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番外編
第五王女が悪役令嬢ってありえる? 3 ※
しおりを挟むそっと抱きしめられているのに、逃れられないと思う。
これ、いかに?
「ライアン……?」
「…………あなたが腕の中にいるのを実感させて」
私は息を吐いてなんとか力を抜こうと試みる。
「……怖がらないで」
「今は怖いと思うより、ドキドキしすぎて……、もしかしてそれも聞いてた?」
「……どうでしょう? 少し、お酒飲みますか?」
「うん、緊張がほぐれるかな」
ライアンが用意してくれたのは、柑橘系のお酒。
爽やかだしさっぱりしているけど、ほんの少し苦くて甘い。
懐かしく感じるのはゆずっぽいからかもしれない。
「これはライアンの国のお酒?」
「そうです、どうです?」
「……おいしい。くせになりそう」
「よかった。もう少し、どう?」
私は首を横に振った。
それを合図にベッドに誘われた。
「あの……」
「優しくするから」
「はい……お願いします」
前世で仕事柄エロの知識はあるけれど、経験が豊富なわけでもなく。
むしろほとんどない。
この後どうすればいいの?
「……戸惑っている姿もかわいいね……、キスしたことは?」
それ、聞く?
首を横に振る。
「全部私のものにしていい?」
「はい……オネガイシマス」
いつのまにか立場が逆転した。
顎に指がかけられて、ゴクリと唾を飲んだ。
あぁ、もう、この雰囲気がダメ。
恥ずかしい。
「……カロリーナ、かわいい」
柔らかく唇が何度も重なる。
そのまま持ち上げられてベッドに横たわる。
「……心臓が破裂しそう」
そう漏らす私に、真上からライアンがのぞき込む。
「私も同じだ」
ライアンの心臓に手を押し当てた。
とくとくと早鐘を打つ。
「同じだろ?」
ずっと敬語だったのに、いつのまにか親しげな笑みを浮かべるただの男になっていて、別の意味でドキドキする。
彼と結婚したら、こんなふうに砕けた雰囲気で過ごすことになるのか。
「心臓がもたない……」
「じゃあ、心臓が止まる前に抱かせてくれ」
「あぁーーっっ!」
「ほら……棒で穴をつつかれた気分はどうだ?」
ずぶずぶに蕩けさせられた私は彼のものを深く咥えこんでいた。
じんじんする。
「痛い……。さっきの、聞こえて、たのね」
「私を棒扱いしたのはカロリーナが初めてだ」
「……ごめんなさい、怒ってるの?」
「いや……いつも興味深く思っていた。カロリーナは自由だな、と。……さて。これはただの棒ではないとこれから示すつもりだよ」
何かのエロ漫画かな?
ああ、ここはR18乙女ゲームの世界たったっけ。
そっか、そっか。
まだスタート前のはずだけどね。
そんなことを考えて現実逃避ができたのはここまで。
「カロリーナ、逃げるな」
ずちゅんずちゅんと大きく動く。
「あぁっ……ぁあっ……、ああっ……」
痛いのに気持ちいい。
さっき指で探られたところばかり狙ってくるから。
「ライアンっ」
「……中にたくさん出すから、受け止めて」
太ももを抱えて大きく揺さぶる。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
「カロリーナっ……」
私の中にじんわりと温かいものが広がる。
彼はゆっくり動きながら全てを吐き出した。
「子ども、できてるといいな。……少し休んだらもう一度しよう」
ライアンを受け入れたまま、抱きしめられる。
「早めに船に乗りたい……妊娠中の船旅とか、船で産気づくとか、考えたくない」
「それもそうだな。……一週間、いや五日で準備できるか?」
「……できる。そんなに持って行きたいものなんてないもの」
「じゃあ、他のことは任せてくれ。必ず連れて行くから」
ライアンに言われると本当に大丈夫だと思ってしまう。
この安心感、信頼感はなんだろう。
身体を重ねたからかな。
「ライアン……これからも、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼む。カロリーナがいてくれたら、私もあの国で頑張れる」
「……ライアンは、何か要職についているの? でも、最近はずっとおじ様といたのよね」
「……色々学ばせてもらっているから。向こうにもどったら父の仕事を少しずつ引き継いでいくことになると思う。……ついてきてくれるか?」
「はい。私にできることは頑張るわ」
これで国外追放、身分剥奪、もろもろのバッドエンドから逃れられるならお安い御用だ。
唇を啄まれているうちに、ライアンのアレがむくむくと大きくなる。
「……カロリーナ、幸せにする」
エロゲームみたいに処女相手に抜かずの二発目。
あ、ここ、R18乙女か。
ゆったりと揺さぶられてだんだん何も考えられなくなる。
「ライアンっ、私を……置いて、行かないでね」
翌日父から新興国の王太子との婚約が整ったと言われ、断ろうとしたら相手がライアンで驚いた。
私にはライアンがいるのっ、とか叫ばなくてよかった。
隣でおじ様がにっこり笑っていた。
貴族だと思って勘違いして確かめなかった自分も悪いけど、ライアンが正直に言っても断らなかったよってあとで彼に伝えたら、ふにゃっと笑った。
やだ、かわいい。
私だって王女だしそれなりに教育は受けてきたからある程度は対応できると思う、多分。
言葉も、私の認識では関東に住んでいる人間が東北に住むくらいの違いらしい。
うん、まぁ、何とかなると思う。多分。
さらに二日後、私は新興国の王太子ライアンの婚約者として王宮でお披露目パーティが行われた。
こんな簡単に認められていいのかな。
船にはおじ様も乗って、向こうで挙式を見届けてから帰ると言ってくれたから、安心。
そして、初めに決めた五日目に慌ただしく旅立つことになった。
「向こうに着いたら、改めて求婚させてほしい」
「はい、楽しみにしてます」
「……一緒に幸せになろう」
ライアンがとろけるような笑みを浮かべて私の手を握る。
悪役令嬢になる前に私は幸せを掴んだ。
第五王女が悪役令嬢ってありえる? 終
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