50 / 66
エンデラ王国と不死族
転火
しおりを挟む
「宙音と水音は、陽光の丘まで下がれ」
「かしこまりましたあ」とすぐさま、二人は丘の方に走っていった。
――開眼状態が終わった宙音は、一定時間能力が下がる。時間と共に回復していくが、今は終わったばかりでまずい。
千景は、忍者技能『転火』でムカデの化物の方に向かって加速した。『転火』は短距離の転移を繰り返し、発動するごとに加速していく忍者技能で、加速に比例して攻撃力もあがるが、反比例して防御力が低下し、操作性がピーキーになっていく。
千景は距離を詰めて気づいた、体から出ている黒い煙はただの煙じゃないことを、遠くからみると隙間がなかったからわからなかったが、煙だと思っていたのは小さな黒い粒の集合体で、不規則な動きでうねっている。
―虫の大群かよ……量の多さに『天稟千里眼の術』でステータスを覗くのが阻害されている、大量の虫によるジャミング。
千景は更に空間を飛びながら加速する。ムカデの上についている半身の口が開いた。
「人間よ、やってくれたな、パイルエスカルネが帰ってこないのを不審に思っていたが……これ程までにやるとは、彼奴が帰ってこなかったのも道理がいったわ。そしてこうやって近くで見ると、どうやら、お前と我とでは違うようだな」
そんなに大声を出しているわけではないのに、大気自体が恐怖を覚えているかのように震える。「お前がヴィネリアか!」ありったけの力をこめて千景は返答した。話をこちらに振ってくれるというのなら丁度いい。
「そうだ、人間、お前も我と同じようにこの世界に黒渦の杖に呼ばれてきたのだろう、そして我は『災禍の魔典第一章の顕現者』として、ここにおる。我とお前はここで出会う予定だったというのは確かなようであったが。どうやら我が考えていたものとは違うようだ、我は、お前を目的を共にするものだと思っていたが、そうではないようだな」
「目的? パイルエスカルネも似たようなことを言っていた!」
「ヴィネリア様! やつが『レプリカ―ズド』でないのならばそれ以上話す必要はないのでは!」ヴァンプドラゴンに乗っている一人残った騎士が、叫んだ。
「五月蠅いぞ、イグニア、あれだけの物を与えてやったのに、全てを失っておいて、どの口が我に意見する」
「そ、それは……」
「我の使徒は、情けなくて困る、丘の上にいるやつらの相手でもしておれ、目障りだ、興が削がれる」イグニアと呼ばれた騎士は、丘の方に飛んでいった。
「さて邪魔者が消えたな、人間よ、話の続きはまあ……どうせもう死ぬのだ無駄だな」
ヴィネリアは黒い杖を、千景の方に向け「見よ我が神なる力を、そして脆弱なる者よ、朽ち果てよ『スカーレット・ヴォルテックス』」と叫んだ。
黒い杖から、稲妻のような火花が走り、周りの虫たちを飲み混み火流となって襲い掛かってきた。千景は大きな火流を、横に避けるが、火流の中から飛び出してきた火を纏った虫が次々と体当たりをして来る。しかし火流本体の攻撃は、当たったらダメージを食らいそうではあったが、火を纏った虫自体には、そこまでの攻撃力はなく、千景の体に到達する前に弾かれる。しかし、一度弾かれてもまた飛んできて体当たりをして、その数が徐々に増えていく。
――まさかこいつらも不死の蟲か
千景は『転火』で加速して、距離を取る。火流がねじれそれを追う。そんな中で、千景はちらりと後方を見ると、丘の方では、宙音の『青龍水克の陣』と水音の浄化の炎でぎりぎり守られていた。
「かしこまりましたあ」とすぐさま、二人は丘の方に走っていった。
――開眼状態が終わった宙音は、一定時間能力が下がる。時間と共に回復していくが、今は終わったばかりでまずい。
千景は、忍者技能『転火』でムカデの化物の方に向かって加速した。『転火』は短距離の転移を繰り返し、発動するごとに加速していく忍者技能で、加速に比例して攻撃力もあがるが、反比例して防御力が低下し、操作性がピーキーになっていく。
千景は距離を詰めて気づいた、体から出ている黒い煙はただの煙じゃないことを、遠くからみると隙間がなかったからわからなかったが、煙だと思っていたのは小さな黒い粒の集合体で、不規則な動きでうねっている。
―虫の大群かよ……量の多さに『天稟千里眼の術』でステータスを覗くのが阻害されている、大量の虫によるジャミング。
千景は更に空間を飛びながら加速する。ムカデの上についている半身の口が開いた。
「人間よ、やってくれたな、パイルエスカルネが帰ってこないのを不審に思っていたが……これ程までにやるとは、彼奴が帰ってこなかったのも道理がいったわ。そしてこうやって近くで見ると、どうやら、お前と我とでは違うようだな」
そんなに大声を出しているわけではないのに、大気自体が恐怖を覚えているかのように震える。「お前がヴィネリアか!」ありったけの力をこめて千景は返答した。話をこちらに振ってくれるというのなら丁度いい。
「そうだ、人間、お前も我と同じようにこの世界に黒渦の杖に呼ばれてきたのだろう、そして我は『災禍の魔典第一章の顕現者』として、ここにおる。我とお前はここで出会う予定だったというのは確かなようであったが。どうやら我が考えていたものとは違うようだ、我は、お前を目的を共にするものだと思っていたが、そうではないようだな」
「目的? パイルエスカルネも似たようなことを言っていた!」
「ヴィネリア様! やつが『レプリカ―ズド』でないのならばそれ以上話す必要はないのでは!」ヴァンプドラゴンに乗っている一人残った騎士が、叫んだ。
「五月蠅いぞ、イグニア、あれだけの物を与えてやったのに、全てを失っておいて、どの口が我に意見する」
「そ、それは……」
「我の使徒は、情けなくて困る、丘の上にいるやつらの相手でもしておれ、目障りだ、興が削がれる」イグニアと呼ばれた騎士は、丘の方に飛んでいった。
「さて邪魔者が消えたな、人間よ、話の続きはまあ……どうせもう死ぬのだ無駄だな」
ヴィネリアは黒い杖を、千景の方に向け「見よ我が神なる力を、そして脆弱なる者よ、朽ち果てよ『スカーレット・ヴォルテックス』」と叫んだ。
黒い杖から、稲妻のような火花が走り、周りの虫たちを飲み混み火流となって襲い掛かってきた。千景は大きな火流を、横に避けるが、火流の中から飛び出してきた火を纏った虫が次々と体当たりをして来る。しかし火流本体の攻撃は、当たったらダメージを食らいそうではあったが、火を纏った虫自体には、そこまでの攻撃力はなく、千景の体に到達する前に弾かれる。しかし、一度弾かれてもまた飛んできて体当たりをして、その数が徐々に増えていく。
――まさかこいつらも不死の蟲か
千景は『転火』で加速して、距離を取る。火流がねじれそれを追う。そんな中で、千景はちらりと後方を見ると、丘の方では、宙音の『青龍水克の陣』と水音の浄化の炎でぎりぎり守られていた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR
ばたっちゅ
ファンタジー
相和義輝(あいわよしき)は新たな魔王として現代から召喚される。
だがその世界は、世界の殆どを支配した人類が、僅かに残る魔族を滅ぼす戦いを始めていた。
無為に死に逝く人間達、荒廃する自然……こんな無駄な争いは止めなければいけない。だが人類にもまた、戦うべき理由と、戦いを止められない事情があった。
人類を会話のテーブルまで引っ張り出すには、結局戦争に勝利するしかない。
だが魔王として用意された力は、死を予感する力と全ての文字と言葉を理解する力のみ。
自分一人の力で戦う事は出来ないが、強力な魔人や個性豊かな魔族たちの力を借りて戦う事を決意する。
殺戮の果てに、互いが共存する未来があると信じて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる