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#131 米の苗の育成

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 仕込みに入る前に、壱とサユリは裏庭に出る。米の苗作りの最中だ。

 土の湿り気などは、昨日の夜の時点では大丈夫だった。しかし翌朝まで数時間あったので、軽く水遣りをしてやっていた。

 ガイたちは既に来ている。

「おはようございます」

「おはようカピ」

 壱たちが挨拶をすると、ガイたちもにこやかに返してくれる。

「おはようございます」

「おはようっす!」

「おはようございますー」

「……おはようございます」

「イチくん、昨日の夕方か夜に水をってくれました?」

 ガイが植木鉢を覗き込みながら言う。ガイたちと水遣みずやりをしたのは昨日の朝。土の湿り気を見て感付いた様だ。

「あ、はい。夜に軽く」

「ありがとうございます。やはり朝だけで無く、夕方にでも集まった方が良いでしょうね。夕飯の前にでも」

「でも時間合わせにくく無いですか? 仕事が終わる時間、職場に寄って違うんでしょう?」

 食堂に夕飯を食べに来る時間が村人によって違うので、壱はそう思っていたのだが。

「そうでも無いですよー。確かに差はありますが、実はそんなに変わらないんですよー。仕事の後、銭湯に行ってから食事に行く人が遅めになると言いますかー」

「そうなんですか?」

「そうっすよ。それに今、俺らの本職は米なんすから、どうにでもなるっすよ。イチくんだけに負担を掛ける訳にはいかないっす」

「夕方でしたら、イチくんは食堂がありますね。水遣りだけなら俺たちだけで大丈夫ですね」

「そうだねー」

「そうっすね!」

 ナイルも頷く。

「裏から声を掛けますから」

 気付けば話が進んでしまっていた。しかしこれは確かに壱には助かる事である。有り難く甘える事にしよう。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 壱が小さく頭を下げると、ガイたちは微笑んだ。

「では、今朝の水遣りをしましょう」

 壱は如雨露じょうろを取り、みんなに渡すと、各々おのおの水を入れに行った。

流石さすがにまだ芽は出ないですねぇ」

 壱が言うと、ジェンが可笑おかしそうに笑った。

「昨日植えたばっかじゃ無いっすかイチくん」

「待ち遠しくて」

 壱が照れた様に笑うと、ナイルも笑う。

「解りますー。僕も楽しみですもんねー新しい食べ物!」

「ナイルは本当に食いしん坊っすねぇ!」

「えー? みんなは楽しみじゃ無ーい?」

 ナイルが唇を尖らすと、ガイが可笑しそうに笑う。

「気持ちは解りますけどね。俺も楽しみですよ」

 そんな話をしながら、みんなは水をいて行った。



「と言う訳で、昼営業の仕込みにじいちゃんはいません。特にカリルの負担が大きくなるかも知れないけど、よろしくお願いします」

 昼営業の仕込みの時間になり、出勤して来たカリルとサントに言う。

「オッケー。じゃ、オレはまずは肉と魚に集中かな。つっても昼はあんまり無いけどな。ブイヨンはイチに仕込んでもらって、灰汁あく取りはその時に出来る奴がやるって事で。サントは何時いつもの通り、パンとパスタな。大丈夫、いけるいける!」

 カリルの軽い口調ながらも頼もしい台詞に、サントも頷く。

「イチも大分ここの仕事に慣れて来たもんな。手際も良いし。じゃ、始めるか!」

 カリルが景気良く両手を打ち鳴らし、壱たちは仕込みに入って行った。
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