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#118 ロビンの職人技

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 さて、木製工房に向かう。串もだが、箸が特に楽しみだ。明日の朝から早速使いたい。

「こんにちは、ロビンさん」

「邪魔するカピ」

 ドアをノックをして入り、声を掛ける。すると作業をしていたロビンが快活な笑顔で振り返る。

「おう坊主! サユリさん! ちょっと待っててくれな! 適当に座っててくれ!」

 壱はドアに近い壁際の椅子を借りる。サユリもその隣に上がる。

 待つと言っても数分だった。キリの良い所になったのか、ロビンは手を止めると立ち上がり、棚から幾つかの製品を手に壱とサユリの元へ。

「昨日頼んでたやつ取りに来たんだろ。ほら、こいつでどうだ?」

 壱は立ち上がって、ロビンから串と箸を受け取り、その出来栄えを確認する。

 まずは2本の串から。とりあえず箸を椅子に置いて。

 串の部分は先端部分のみが細くなっている。その先端には適度な丸みがあり、下手に怪我はしつらい設計。しかし鰹の身は通るだろう。

 持ち手の部分は、適度な太さの木で覆われている。凹凸おうとつもあり、握り易くなっている。

 鰹を想像し、串に刺して藁焼わらやきにするイメージで串を持つ。適度な長さがあるので、炎が高く上がっても然程さほど危険では無さそうだ。

 さて、次は椅子に置いてあった箸を串と入れ替えて。

 壱は、早速箸を持って動かしてみる。使い心地はどうか。

「ほう、その箸とやらはそうやって使うのか!」

 ロビンが興味深げに壱の手元を凝視して来る。

「俺の世界の一部の国で使われているものなんです。持ち方は、小さい頃に親に教えて貰って練習するんですよ」

「何やら難しそうだな!」

 ロビンは言うと、ガハハと豪快に笑った。きっと細かい事は気にしないたちなのだ。

 うん、使い心地は問題無い。表面や角は丁寧にやすりが掛けられていて滑らかで、持ち易い。

 どちらも素晴らしい出来栄え。流石だ。

「ありがとうございます。どちらも完璧です!」

「そりゃあ良かった! はっはっはっ!」

 壱が礼を言うと、ロビンは嬉しそうに笑った。

「で、重ねてで申し訳無いんですが、ペンキとかってありますか? 木に色塗れて、乾いたら耐水になると良いんですけど。2色」

「お、顔料があるぞ! 色は多く無いがな。何色が良いんだ?」

「出来たら、黒と緑で」

「どっちもあるぞ、ちょっと待ってろ! ところで何に使うんだ?」

「この箸は2本で1セットなので、分かりやすい様に印みたいなのを付けておきたくて」

「そんなの言ってくれりゃ、やっといたのによ!」

「出来たら自分でやりたくて」

 壱は言うと、照れ臭そうに笑う。

 初めから自分で作れたら良かったのだが、壱にその技術は無い。だからそこは職人に委ねた訳だが、少しぐらいは自分で手を加えたいと思っていた。

「そっか」

 ロビンは笑顔で応えると、顔料を持って来て、蓋を開けてくれた。

「どう塗るんだ? ほらよ、筆だ」

 ロビンが細い筆を手渡してくれる。既に何回も使っているものの様で、きちんと洗われているが、毛の部分がグレイや草色で染まっている。

 まずは黒。壱はグレイに染まっている筆の先に黒の顔料を付け、持ち手の上の方に、ぐるりと回す様に1センチ程の幅で塗って行く。それを2本、1膳分。

 もう2本は緑の顔料で、黒と同じ様に。

 そうして、箸が完成である。壱は小さく息を吐いた。

 壱は顔料を乾かす様に、箸を何度か振る。

「まぁそれぐらいの範囲なら、すぐに乾くだろうよ! 他のもんに触れない様にして、明日の朝には使える様になってると思うぞ!」

「明日の朝から使いたかったので、助かります」

 壱は箸を、顔料の箇所に触れない様に椅子に起き、バッグに串2本を入れ、箸は顔料部分が当たらない様に器用に手に持った。

「ありがとうございました! また何かあったらよろしくお願いします」

「おう! いつでも来い!」

 壱とサユリは笑うロビンに見送られ、木製工房を後にした。
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