14 / 14
13 子供達は可愛いのだ!
しおりを挟む「父上! 喜べ。学園に入る前に必要なことはもう学び終えた。2年早く入学するぞ! どうだ、鼻が高いだろう!」
座っている俺の前に長男のディエリーが胸を張って立ち、誇らしげにこちらを見た。
「……ディエリーは頭がいいな! 素晴らしく賢い。さすがだ」
「当然だ! それに、トリスタン伯父上から入学していいと言われたんだ」
「兄上から⁉︎ いやしかし、さすがにまだ早いだろう?」
学園に入れるのは一般的に12歳からだが、能力が高い子は10歳から入れるし、俺もそうだった。国を動かすような高位の貴族は早いかもしれない。
「ディエリーはまだ8歳だ。同級生は12歳の子が多いんだぞ?」
「なにも問題ないぞ」
問題だらけだろう!
確かに俺達の子供なだけあって、年齢の割に賢いけれど、まだ8歳で幼い。体だって12歳の子と比べたらかなり小さい。
「家庭教師から学ぶことはもうない。簡単すぎて居眠りしながらでも問題が解ける」
「それはすごい! いや、居眠りは大問題だ! していないな? しかしだね……少し、考えさせてほしい」
クロスランド公爵家の跡取りだから頼もしいと思ってきたが、甘やかしすぎたのか?
「少し? まぁ、いい。さっき伯父上が制服は任せろって」
兄上~! いつの間に!
「ディエリー、また後でゆっくり話そう。伯父上は?」
勝手なことを言う兄を問い詰めないと!
「もう王宮へ戻ったぞ。母上にも知らせてくる!」
入学する気満々の長男がそう言って駆け出した。
まだまだ幼くて、マナーも心配になる。
礼儀作法の先生の前ではちゃんとできているし、俺の前だから甘えているとわかっている。けど、ふとした時に本性が出てしまいトラブルにつながったらまずい。
シェネイと結婚してすぐに授かった長男のディエリーは俺の小さい頃と顔立ちが似ている。周りから天使のように愛らしいと言われるほどで、実際そうなのだが、賢すぎるのかよく口が回る。
ディエリーが2歳を過ぎてから社交シーズンは王都で過ごすようになった。
兄がお忍びで息抜きにやって来ては遊んでくれたし、長男もすぐに懐いた。
兄と会うたびに何か新しく口癖を覚えたのは、周りに彼のような話し方をする人がいなかったから新鮮だったのだろう。
『安心しろ、俺がディエリーを鍛えてやる』
『はい! 俺も伯父上のような強い男になりたい!』
強い男、とは。
父に憧れてくれないのかな、と寂しさを感じたけど、兄は国を背負うすごい男だから当然か。
そんな兄にも今では息子が2人いる。
アマンダに似ていて、聡明だ。
兄のようにしゃべるディエリーが可愛くてちょっとほほ笑ましかったのもあって、いつか直るとおおらかに受け止めていたのもいけなかったのかもしれない。
ディエリーの口調はそのまま定着して、性格も態度もなぜか兄に似てしまった。
シェネイは、生まれ持ったものでしょう、って落ち着いていたけれど。
『ディエリーは妹達にとても優しいわ。きっとこれからも妹達を守ってくれると思うの』
最愛の妻の言う通り、ディエリーは妹達をとても可愛がっている。溺愛していると言っても過言ではない。
そんな兄を妹達は大好きで、いつも囲んでいる気がする。
7歳のケイラは落ち着きがあって賢く、控えめなところも可愛い。それに、お父様大好きと言ってくれる。
恥ずかしくなって抱きついてくるのも可愛い。結婚しないでずっと家にいてほしいくらいだが、たくさん釣書が届くことになるだろう。
5歳のジェレーナはおしゃれが好きでお気に入りのリボンをつければご機嫌で笑顔が可愛い。1番のお気に入りのリボンが伯父からもらったものだというのが少し引っかかるが、国1番のファッションリーダーになるだろう。間違いない。
1歳になったばかりのニコルは、おっとりしていて存在が癒しで、可愛い。
抱きしめると赤ちゃん特有のいい匂いがしてずっと抱っこしていたくなる。もちろん最愛の妻は別格だ。
柔らかいぷくぷくの頬は全世界を救うだろう。これからの成長が楽しみだ。
3人の娘に共通するのは、シェネイと俺の良い部分に似て、みんな可愛いことだ。
娘達の素晴らしいところは一日中語れる。
もちろん息子のことも語れるが、可愛さについてではない。
息子から報告を受けたシェネイと話し合う。
お互いにまだ早いと意見が一致した。
代わりに学校では習わない専門的なことを教えてくれる家庭教師が必要そうだ。剣術とかダンスも早めに始めてもいいだろう。
家族がそろったところで、ディエリーに伝える。
「いやだ! 学園に入って父上の記録を塗り替えるのは俺だ! 4つ下のマルに負けたくない!」
兄の息子の名は、上の子がマルカンドレ・ジェーで下の子がランス・ジェラードと言って、長くて呼びづらい。しかし。
「ディエリー、それでは敬意が足りないよ。ちゃんと名前で呼ぶように。それに4歳ではさすがに入学できないよ」
まさかライバル視しているのか?
仲良くみえたのだけど。
「本人からも伯父上からもマルでいいと言われた。もちろん、公式の場ではマルカンドレ殿下と呼んでいる」
それから、挑むように俺を見つめて言った。
「父上は10歳で入学して15歳で卒業したと聞いたが、俺はマルの手本になれるように、もっと早く入学してみせるんだ!」
息子の成長に胸がじーんとしながら、真顔で耐える。
「……ディエリー、卒業したわけではなくて家庭教師に切り替えたんだ。修了証はもらったが、記録ではないよ」
「それは学園の先生が教えることがなくなったからだと! 伯父上は18歳で卒業したと聞いた」
兄は役に立つ人間かどうか選別していたんだと思うが……。
派閥や人間関係をみて、時々揺さぶりをかけていたと友人から聞いたことがある。
それに名前だけ在籍して後半は行事の時くらいしか通っていなかったはず。
「マルカンドレ殿下のお手本になりたいというのはなかなかいい心掛けね。でもね、あなたを尊敬する妹達の気持ちを考えてみて。あと2年一緒に過ごせると思っていたのよ」
シェネイがディエリーに優しく諭す。
「お兄様……」
長女のケイラが瞳をうるうるさせてディエリーを見つめる。
「お兄様、行かないで! まだわたし、名前を書けるようになっていないの……お兄様が教えてくれるって言ったから……ぐずっ」
「ディー、ディー!」
次女のジェレーナがもう2度と会えないと思っているかのように泣き出して、三女のニコルは不安になったのかディエリーに手を伸ばす。
「ぐ、ぬぬ……」
妹達の様子にディエリーがうなり、拳をぎゅっと握った。
「……10歳から入学する。……でも! 14歳で卒業するぞ、俺は父上を超えてみせる!」
妹達に抱きつかれて困ったような嬉しそうな顔をするディエリーを見ながら、シェネイを抱き寄せた。
妻が俺を見上げて優しく笑う。
「……頼もしいな」
「その時がきたら、楽しい学園生活が送れるといいわね」
頷きながら思った。
兄上には一言、言っておかないと!
******
お読みくださりありがとうございます。
この後、シェネイの学園生活の話を聞いて一緒に過ごせなかったことを嫉妬するイライアスが現れると思います。そして学園イベントをやり直す2人。もう1人生まれるかもしれません。
0
お気に入りに追加
682
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(41件)
あなたにおすすめの小説
この先は君だけだと言われましても
能登原あめ
恋愛
* R18現代ものエロです。
同僚の林聡は女癖が悪い。
基本的に来るもの拒まず、入社当時は女子同士の争いで職場の雰囲気が悪くなったことも。
大学時代から彼氏のいたなみは林と関わることなんてないと思っていたけど、彼氏と別れていたことを知られてしまい――?
* ヒーローはクセがあります。いちゃいちゃラブラブものでも鬼畜ものでもありません。(同姓同名の方いらしたらごめんなさい、すごい名前生成器さま使用)
* コメント欄にネタバレ表示していないため、ご注意下さい。
* 本編は5話。おまけ小話未定(タグの変更の可能性あり)
* Rシーンには軽いものにも※マークつけます。3話目から。
* 表紙はいただいた画像を使用させていただきました。イケメン林、ありがとうございます!
愛は重くてもろくて、こじれてる〜私の幼馴染はヤンデレらしい
能登原あめ
恋愛
* R18、ヤンデレヒーローの話です。
エリンとブレーカーは幼馴染。
お互いに大好きで、大きくなったら結婚するって約束もしている。
だけど、学園に通うようになると2人の関係は――?
一口にヤンデレと言っても、いろんなタイプがあるなぁと思う作者による、ヤンデレ物語となっています。
パターン1はわんこ系独占欲強めヤンデレ。全4話。
パターン2は愛しさと憎しみと傲慢俺様系ヤンデレ。(地雷多め・注意) 全4話。
パターン3は過保護が過ぎる溺愛系微ヤンデレ。全4話。
パターン4はフェチ傾向のある変態系あほなヤンデレ。全3話。
パターン5はクールを気取った目覚めたばかりのヤンデレ。全3話。
パターン6は執着心と独占欲の塊だと自覚のある根暗ヤンデレ。全3話。
登場人物の名前は共通、章によりヒーローのヤンデレタイプ(性格)や、関係性なども変わります。
パラレルの世界(近代に近い架空の国)だと思っていただければありがたいです。
* Rシーンにはレーディングか※マーク、胸糞、地雷要素ある時は前書きつけます。(前書き、後書きがうるさくてごめんなさい)
* コメントのネタバレ配慮しておりませんので、お気をつけください。
* 表紙はCanvaさまで作成したものを使用しております。
絶対抱かれない花嫁と呪われた後宮
あさ田ぱん
BL
ヴァレリー侯爵家の八男、アルノー・ヴァレリーはもうすぐ二十一歳になる善良かつ真面目な男だ。しかし八男のため王立学校卒業後は教会に行儀見習いにだされてしまう。一年半が経過したころ、父親が訪ねて来て、突然イリエス・ファイエット国王陛下との縁談が決まったと告げられる。イリエス・ファイエット国王陛下の妃たちは不治の病のため相次いで亡くなっており、その後宮は「呪われた後宮」と呼ばれている。なんでも、嫉妬深い王妃が後宮の妃たちを「世継ぎを産ませてなるものか」と呪って死んだのだとか...。アルノーは男で、かわいらしくもないので「呪われないだろう」という理由で花嫁に選ばれたのだ。自尊心を傷つけられ似合わない花嫁衣装に落ち込んでいると、イリエス・ファイエット国王陛下からは「お前を愛するつもりはない。」と宣言されてしまい...?!
※R-18 は終盤になります
※ゆるっとファンタジー世界ですが魔法はありません。
約束を守れなかった私は、初恋の人を失いました
能登原あめ
恋愛
* R18シリアスです。直接表現はありませんが、子どもの虐待を匂わせる表現がありますので苦手な方はご注意ください。
義母の伯爵夫人からうとまれている庶子のセヴランと、女侯爵となるべく育てられた一人娘シルヴェーヌ。
領地の境目にある温室の裏で出会った二人は仲良くなる。
お互いの素性に気づいてからも、内緒でこっそり会い続けていた。
だけどシルヴェーヌがセヴランの秘密をもらしてしまい――?
* 本編およそ18話程度の予定。
* Rシーンにはサブタイトルに※をつけます。
* Canvaさまで作成した表紙を使用しております。
* コメント欄のネタバレ表示はしておりませんのでご注意ください。
愛する人がいる人と結婚した私は、もう一度やり直す機会が与えられたようです
能登原あめ
恋愛
※ シリアス、本編終了後にR18の予定です。センシティブな内容を含みますので、ご注意下さい。
「夫に尽くして、子供を産むことが幸せにつながる」
そう言われて育ったローラは、1週間前に決まった婚約者の元へ、花嫁見習いとして向かった。
相手には愛する人がいたけれど、領民を守るためにこの政略結婚を受け入れるしかなかく、ローラにも礼儀正しい。
でもこの結婚はローラの父が申し出なければ、恋人達を引き裂くことにはならなかったのでは?
ローラにできるのは次期伯爵夫人として頑張ることと跡継ぎを産むこと。
でも現実はそう甘くなかった。
出産で命を落としたローラが目を覚ますと――。
* 「婚約解消から5年、再び巡り会いました。」のパラレルですが、単独でお読みいただけると思います。
* コメント欄のネタバレ配慮してませんのでお気をつけ下さい。
* ゆるふわ設定の本編6話+番外編R(話数未定)
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
断罪ざまあ展開により俺と嫌々結婚するはずの王子のうきうきわくわくが全く隠し切れていない件について
あさ田ぱん
BL
フランクール王国の第一王子のルシアンは夜会の席で婚約者アナスタシアを断罪し婚約破棄を宣言するが、浮気や金の使い込みを暴かれ逆に断罪され廃嫡のうえ、地方への追放が決定する。
ルシアンに長年思いを寄せていた、優秀な金庫番の男、ジルベールは国王陛下より、使い込みをしたルシアンと結婚してルシアンを見張るよう命令を受ける。
ルシアンは異性愛者だからと男同士の結婚に抵抗し、この結婚を『罰』だというのだが、何故かとっても楽しそうに夫夫生活の決め事を立案してくる。
断罪ざまあされた美形の王子様攻め×真面目で優秀な金庫番だけどちょっと鈍感受け
※異世界ですが魔法はありません
※R18は後半※でお知らせします
囚われたその先に幸せが見えない
能登原あめ
恋愛
※R15シリアスです。タグと下記注意書きの確認をお願いします(タグ追加しました)
カラン殿下の婚約者として、恥ずかしくないよう頑張ってきた。
それなのに妹のティナに奪われ、みんなの前で一方的に婚約破棄された。
さらに信じていた人たちからの裏切り。
何も悪いことはしていないのに、身勝手な理由でケーリーは閉じ込められた。
* ヒロインが襲われかけるシーンあり(2話目、ややセンシティブかも?)
* この物語の世界では18歳で飲酒ができますが、現実の皆さまは20歳までお待ちください。
* ご都合主義のハッピーエンドです。
* R15相当のものにも※マークついています。今後レーティングが変わる可能性があります(念のため)
* 1話ごと文字数にばらつきあります。
* およそ14話程度。
* 表紙はCanva様で作成した画像を使用しております。
* 別名義で投稿したお話に恋愛成分等加筆し大幅に修正しました。
【R18】悪女になって婚約破棄を目論みましたが、陛下にはお見通しだったようです
ほづみ
恋愛
侯爵令嬢のエレオノーラは国王アルトウィンの妃候補の一人。アルトウィンにはずっと片想い中だが、アルトウィンはどうやらもう一人の妃候補、コリンナと相思相愛らしい。それなのに、アルトウィンが妃として選んだのはエレオノーラだった。穏やかな性格のコリンナも大好きなエレオノーラは、自分に悪評を立てて婚約破棄してもらおうと行動を起こすが、そんなエレオノーラの思惑はアルトウィンには全部お見通しで……。
タイトル通り、いらぬお節介を焼こうとしたヒロインが年上の婚約者に「メッ」されるお話です。
いつも通りふわふわ設定です。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
9話 イライアス殿下→イライアス殿では?
確認してきました( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )
実はイライアス、王子なので殿下で大丈夫です!
とんでも設定ですみません(* u.u)) ペコ
今度改稿する時にその辺りをわかりやすくしますね。
HIROさま、コメントありがとうございました🤗
あれ?
通知見逃してたみたい(。ŏ_ŏ)
番外編ありがとうございます💖
とっても賑やかで幸せな家庭!
公爵家も末永く安泰ですね。
子供が産まれた後も妻への愛情がたっぷり(⸝⸝◜𖥦◝⸝⸝)ニヤ
理想の夫だなー
間違って更新してから非公開にすると、そのあと通知ないらしいです(。ŏ_ŏ)
鍋さまも気をつけてくださいね💦
賑やかな家族となりました!
イライアスは妻溺愛しつつ、親馬鹿でもありますね♡
鍋さま、コメントありがとうございました🤗
待っておりました💕
2人のベビーちゃん!!
なんと4人👶
仲良きことは美しきかな。
ディエリー君お兄様のミニチュア…
俺様感が…
お兄様もこんな幼少時代を過ごされたのね、しんみり。
てか、イライアス君、シェナイちゃん、子宝に恵まれ幸せいっぱい家族ですね~
下の3娘はどちらに似ても可愛いでしょう。
娘自慢も忘れませんね、イライアスパパ(笑)
また、一人ベビーが次は男の子かな〜
またまた幸せ番外編楽しみにしてます💞
わ〜✨嬉しいです!
兄のミニチュアですよね(๑˃▿︎˂๑))
入学する頃には俺様公爵令息として……でも見た目は優しげなイライアスに似ているとなると、ギャップがすごいことに!
どの子もみんな可愛いくてしかたないイライアスパパです(ღ′◡︎‵)♡
娘達が大きくなったら、イライアスとディエリーで守ってしまうのでは⁉︎
次の子は……また何か思いついたら書きたいと思います♪
nicoさま、コメントありがとうございました🤗