獅子の末裔

卯花月影

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8.謀略の谷

8.5 先祖の呪い

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 城下に行くと、一益が義太夫他の家臣たちを連れて、絵図面を前にして鍛冶屋で何か話している。その隣には大小様々な大筒が並んでいる。
(かようなものは見たこともない)
 一益が作らせている新しい武器は予想以上に大きく、手に持って撃てば、撃った者は吹き飛ばされそうなほどだ。
「一度は船につけ、試し打ちせねば、まことに使い物になるかどうか分からぬな」
 一益が三九郎を手招きし、あれやこれやと説明をして、意見を求めている。砲術のことがさっぱり分からない忠三郎は蚊帳の外だ。

「鶴」
 鉄砲鍛冶と話をしていた義太夫が、鍛冶屋の奥で呼ぶ。
「如何した。なにやら心ここにあらずではないか」
 普段通りにしていたつもりなのに、なぜ、わかるのか。
「三九郎も砲術の名手か?」
「おぉ、殿の右に出るものはそうそうおらぬと思うていたが、三九郎様もなかなかの腕前じゃ」
 山中で信長を狙い撃ちしようとしていたほどだ。なんの不思議もない。

 忠三郎はちらりと三九郎を横目で見てから、
「重丸を撃ったのは三九郎であろう?」
 いきなり核心に迫ることを言われ、義太夫はうっと返事に詰まる。
(ぼんやりしておるようで、見るべきところは見ておるのか)
 これはなかなか侮れない。
「それは…まぁ、わしからは何とも言いようがないが…」
 この返事では、暗に肯定している。忠三郎は可笑しそうに笑った。
「素破は平然と嘘偽りを口にするというが、おぬしは存外に正直なところがあるのう」
「わしは正直者の素破じゃ。正直は一生の宝というからのう…。待て、それは如何なる意味じゃ」
 義太夫がハテ?と首を傾げる。

「されど、重丸はわしを助けにために、生まれ変わってくれた」
「ん?子が生まれたか?男であったか」
「男と聞いておる。されど…」
 忠三郎が町野備前守の話をすると、義太夫はフムフムと聞いていたが、
「おぬしは存外に羽目を外すことができぬようじゃな」
 忠三郎が素直に重臣の言う通りにしたことが、意外だったようだ。
「家を潰すかもしれぬ、腹を切るとまで言われては…。義太夫、おさちがどこへ連れていかれたか、探してはくれぬか」
 助太郎にも同じことを頼んで断られた。しかしどうにも諦めきれない。
「探して如何する?まさか会いに行こうなどと思うておるのか」
「それは…」
 会いに行こうと思っていた。おさちは突然、どこかへ連れていかれて驚いているだろう。せめて自分の口から、今回のいきさつについて話をしたい。

「鶴、おぬし…ウムム…ちと、こっちへ参れ」
 義太夫が忠三郎を鍛冶屋の外へ連れ出そうとすると、後ろから鍛冶屋に声をかけられた。
「滝川様、先ほどの話は如何いたしましょう」
「おぉ、なんとか半年で頼む。人手が足りぬようであれば、甲賀から連れて参る」
 と上機嫌で外へ出ようとする。入口付近には何か話しこんでいる一益と三九郎がいた。
「義太夫。甲賀から人手を増やすというは…」
 忠三郎が何のことかと問いかけると、それを耳にした一益が、顔をあげ、
「甲賀から人手?そんな話をしたのか」
 一益が聞くと、義太夫は笑いながら、
「いやいや。いざとなれば、堺辺りから鉄砲鍛冶をかっさらってくれば済むことにて」
 随分と物騒な話になっている。堺から鉄砲鍛冶をさらうとは、聞き捨てならぬ話だが、一益は常の如く、顔色一つ変えない。

 義太夫が何食わぬ顔をして通り過ぎると、一益は忠三郎を見て、
「快幹殿はわしが来ていることを存じておられるか?」
 いきなり祖父の名前を出された。先ほどの三九郎の話も気がかりだったが、一益が何か始めようとしているのではないかと不安になる。
「いや…まだ…」
「では、今宵は快幹殿と膳を並べたい。そのように取り計らえ」
「お爺様と?」
 これは絶対に何かある。
「鶴。潮時じゃ。わかっておろう」
 一益は祖父をどうにかしようとしている。
(そのようなこと、突然言われても…)
 おさちのことに引き続き、祖父のこと。矢継ぎ早にいろいろなことが起きると混乱する。少し考えるときが欲しい。
「例の場所へ…」
 何とかそれだけ言うと、足早にその場を後にした。

 向かった先は母の眠る信楽院。逃げるように信楽院の門をくぐり、ふぅと深呼吸すると、義太夫が付いてきていることに気付いた。
(あ、話をしているところであった)
 義太夫と話している途中だったことを思い出した。
「義兄上に突然、お爺様の話をされて忘れておった。義太夫、わしをどこへ連れて行こうとしていた?」
 ずっと後ろに付いてきていた義太夫を振り向くと、義太夫はいやいやと笑い、
「ここじゃ」
「こことは?信楽院へ?」
「然様。こっちじゃ」
 義太夫がすたすたと歩いて行ったのは、毎年、一益が花を添えている墓石の前だった。

「ここは義兄上の…」
「殿は、何もかも捨て、惚れた女子と国を出ようとしておられたのじゃ。されどまぁ、その途上、いろいろあって、女子が命を落とした」
 そうだったのか。何か込み入った事情があることは分かっていたが、若い頃とはいえ、あの一益がそんな大胆な行動をとったとは。
「すべてを捨てる覚悟があっても、かような仕儀となる。わしはのう、人に説教できるような、そんな大層な者ではない。されど、あの折の殿の嘆き悲しむお姿は忘れることができぬ。それゆえ、おぬしにも同じ思いをしてほしくはない。ましてや、おぬしはまだ快幹の件も片付けてはおらぬではないか。重臣どもが子を隠してくれたのであれば、それは願ってもないこと。このまま表沙汰にならなければ、命狙われるようなことにはなるまい。まずは快幹の件を片付け、奥方に話を通してから女子を迎えにいっては如何じゃ」

 昔、佐助から聞いた話を思い出した。その日、銃を撃ち、追手を倒した者のそばにはもう一人いて、弾込めしていたのではないか、と佐助はそう言っていた。
(義太夫だったのか。義太夫、おぬしもその場にいたのか)
 そして嘆き悲しむ一益の傍にいて、すべてを見ていた。
 何故だろう。町野備前守の言うことには納得できず、釈然としない思いだけが残ったと言うのに、義太夫の言うことは素直にうなずくことができる。
「おぬしの言うこと、尤もじゃ。まずはお爺様のことを片付けよう。されど、ひとつ頼みがある。おさちに、必ず迎えに行くと、わしがそう言っていると伝えてはくれぬか」
 おさちは忠三郎をどう思っているだろう。深く失望しているかもしれない。
「よかろう。早々、容易くは見つけられぬであろうが、なんとか探して、伝えよう」
 忠三郎が安心して頷くと、義太夫は何気なく門のほうを見て、あっと声をあげる。
「いかん。殿がお見えじゃ。またいらぬことを話したと叱られてしまう。今の話は聞かなかったことにしてくれ」
 こんなに慌てふためく義太夫を見れば、一益は気づいてしまいそうだ。忠三郎は笑いをかみ殺して頷いた。

 信楽院本堂の横にある表書院。人払いされ、一益と忠三郎の他には義太夫だけが残された。
「お爺様が父上の薬を調達されておりまする。お爺様がいなくなると…」
 静まり返った本堂では香が焚かれているらしく、ほのかに香りが漂ってくる。
「その薬がないと、どうなる?」
 一益が問うと、忠三郎は黙り込む。何を言おう。どこまで言おうかと思い悩んでいると、
「乱心するか?」
 忠三郎はハッとして一益を見る。
「やはり存じておいでか」
 一益は全てを知っているのだろうか。どこまで話せばいいのか、どう話せば分かってもらえるのか。
(あの場所へ…今一度、あの場所へお連れするしかない)
 呪われた一族の元凶となった、あの場所へ。
「義兄上、来てくだされ、鎌掛かいがけへ」
 忠三郎が思いつめた目でそういうと、一益は黙ってうなずいた。

 蒲生領の中でも鈴鹿山脈に繋がる山間部に近い場所にあるのが鎌掛だ。峠を越えた向こうは甲賀で、この辺りには何百年も前から山伏が住み、領主である蒲生家と争ってきた歴史がある。
「殿、この辺りはもしや…」
 先ほどから石仏や石塔の残骸が目につく。義太夫が声をかけると、一益も気づいていたらしく、黙ってうなずく。
 二人の様子に気付いた忠三郎が苦笑して、
「お気づきで。いかにもこの辺りは一向宗の門徒が多く住む地域でござります」
 念仏を唱えるだけで極楽に行けると教える本願寺の教えにより、門徒はそれまで大切にしていた石仏や石塔を信仰の対象とはしなくなる。こうして土に埋もれているところを見ると、多く住むどころか、村落の全員が一向宗の門徒なのかもしれない。

「それゆえに、我が家が上様に倣って一向宗を弾圧することで、却って領内に一揆を誘発することにもなりかねぬと、家臣たちは案じておりまする」
 それでもなんとか折り合いをつけて共存することができているのは、蒲生家が何百年にも渡り、この地を領し、この地に住む民との絆を大切にしてきたからだ。

 この鎌掛にある鎌掛城は元々は二百年前に作られた小さな砦だった。その砦を音羽城の支城にするため、蒲生貞秀の嫡男・蒲生秀行が大改修をした。
 この秀行が若くして亡くなり、子の秀紀の代になったときに起こったのが蒲生家の家督相続争いだ。

 快幹の父である高郷は、秀行の弟になる。家督を得ていない次男・三男はいかに優れたものであっても宗家の家臣でしかない。
「次男の高郷は武勇優れた者であったと?」
「はい。されど嫡男の秀行とその子息である秀紀は…」
 文才にめぐまれ、武芸よりも詩歌を愛する人物だった。
「それはまるで鶴のような…」
 義太夫が何の気なしにそういうと、忠三郎がジロリと睨んだので、義太夫は慌てて口を押える。

 蒲生家の家臣は二派に分かれて互いに反目しあうようになり、それを憂いだ二人の家臣が、高郷に諫言した。
「家中で争うことの非を咎めたのでござりますが…」
 高郷は家督相続の邪魔になる二名を一族ごと血祭にあげてしまった。
「その結果、家臣たちや領民までも巻き込む戦さとなりました」

 領民は分断された。領内に住む者は皆、二派に分かれ、それまで互いに助け合って暮らしてきた親族や友人・知人・近隣の者と争うことになった。
 本家の秀紀は八か月もの間、音羽城に籠って応戦したが、兵糧はつき、城兵が相次いで病に倒れていった。

 ついに降伏した秀紀は音羽城から鎌掛城へと移り、領地の半分と蒲生家の家督を高郷の子・快幹に譲り渡した。
「そのときにはもう、田畑は荒れ、家臣も領民も疲れ果てていたとか。されど争いは収まらず…」
 高郷は本家のすべての領地を得ようとした。和睦交渉に来ていた本家の家臣が日野中野城を出て、鎌掛城に戻ろうとしたところを襲って闇討ちにした。

「我等も相当な謀略をもって敵を降してきたと思うておりましたが、そこまで執念深く、追い込むことは致しませなんだなぁ」
 義太夫が一益に同意を求めるように言うと、一益は苦笑して、
「…して、最後に残った秀紀は毒殺か」
 高郷はもう一度、兵をあげ、本家を完全に潰そうと画策したらしいが、そのときにはもう家臣たちも領民も、蒲生家の内紛に巻き込まれることに嫌気がさしていた。そこで毒を盛って暗殺することにした。

「毒を盛られたことに気付いた秀紀は、立ったまま腹を切り、堀へ身を投げたと。それがこの池でござります」
 その毒を盛った者も捕らえられ、処刑されたというから、蒲生高郷というのは素破顔負けの謀将ぶりだ。
 一益と義太夫は目の前の溜池に目を移す。うっそうとした山間に水を湛えたこの池は、蒲生秀紀のあざなを取り、藤兵衛が池と呼ばれている。

「我らが家中で再び争えば、我らばかりか家臣や領民をも巻き込むこととなりましょう。それだけは何としても避けたいと、そう思うて…」
 蒲生家の血で血を洗う内紛は忠三郎が生まれるわずか三十年前。家臣の中には騒動に巻き込まれ、親族を失った者も少なくはない。人々には互いに争った記憶が未だ色濃く残っている。そんな中で再び蒲生家内部で争えば、忠三郎が危惧するように、家臣たちも領民も蒲生家に愛想をつかすだろう。

 忠三郎が真摯な思いを告げると、一益はそこにある一輪の花を手に取る。
「この白い花じゃ」
「それは?」
「素破たちの間では腹下し薬とも阿呆薬とも呼ばれる毒草。人の心を操るあやかしの妙薬の元」
 気づかなかった。こんなに身近に生えていたとは。
「この一帯に群生する石楠花しゃくなげ。これも毒草じゃ。石楠花は本来、かような低地に自生することはない」
「低地にはない?石楠花が?」
 では誰かが意図的に植えたことになる。
「もしや、この谷は…」
「然様。この馬酔木あしびなど、花も茎も葉も全てに毒がある」
「この谷全体で毒草を育てていたと、そう仰せで?」

 昔、重丸が似たようなことを言っていた。
『皆が恐れる呪いの谷。そして皆が恐れて近寄らないこの場所で、我が家は代々、密かに毒草を育てておる』
 密かに、と聞いていた。それがまさか、こんなに大胆に群生しているとは。
(いつのころから、そのようなことを…)
 考えられることといえば、蒲生家が甲賀と関わりを持つようになった百年以上も前。
「鶴、そなたは存じておるのか。あの薬を続ければ、病はますます悪うなる」
「それは…」
 なんとなく分かっていた。投薬を続けていても父の具合は年々悪くなるばかりで、一向に回復の兆しが見られない。かといって、どうしたらいいのかもわからなかった。
「少しずつ、薬の量を調整して減らすしかなかろう」
 薬は甲賀の者に手配させるという。しかし、そんなことをして大丈夫なのだろうか。それよりなにより、一益は祖父をどうしようというのか。

(これまでのことを全て、白日の下にさらすと、そう仰せか)
 しかし何の証拠もない。祖父が素直に認めるとは思えない。
「鶴。快幹は孫であるそなたを侮っておる。これまで一度でも、祖父や父に逆らったことがあるか?」
 逆らうどころか、顔を合わせる機会も滅多になく、まともに口をきいたこともない。
「そのような無作法なこと…ただの一度もありませぬ」
「では、それを逆手に取れ」
「は。それは如何なることで?」
「戦場で家臣を従え、戦っておるのは誰でもない、そなたではないか。よいか。これよりわしが快幹の正体を暴く故、家臣たちに命じて手筈を整えておけ」」
「義兄上は一体、何を…」
 忠三郎が気遣わしそうに見上げると、希代の謀将は意味ありげに笑った。
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