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20   シロツメクサ

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 ミアがいなくなって平穏な毎日が戻った。
 宿屋からほど近い場所にオーブリーが家を見つけて、改装が終わり次第二人で住む予定。

 結婚式はここにいる家族だけで海豚亭にて行うことになっている。
 オーブリーの家族と私の両親にもそれぞれ手紙を出したけど、両家の関係も複雑だろうしそのうち……会える日だってくるかもしれない。
 
 私は宿屋の仕事を続けるし、オーブリーはしばらく老医師のところで働くことになった。
 それから、デーヴィドは私の結婚式が終わって落ち着いたら旅立つという。

 私たちみんなで戻ってきてって寂しがったから、名残惜しそうにしていたし、案外早く戻ってくるかもしれないねってこっそりオーブリーと話した。

 お休みの今日はオーブリーを、私の部屋に招待した。

「オーブリー、これ覚えている?」

 ハンカチに包んだ、薄茶色になったシロツメクサの花冠をみせる。
 
「懐かしいな……もしかして、これ……」
「オーブリーからもらったの。嬉しくてこっちにまで持って来ちゃった」
「……そう、ははっ……」

 なぜかオーブリーが笑いだして私を抱きしめた。

「俺はエラにしかこれをあげたことがない。初めて欲しいと言われた時は、エラが七歳くらいだったかな? 作り方を知らなくてあとで母さんに教わったんだ」
「そうなんだ」

 その当時の記憶がないし、この花冠も簡単に作っていたように思えた。
 戸惑う私の顔中にキスしてきて、ずっと笑っているから意味がわからない。

「シロツメクサの花言葉は『幸運』が一般的だけど、『私を思って』と『私のものになって』という意味があることを大人になってから知ったんだ」

「…………」
「俺は幼いエラにそんなものを渡していたのかと思うと……運命を感じるな」

 私を思って。
 私のものになって。
 
 私はずっとオーブリーしか見てなかった。
 昔から私はあなたのものだった。

 胸がいっぱいで言葉が出ない。
 穏やかな瞳が愛おしそうに私をみつめる。
 ようやく紡いだ言葉は、

「小さい頃からずっとオーブリーのものだったんだね」
「喜んじゃいけないのに嬉しいと思う俺がいる。これからずっとエラを愛し続けて、裏切らないと約束するよ」
「うん……そうしてくれたら、ずっと……幸せだね」

 嬉しいのに、涙が溢れる。
 オーブリーの大きな手が私の頬を撫で口づけを落とす。

「愛してる。これからずっと守っていくから、俺と人生を歩んでくれ」
「はい……ずっと、そばに居させてください」

 何度も唇を触れ合わせてお互いの目を見て笑い合う。

 幸せすぎて。
 大好きでたまらなくて。

 口づけが深まり、ゆったりと舌を絡め合ううちに身体が熱くなる。

「オー、ブリー……っ」
「エラ」

 もどかしい。
 お互いの間に服なんていらないのに。
 私はぎゅっと抱きついた。

「待って、エラ……一階にトムさんがいるだろう?」
「……っ、うん。……オーブリー、熱い」
「まいったな……俺の部屋に行く?」

 見上げて首を横に振る。
 少し前からオーブリーは二階の角の一人部屋に移っている。
 だけど、廊下を知り合いが通るかもと思うと落ち着かないと思う。

「我慢する……だって、結婚式まであと少しだから」

 大きく深呼吸して、オーブリーが身体を離した。

「わかった。……すごく、すごく楽しみにしてる」

 その言い方がなんだか含みがあるようで首を傾げた。

「あの……。私じゃ、そんなに楽しくないと思うの……期待しないで?」

 知らないことばっかりだし、すぐに飽きちゃってガッカリしちゃうかも。
 
 そう言った私を抱えてベッドに座った。
 ミシリ、とベッドが軋む。

「オーブリー?」
「エラ……俺はいつだってお前を求めている。俺の腕の中で乱れるのを見て楽しくないはずがない」
「えっと……あの」

 楽しそうに笑って私の服の下に手を差し入れる。
 
「ベッドは最後まで使えないな……声気をつけて」

 次の瞬間私は仰向けに倒れた。
 執拗な口づけに息が上がる。

「オー、ブリー……なん、で?」
「エラが、かわいいから」

 大きな手が私の胸をやわやわと揉む。

「んっ……」
「楽しくないはずがないのに」

 まくり上げて先端を口に含み、私を熱っぽい目で見つめる。
 かぁっと身体が熱くなり口元に手を当てた。

「いい子だ」

 はしたない音を立てながら先端を舌で嬲り時々吸い上げる。
 お腹の奥がつきんと痺れて片手でオーブリーの肩を掴んだ。
 脚の間からとろりと何かがでて下着を濡らす。
 
 触れられてもいないのに、恥ずかしい。

 もじもじとする私に気づいて、スカートの裾から滑り込んだ手が太ももを撫で脚の付け根へと向かった。
 太い指がそっと私に触れてゆっくり上下に撫でる。

「よかった……感じてくれて。気持ちいい?」

 頷く私に伸び上がってキスをする。

「かわいい。飽きるわけないのに。本当はずっとこの中にいたいんだ」

 私の口内に舌を入れるのと同時に、脚の間を撫でていた指も中に忍び込んだ。

「……っん……」

 私の中を探る指が甘い痺れをもたらす。
 
 声なんて出したくないのに、息を吐く時に音が漏れる。
 唇を覆うように口づけされて私は涙ぐむ。
 どんどん指を増やされて、苦しいのに気持ちいい。
 オーブリーの背中に腕を回して身体を引き寄せた。

「エラ……痛くないか?」
「……痛くない、よ……気持ち、いい、の……」

 耳元で吐息と共に囁かれる。

「……素直なところも、かわいい……ほら、イって」

 キスで唇を塞がれて、指がお腹側の壁を刺激しながら小さな核を執拗に撫でる。

「……ぁっ……ん……」

 身体をゆだねて、私は快楽を追う。
 イくというのが気持ちよくなることだったら、私はすぐその波に飲まれる。
 目の前で光がはじけて私は打ち震えた。
 

 
 
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