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#17 スイーツで癒しと喜びを
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壱が冷蔵庫から出したのは、バターと卵とミルク。棚からは砂糖と蜂蜜。調理台の箱に残っていたパンを1つ取り、4当分にスライスする。
ボウルに卵を割りほぐし、ミルクと砂糖を加えて良く混ぜる。泡立て器が見当たらなかったのでフォークで。そこにパンを浸した。
「なになにイチ、何作ってんのー?」
カリルが掃除の手を止めて覗き込んで来る。
「え、あ! 掃除! ごめん!」
「良いって良いって。明日からはがっつりやってもらうからよ。それよりそれ何?」
「フレンチトースト。この世界にある?」
「聞いた事無いなー」
「俺らの世界のスイーツなんだ。ちょっと女性の間で流行った事もあるんだよ」
妹の柚絵の好物でもあり、おやつに良く作ってやった。
柚絵も料理は出来るのだが、人に作ってもらうのが好きな様で、良く作らされた。そのお返しにと、夕飯の時などに壱の好きな味噌料理を良く作ってくれた。
「へー旨そう。どーすんのこれ」
「フロアでエキサイトしているボニーさんに食べてもらって、落ち着いてもらおうと思って」
「ああ、女って甘いもん好きだもんな。まーたシェムスが村の女の子にちょっかい出したって? 懲りねーなー」
「女癖悪いんだってね」
「そーなんだよ、まったくよー ボニーなんて良い女なんだぜ。そんな嫁さんもらっておきながら、他にもって、呆れた奴だぜ」
「へぇ、ボニーさんて良い女なんだ」
「おう。女はみんな良い女だろ?」
……もしかしたらカリルも女好きなのかも知れない。癖が悪くなければ良いのだが。
さて、作業に戻る。パンを液に浸す為に、本来なら少し置いておきたいところだが、今回は時間が無いのでフォークの背で押し付ける様にして染み込ませる。
しっかりとしっとり浸かったところで、鉄製のフライパンをコンロに掛け、バターを落とす。しゅわしゅわと音を立てながら程良く溶けたところで、パンを入れる。
少し余った液もパンに掛ける様に入れ、弱火でじっくりと火を通して行く。バターの香ばしく、だが液の甘い香りが厨房に漂う。
「イチ! すっげーいい匂い! オレも食いたい!」
「後で作ってやるよ。じいちゃんが良いって言ったらだけどな」
フライ返しを使って焼き色を見る。うん、綺麗なきつね色だ。ひっくり返す。そしてまた火を通して行く。
気付くと、洗い物を終えたサントも近くで鼻をひくつかせていた。
「サントも甘いもん好きだもんなー」
カリルが言うと、サントは小さく頷いた。無口な性格と体格が甘党とミスマッチで、少しイメージが変わる。
「よし、完成っと」
焼きあがったフレンチトーストを皿に盛り付け、蜂蜜を掛ける。出来上がりだ。
生クリームやアイスクリームがあれば添えたいところだが、無いのでシンプルに。
茂造に無断でした事で、お咎めを覚悟しつつ。しかしあの怒りに塗れたボニーに少しでも落ち着いてもらいたいと思って動いた事だった。
早速フロアに出る。匂いを嗅ぎ付けたのか、何人かが壱を見た。
「じいちゃんどうなった、て、まだ殴られてたか」
ボニーはシェムスに馬乗りになって、まだまだ足りないと言う様に腕を振り上げていた。シェムスはおとなしくされるがまま。
とは言え、やはりボニーは手加減しているのか、さほどシェムスにダメージは感じられなかった。
「ボニーも相当我慢していたみたいじゃのう。ところで壱よ、それは何じゃ?」
「フレンチトースト作った。ボニーさんに食べてもらえたらと思って」
「ほっほっほ、なるほどの。しかし壱よ、そんな洒落たもんが作れたんじゃなぁ」
「良く作ってたんだ、柚絵の好物」
「ほうほう。おお、これこれボニー、そろそろ許してやれんかの。明日も働いてもらわにゃならんじゃろ」
「そうね! そうよね!」
そう言いながら、ボニーの拳はシェムスの二の腕を打った。そして大きく溜め息を吐いて立ち上がる。
「シェムス、立って」
シェムスは言われるがままに、のろのろと立ち上がる。
「向こう向いて。壁の方」
ボニーに背を向け、壁に向かって立つ。その瞬間ボニーは足を素早く振り上げたかと思うと、シェムスの背を思いっ切り蹴り付けた。
「っ!」
シェムスは声にならない声を上げ、今度は本当に吹っ飛んだ。身体の全面を壁に打ち付け、そのままずり落ちて行く。
これは加減一切無し、ボニーの全力だった。
ボウルに卵を割りほぐし、ミルクと砂糖を加えて良く混ぜる。泡立て器が見当たらなかったのでフォークで。そこにパンを浸した。
「なになにイチ、何作ってんのー?」
カリルが掃除の手を止めて覗き込んで来る。
「え、あ! 掃除! ごめん!」
「良いって良いって。明日からはがっつりやってもらうからよ。それよりそれ何?」
「フレンチトースト。この世界にある?」
「聞いた事無いなー」
「俺らの世界のスイーツなんだ。ちょっと女性の間で流行った事もあるんだよ」
妹の柚絵の好物でもあり、おやつに良く作ってやった。
柚絵も料理は出来るのだが、人に作ってもらうのが好きな様で、良く作らされた。そのお返しにと、夕飯の時などに壱の好きな味噌料理を良く作ってくれた。
「へー旨そう。どーすんのこれ」
「フロアでエキサイトしているボニーさんに食べてもらって、落ち着いてもらおうと思って」
「ああ、女って甘いもん好きだもんな。まーたシェムスが村の女の子にちょっかい出したって? 懲りねーなー」
「女癖悪いんだってね」
「そーなんだよ、まったくよー ボニーなんて良い女なんだぜ。そんな嫁さんもらっておきながら、他にもって、呆れた奴だぜ」
「へぇ、ボニーさんて良い女なんだ」
「おう。女はみんな良い女だろ?」
……もしかしたらカリルも女好きなのかも知れない。癖が悪くなければ良いのだが。
さて、作業に戻る。パンを液に浸す為に、本来なら少し置いておきたいところだが、今回は時間が無いのでフォークの背で押し付ける様にして染み込ませる。
しっかりとしっとり浸かったところで、鉄製のフライパンをコンロに掛け、バターを落とす。しゅわしゅわと音を立てながら程良く溶けたところで、パンを入れる。
少し余った液もパンに掛ける様に入れ、弱火でじっくりと火を通して行く。バターの香ばしく、だが液の甘い香りが厨房に漂う。
「イチ! すっげーいい匂い! オレも食いたい!」
「後で作ってやるよ。じいちゃんが良いって言ったらだけどな」
フライ返しを使って焼き色を見る。うん、綺麗なきつね色だ。ひっくり返す。そしてまた火を通して行く。
気付くと、洗い物を終えたサントも近くで鼻をひくつかせていた。
「サントも甘いもん好きだもんなー」
カリルが言うと、サントは小さく頷いた。無口な性格と体格が甘党とミスマッチで、少しイメージが変わる。
「よし、完成っと」
焼きあがったフレンチトーストを皿に盛り付け、蜂蜜を掛ける。出来上がりだ。
生クリームやアイスクリームがあれば添えたいところだが、無いのでシンプルに。
茂造に無断でした事で、お咎めを覚悟しつつ。しかしあの怒りに塗れたボニーに少しでも落ち着いてもらいたいと思って動いた事だった。
早速フロアに出る。匂いを嗅ぎ付けたのか、何人かが壱を見た。
「じいちゃんどうなった、て、まだ殴られてたか」
ボニーはシェムスに馬乗りになって、まだまだ足りないと言う様に腕を振り上げていた。シェムスはおとなしくされるがまま。
とは言え、やはりボニーは手加減しているのか、さほどシェムスにダメージは感じられなかった。
「ボニーも相当我慢していたみたいじゃのう。ところで壱よ、それは何じゃ?」
「フレンチトースト作った。ボニーさんに食べてもらえたらと思って」
「ほっほっほ、なるほどの。しかし壱よ、そんな洒落たもんが作れたんじゃなぁ」
「良く作ってたんだ、柚絵の好物」
「ほうほう。おお、これこれボニー、そろそろ許してやれんかの。明日も働いてもらわにゃならんじゃろ」
「そうね! そうよね!」
そう言いながら、ボニーの拳はシェムスの二の腕を打った。そして大きく溜め息を吐いて立ち上がる。
「シェムス、立って」
シェムスは言われるがままに、のろのろと立ち上がる。
「向こう向いて。壁の方」
ボニーに背を向け、壁に向かって立つ。その瞬間ボニーは足を素早く振り上げたかと思うと、シェムスの背を思いっ切り蹴り付けた。
「っ!」
シェムスは声にならない声を上げ、今度は本当に吹っ飛んだ。身体の全面を壁に打ち付け、そのままずり落ちて行く。
これは加減一切無し、ボニーの全力だった。
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