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12 俺の護る場所 ※
しおりを挟む行きは寄り道をたくさんして王都へ向かったのに、帰りは疲れない程度に休憩しながら領地へ戻った。
キングサリが咲いていて、1年前のあの日を思い出す。
夫婦になって、クロスランド公爵とクロスランド公爵夫人に俺達の名前が変わったから、中身も追いつかないと!
「お帰りなさいませ!」
「ご結婚おめでとうございます」
「おふたりが揃っていると、和みますなぁ」
「領主様、桜が咲き始めましたよ!」
「今年は奥方様をお誘いして、『さぷらいず・でーと』はいかがです?」
「……奥方様、聞こえなかったことにして下さい!」
領民達とすれ違うたびに声をかけられる。
気さくな人々に温かく迎えてもらえて嬉しい。
ちゃんと彼らを守っていこう!
もちろん、愛する妻も。
「シェネイ、これからもよろしく。俺、頼ってもらえるようにがんばるから……いや、もっと甘えてもらえるように、かな」
結婚してから、元々の話し方に戻ってしまった。シェネイがそのほうが距離が近づいて嬉しいって言うから!
そのままの俺も好きだって何度も言ってくれるから!
俺の妻が最高。
「……もう、甘えているわ。イライアスは、私の話を聞いてくれるもの」
「シェネイ……! そんなの当たり前だよ。好きな人のことは知りたいし、シェネイだって俺の話を聞いてくれるから」
彼女は頬を緩めて、身を寄せてくるから、俺は腕を大きく広げて包み込んだ。
改装された領主夫妻の寝室の、大きなベッドでシェネイに触れる。
あれから……たくさん勉強した。
兄にそれとなく閨についての本をお薦めしてもらおうとしたら、無言で何冊か差し出されたんだ。
あの兄が何も言わないのが不気味だったから、背中を見せずに本を抱えて立ち去ったんだけど。
あの沈黙はなんだろう。
まぁ、いいや。
レベル別になったとても有益な全4巻。
他国では貴族の男子なら1冊めは必ず読むものだと後で知った。
おかげで今、シェネイのことがわかってきて、ためらいなく触れることができている。
「待って……! イライアス、そこは……っ、あっ……」
後ろから覆いかぶさって、彼女を穿ちながら胸を弄ぶ。背中にキスを落とし、片腕を腰に回した。
お互い痛かった初めての夜と違って、今は気持ち良さしかない。と、俺は思っている。
「痛い?」
「痛くない。気持ちいい、けど……っ!」
「なら、やめられない。……シェネイのなか、温かくて俺を締めつけて、すごくいいんだ……我慢したほうがいい?」
こすりつけるように揺らす。
シェネイの息が乱れ、嫌がっていないとは思うのだけど、読み間違えってこともある。
不安になってそう聞いた。
「我慢しないで。でも、私……すごく気持ちよくて、少し、怖いの」
あぁ、そっか!
後ろからって俺は興奮するけど、向かい合ったほうがお互いの顔が見えて、抱き合えていいかも。
安心感、大事!
「ごめんね、シェネイ」
本のことをそのまま試したらダメだよね。
ゆっくりと抜いて、彼女を仰向けにした。
「ん……、イライアス?」
「抱き合ってつながりたいんだ」
「え? あのっ、ああ……っ!」
彼女を待たせたくなくて、一息に挿れる。
「シェネイ、愛してる。キスしたい」
「ん……っ」
シェネイのほうから舌を絡める深いキスをしかけてきた。
「最高……」
思わず漏らすと、シェネイが熱のこもった瞳で俺をじっと見つめる。
「シェネイが俺を夢中にさせるから、たまらない」
「それは……イライアスのせい」
「そうかな? 違うんじゃないかな」
再びキスを交わしてお互いを抱きしめ合う。
どうしよう。
「朝までだって、このままでいたい」
「……いいよ」
「シェネイは俺に甘すぎるよ。本当にもうッ、大好きだ」
「私も、好き……」
だめって言われなかったから。
我慢しないでって言われたから。
朝までなら、このままでいいって!
「シェネイ、俺の本気をみてほしい!」
「え? イライアス……?」
彼女の両脚を肩にかけて、ゆっくり腰を引き、上から沈めるように動く。
「ひぁ……っ!」
「もしかして痛い? これ、シェネイの奥まで辿り着けるみたい」
シェネイの顔が赤らんで、今にも涙がこぼれ落ちそうなくらい潤んでいる。
「い、たく、ないわ……驚いて、しまって……。でも、ゆっくり動いてもらえる?」
「もちろん!」
大切な妻のためならがんばる!
のんびりとした律動は、吐精したい欲求を抑えることができた。
最初の頃よりも長く。
「あ……、イライ、アス……っ、あ、ああっ」
「シェネイ……?」
彼女の手がぎゅっとシーツを掴んでいて、さっきより声が抑えられないみたい。
俺はその手を覆うように握った。
「ゆっくりが好き?」
たくさん気持ちよくなってほしい。
そのままのリズムで、耐える。
内壁が俺自身を締めつけて、より射精感が高まった。
気持ちいい。
体を合わせる度に良くなる。
「あ、もう……っ、あぁ――」
シェネイの体が跳ねて、内壁が精を絞るとるように収縮するから、ぐっと奥に押しつけた。
「……っ、シェネイッ‼︎」
そのまま彼女の中で爆ぜる。
ぼんやりした頭のまま彼女の脚を解放した。それから背中に腕を回して転がって俺が下になる。
力の抜けた彼女の重みが心地よくて、ほっとした。
呼吸を整えながら、ぼんやり彼女の背中を撫でる。
我慢しただけ、満足感と気持ちよさがじわじわと残った。
「好き」
シェネイの声は小さかったけど、はっきり聞き取れた。
少し眠たくなったのかも。
「俺も大好き。赤ちゃん、いつやってくるかな。シェネイに似たらすごく可愛いだろうな」
「どんな子れも……可愛いわ。イライアスとの、子供らもの」
いつもよりシェネイの口が回っていない。
彼女がゆっくり瞬きした。もうくっついてしまいそう。
とても可愛くて、胸が満たされる。
「少し休もう……」
「……ん」
今すぐ抱かなくたって、妻のことは愛しむことができる。
シェネイがみじろぎした時に、俺自身がするっと抜けてしまったけれど、そのまま一緒に目を閉じる。
「おやすみ、シェネイ」
「…………」
その夜、2人で同じ夢を見た。
シェネイの産んだ男の子が見た目は俺なのに中身は兄で、俺達はすごく振り回されるんだ。
でも、近い将来そうなる気がした。
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