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新しい家族編

4 誕生!

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 初めて抱っこした赤ちゃんは、ふにゃっとして小さくて壊れそうでどきどきした。
 小さな手がぎゅっと握られていて足も小さいし、びっくりするくらい手脚が細い。

 でも温かくて僕の腕の中に存在している。
 アンジーのお腹にこの子がいたんだ。
 胸がいっぱいで言葉が出ない。

「ヴァル、泣かないで……」

 僕、泣いてた⁉︎
 へとへとになっているアンジーに気を遣わせちゃうなんて、夫失格だ!

「アンジー、この子を産んでくれてありがとう。アンジー、お疲れさま。アンジー、幸せをありがとう。…………アンジー、しばらく眠る?」
「……身体は疲れているけど、なんだか眠くないの。ヴァルが扉の外で大声で応援してくれたからかな」

 本当は苦しそうなアンジーの手を握って近くにいたかったけど、みんながダメだって言うから、僕は扉の外で『アンジー頑張れ』って声をかけたんだ。

 他になんて言っていいかわからなくて、後ろに控えていた子供のいる妻帯者達の意見を参考に『アンジー愛してる』とか『アンジー大好きだ』とか、『アンジーの欲しいもの、なんでも用意するよ!』とか言ったら産婆さんにうるさいって遠ざけられたけどね?

 男はああいう時何もできなくてつらい。
 酒でも呑んでろーって言われたけど、そんな場合じゃないから、代わりに眠くならない飲み物をがぶがぶ飲んだ。
 多分、身体中の水分がすべて入れ替わったと思うよ。

「何かして欲しいことある?」

 大人しく眠る我が子を産婆さんにまかせて、涙をゴシゴシ拭く。
 それから、がんばったアンジーの顔中にたくさん口づけした。

「……あのね、できるだけ子どもは手元で育てたいな……」
「もちろんいいよ! そうしよう。ほかには?」
「今は手を握っていてくれる? 安心するの。ヴァルも寝ていないんでしょ……ヴァルにも休んでほしいな」
「僕はアンジーの手を握りながら眠るから!
一日くらい寝なくても大丈夫だし、座ってここで寝てもいいし」

 離れたくないんだって伝える。
 アンジーはふわっと優しく笑ってくれたけど、産婆さん達にアンジーを休ませろって追い出された。
 僕の希望より、アンジーのほうが大事だもんね。

 息子の名前はもう決まっている。
 イーサン。

 お互いにいくつか名前を出し合って、二人で意見の合った名前。
 もちろん女の子も同様に決まっていて、今後男女合わせて十人分の名前が決まっているんだ。

 僕は一人っ子だから、仲の良い兄弟姉妹に憧れる。
 ただ、今回の出産の様子からアンジーの身体の負担を考えると、十人なんてだめだって思った。
 思い返せば、アンジーはあの時困ったように笑っていたもんね。
 
 もっともっと学んで、妻の負担を減らそう。
 もっともっと頼りになる夫に、父親に、僕はなりたい! 
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