21 / 29
20 シロツメクサ
しおりを挟むミアがいなくなって平穏な毎日が戻った。
宿屋からほど近い場所にオーブリーが家を見つけて、改装が終わり次第二人で住む予定。
結婚式はここにいる家族だけで海豚亭にて行うことになっている。
オーブリーの家族と私の両親にもそれぞれ手紙を出したけど、両家の関係も複雑だろうしそのうち……会える日だってくるかもしれない。
私は宿屋の仕事を続けるし、オーブリーはしばらく老医師のところで働くことになった。
それから、デーヴィドは私の結婚式が終わって落ち着いたら旅立つという。
私たちみんなで戻ってきてって寂しがったから、名残惜しそうにしていたし、案外早く戻ってくるかもしれないねってこっそりオーブリーと話した。
お休みの今日はオーブリーを、私の部屋に招待した。
「オーブリー、これ覚えている?」
ハンカチに包んだ、薄茶色になったシロツメクサの花冠をみせる。
「懐かしいな……もしかして、これ……」
「オーブリーからもらったの。嬉しくてこっちにまで持って来ちゃった」
「……そう、ははっ……」
なぜかオーブリーが笑いだして私を抱きしめた。
「俺はエラにしかこれをあげたことがない。初めて欲しいと言われた時は、エラが七歳くらいだったかな? 作り方を知らなくてあとで母さんに教わったんだ」
「そうなんだ」
その当時の記憶がないし、この花冠も簡単に作っていたように思えた。
戸惑う私の顔中にキスしてきて、ずっと笑っているから意味がわからない。
「シロツメクサの花言葉は『幸運』が一般的だけど、『私を思って』と『私のものになって』という意味があることを大人になってから知ったんだ」
「…………」
「俺は幼いエラにそんなものを渡していたのかと思うと……運命を感じるな」
私を思って。
私のものになって。
私はずっとオーブリーしか見てなかった。
昔から私はあなたのものだった。
胸がいっぱいで言葉が出ない。
穏やかな瞳が愛おしそうに私をみつめる。
ようやく紡いだ言葉は、
「小さい頃からずっとオーブリーのものだったんだね」
「喜んじゃいけないのに嬉しいと思う俺がいる。これからずっとエラを愛し続けて、裏切らないと約束するよ」
「うん……そうしてくれたら、ずっと……幸せだね」
嬉しいのに、涙が溢れる。
オーブリーの大きな手が私の頬を撫で口づけを落とす。
「愛してる。これからずっと守っていくから、俺と人生を歩んでくれ」
「はい……ずっと、そばに居させてください」
何度も唇を触れ合わせてお互いの目を見て笑い合う。
幸せすぎて。
大好きでたまらなくて。
口づけが深まり、ゆったりと舌を絡め合ううちに身体が熱くなる。
「オー、ブリー……っ」
「エラ」
もどかしい。
お互いの間に服なんていらないのに。
私はぎゅっと抱きついた。
「待って、エラ……一階にトムさんがいるだろう?」
「……っ、うん。……オーブリー、熱い」
「まいったな……俺の部屋に行く?」
見上げて首を横に振る。
少し前からオーブリーは二階の角の一人部屋に移っている。
だけど、廊下を知り合いが通るかもと思うと落ち着かないと思う。
「我慢する……だって、結婚式まであと少しだから」
大きく深呼吸して、オーブリーが身体を離した。
「わかった。……すごく、すごく楽しみにしてる」
その言い方がなんだか含みがあるようで首を傾げた。
「あの……。私じゃ、そんなに楽しくないと思うの……期待しないで?」
知らないことばっかりだし、すぐに飽きちゃってガッカリしちゃうかも。
そう言った私を抱えてベッドに座った。
ミシリ、とベッドが軋む。
「オーブリー?」
「エラ……俺はいつだってお前を求めている。俺の腕の中で乱れるのを見て楽しくないはずがない」
「えっと……あの」
楽しそうに笑って私の服の下に手を差し入れる。
「ベッドは最後まで使えないな……声気をつけて」
次の瞬間私は仰向けに倒れた。
執拗な口づけに息が上がる。
「オー、ブリー……なん、で?」
「エラが、かわいいから」
大きな手が私の胸をやわやわと揉む。
「んっ……」
「楽しくないはずがないのに」
まくり上げて先端を口に含み、私を熱っぽい目で見つめる。
かぁっと身体が熱くなり口元に手を当てた。
「いい子だ」
はしたない音を立てながら先端を舌で嬲り時々吸い上げる。
お腹の奥がつきんと痺れて片手でオーブリーの肩を掴んだ。
脚の間からとろりと何かがでて下着を濡らす。
触れられてもいないのに、恥ずかしい。
もじもじとする私に気づいて、スカートの裾から滑り込んだ手が太ももを撫で脚の付け根へと向かった。
太い指がそっと私に触れてゆっくり上下に撫でる。
「よかった……感じてくれて。気持ちいい?」
頷く私に伸び上がってキスをする。
「かわいい。飽きるわけないのに。本当はずっとこの中にいたいんだ」
私の口内に舌を入れるのと同時に、脚の間を撫でていた指も中に忍び込んだ。
「……っん……」
私の中を探る指が甘い痺れをもたらす。
声なんて出したくないのに、息を吐く時に音が漏れる。
唇を覆うように口づけされて私は涙ぐむ。
どんどん指を増やされて、苦しいのに気持ちいい。
オーブリーの背中に腕を回して身体を引き寄せた。
「エラ……痛くないか?」
「……痛くない、よ……気持ち、いい、の……」
耳元で吐息と共に囁かれる。
「……素直なところも、かわいい……ほら、イって」
キスで唇を塞がれて、指がお腹側の壁を刺激しながら小さな核を執拗に撫でる。
「……ぁっ……ん……」
身体をゆだねて、私は快楽を追う。
イくというのが気持ちよくなることだったら、私はすぐその波に飲まれる。
目の前で光がはじけて私は打ち震えた。
13
お気に入りに追加
1,450
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
嫉妬の代償は旦那様からの蜜愛でした~王太子は一夜の恋人ごっこに本気出す~
二階堂まや
恋愛
王女オリヴィアはヴァイオリンをこよなく愛していた。しかし自身最後の音楽会で演奏中トラブルに見舞われたことにより、隣国の第三王女クラリスに敗北してしまう。
そして彼女の不躾な発言をきっかけに、オリヴィアは仕返しとしてクラリスの想い人であるランダードの王太子ヴァルタサールと結婚する。けれども、ヴァイオリンを心から楽しんで弾いていた日々が戻ることは無かった。
そんな折、ヴァルタサールはもう一度オリヴィアの演奏が聴きたいと彼女に頼み込む。どうしても気が向かないオリヴィアは、恋人同士のように一晩愛して欲しいと彼に無理難題を押し付けるが、ヴァルタサールはなんとそれを了承してしまったのだった。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる