指物と血痕を見つめながら、眉をしかめた。玉瀧口から進んだ味方が、無惨にも襲撃を受けた跡であるのは明らかだった。
「また派手にやられたのう」
義太夫が息を切らせながら追いつき、辺りを探る。視線を落とし、旗の紋を確かめると、低く呟いた。
「これは甲賀者じゃ。鶴の身内の美濃部ではなかろうか」
「美濃部が討たれたか?」
にわかに背後から響く声に、助九郎と義太夫が振り向けば、そこには馬上の一益の姿があった。
「おぉ、殿。さすが早い…」
助九郎が恭しく頭を下げる。
「はい。この様子では美濃部殿が無事とは到底思えませぬ」
一益は鋭い目つきで、散らばる血痕と折れた旗指物を見渡し、深く息をついた。無念さと怒りが入り混じるようなその眼差しに、助九郎や義太夫も無言で頷き、視線を交わした。伊賀の地に深まる緊張の気配は、肌に刺さるような冷たさであり、まるで闇がひとつ、さらに深まったかのようであった。
「それゆえの、あの残骸か」
一益が遠くを見据え、静かに呟いた。その鋭い視線の先に義太夫と助九郎も目を向けると、そこには焼き払われ、黒煙が立ちのぼる寺院や家屋が広がっていた。燃え尽きた家々は骨のように残り、風が吹くたびに灰が舞い上がり、あたりは重苦しい静寂に包まれている。
まもなく追いついてきた三九郎も、皆の見る方角を見て、言葉を発せずにいた。
「あれは平楽寺であろう」
一益の視線の先、比自山のほど近くに、かつてより伊賀の者たちが集うと伝えられる古刹、平楽寺と思しき残骸が見えた。
三九郎はただ黙って焼け跡を見つめ、荒れ果てた境内に目をやる。かつての石塔の残骸が、今は黒く焼け焦げ、無惨にも崩れ落ちている。それでも古代よりこの地に根を張ってきた寺の面影が、僅かに残る苔むした石に宿っているように思えた。
「評定所として伊賀衆が籠っておったという寺で?」
戦支度を整える者、策を練る者の声が夜の静けさを破り、寺の周囲には警戒の目が光っていると聞いた忠三郎は、堀久太郎、脇坂安治らの軍勢をあわせた総勢七千の兵をもって寺を制圧しようとした。
寺に籠っていたのは僧兵が三百あまり、後は寺男と高僧、付近の村落から逃れてきた女子供をあわせて七百あまりだったという。当然、やすやすとこれを降す筈だったようだが、そう上手くはいかなかった。
「思いの外、寺に篭る者たちは強かに抵抗したとか」
平楽寺に籠っていた僧兵たちは、ただの守り手ではなかった。伊賀者の鍛え抜かれた手だれが混じっており、夜陰にまぎれて奇襲を仕掛けては逃げ、闇に溶け込むように姿を消していった。
攻めあぐねた寄せ手の将たちは、一益に知らせを送ってきた。一益は、戦況を見極め、なるべく民の犠牲を避けるべく戦を進めたいとの思いも抱いていたが、事ここに至っては守勢に回るのは得策ではない。
道家彦八郎に命じ、即座に援軍を整えて平楽寺へと向かわせた。
援軍を得た忠三郎は、勢いを取り戻し、再度寺へ攻め入った。そして容赦なく制圧を強行し、寺に火をかけたようだ。
やがて、一益が感心したようにつぶやいた。
「火のつけかたに無駄がない。見事に寺社や家屋だけを狙い定め、火を放っておる」
指を差し、風に揺らめく炎の方向を指摘する。
「あれを見よ。風上がよく燃えておるのは、風の動きを読んで火を放った証拠じゃ」
義太夫は、かすかな震えを押し殺しつつ言葉を紡いだ。
「殿、これは、敵が村を焼き払うことで我らに挑んでおるのでございましょうか」
一益は目を細め、未だ微かに立ち上る煙を見据え、静かに首を振った。
「いや、そうではあるまい。これは、身内を討たれた鶴が怒りに駆られ、村ごと焼き払うたのであろう」
その一言に、義太夫と三九郎は互いに顔を見合わせ、無言で息を飲んだ。忠三郎は従兄を討たれた怒りを抑えきれず、この荒れ果てた村全てにその矛先を向け、容赦なく焼き払ったのだ。焼き払われた村の瓦礫が、真紅に染まりながら沈む夕陽に照らされ、村の名残を包むかのように燃え続ける炎の気配が、静寂の中に凄まじい激情を浮かび上がらせている。
義太夫は、呆然と炎の揺らめきを見つめながら、戸惑いを隠せぬ様子で呟いた。
「あの鶴が、かようなことを…。火攻めとは熟練の者がなす技。見よう見まねでやったにしては、わずかな手抜かりさえもなく…」
一益はそんな義太夫の言葉に静かに頷き、深い目で火のくすぶる村を見つめ続けた。
「そこがあやつの恐ろしいところよ」
静かな言葉の奥には、忠三郎の底知れぬ執念と冷徹さに対する畏れが滲んでいた。忠三郎がその激しき怒りを理で押さえ込み、計算すらも狂わせぬほどの精緻さで火攻めを成し遂げたことが、心の底にある冷ややかさを物語っているかのようだ。
「なんとも意外な…。あの温厚な忠三郎が、かようなことをするとは…」
三九郎は、その驚きを隠せぬまま、燃えさかる村の残骸に目を向けた。普段の忠三郎を知る者には、到底信じられぬ光景が目の前に広がっている。
義太夫もまた、目を細めてその様子を見つめつつ、ふぅと重いため息をついた。
「普段、怒らぬ者が怒ったときこそ、最も恐ろしいとは、よく言ったものじゃのう」
この凄惨な光景には、普段の温厚な姿と、それに反するかのような深い怒りが秘める凄まじさが感じられた。普段の姿がいかに柔和であろうとも、その心の底に眠る激情が、いざ解き放たれた時には、理をも超えて冷徹な行動へと突き動かす――まさに今の村の光景が、その一端を物語っている。
「怒った鶴は、あやつの祖父、快幹以上の妖魔になるやもしれぬな」
義太夫は軽く笑みを浮かべ、冗談めかしてそう言った。しかし、その言葉の裏に秘められた意味を、三九郎はただの笑い事では済ませられなかった。義太夫の笑いに合わせることもせず、ただ黙ってその表情を曇らせた。
蒲生快幹――謀将の悪名高き祖父の影が、忠三郎にも重く覆いかぶさっているかのように思える。快幹はかつて、冷徹な智謀をもってその勢力を拡大し、あまたの身内を犠牲にしてきた。三九郎は、その冷酷さが忠三郎にも宿るのではないかと、ふとした不安に胸を締めつけられた。
(父上は如何お考えなのであろうか…)
三九郎はそう胸中で呟き、そっと一益の顔を覗き見た。しかし、もとより滅多に感情を表に出さぬ父の面持ちは、いつもの冷静さを保ったままであり、忠三郎の行動を目にしても、普段と変わらぬように見える。
一益はただ静かに、燃え残った村を見つめていた。その目には、忠三郎の怒りも、その行動の冷徹さも見極めようとするような厳しい光が宿っているが、何かを語るわけでも、何かを咎める様子もない。その瞳の奥に何があるのか、三九郎には掴み切れなかった。
一益は燃え残った村の向こうを見据え、ふと低く呟いた。
「この分では大人しゅう比自山で待ってなどはおらぬであろう。助九郎、先に行き、様子を見て参れ」
その声に気を引き締めた助九郎は、即座に膝をつき、一益に恭しく一礼する。
「ハハッ。では早速に」
指示を受けるや否や身を翻し、迷いなく先行して駆け出した。滝川勢が進む道を確認し、比自山に待つであろう味方の様子を探るため、助九郎はその影を長く引きながら、静寂の中を駆け抜けていった。
「父上の仰せの通り、他の者はともかく、忠三郎が大人しく待っているとは思えませぬ」
三九郎がそう言うと、義太夫も頷いて同調する。
「軍目付の安藤も、鶴に騒ぎ立てられて抑えきれる器でもなし。むしろ、押し切られて共に城を攻めておるやもしれませぬぞ」
義太夫は遠くを見やりながら、ひと息ついた。
「このままでは、向こうで何かしら騒動が起こっても不思議ではありませぬ。ともあれ、我らも早く駆けつけねばなりますまいて」
二人の視線は山道の向こう、比自山の方角へと注がれていた。
秋の夜が近づき、遠くの山々が朱に染まる。山を背に野営していると、助九郎が、蒲生勢とともにいた兄の助太郎を連れて戻ってきた。
「おっ…と、助太郎ではないか。如何した?」
二人の姿をいち早く見つけた義太夫が、二人の元に駆け寄る。助太郎は義太夫の顔を見ると、口を開くのもためらうように、険しい表情で言葉を詰まらせた。助九郎がそれを察し、兄の肩を軽く叩いて背を押すように促す。
「殿の到着を待たず、比自山に攻め入ったのでござります」
助太郎はそれだけ言うと、息を切らせる。義太夫は気づいて腰に括り付けた竹筒を渡した。
「落ち着け。まずは飲め」
助太郎は義太夫から竹筒を受け取ると、喉をうるおすように一息に飲み干した。その動作には、長い道中を駆けてきた疲れと焦燥がにじんでいる。息を整えた助太郎は、再び厳しい表情で義太夫に向き直る。
「比自山の守りが日増しに固められてゆくのを見て、忠三郎様は待つことをよしとされず…昨日未明、ついに攻め入られたのです。しかし、敵は巧妙に罠を張り巡らし、我らは思いのほか苦戦を強いられ、蒲生勢をはじめ、堀様、筒井様の軍勢も少なからぬ被害を…」
義太夫はその報告に深く頷きながら、複雑な思いを飲み込むように口を閉ざした。
「されど、それだけではありませぬ。その夜、比自山から夜襲をしかけた伊賀衆により、筒井勢が大打撃を受け、ご家老が討死。筒井様は兵を引きました」
義太夫はその知らせに目を見開き、しばし言葉を失った。助太郎の緊張した面持ちが、その事態の重大さを物語っている。
「…筒井勢が討ち破られた、か。そして家老までもが討死とは…」
思っていたよりも被害が大きい。これは大変なことになった、と義太夫はあわてて一益の元へと走った。足元の地面は夜露に濡れて滑りやすくなっていたが、そんなことを気にしている暇もない。
「殿!一大事にござりまする」
一益が静かに振り返り、その鋭い眼差しが義太夫を捉えた。義太夫はあふれる言葉を抑えきれず、一気に筒井勢の壊滅と家老の討死、忠三郎の急攻が原因となった事態の深刻さを伝えた。話が進むごとに、一益の表情は一層険しくなり、静かな怒りとともに深い憂いが滲んでいるようだった。
「鶴、急く余りに賢慮を欠いたか」
「これは思うていたよりも、よろしからぬ雲行きで」
一益は静かに目を伏せ、言葉少なに思案している。そのまま黙して語らぬ主の姿に、周囲の空気はまるで霧深き山間のごとく、重苦しきものと化した。
「ま…まずは、丹羽殿にもこの件をお知らせせねばなるまいな。助九郎、急ぎ丹羽殿の元へ行って参れ」
「ハハッ」
助九郎は小気味よく返事し、義太夫を一瞥してすぐさま駆け出した。
義太夫はこの重たい空気にどうにも耐えられぬ気持ちが募り、助九郎に続くようにその場を立ち去ろうと帷幕を後にした。が、そこに待ち受けていた声が背後から響く。
「義太夫」
ぴたりと足を止め、ぎくりと肩を震わせて振り向けば、そこには三九郎が立っている。
「若殿…はぁ、驚きました」
義太夫は額の冷や汗をぬぐいながら、なんとか笑みを浮かべた。
「逃げるように父上の元を下がって参ったな」
三九郎が微笑交じりに言うと、義太夫はばつが悪そうに頭を掻いて笑った。
「若殿。まずは飯でも。腹が減っては戦さはできませぬ」
と義太夫はおどけた口調で返し、うっすらと腹をさすった。
三九郎は道家彦八郎たちの鍋の輪へと歩み寄り、差し出された椀の中を覗き込んで、少しばかり驚いた。
「赤米ではないか」
長く大船に乗っていた三九郎は知らなかったが、陸の滝川勢は常より通常の米を食べることはなく、赤米を食べていたようだ。
三九郎は椀の赤米をじっと見つめる。赤米、別名「大唐米」とも称され、大陸から渡り来たこの米は、炊き上げれば増量が利くものの、その食味は白米には及ばぬため、百姓が口にする米とされている。
「年貢米は如何した?」
ふとそう尋ねると、道家彦八郎が微かに笑みを浮かべ、
「それは皆、鉄砲に化けておりまする」
と答えた。つまり、納められた年貢米は鉄砲の費用とされ、戦のための武器へと姿を変えたということだ。
三九郎は思わず目を伏せた。
(知らなかった)
大船にいる間、父・一益から常に十分すぎるほどの白米が送られていた。それは信長からの厚き配慮の賜物であり、飢えることなど一度もなく、何不自由ない日々を過ごせていたのだ。自分が赤米に触れることなく今日まで過ごせたのも、すべて父の計らいがあってこそ――三九郎は今さらながら、胸の奥が静かに痛むのを感じた。
(それを皆、不満ひとつ漏らさず、さも当然のように受け入れて…)
目の前には、黙々と赤米を口に運ぶ家臣たちの姿があった。今もなお、黙々と赤米を口に運び、鍋を囲むその姿には、日々の労苦や犠牲がにじんで見えた。
義太夫が笑みを浮かべ、明るく声をかけた。
「若殿。腹が減れば、なんでも美味いものでござります」
その笑顔に、三九郎の胸が熱くなる。傍らで道家彦八郎も生真面目な顔をして頷いた。
「然様。これが我らの誇りにて」
「これが我らの誇りか」
心の中でその言葉をそっと繰り返す。家臣たちが黙々と受け入れるその誇りは、土の香りを含んだ素朴なものであったが、何故か三九郎の心に安堵の色を広げ、静かに染み入ってくるのを感じる。
三九郎は家臣たちの姿を見つめながら、胸の奥でじわりと湧き上がるものを感じた。戦場での厳しい日々の中、自身が贅沢な白米を口にしていたことで、彼らの労苦からどれほど遠く隔たっていたかを、秋風が伝えるようにそっと教えてくれているかのようだった。
義太夫や道家彦八郎をはじめとする家臣たちが黙々と赤米を食す姿。そのひと粒ひと粒には、ただ飢えを凌ぐだけでなく、季節ごとの厳しい労苦と、静かなる誇りが込められている。赤米を口に運ぶ家臣たちの背後に、枯れゆく草が一面に広がり、黄昏の風にそよいでいる。その風は、秋の涼やかな香りと共に、彼らの忍耐と無言の忠義を三九郎の心へと運び、じんわりと染み入っていく。
三九郎は黙々と鍋を平らげていく家臣たちを見ながら、夕映えに染まる空を見上げ、心の中でひとりごとを呟いた。
(父上、この世を知り、我が身を知るのは未だ至らぬ我が身なれど、いずれ滝川家にふさわしい当主となるよう、精進いたしまする…)
秋の夜が次第に近づき、遠くの山々が朱に染まる頃、家臣たちが赤米を噛みしめながら鍋を囲む姿は、いつになく尊いものに見え、三九郎の胸に深く刻まれていった。そのひとりひとりの顔には、ただただ己の務めに励む静かな決意が宿り、夕暮れの空気の中で、それがかすかに輝いているように感じられた。
その風景は、秋が終わりを告げ、冬が近づいてくる寂しさとは異なり、心の内に暖かい灯がともるような不思議な感覚を三九郎にもたらした。彼らと共に歩む道、共に分かち合う時間、そのひとつひとつが、まるで凛と冷たくなる秋の空気の中にほんのりと残る温もりのように、三九郎の胸に確かに燃えていた。
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