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パターン3 (過保護が過ぎる溺愛ヤンデレ)
どうやら私はすごく好かれているらしい
しおりを挟む今日はジョシュとデボラのデートの日。
私とブレーカーも一緒に行くことになったのは、2人きりだと恥ずかしいからだって。
確かに私もブレーカーと2人きりでデートすることになったら、ドキドキして困っちゃうかも。
「おはよう、エリン」
「おはよう、ブレーカー。今日はよく晴れてよかったね」
今日のブレーカーも爽やかで、かっこいい。
雲ひとつない青空は今日一日が楽しく過ごせるって、予感がする。
ブレーカーが私の手にしたバスケットをそっと奪って手をつないだ。
「今から昼ごはんが楽しみだな」
デボラと相談して用意したランチは少し多く作りすぎたかもしれない。
デボラはジョシュの為に、私はブレーカーの為に作ったけど、少々交換できるくらいの量がある。
「そう言ってもらえると嬉しい……味は、多分大丈夫だと思う」
「エリンの作るものはいつもおいしい」
「嘘ばっかり」
オムレツが作れるようになったのが嬉しくて、ブレーカーに初めて作ってあげた時、火加減が強すぎて焦がしてしまったことがある。
片面が真っ黒に焦げて、でも半分は生でどろどろして、苦くて見た目も悪かった。
「気持ちが嬉しいんだ。それに、失敗したのはオムレツだけで」
「ほら、やっぱり失敗だって思ってたよね!」
「俺に初めて作ってくれたから、おいしかったし嬉しかった」
とろけるような笑みを浮かべるから、私は恥ずかしくなる。
「いつもブレーカーがそう言って褒めてくれるから、料理を作るのが楽しいよ。本当に腕が上がったなら、ブレーカーのおかげだね」
ブレーカーが黙り込むから、どうしたのかと視線を向けた。
「俺がいつでも食べるから、一番に持ってくるのは俺にして」
「うん……ありがとう。嬉しい」
向かいからジョシュとデボラの姿が見えて、私達も早足になる。
おはよう、って挨拶して大きな公園に向かった。
今日はデボラが観たがっていた、スノードロップにラッパスイセン 、クロッカス もそろそろ咲いているんじゃないかって。
そこは見どころがたくさんあって、学園の生徒達の人気のデートスポットでもある。
小さい頃から何度も来たことはあるけど、女の子はみんな、ここで恋人とデートしたいって憧れていた。
だからこそ、デボラ達のデートの邪魔じゃないかなぁって思ったわけだけど。
「学園の庭にも欲しいなぁ。でも勝手に植えちゃだめだよね」
「そりゃあね。でも先生に聞いてみたらどうだろな」
楽しそうにおしゃべりする2人の後ろを少し離れて歩きながら、ちょっと悩む。
恋人達のデートの邪魔をしているかも?
「エリン。俺達、別行動しようか。……ジョシュには前もって言ってあるから」
「そうなんだ。……そうだね、2人は大丈夫そうだもんね」
ブレーカーが私の耳元でささやくから少しくすぐったい。そんな私の様子を見て、笑っている。
「この先で道が別れるから、そこで別の道にしようか」
「うん」
さっきより、歩を緩めてもう少し距離をあけた。
2人がクロッカスの咲く庭のほうへ向かうのを見て、私達は別の道を進む。
「エリン、こっち」
道を外れて、庭師さんだけが通るようなところを歩いた。
「ブレーカー、こんなところ歩いて大丈夫?」
「大丈夫だよ。前に通ったことがあるから」
「そう、なんだ……」
ブレーカーはかっこいいしモテるから、女の子とデートしたことがあるのかな。
そう考えたら少し胸が痛い。
「父さんと、納品にきたことがあってさ。ここから丘のほうへ抜けられるんだ」
ぎゅっと私の手を握って、早足になる。
「ここは今、芝生を育てているところなんだ。踏まないように、こっち……」
何度も来た公園なのに、知らない場所みたい。
少し歩くとライラックの甘い香りが漂ってきて、並んで植えられている。
「まだ咲き始めだけど……エリンと来たかった」
「いい匂い。ブレーカー、ありがとう。まだみんなが知らない場所なんだよね。……私、すごく嬉しい」
ライラックの木のそばに2人きりでいると、特別な気がして胸がいっぱいで苦しくなる。
心を落ち着けようと何度も呼吸する私にブレーカーが言った。
「ねぇ、エリン。俺はエリンが好きだ。幼馴染としてだけじゃなくて、これからは一人の男として見てもらえないか?」
「……ブレーカー、あの、私……」
私も好きだって、おんなじ気持ちだって言いたいのに、涙があふれて言葉にならない。
こんなに素敵な場所で好きな人に言われたから、夢みたいに思う。
「びっくりさせたか? 俺はいつまでも待つから、ゆっくり考えて欲しい」
少し困ったような顔をして、私の目元を拭ってくれる。
優しくて、私の大好きな人。
「……ブレーカー、大好きなの」
私が彼に飛び込んで、彼も私の背中に腕を回した。
「エリン……恋人になってくれるか?」
「うん、なりたい。……なる」
ブレーカーの心音も速くて、私一人がどきどきしてるんじゃなくて、嬉しくてなぜか笑いが込み上げる。
「どうした?」
「だって……嬉しくて。ずっとブレーカーが好きだったし、公園でデートするのが夢だったから」
ブレーカーの腕がもっときつく私を抱きしめる。
「んんっ! 苦しいよ、ブレーカー!」
「……ごめん、俺も幸せを噛みしめていた」
腕を緩めて、私を見つめる。
「恋人になってからのファーストキス、してもいい?」
「……いいよ」
幼い頃とは同じようで、違うキスの意味。
ゆっくり目蓋を閉じた私に、ブレーカーはそっと優しく唇を重ねた。
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