上 下
15 / 26
番外編

第五王女が悪役令嬢ってありえる? 3 ※

しおりを挟む


 そっと抱きしめられているのに、逃れられないと思う。
 これ、いかに?

「ライアン……?」
「…………あなたが腕の中にいるのを実感させて」

 私は息を吐いてなんとか力を抜こうと試みる。

「……怖がらないで」
「今は怖いと思うより、ドキドキしすぎて……、もしかしてそれも聞いてた?」
「……どうでしょう? 少し、お酒飲みますか?」
「うん、緊張がほぐれるかな」

 ライアンが用意してくれたのは、柑橘系のお酒。
 爽やかだしさっぱりしているけど、ほんの少し苦くて甘い。
 懐かしく感じるのはゆずっぽいからかもしれない。
 
「これはライアンの国のお酒?」
「そうです、どうです?」
「……おいしい。くせになりそう」
「よかった。もう少し、どう?」

 私は首を横に振った。
 それを合図にベッドに誘われた。

「あの……」
「優しくするから」
「はい……お願いします」

 前世で仕事柄エロの知識はあるけれど、経験が豊富なわけでもなく。
 むしろほとんどない。
 この後どうすればいいの?

「……戸惑っている姿もかわいいね……、キスしたことは?」

 それ、聞く?
 首を横に振る。

「全部私のものにしていい?」
「はい……オネガイシマス」

 いつのまにか立場が逆転した。
 顎に指がかけられて、ゴクリと唾を飲んだ。
 あぁ、もう、この雰囲気がダメ。
 恥ずかしい。

「……カロリーナ、かわいい」

 柔らかく唇が何度も重なる。
 そのまま持ち上げられてベッドに横たわる。
 
「……心臓が破裂しそう」

 そう漏らす私に、真上からライアンがのぞき込む。

「私も同じだ」

 ライアンの心臓に手を押し当てた。
 とくとくと早鐘を打つ。

「同じだろ?」

 ずっと敬語だったのに、いつのまにか親しげな笑みを浮かべるただの男になっていて、別の意味でドキドキする。
 彼と結婚したら、こんなふうに砕けた雰囲気で過ごすことになるのか。
 
「心臓がもたない……」
「じゃあ、心臓が止まる前に抱かせてくれ」









「あぁーーっっ!」
「ほら……棒で穴をつつかれた気分はどうだ?」

 ずぶずぶに蕩けさせられた私は彼のものを深く咥えこんでいた。
 じんじんする。

「痛い……。さっきの、聞こえて、たのね」
「私を棒扱いしたのはカロリーナが初めてだ」
「……ごめんなさい、怒ってるの?」
「いや……いつも興味深く思っていた。カロリーナは自由だな、と。……さて。これはただの棒ではないとこれから示すつもりだよ」

 何かのエロ漫画かな?
 ああ、ここはR18乙女ゲームの世界たったっけ。
 そっか、そっか。
 まだスタート前のはずだけどね。
 そんなことを考えて現実逃避ができたのはここまで。

「カロリーナ、逃げるな」

 ずちゅんずちゅんと大きく動く。
 
「あぁっ……ぁあっ……、ああっ……」

 痛いのに気持ちいい。
 さっき指で探られたところばかり狙ってくるから。

「ライアンっ」
「……中にたくさん出すから、受け止めて」

 太ももを抱えて大きく揺さぶる。

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
「カロリーナっ……」

 私の中にじんわりと温かいものが広がる。
 彼はゆっくり動きながら全てを吐き出した。

「子ども、できてるといいな。……少し休んだらもう一度しよう」

 ライアンを受け入れたまま、抱きしめられる。
 
「早めに船に乗りたい……妊娠中の船旅とか、船で産気づくとか、考えたくない」
「それもそうだな。……一週間、いや五日で準備できるか?」
「……できる。そんなに持って行きたいものなんてないもの」
「じゃあ、他のことは任せてくれ。必ず連れて行くから」

 ライアンに言われると本当に大丈夫だと思ってしまう。
 この安心感、信頼感はなんだろう。
 身体を重ねたからかな。

「ライアン……これからも、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼む。カロリーナがいてくれたら、私もあの国で頑張れる」

「……ライアンは、何か要職についているの? でも、最近はずっとおじ様といたのよね」
「……色々学ばせてもらっているから。向こうにもどったら父の仕事を少しずつ引き継いでいくことになると思う。……ついてきてくれるか?」
「はい。私にできることは頑張るわ」

 これで国外追放、身分剥奪、もろもろのバッドエンドから逃れられるならお安い御用だ。

 唇を啄まれているうちに、ライアンのアレがむくむくと大きくなる。

「……カロリーナ、幸せにする」

 エロゲームみたいに処女相手に抜かずの二発目。
 あ、ここ、R18乙女か。

 ゆったりと揺さぶられてだんだん何も考えられなくなる。
 
「ライアンっ、私を……置いて、行かないでね」










 翌日父から新興国の王太子との婚約が整ったと言われ、断ろうとしたら相手がライアンで驚いた。
 私にはライアンがいるのっ、とか叫ばなくてよかった。

 隣でおじ様がにっこり笑っていた。
 貴族だと思って勘違いして確かめなかった自分も悪いけど、ライアンが正直に言っても断らなかったよってあとで彼に伝えたら、ふにゃっと笑った。
 やだ、かわいい。

 私だって王女だしそれなりに教育は受けてきたからある程度は対応できると思う、多分。
 言葉も、私の認識では関東に住んでいる人間が東北に住むくらいの違いらしい。
 うん、まぁ、何とかなると思う。多分。

 さらに二日後、私は新興国の王太子ライアンの婚約者として王宮でお披露目パーティが行われた。
 こんな簡単に認められていいのかな。

 船にはおじ様も乗って、向こうで挙式を見届けてから帰ると言ってくれたから、安心。
 そして、初めに決めた五日目に慌ただしく旅立つことになった。
 
「向こうに着いたら、改めて求婚させてほしい」
「はい、楽しみにしてます」
「……一緒に幸せになろう」

 ライアンがとろけるような笑みを浮かべて私の手を握る。
 悪役令嬢になる前に私は幸せを掴んだ。







 

 第五王女が悪役令嬢ってありえる? 終
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

悪役令嬢攫われる!

只野ぱんだ
恋愛
簡単なあらすじ。 公爵令嬢アレクサンドラ様、婚約者に色目を使う男爵令嬢ララに抗議をする筈がいつのまにか攫われて監禁されてしまう! 一体攫った犯人は?そして何故監禁されたのか??そして謎の激強メイドの正体は??? ※サスペンスに見せかけたコメディ的な何かですw ※ちょいネタバレになりますがヒーローは初恋拗らせ系の厄介なヤンデレです。大事な事なのでもう一度言います、厄介なヤンデレです!!!

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

処理中です...