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当たり前の未来に

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 今日も朝礼に参加する。
「最近土方って遅刻しないよな」

「遅刻しないのが社会人の当たり前だろ?」

「最近お前のせいで、負けっぱなしだぞ」

「俺の出勤で賭け事すんな」

 いつものように山田と話していると、壇上に部長が上がる。

「はい、おはようございます」
「おはようございまーす」

「今日も新入職員を紹介します」

 山田が囁いてくる。
「今日は続くと思うか?」
「お前賭け事やめろって」
「いいじゃねぇか、これしか楽しみ無いんだし」

「おい、話をするんじゃない」
 怒る部長の横に何人か人が並ぶ。

「左から東、熊本、平松、佐藤だ。みんな臨時アルバイトだ、お手柔らかに頼むよ」

 暑くなる時期、うちはとても忙しくなる。
 緊急発進も増えるし、気を遣わなければならなくなる。人手は欲しいのに、すぐに辞めていく。
 職員だけでは手が足りないのだ。

「東、熊本はトリアージ班、平松は捕獲班、佐藤は管理班だ、みんなよろしく。では仕事を始めてくれ」

 部長の掛け声で、職員は全員三々五々バラけていく。

 山田は部長が出ていったのを確認して声をかけてきた。
「女の子か、こりゃ続かないに賭けるぞ俺は」

 俺は、平松と紹介された女性から目が離せなかった。

「俺は続くに賭ける」

「マジかよ、やった! 今回は貰ったぜ」
 喜ぶ山田を放置して、俺は前に歩き出す。

 平松もこちらを見ながら。
「土日だけのお手伝いになりますけど、かっこいい仕事をしたいと思って応募しました」
 と、頭を下げる。

「君に会ったら伝えたいと思ってたことがあるんだ、君の学校のクラスターだけど……」

「あ、あれ映画館に行った男子です」

「ああ、あの子か」

「うちの親が進路相談を受けて、うつったらしくって」

「じゃぁ、君や君の家族が原因じゃないってのは」

「知ってます。でももういいんです」

 平松はそういうと。手を差し出した。

「私はかっこいい生き方をするって決めたから、そんなことに構ってられないんです」

「だが握手はいただけないな。この仕事をする以上気を付けなきゃ」

 そう言って、俺は肘を向けた。
 平松も手を引っ込めて、楽しそうに肘でタッチをした。

「よろしく、平松さん」

「琴音でいいですよ、歳三さん」


 力強い仲間を加え。
 この世界の当たり前を当たり前に回すために、俺たちは仕事をし続ける。

 いつか、この当たり前をみんなで懐かしむことができる日を夢見て。
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