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その21:冒険者姉弟(後編)
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「おらおらおら! 獣くせーんだよ!! さっさとどっか行きやがれ!!」
僕と同い年位の若者が剣を振り回して、街の目ぬき通りで暴れていた。確かに僕らの世界の身なりをしているが、どう見てもチンピラかヤンキーにしか見えない。
道端で露店を出していた獣人達を追い払ったかと思ったら、その露店の売り物の果物を勝手に食べており、種や芯はそのままペッペと道に吐き捨てている。
「あのやろー。弱い者いじめして……」リーマ姫がお怒りの様なので、彼女が斬りかかる前に僕が声をかけた。
「ねえ君。君は人間の転移者だろ?」
「あんだー? 手前は……おや? もしかしておめえも人間かぁ?」
「君が拓君だよね? 君があまりに好き勝手に暴れるから僕が呼ばれたんだよ。僕も人間の転移者で冒険者兄妹のお兄さんさ!」
「はん。何が好き勝手だ。もともとそのつもりで転移して来たんだよっ!! なのになんだこのシケた世界はよ。獣や魔物ばかりで人間なんて一人もいやしねえ。俺は、ハーレム作って無双するためにこっちに転移したんだっちゅうの!!」
「あー、それは君がちゃんと商会さんと話し合わないからだよ。かくいう僕もハーレム希望は伝え忘れちゃったんだけどね」
「ほー、上等だ。だがそう言う割にはいい女連れてるじゃねえか? それ寄こせや」
拓君がノアナさんを湿った視線で舐めまわす様に見たが、リーマ姫がノアナさんの前に立って剣を構えた。
「なんだー、この犬っ子。俺とやろうってのか? ガキでも容赦しねえぞ!!」
「まったく。あんたこそよく吠える犬じゃない。私を舐めない方がいいわよ」
「このクソ犬がぁ!!」
そう言っていきなりリーマ姫に斬りつけた拓君の剣を僕が一撃で払い、拓君の剣は、そのまま空中高く弾き飛ばされた。
「くそっ、何しやがる!!」
「何って、先に手を出したのは君だよね? あんまり見境なく人を攻撃しちゃだめだよ」
「ふざけるな。こちとら転移の際、ちゃんとチート能力もらってんだ! 手前なんかに……」
「あー、それ僕も貰ってるから……って、いうかはっきり言って君、弱いよね?」
「んだとぉ、コノヤロー!!!」そう言いながら拓君が拳を振り上げて向かって来たので、僕は剣を鞘に納め、彼の拳をそのまま素手で受けた。
そう。さっき剣をはじいた時点で彼の力量は見切った。たしかに多少チートは効いていて、街の人たちではそうそう敵わなかったかもしれないが……僕の敵じゃないな。僕は拓君の手首を掴み、そのまま後ろ手にねじり上げた。
「うわっ! いてててっ。痛い! 痛いって!!」
「だから言っただろ。君は弱いって……」
うわー、気持ちいいー。一度こういうセリフを言ってみたかったんだよな。
「おとなしく僕の話を聞いてくれるなら、手を離してあげる」
「畜生! 俺をこんな目に会わせてタダで済むと思うなよ!!」
「いやいや。ここからどうするの? えっ!?」
いきなり後方から殺気を感じて、僕は拓君を後ろ手にねじり上げたまま後ろを向いたが、そこへファイヤーボールが飛んできて、それはモロに拓君を直撃した。
「ふぎゃぁーーーーーー」拓君の断末魔の悲鳴が街の通りに響き渡った。
「きゃぁーーーー!! 拓くーん!!!!」通りの向こうから女性が駆け寄ってくる。どうやら人間の様だが……彼女がお姉さんの茜さんかな?
「ちょっと、あんた。私の拓君に何してくれてんのよ。事と次第に寄っちゃ只じゃ置かないわよ!」その女性が、黒焦げになった拓君を抱きよせながら僕に言った。
「いや、攻撃したのはあなたですよね? もしかして弟があまりにやんちゃしてるんで、制裁を加えたのですか? 違うのでしたらとことんやり合いますけど」
僕はしれっとそう投げかけたのだが、その女性はキョロキョロと周りを見渡しながら「えっ!? ……あ、そうそう。そうです。弟がご迷惑をおかけしました……」と言った。あー、この人日寄ったな。廻りの人達がさげすんだ様な眼でこの姉弟を見ていた。最初のファイヤボールを見れば分かる。拓君もこの人も実力はC級クラスだ。
「それなら、街の皆さんにも一言お詫びされてはどうです? ほら、みんなお姉さんの事を尊敬のまなざしで見てますよ。弟に厳しい素敵なお姉さんだって」とちょっと持ち上げてみた。
「あっ……そうですね。あの、街の皆さん。うちの拓君がご迷惑をおかけしました。姉の私から深くお詫び申し上げます」そう言って女性が頭を下げたら周りで見ていた街の人たちがバラけ始め、リーマ姫がぷっと笑った。
「それじゃ、その男の子は、ヒールしてあげないと……」ノアナさんがうれしそうにそう言った。
◇◇◇
「それじゃ、ご両親が住んでいる家の権利を、黙って商会さんに渡して来ちゃったんだ……」
街から少し離れた道端で、僕らは二人から事情を聞いていた。
「はい。拓君が両親とうまくいかなくて、いっつも喧嘩ばかりしていて……それで私、拓君の為になるならって、ここへの転移を申し込んだんですけど、手持ち資金の関係であまり希望が通らなくて……」お姉さんの茜さんがそう言った。
「はは、あるあるですねー」ノアナさんが賛同した。
「だからといって、他人に迷惑かけていい訳ないじゃないですか。このノアナさんだって、C級の力しか貰えなかったけど、頑張って生きてるんですよ」僕の言葉に、ようやく意識が戻った拓君もブスっとした顔で答えた。
「でもよー。異世界来たんなら、チートでTUEEEでハーレムでざまぁで無双じゃなきゃつまんねえじゃん!!」
「いや、だからそれは自分の実力と相談しないと……商会さん絡みじゃなかったら、君たち街の人に粛清されてたところなんだよ。
でも……わかるよ。ハーレム……はぁ」
「ああ、そんじゃ兄さん。いっしょにハーレム目指さねえか? 兄さんの実力なら簡単に出来そうに思うんだけど……そんなに可愛い彼女つれてるし」いきなり拓君がそんな事を言い出し、その言葉にノアナさんがちょっと引き気味な顔をした。
「あー。いやー。一時、目指したんだけど、良くない事が続けざまに起こって心が折れたと言うか……でも、チャンスがあればいつかは……」
「そうっすか!? そしたらうちの姉ちゃんはどうです? こいつ、器量はそれなりだとは思うんですけど、あっちで仕事一筋で二十八にもなって処女で……こいつの転移先での希望知ってます? 三高の旦那のお嫁さんなんですよ。いっそ兄さんが貰ってやって下さい。そんでかわりにその子を俺に……」拓君がノアナさんを指さしながらそう言った。
「こら拓。あんた何言ってんの!? 私がこのお兄さんのお嫁さんって……でも……他に人間の男いなかったら仕方ないかも……」あれ? 茜さんってチョロい?
「だめー。お兄さんは私の婚約者です! 愛人なら許します!」
リーマ姫が大声を張り上げた。
「おお、兄さん。こんな獣ロリまで手に入れられて……俺には真似出来そうにねえ……」
「あんた全然分かってないわね。このお兄さんはすごいんだから。あそこの大きさもそうだけど、異世界ならなんでもありって、実の妹さんともしょっちゅうエッチしちゃってるんだから!! だからあんたも見習って、お姉さんとエッチすればいいじゃん!!」
「うわっ! リーマ姫。ストップ!!」僕が慌ててリーマ姫の口を押えたが、すでに手遅れで、茜と拓の姉弟はそのままフリーズしていた。
「兄さん。実の妹とって……有りなんすか?」拓君が僕ににじり寄って来た。
「……異世界だから何でもあり……かな?」
「ちょっと……やだやだやだやだ。私、拓になんかバージンあげないからね!!」
茜さんが動揺しているのがはっきり分かる。
「それじゃ……僕とどうですか?」思いっきりすかしながらそう言った僕を、茜さんはこれまた思いっきりストレートで殴った。
「近寄るな! 鬼畜!! あー、穢らわしい……」うわー、ちょっとショックだけど、それが普通の人間の反応かもなー。
「姉ちゃん。いくらなんでも兄さんに失礼だろ? くそっ、そうか。そうだよな。気が付かなかったぜ。異世界だからなんでもありで人に迷惑かけちゃだめっちゅうんなら、姉ちゃんとヤルしかねえじゃん!!」
そういいながら、拓君が茜さんに飛び掛かって、服をはぎ取りだした。
「きゃー! 拓、やめて……お願いだからやめて……」
「うっせー。抵抗するな姉ちゃん。こっち来てこの方、もう溜まりっぱなしなんだ! 姉ちゃんなら他の人に迷惑かかんないから兄さんも許してくれるよな!?」
ああ……僕も人の事は言えない鬼畜だったよなー。そんな事を考えて静観していたら、ノアナさんが言った。
「あれは……いくらなんでもお姉さんが可哀そうです。本人の同意がないのは……」
その言葉に、僕は我に返った。そうじゃん。それ重要じゃん!
「拓君ストップ!! それダメ。暴行罪!!」
しかし、火がついてしまった拓君には言葉が届きそうにない。茜さんに馬乗りになって、下着に手をかけていた拓君の後頭部を、僕が思い切り峰打ちして、ようやく拓君の暴走は止まった。
◇◇◇
「それじゃ、これからはちゃんと街の人と仲良くして暮らすんだよ」
その後、この街にも風俗店がある事をこっそり拓君に教えてあげ、短絡的にお姉さんを襲ったりせず、ちゃんと自分の欲望をコントロールするように懇々と諭した。そしてこっちのギルドでちゃんとクエストをこなして稼いで自分の金で通えばこれこそ本当に誰にも迷惑が掛からないという事で納得してもらった。
やれやれ。今回は大した奴じゃなくてよかったけど、転移とかで勘違いしている奴って結構いるのかな。そんなに何でもかんでも好き放題やっていい訳ないじゃん。
でも、そうは言っても……僕は家に帰ってヨリに会うのがちょっと楽しみだったりした。
(終)
僕と同い年位の若者が剣を振り回して、街の目ぬき通りで暴れていた。確かに僕らの世界の身なりをしているが、どう見てもチンピラかヤンキーにしか見えない。
道端で露店を出していた獣人達を追い払ったかと思ったら、その露店の売り物の果物を勝手に食べており、種や芯はそのままペッペと道に吐き捨てている。
「あのやろー。弱い者いじめして……」リーマ姫がお怒りの様なので、彼女が斬りかかる前に僕が声をかけた。
「ねえ君。君は人間の転移者だろ?」
「あんだー? 手前は……おや? もしかしておめえも人間かぁ?」
「君が拓君だよね? 君があまりに好き勝手に暴れるから僕が呼ばれたんだよ。僕も人間の転移者で冒険者兄妹のお兄さんさ!」
「はん。何が好き勝手だ。もともとそのつもりで転移して来たんだよっ!! なのになんだこのシケた世界はよ。獣や魔物ばかりで人間なんて一人もいやしねえ。俺は、ハーレム作って無双するためにこっちに転移したんだっちゅうの!!」
「あー、それは君がちゃんと商会さんと話し合わないからだよ。かくいう僕もハーレム希望は伝え忘れちゃったんだけどね」
「ほー、上等だ。だがそう言う割にはいい女連れてるじゃねえか? それ寄こせや」
拓君がノアナさんを湿った視線で舐めまわす様に見たが、リーマ姫がノアナさんの前に立って剣を構えた。
「なんだー、この犬っ子。俺とやろうってのか? ガキでも容赦しねえぞ!!」
「まったく。あんたこそよく吠える犬じゃない。私を舐めない方がいいわよ」
「このクソ犬がぁ!!」
そう言っていきなりリーマ姫に斬りつけた拓君の剣を僕が一撃で払い、拓君の剣は、そのまま空中高く弾き飛ばされた。
「くそっ、何しやがる!!」
「何って、先に手を出したのは君だよね? あんまり見境なく人を攻撃しちゃだめだよ」
「ふざけるな。こちとら転移の際、ちゃんとチート能力もらってんだ! 手前なんかに……」
「あー、それ僕も貰ってるから……って、いうかはっきり言って君、弱いよね?」
「んだとぉ、コノヤロー!!!」そう言いながら拓君が拳を振り上げて向かって来たので、僕は剣を鞘に納め、彼の拳をそのまま素手で受けた。
そう。さっき剣をはじいた時点で彼の力量は見切った。たしかに多少チートは効いていて、街の人たちではそうそう敵わなかったかもしれないが……僕の敵じゃないな。僕は拓君の手首を掴み、そのまま後ろ手にねじり上げた。
「うわっ! いてててっ。痛い! 痛いって!!」
「だから言っただろ。君は弱いって……」
うわー、気持ちいいー。一度こういうセリフを言ってみたかったんだよな。
「おとなしく僕の話を聞いてくれるなら、手を離してあげる」
「畜生! 俺をこんな目に会わせてタダで済むと思うなよ!!」
「いやいや。ここからどうするの? えっ!?」
いきなり後方から殺気を感じて、僕は拓君を後ろ手にねじり上げたまま後ろを向いたが、そこへファイヤーボールが飛んできて、それはモロに拓君を直撃した。
「ふぎゃぁーーーーーー」拓君の断末魔の悲鳴が街の通りに響き渡った。
「きゃぁーーーー!! 拓くーん!!!!」通りの向こうから女性が駆け寄ってくる。どうやら人間の様だが……彼女がお姉さんの茜さんかな?
「ちょっと、あんた。私の拓君に何してくれてんのよ。事と次第に寄っちゃ只じゃ置かないわよ!」その女性が、黒焦げになった拓君を抱きよせながら僕に言った。
「いや、攻撃したのはあなたですよね? もしかして弟があまりにやんちゃしてるんで、制裁を加えたのですか? 違うのでしたらとことんやり合いますけど」
僕はしれっとそう投げかけたのだが、その女性はキョロキョロと周りを見渡しながら「えっ!? ……あ、そうそう。そうです。弟がご迷惑をおかけしました……」と言った。あー、この人日寄ったな。廻りの人達がさげすんだ様な眼でこの姉弟を見ていた。最初のファイヤボールを見れば分かる。拓君もこの人も実力はC級クラスだ。
「それなら、街の皆さんにも一言お詫びされてはどうです? ほら、みんなお姉さんの事を尊敬のまなざしで見てますよ。弟に厳しい素敵なお姉さんだって」とちょっと持ち上げてみた。
「あっ……そうですね。あの、街の皆さん。うちの拓君がご迷惑をおかけしました。姉の私から深くお詫び申し上げます」そう言って女性が頭を下げたら周りで見ていた街の人たちがバラけ始め、リーマ姫がぷっと笑った。
「それじゃ、その男の子は、ヒールしてあげないと……」ノアナさんがうれしそうにそう言った。
◇◇◇
「それじゃ、ご両親が住んでいる家の権利を、黙って商会さんに渡して来ちゃったんだ……」
街から少し離れた道端で、僕らは二人から事情を聞いていた。
「はい。拓君が両親とうまくいかなくて、いっつも喧嘩ばかりしていて……それで私、拓君の為になるならって、ここへの転移を申し込んだんですけど、手持ち資金の関係であまり希望が通らなくて……」お姉さんの茜さんがそう言った。
「はは、あるあるですねー」ノアナさんが賛同した。
「だからといって、他人に迷惑かけていい訳ないじゃないですか。このノアナさんだって、C級の力しか貰えなかったけど、頑張って生きてるんですよ」僕の言葉に、ようやく意識が戻った拓君もブスっとした顔で答えた。
「でもよー。異世界来たんなら、チートでTUEEEでハーレムでざまぁで無双じゃなきゃつまんねえじゃん!!」
「いや、だからそれは自分の実力と相談しないと……商会さん絡みじゃなかったら、君たち街の人に粛清されてたところなんだよ。
でも……わかるよ。ハーレム……はぁ」
「ああ、そんじゃ兄さん。いっしょにハーレム目指さねえか? 兄さんの実力なら簡単に出来そうに思うんだけど……そんなに可愛い彼女つれてるし」いきなり拓君がそんな事を言い出し、その言葉にノアナさんがちょっと引き気味な顔をした。
「あー。いやー。一時、目指したんだけど、良くない事が続けざまに起こって心が折れたと言うか……でも、チャンスがあればいつかは……」
「そうっすか!? そしたらうちの姉ちゃんはどうです? こいつ、器量はそれなりだとは思うんですけど、あっちで仕事一筋で二十八にもなって処女で……こいつの転移先での希望知ってます? 三高の旦那のお嫁さんなんですよ。いっそ兄さんが貰ってやって下さい。そんでかわりにその子を俺に……」拓君がノアナさんを指さしながらそう言った。
「こら拓。あんた何言ってんの!? 私がこのお兄さんのお嫁さんって……でも……他に人間の男いなかったら仕方ないかも……」あれ? 茜さんってチョロい?
「だめー。お兄さんは私の婚約者です! 愛人なら許します!」
リーマ姫が大声を張り上げた。
「おお、兄さん。こんな獣ロリまで手に入れられて……俺には真似出来そうにねえ……」
「あんた全然分かってないわね。このお兄さんはすごいんだから。あそこの大きさもそうだけど、異世界ならなんでもありって、実の妹さんともしょっちゅうエッチしちゃってるんだから!! だからあんたも見習って、お姉さんとエッチすればいいじゃん!!」
「うわっ! リーマ姫。ストップ!!」僕が慌ててリーマ姫の口を押えたが、すでに手遅れで、茜と拓の姉弟はそのままフリーズしていた。
「兄さん。実の妹とって……有りなんすか?」拓君が僕ににじり寄って来た。
「……異世界だから何でもあり……かな?」
「ちょっと……やだやだやだやだ。私、拓になんかバージンあげないからね!!」
茜さんが動揺しているのがはっきり分かる。
「それじゃ……僕とどうですか?」思いっきりすかしながらそう言った僕を、茜さんはこれまた思いっきりストレートで殴った。
「近寄るな! 鬼畜!! あー、穢らわしい……」うわー、ちょっとショックだけど、それが普通の人間の反応かもなー。
「姉ちゃん。いくらなんでも兄さんに失礼だろ? くそっ、そうか。そうだよな。気が付かなかったぜ。異世界だからなんでもありで人に迷惑かけちゃだめっちゅうんなら、姉ちゃんとヤルしかねえじゃん!!」
そういいながら、拓君が茜さんに飛び掛かって、服をはぎ取りだした。
「きゃー! 拓、やめて……お願いだからやめて……」
「うっせー。抵抗するな姉ちゃん。こっち来てこの方、もう溜まりっぱなしなんだ! 姉ちゃんなら他の人に迷惑かかんないから兄さんも許してくれるよな!?」
ああ……僕も人の事は言えない鬼畜だったよなー。そんな事を考えて静観していたら、ノアナさんが言った。
「あれは……いくらなんでもお姉さんが可哀そうです。本人の同意がないのは……」
その言葉に、僕は我に返った。そうじゃん。それ重要じゃん!
「拓君ストップ!! それダメ。暴行罪!!」
しかし、火がついてしまった拓君には言葉が届きそうにない。茜さんに馬乗りになって、下着に手をかけていた拓君の後頭部を、僕が思い切り峰打ちして、ようやく拓君の暴走は止まった。
◇◇◇
「それじゃ、これからはちゃんと街の人と仲良くして暮らすんだよ」
その後、この街にも風俗店がある事をこっそり拓君に教えてあげ、短絡的にお姉さんを襲ったりせず、ちゃんと自分の欲望をコントロールするように懇々と諭した。そしてこっちのギルドでちゃんとクエストをこなして稼いで自分の金で通えばこれこそ本当に誰にも迷惑が掛からないという事で納得してもらった。
やれやれ。今回は大した奴じゃなくてよかったけど、転移とかで勘違いしている奴って結構いるのかな。そんなに何でもかんでも好き放題やっていい訳ないじゃん。
でも、そうは言っても……僕は家に帰ってヨリに会うのがちょっと楽しみだったりした。
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