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13 子供達は可愛いのだ!

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「父上! 喜べ。学園に入る前に必要なことはもう学び終えた。2年早く入学するぞ! どうだ、鼻が高いだろう!」

 座っている俺の前に長男のディエリーが胸を張って立ち、誇らしげにこちらを見た。

「……ディエリーは頭がいいな! 素晴らしく賢い。さすがだ」
「当然だ! それに、トリスタン伯父上から入学していいと言われたんだ」

「兄上から⁉︎ いやしかし、さすがにまだ早いだろう?」

 学園に入れるのは一般的に12歳からだが、能力が高い子は10歳から入れるし、俺もそうだった。国を動かすような高位の貴族は早いかもしれない。
 
「ディエリーはまだ8歳だ。同級生は12歳の子が多いんだぞ?」
「なにも問題ないぞ」

 問題だらけだろう!
 確かに俺達の子供なだけあって、年齢の割に賢いけれど、まだ8歳で幼い。体だって12歳の子と比べたらかなり小さい。

「家庭教師から学ぶことはもうない。簡単すぎて居眠りしながらでも問題が解ける」
「それはすごい! いや、居眠りは大問題だ! していないな? しかしだね……少し、考えさせてほしい」

 クロスランド公爵家の跡取りだから頼もしいと思ってきたが、甘やかしすぎたのか?

「少し? まぁ、いい。さっき伯父上が制服は任せろって」

 兄上~! いつの間に!

「ディエリー、また後でゆっくり話そう。伯父上は?」

 勝手なことを言う兄を問い詰めないと!

「もう王宮へ戻ったぞ。母上にも知らせてくる!」

 入学する気満々の長男がそう言って駆け出した。
 まだまだ幼くて、マナーも心配になる。
 礼儀作法の先生の前ではちゃんとできているし、俺の前だから甘えているとわかっている。けど、ふとした時に本性が出てしまいトラブルにつながったらまずい。

 シェネイと結婚してすぐに授かった長男のディエリーは俺の小さい頃と顔立ちが似ている。周りから天使のように愛らしいと言われるほどで、実際そうなのだが、賢すぎるのかよく口が回る。
 
 ディエリーが2歳を過ぎてから社交シーズンは王都で過ごすようになった。
 兄がお忍びで息抜きにやって来ては遊んでくれたし、長男もすぐに懐いた。
 兄と会うたびに何か新しく口癖を覚えたのは、周りに彼のような話し方をする人がいなかったから新鮮だったのだろう。

『安心しろ、俺がディエリーを鍛えてやる』
『はい! 俺も伯父上のような強い男になりたい!』

 強い男、とは。
 に憧れてくれないのかな、と寂しさを感じたけど、兄は国を背負うすごい男だから当然か。
 そんな兄にも今では息子が2人いる。
 アマンダに似ていて、聡明だ。
 
 兄のようにしゃべるディエリーが可愛くてちょっとほほ笑ましかったのもあって、いつか直るとおおらかに受け止めていたのもいけなかったのかもしれない。
 ディエリーの口調はそのまま定着して、性格も態度もなぜか兄に似てしまった。
 シェネイは、生まれ持ったものでしょう、って落ち着いていたけれど。

『ディエリーは妹達にとても優しいわ。きっとこれからも妹達を守ってくれると思うの』

 最愛の妻の言う通り、ディエリーは妹達をとても可愛がっている。溺愛していると言っても過言ではない。
 そんなディエリーを妹達は大好きで、いつも囲んでいる気がする。

 7歳のケイラは落ち着きがあって賢く、控えめなところも可愛い。それに、お父様大好きと言ってくれる。
 恥ずかしくなって抱きついてくるのも可愛い。結婚しないでずっと家にいてほしいくらいだが、たくさん釣書が届くことになるだろう。

 5歳のジェレーナはおしゃれが好きでお気に入りのリボンをつければご機嫌で笑顔が可愛い。1番のお気に入りのリボンが伯父からもらったものだというのが少し引っかかるが、国1番のファッションリーダーになるだろう。間違いない。

 1歳になったばかりのニコルは、おっとりしていて存在が癒しで、可愛い。
 抱きしめると赤ちゃん特有のいい匂いがしてずっと抱っこしていたくなる。もちろん最愛の妻は別格だ。
 柔らかいぷくぷくの頬は全世界を救うだろう。これからの成長が楽しみだ。

 3人の娘に共通するのは、シェネイと俺の良い部分に似て、みんな可愛いことだ。
 娘達の素晴らしいところは一日中語れる。
 もちろん息子のことも語れるが、可愛さについてではない。

 息子から報告を受けたシェネイと話し合う。
 お互いにまだ早いと意見が一致した。
 代わりに学校では習わない専門的なことを教えてくれる家庭教師が必要そうだ。剣術とかダンスも早めに始めてもいいだろう。

 家族がそろったところで、ディエリーに伝える。
 
「いやだ! 学園に入って父上の記録を塗り替えるのは俺だ! 4つ下のマルに負けたくない!」

 兄の息子の名は、上の子がマルカンドレ・ジェーで下の子がランス・ジェラードと言って、長くて呼びづらい。しかし。

「ディエリー、それでは敬意が足りないよ。ちゃんと名前で呼ぶように。それに4歳ではさすがに入学できないよ」

 まさかライバル視しているのか?
 仲良くみえたのだけど。

「本人からも伯父上からもマルでいいと言われた。もちろん、公式の場ではマルカンドレ殿下と呼んでいる」

 それから、挑むように俺を見つめて言った。
 
「父上は10歳で入学して15歳で卒業したと聞いたが、俺はマルの手本になれるように、もっと早く入学してみせるんだ!」

 息子の成長に胸がじーんとしながら、真顔で耐える。

「……ディエリー、卒業したわけではなくて家庭教師に切り替えたんだ。修了証はもらったが、記録ではないよ」
「それは学園の先生が教えることがなくなったからだと! 伯父上は18歳で卒業したと聞いた」

 兄は役に立つ人間かどうか選別していたんだと思うが……。
 派閥や人間関係をみて、時々揺さぶりをかけていたと友人から聞いたことがある。
 それに名前だけ在籍して後半は行事の時くらいしか通っていなかったはず。

「マルカンドレ殿下のお手本になりたいというのはなかなかいい心掛けね。でもね、あなたを尊敬する妹達の気持ちを考えてみて。あと2年一緒に過ごせると思っていたのよ」

 シェネイがディエリーに優しく諭す。

「お兄様……」

 長女のケイラが瞳をうるうるさせてディエリーを見つめる。
 
「お兄様、行かないで! まだわたし、名前を書けるようになっていないの……お兄様が教えてくれるって言ったから……ぐずっ」
「ディー、ディー!」

 次女のジェレーナがもう2度と会えないと思っているかのように泣き出して、三女のニコルは不安になったのかディエリーに手を伸ばす。

「ぐ、ぬぬ……」
 
 妹達の様子にディエリーがうなり、拳をぎゅっと握った。

「……10歳から入学する。……でも! 14歳で卒業するぞ、俺は父上を超えてみせる!」

 妹達に抱きつかれて困ったような嬉しそうな顔をするディエリーを見ながら、シェネイを抱き寄せた。
 妻が俺を見上げて優しく笑う。

「……頼もしいな」
「その時がきたら、楽しい学園生活が送れるといいわね」

 頷きながら思った。
 兄上には一言、言っておかないと!
 







******


 お読みくださりありがとうございます。
 この後、シェネイの学園生活の話を聞いて一緒に過ごせなかったことを嫉妬するイライアスが現れると思います。そして学園イベントをやり直す2人。もう1人生まれるかもしれません。
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みんなの感想(41件)

HIRO
2022.04.24 HIRO

9話 イライアス殿下→イライアス殿では?

能登原あめ
2022.04.24 能登原あめ

確認してきました( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )
実はイライアス、王子なので殿下で大丈夫です!
とんでも設定ですみません(* u.u)) ペコ
今度改稿する時にその辺りをわかりやすくしますね。
HIROさま、コメントありがとうございました🤗

解除
鍋
2022.04.01

あれ?
通知見逃してたみたい(。ŏ_ŏ)
番外編ありがとうございます💖
とっても賑やかで幸せな家庭!

公爵家も末永く安泰ですね。
子供が産まれた後も妻への愛情がたっぷり(⸝⸝◜𖥦◝⸝⸝)ニヤ
理想の夫だなー

能登原あめ
2022.04.01 能登原あめ

間違って更新してから非公開にすると、そのあと通知ないらしいです(。ŏ_ŏ)
鍋さまも気をつけてくださいね💦

賑やかな家族となりました!
イライアスは妻溺愛しつつ、親馬鹿でもありますね♡
鍋さま、コメントありがとうございました🤗

解除
nico
2022.03.28 nico

待っておりました💕
2人のベビーちゃん!!
なんと4人👶
仲良きことは美しきかな。
ディエリー君お兄様のミニチュア…
俺様感が…
お兄様もこんな幼少時代を過ごされたのね、しんみり。
てか、イライアス君、シェナイちゃん、子宝に恵まれ幸せいっぱい家族ですね~
下の3娘はどちらに似ても可愛いでしょう。
娘自慢も忘れませんね、イライアスパパ(笑)
また、一人ベビーが次は男の子かな〜
またまた幸せ番外編楽しみにしてます💞

能登原あめ
2022.03.28 能登原あめ

わ〜✨嬉しいです!
兄のミニチュアですよね(๑˃▿︎˂๑))
入学する頃には俺様公爵令息として……でも見た目は優しげなイライアスに似ているとなると、ギャップがすごいことに!

どの子もみんな可愛いくてしかたないイライアスパパです(ღ′◡︎‵)♡
娘達が大きくなったら、イライアスとディエリーで守ってしまうのでは⁉︎
次の子は……また何か思いついたら書きたいと思います♪
nicoさま、コメントありがとうございました🤗

解除

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