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9 弟子の紹介
しおりを挟む世界を守ったという魔法使いは探究心がすごい。
目が覚めたら身体を撫でているのが見えた。
「アオ、目が覚めたんだね。体を拭いたからさっぱりしていると思うけど、大丈夫?」
素手で触れてたように感じたけど、魔法できれいにしてくれたのかな。
「……あッ、りがとう、キョーノスさん」
声が出しづらい。そしたらキョーノスさんが蜂蜜入りの飲み物を飲ませてくれた。
「私、どのくらい眠ってたの?」
「ほんの少し。ほら、まだ外は暗いから一緒に眠ろう」
「うん」
隣にキョーノスさんが横になった。
抱き寄せて背中を撫でてくれて、甘い恋人感がある。
「しばらくこれで体は大丈夫と思うけど、僕、しばらく屋敷を離れるんだ」
「え?」
誰も知らないし不安しかない!
「学校長と顧問のほかに、僕の代わりに世界を守っている弟子たちの元へ、ほころびがないか確認に行くんだ。みんな優秀だからたいてい問題ないけどたまーにやらかす子がいるんだよね」
それっていつ休むの?
これまでプライベートの時間あったのかなぁ。
「アオと結婚したし、弟子に任せることはまかせて、色々整理したら一緒に世界中を旅したい。確か、新婚旅行って言うんだよね?」
この世界は結婚式も披露宴もないみたい。
誰も知り合い呼べないからなくてよかったけど――。
「新婚旅行、行きたい! キョーノスさんは働きすぎだし、この世界を見てみたいな」
「わかった。じゃあ明日はみんなに紹介しよう。心配することはないよ、僕も急いで片づけてくるから」
ミサイズ邸は欄間がある和モダンな感じの大きな屋敷。
畳こそないけど、キョーノスさんは日本の文化も知っているのかも!
使用人はすべてキョーノスさんの魔力で動く人形で、私専用の侍女を用意してくれたから名前を考え中。
屋敷から5分くらい歩いたところに石造りのお城みたいな研究所があって、その隣に寮があった。
けど、寮まで帰らずに研究所で寝泊まりしちゃう人も多いらしい。
「みんな、集まってくれ」
研究所のホールでキョーノスさんが指を鳴らすといろんな扉が開いてイケメンたちが現れた!
インテリイケメンに、チャラ男っぽいイケメン、キラキラした目の中学生くらいの美少年、それからゴリラ。
ん?
ゴリラ?
二度見したら、バッチリ目が合った。
訂正、イケメンゴリラだ。
「……彼女は私の妻、アオコだ。今君たちが名前を言っても覚えられないだろうから、おのおの会った時に自己紹介してくれ。では解散」
え?
おわり?
私一言もしゃべってないよ。
「キョーノスさん?」
私が小声で話しかけると、みんなが一斉にこっちを見た。
え、怖い。
「みんな、君のことを覚えたから大丈夫だよ」
みんなは記憶力いいかもしれないけど、私が名前覚えられないってなんでわかったんだろう、キョーノスさん……。
そんなことを思っている間にみんなそれぞれの研究室に戻ったらしい。
「行こう、アオ」
キョーノスさんに背中を押されて研究所を出ると、今度は馬車が待っていた。
御者も人形かなーなんて思いながら、乗り込む。
「キョーノスさん、この世界に獣人がいるんですか?」
もちろんさっきのイケメンゴリラのこと。
「いるが……もしかして弟子のことを言っているのか? あの中に獣人はいない」
「え?」
完全にゴリラだったけど⁉︎
「あの子は真面目で賢くて優しくていい子なんだけど、魔力が少ないんだ。それをおぎなうために体を鍛えてあの姿になった」
青い目もキレイだったし、イケメンなワイルドマッチョではあったかな、多分。
「なるほど」
「努力家で頑張り屋だから、僕も特別に目をかけている。まあ、ここにいる子たちはみな優秀なんだけど……あの子とは早々に会うことになるんじゃないかな」
キョーノスさんがポソッと言って、聞き返す前に馬車が止まった。
「さあ、着いたよ。王城に行って挨拶をすまそう」
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