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2 家庭訪問しまーす
しおりを挟む診察が終わり、そっと扉を叩いて入る。
「リーズ、お待たせ」
ふぁ~。
番の匂いでいっぱいだ。
幸せ、幸せってこんなに近くにあったんだ!
「ジャノ先生、それほど待っていないですよ。それに、ここにある妊娠について書かれた本がとても面白いです。また読みに来てもいいですか?」
「もちろん! いつだって大歓迎だよ」
「ありがとうございます! 私、仕事辞めるってここに来る前に伝えたばかりなんです。……お金は大切だけど、お腹の子に何かあったら大変だから」
うん?
だいぶ先走っちゃったみたいだけど。俺がいるから大丈夫!
「そうだね。……私は医者だからこれからはお金のことは心配しなくていいよ」
「よかった……! 私、給金が入ったら好きなもの買っちゃうからいっつもお金ないんです」
え?
その状態でもし本当に妊娠していたら、大変なことになっていたぞ。
でもこれからは俺がいるから大丈夫!
がんばって稼ぐぞー!
「続きは食事をしながらにしようか。好き嫌いある?」
「ありません。食べることは大好きだし、なんでも食べます!」
「じゃあ、すぐ準備するからね」
昨日の夜、ジェノベーゼソースを作っておいてよかった。
生パスタを茹でて、ソースと和える。
にんじんのナッツサラダも作り置きしておいてよかった。
「ジャノ先生、すごい! 手早い! 私が手伝う暇がなかったです」
「いいんだ、たまたま用意があったから早かっただけだよ。さぁ、食べよう」
番が俺の作ったものを食べるって嬉しいな。
食べ物によって体が作られるわけだし……つまり、俺の作った料理でリーズを満たして作り変えたい!
甘美!
なんて甘美な誘惑なんだ!
「今度は私の得意料理も食べてくださいね。結構料理は好きなんです。ジャノ先生の好みも覚えますから」
ずきゅん。
やっぱり俺が作り変えられてもいいや!
リーズが俺のために料理を作る……想像しただけで天国に登りそう。
「……楽しみにしているよ。さぁ、温かいうちに食べよう」
もぐもぐ食べるリーズ、可愛いな。
「とっても美味しいです! どうしよう……ジャノ先生がこんなに上手だと、私ちょっと恥ずかしいかも」
「褒めてくれて嬉しいけど、リーズの手料理に勝るものはないはずだよ。楽しみにしている」
どんな料理だって天国に行けちゃうよ、俺。
「……はい。じゃあ、頑張って作ります」
番が健気で可愛い。
「この後、リーズのご両親に会いに行ってもいいかい? ご挨拶して結婚を認めてもらいたいし、早くリーズにここに住んでほしい」
「両親は野菜を作っているので畑にいると思います。まだ、子供のことは言ってなくて……」
友達に伝えたら、笑い飛ばされたらしい。
それと職場に伝えた、と。
これは早く事実にしてあげないといけないな!
「わかった。私に任せて欲しい」
「私は三か月前にこの街にやって来て医者をしているジャノと申します。娘さんと結婚させてください!」
リーズのお母さんはおっとりした雰囲気。
「あらあら、いつの間にこんな素敵な人と出会ったの? 子供だったリーズが恋人を連れてくるなんて……」
リーズのお母さんが嬉しそうに声を上げる。
お父さんは俺をジロジロみた。
「いつからだ?」
これは正直に言うべきか?
「今日よ! ジャノ先生と今日運命の出会いをしたの! それですぐに結婚を……」
お父さんがため息をつく。
「それなら、急がずともいいだろう。リーズはまだ十八になったばかりだ。一年後くらいに式を……」
「そんなのだめなのっ! だって私、妊娠してるんだもの!」
あー。
ややこしくなりそう。
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