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おまけ 小話
after story 日本で清算することになりました 1
しおりを挟む* epilogueのあとの話になります。ご都合主義、全五回予定です。
* スペンサー回です。
******
私の名前は浦野茂美。
来月に退職を控えていて、今は引き継ぎの最中。
有給の消化もあるからあと少し。
退職理由は一身上の都合。
独身、男っ気なしと見せかけて、私には5人の夫がいる。
異世界に。
あちらでの呼び名はリオナ。
いつのまにか屋敷の私の寝室の隅にできたピンク色の扉。
ここを開けると日本の私の部屋に帰れる。
まるで青いロボットがポケットから取り出したどこでもなんちゃらみたい。
用意したのは女神様だけど。
「なぜかみんな、あなたのこと覚えているの! 行方不明で大騒ぎして大変だったからね~。あなたがいなくなった当日に戻してあげるから、周りに怪しまれない程度に日本に顔出して、遠くで結婚したことにしてお別れの挨拶してちょうだい! アパートの片づけが終わったら窓辺にワインを一本置いてね。それを合図にこの扉も消えるし、みんなの記憶ももう一度消してみるからね?」
え?
なにそれ。
女神様、ちょっと面倒ごと押しつけてない?
「まさか♡ だって、あなた、5人も夫ができて幸せでしょう? ちょーっと、最後にお別れの機会をあげたんだから、許して♡」
許して、って。女神様……。
「あなたならうまくやれる! あなただからできる! 大丈夫! うまくいく!」
なにか啓蒙系の本みたい。それとも熱血コーチみたいかな。
「それに……こっそり、夫を連れていってデートもできるでしよ? 異世界デートよ♡ 誰もやったことのないことだし♪ 多分ね。……まぁ誰か一人、夫として紹介して家族を安心させてあげるといいわ。でも気をつけて? 扉をくぐって連れて行けるのは、手を繋いだ2人までだから。狭間に落ちたら戻ってこれないからね」
なるほど。
誰か1人紹介して家族を安心させる……か。
もう、揉めるよ、これ。
「1人は夫として紹介するだけ。他の4人は別の機会にデートすればいいのよ。ほら、平等に! 最終的に1人で部屋の片づけして終わり♪ さくっとやれば最短6回で終わるはず」
なるほど。
あ、納得しちゃった!
「べつにゆっくりでもいいけど、日本での生活費は自分でまかなうのよ?」
え?
ひどい!
「じゃ、がんばって♪」
「……と、いうわけで、家族に紹介できるのは1人だけになるのだけど、誰かお願いできる?」
5人の夫に集まってもらって女神様の話を聞いてもらった。
できれば、サミュエルかスペンサーにお願いしたい。
最悪セスで。
だって年上とはいえオネエ言葉だし。
「日本の平均結婚年齢は30歳くらいだから……ソロとシーヴァーはごめんね? 代わりに日本でデートしようね」
私の家族に会うのは面倒くさいと思う。
なのに3人ともそんなチャンスはなかなかないからと譲らないから結局くじ引きをしてもらい、スペンサーを紹介することになった。
「私、彼と結婚して海外に移住することになりました!」
「彼女を幸せにします。どうか私たちを認めてください。申し訳ないのですが、仕事の都合上、日本を離れなくてはならず、彼女を妻にしてから国に戻りたいのです」
スペンサーがすらすらと日本語を喋って説得する。
多分女神様の力かな。
彼をフツメンと言ったけど、日本で見たら中の上? 上の下?
真面目で誠実な人柄がにじみ出てあっさりみんなに認めてもらえた!
頼もしい!
「3日後に帰国⁉︎ 結婚式もできないのね……今から写真館に行って写真撮っておいしいご飯食べに行きましょう!」
貸衣装の併設された写真館へ問い合わせて当日予約できた。
きっと女神様のおかげかな。
ウェディングドレスを着た私とフロックコートを着たスペンサーの写真を撮ってもらった。
「リオナの世界はすごいね。シャシン欲しいな」
「そうだね、みんなには内緒で持ち帰ろう?」
家族とも一緒に写真を撮ってもらい、なんだか少し寂しい気分になる。
女神様は最後にお別れできていいって言ったけど、もう会えなくなると思うと何をするにもこれが最後って思っちゃうから。
それでも楽しくみんなで食事して、早朝の飛行機だから見送りはいらないよって笑顔でさよならした。
まぁ、私は会社に退職届け出してしばらくは引き継ぎしなくちゃいけないだろうけど。
ばったり会うような距離じゃないから言わなかった。
大雑把な家族。
説明が楽で助かるけど、なんだか少し切ない。
「落ち着いたら連絡しなさい」
「うん、じゃあね」
そのままスペンサーを連れてアパートへ戻った。
なんだかまだあの扉を空けて戻る気にならない。
「リオナ、さみしい?」
「うん……」
「もう少しここで片づけでもしながら過ごして戻ろうか」
急いで戻らなくてもいいよって、私を抱きしめるスペンサーが優しくて嬉しくて伸び上がって口づけした。
「ベッド、行こう?」
小さなシングルベッドに並んで座って口づけをする。
「リオナ……いや、ここではシゲミか……」
「……今その名前を知ってるのはスペンサーだけだね。それに、この部屋に入ったのも、ここでするのも全部あなたが初めてだよ」
煽るつもりはなかったのだけど、目元を潤ませて私をきつく抱きしめる。
「シゲミ……愛してる」
「うん。スペンサー、私も」
手早く脱がされて私の全身に唇を這わす。
「甘くて、柔らかくて、きれいだ……。シゲミはこの世界で一番、美しくてかわいい女性だ」
「もう……スペンサーっ……恥ずかしいっ……」
甘くとろけた私の中にスペンサーのアレがするりと滑り込む。
「~~~~っ‼︎」
「……っ、待って……!」
ただ繋がっただけなのに、私の中がきゅうきゅうとアレを絞り込む。
なんとかやり過ごした彼がさらに私を追い込んで何度も何度も求め合った。
信頼関係があるからなのかな、すべてゆだねてしまえるのは。
「……シゲミ……家族に認めてもらって祝ってもらえて、俺は嬉しい。この世界では俺がシゲミの夫なんだ……」
普段見せない彼の執着にきゅんとする。
「うん、そうだね。この世界ではただ1人の私の夫だよ」
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