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1章【緑の竜と新しき伝説】

11話─護衛

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 あれから弟子にしてくれとの願いは、リュークが師匠とかなりたくないという要望から友だちでね。となった。

 そしてとある日の放課後、リュークは学園長に呼ばれている。


「えっと、何の用でしょうか?」

「ふぉっふぉっふぉ、なんかお主の目『めんどくさい事になるだろうなぁ』と考えているような目をしておるのぉ」

「はいそのとおりです」

「少しくらいは否定してもいいと思うんじゃがのぉ……」


 そして学園長はわざとらしく咳を一度する。


「来週あたりに、ワシは少し遠くに行くんじゃ」

「お達者で」

「ひどいのぉ……行く先はラークアという街なんだが、お主に頼み事があ──」

「嫌です」

「少しくらい考えてくれてもいいと思うんじゃがのぉ…」


 学園長がリュークに頼みたいこと。
 それは、学園長の護衛をしてほしい。とのことだった。


「てかなんで僕なんですか?護衛の人たちもいるしSクラスの人達でもいいじゃないですか……って、そういえば護衛の人たちは?」

「もともとの護衛の人達は今は長期休暇中じゃ…そろそろまともな長期休暇を与えないと「仕事が黒い」だの「私たちは護衛であって付き人ではない」だの言われるだろうと思ってのぉ、1ヶ月近くはいないんじゃ」


 学校の生徒は3日学校に行き2日休みというのを繰り返している。

 この世界では5日で一週間なため、このように鳴っているのだ。

 そしてそれは護衛の人たちも同じようで、3日働いて2日休んでを繰り返している。

 だが、生徒とは違いそれまでは昼食以外での休憩はない上、護衛という仕事は最悪命の問題となる。

 そのため、ある程度の休みを与えないといけない。

───と、学園長は思っている。

 ちなみに彼らの勤務時間は基本、生徒の授業終わりまでとなっている。

 学園長は、建てた当初の年に護衛の人から陰口で「護衛ってこんな黒い仕事なのか…?」というのを聞いてからちょっとしたトラウマとなっている。


「Sクラスの人達は今日から1ヶ月は外校体験だからいないんじゃ」


 外校体験というのは、学校により教える内容が違うのだから他の学校の授業も受ければより良い人材が生まれるんじゃね?という考えから生まれたプロジェクトだ。

 今回はSランクだが、全クラスとも行く機会はある。ちなみにBクラスは3ヵ月後となる。


「それでも僕なんかが行ったらAクラスの人たちが騒ぎませんか?」

「大丈夫じゃよ。それくらいのことは考えておる」

「……考えがあるんですか?」

「まあ、お主なら決闘に展開しても勝てるじゃろうし問題ないじゃろ」

「変に期待しないでくださいよ。勝てない場合は勝てないものなんですから」


 そう肩を竦めて言うが、学園長の耳には入らなかった。


「どうか護衛として付いてきてはくれんかのぉ?」

「わかりましたよ。その代わり、僕以外の他の人も連れてきていいですか?」

「うーむ…5人までなら大丈夫じゃよ。誰を連れて来るんじゃ?

「エマ…エマールと、アジル、それとエミルです」

「ふむ、それだけならば大丈夫じゃろ」

「それじゃあ伝えてきます」




☆☆☆




 リュークは3人を見つけ、1週間後に学園長の護衛としてついて行くことを説明した。


「ご、護衛!?」

「学園長の護衛って凄いじゃん!」

「ボクもついて行きたいなぁ」

「それなんだけど、3人も一緒に行けるようになったよ」

「「「ええ!?」」」


 アジルとエミルはリュークの指導を受け、エマと同じように日に日に力をつけている。

 今ではSクラスの主席を狙えるほどまで成長している。

 だが、学校在学中はBクラスとしての魔法を使ってくれ、とリュークに言われている。そのため、Sクラスにはいけないのだ。

 ちなみにだがリュークが2人にBクラスとしての魔法を使ってくれと頼んだ時、エマを含めた3人はリュークをジト目で見た。

 理由はカルスとの決闘でSクラスを超えるような魔法を使ったためだ。


 そんな実力をつけた3人だが、今回の話しは驚いた。

 だが、驚くのも無理はない。

 学園長の護衛は基本護衛として雇った人がやり、その人達がいない場合は学園長が選んだ人しかつけない。


「まあ選ばれたのが僕だからって理由でしょ」

「それで…どこに行くの?」

「えっと…たしか……ラークアって街だったかな」

「「「ラークア!?」」」

「お、おう…そんな驚くことなのか?」


 3人の驚きように驚いたリュークだが、3人が目を輝かせたことに再び驚いたリュークである。


「ラークアは魔法使いなら1度は行ってみたい街だよ!」

「別名魔法の街って言われてるんだよ」

「てかなんでリュークがそんなこと知らないんだ?」

「そういうのに貧しくてな…まあ1週間後に出発だからなー」


 ちなみにだが、リュークはこのこともみんなに教えないようにと言っている。



 次の日、その授業ではエマ、アジル、エミルの3人はあまり話を聞いていなくて担当科目の先生に怒られていた。

 何故かは簡単に想像がつくだろう。彼らはラークアに行ったら何をするかを考えている…のだが、ラークアに行くのは護衛のため。ということをすっかり忘れていた。

 そしてやはりリュークの心配は的中したようで・・・・・・




☆☆☆




「おいまて」


 リュークが帰ろうとすると、それを阻むように複数人がリュークの前に現れた。


「誰?あなた達とは会った記憶がないんだけど…あー、勝手に忘れてるだけかもしれないから一応自己紹介よろしく」

「なっ……ふっ、まあいいだろう。俺はAクラス1位のモーランだ」


 そしてモーランは自己紹介を続ける。が、それはリュークは聞いてなかった。

 モーランの他にも2~7位の人がいて、全員の自己紹介が終えるのに少し時間がかかった。


「どうだ?これで俺たちの………って寝るなあああああ!」


 ちなみにだが、3位の自己紹介の途中からリュークは立ちながら寝るという器用なことをしていた。


「……はっ!…えっと?終わった?」

「『終わった?』じゃなああああい!俺たちのこれまでの成果などを言ってやったのになんで寝るんだ!」


 他の人も「そうだそうだ!」と声を上げる。


「だって興味無いし、正直名前とクラスと順位だけでいいし、てか言われても覚えてもすぐ忘れるだろうし」

「わ、わすれる…だって………ふ、ふふふ、ふああああ」

「僕も眠いし帰っていいかな?」

「い、今のはあくびではない!」


 だれがどう見てもモーランの今の行動はあくびなのだが、本人は頑なに否定する。

 彼のクラスメイトのやつも「うわぁ、何この状況であくびって…」という顔をしている。中には笑っている人もいる…のだが、モーランが睨んだことにより笑いを一瞬で止めた。


「それで、なんのよう?」

「簡単だ!学園長の護衛を替われ!」


 やっぱりか、と思いリュークはため息をついた。


「そんなもん無理に決まってるだろ」

「なぜだ!」

「学園長に選ばれたからだよ。『学園長の頼み事をなんの特別な用事もないのに他人に押し付けた』なんて評価を受けるだろうが」

「そんなもの適当な用事を付ければいいだろ!」

「しかもだ。お前だって『学園長に媚を売りたいから人から仕事を奪った』っていう評価もされるんだぞ」

「─!?」


 どうやらそんなことを考えていなかったらしく、衝撃を受けた。


「そ、それよりもBクラスの奴が学園長の護衛なんて務まらないだろ!」

「務まらないと思うな学園長に言えばいいじゃん。僕に言われたってどうしようもないよ」

「ぐぬぬ……」

「んじゃあもういいか?そこどいてくれない?」

「…だ」

「え?」

「決闘だ!」


 そしてモーランはポケットから木を取り出して投げた。

 が、それは躱された。


「「「「「「「……は?」」」」」」」

「いやなんで決闘になるんだし、嫌だし誰得だし」

「お、お前に勝って護衛を変わってもらう!だから決闘を受けろ!」

「嫌だね」

「なっ!」

「お前が勝ったら護衛を変わる。なら僕が勝ったら?」

「そんなものあるわけないだろ!」


 だろうな…とため息をついた。

 前に決闘をした時は、学校開始から日が経ってないせいもあって他クラスの野次馬はほぼ0だった。

 いた野次馬はリュークと同じクラスか先生くらいだ。

 そのため、リュークがどれほどの実力を持っているのかは一部の人しか知らない。


「じゃあお前は唐突に『金くれ。こっちは何も出さないけどな』って商人に言われたらどうする?」

「は?そんなの渡すわけないだろ」

「うんうん、そうだよね。じゃあお前のやってることと僕の出した例は何が違うのかな?」

「お前は護衛に向かないっていう違いだ。Bクラスの奴が学園長を守れるわけがない」

「ならお前は『お前はその金を持つ資格はない』って言われたら渡すか?」

「渡すわけないだろ」

「だからそれとお前の言ってること何が違うんだって」

「そ、それは…」


 そしてリュークは強化魔法を発動させた。

 リュークは強化魔法を未だ魔法陣にできていない上に、強化魔法を魔法の中でも苦手としている。

 そのためか、強化魔法を発動させても発動までには時間がかかる。

 彼はこれを発動待機時間と呼んでいる。

 強化魔法により身体が強化されたリュークは一瞬にしてモーランの目の前に行き、首元に爪先を付けた。

 そして低い声でこう言った。


「護衛って命がかかってるんだぞ?それを理解してないだろお前。ただ単に学園長と関わりたいからという理由なら今すぐ帰れ」


 すると、7人は「ひいい」という声を上げていなくなった。


「……これぐらいで音をあげるなら護衛なんて無理だろ」




☆☆☆




 それからもリュークに絡んでくるAクラスの人は絶えなかった。

 その人数、Aクラス全員となる32名。


「学園長はなんで広めたんだ?てかAクラスの人になんて言ったんだ?」




☆☆☆




 時は少し遡り、学園長室。ここには学園長以外に一人の女性がいた。


「学園長、護衛は決まりましたか?」


 彼女はAクラスの担任だ。


「ああ、Bクラスのリュークじゃよ」

「Bクラス?なぜ護衛を雇ったりする訳ではなく、Aクラスでもないのですか?」

「理由か?まずは護衛なんか付けなくてもワシの腕前なら大丈夫じゃろうし、学戦の生徒も付けなくちゃならない。というのもある
 そして彼の実力を見たい…というのもある」

「彼の実力ですか?」

「ああ、彼はまだ隠してる。まだまだ底が見えんのじゃ」

「あなたの眼で見えないのですか…」

「じゃから、彼の実力を見るため…というのは良ければの話じゃな。そうそううまくことは運ばないじゃろうな。
 そしてそれともう一つある。
 それは…








 Aクラスの誰よりもリュークが強いからに決まっておるじゃろ」

「…わかりました」

「あれ?否定はせんのか?」

「学園長の考えは私の考え。私は学園長に付き従うのみです」

「…お主は昔っから変わらんのぉ」


 そして彼女は失礼しますと言い、部屋を出た。


「……もうちょっと、自由に考えてくれると嬉しいんじゃがのぉ…」


 学園長のつぶやきは、こころなしか寂しそうであった。
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