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新しい家族編
6 アンジー争奪戦 (おまけ)
しおりを挟む*エヴァが産まれる少し前の話です。
* 今年最後の更新となります。お立ち寄りくださった皆さま、貴重な時間をさいていただき、本当にありがとうございました! 2021年が皆さまにとってよりよい一年となりますように!
******
「かあさま! だいすきなかあさまにぷれぜんとです!」
四歳になったばかりのローガンが、自分で摘んだ小さな花束を長椅子にすわるアンジーに渡した。
妻は満面の笑みを浮かべて両手で受け取り、腕を上げたローガンをそっと膝に乗せる。
あと二ヶ月もすれば新しい命が生まれるから、お腹の負担にならないように座っている時しか抱っこしてもらえないと、幼いながらわかっている。
抱っこしてもらえてずるい。
それにしても、今日も妻は美しい。
「ありがとう、ローガン。とっても素敵。とっても嬉しいわ」
あー、羨ましい!
僕だって、抱きしめたい‼︎
「……とうさま、とうさま、これどうぞ」
五歳のイーサンがじーっと僕を見つめていて、花を差し出した。
見た目も中身もアンジーにそっくりな小さな息子に気遣われてしまった。
「ありがとう、イーサン。嬉しいよ。……だけどこれは、母様のために摘んだのだろう。さぁ、一緒に行こう」
遠慮がちな長男の背中を押してアンジーに近寄る。
ちらりと僕を見上げるイーサンの顔が、幼い頃のアンジーと重なって心が温かくなった。
「さあ」
そう言うと、イーサンは恥ずかしそうにアンジーに花を差し出した。
「かあさま、どうぞ」
「ありがとう、イーサン。とってもいい匂いがするわ」
ローガンを抱いていないほうの手でイーサンを抱き寄せる。
あー!
僕の入る場所がない!
「ヴァル? ここに座って」
目線を長椅子に向ける。
いそいそと近づくと、ローガンがアンジーの膝から降りて椅子に腰を下ろした。
僕を見る表情は母親を譲らないぞと言っている。
ぐぬぬ……。
ローガンは見た目はアンジーだが、中身は僕に近いものを感じるんだ。
小さくても男には変わらない!
静かに見つめ合う僕達。
「……みんなで仲良く座りましょう」
アンジーにそう言われて、僕はローガンを膝に抱えてぴたりと妻に張りつく。
本当は甘えたいのに我慢を覚えたイーサンにはアンジーの反対側を譲った。
本当は全部僕で埋め尽くしたいんだけどね!
ローガンをガッチリ腕の中に閉じ込めたから、騒ぐかと思ったけどアンジーのお胸が触りやすくなったようでもみもみしている。
うぬぬぬ……僕のなのに。
「かあさま……さっきからおなかがうごいています。……いたくないのですか?」
イーサンがアンジーのお腹を撫でながら言った。
「痛くないわよ。……きっと、みんなの声が聞こえて、嬉しくなったのだと思うわ。早く一緒に遊びたいって思っているのかもしれないわね」
「あ……! あしのかたち! かあさま? いま、みましたか?」
「ええ、みたわ。早く出たいって思ったのかもしれないわね」
微笑ましい会話にじーんとするけど。
足の形? イーサン、布ごしによくわかったな!
さすが僕達の息子だ。
「はやくでてきてねー」
ローガンがお腹に向かって大きな声で言った。
「あとすこしよ」
みんなでお腹をそーっと撫でる。
「あかちゃん、うまれたらいっぱいぎゅーしてね、かあさま」
ローガン⁉︎
それは父様のしたいことだよ!
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