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新しい家族編
1 もしかして?
しおりを挟む最近のアンジーはこれまで以上に朝が弱い。
もともと朝はぼんやりしてるけど、今朝なんて抱きしめているといつもよりほんの少し熱くてじんわり汗をかく。
暑い季節を少し過ぎたところだから、そんなアンジーを抱きしめていると、
「ヴァル? 熱いでしょ? 離れていいのよ」
そう言うんだけど、僕はそれでも離れたくないんだ。
あっつあつのアンジーもかわいいから。
なんかイイ。
ベタベタしていたい。
でも。
「……アンジーが熱くて嫌なら離れるよ?」
できれば、嫌なんて言われたくないけど。
アンジーが不快だと思うなら、離れるし。
ほんのちょびっとなら。
「ん……ヴァルが嫌じゃなければ、いいの。でも、朝から汗かいちゃったね」
しばらく抱きしめてアンジーを満喫していたけれど、先に起きた僕はアメリアにアンジーのために風呂を頼み、僕はさっと水浴びした。
「アンジー。すっごくお腹が空いているの?」
ティータイムに、僕がプディングをすくって食べさせると、次のスプーンを運ぶ前に小さなビスケットをアンジーが自分で口に運ぶ。
「そうなの……なんだか、すごく。すごくお腹が空くの……ヴァルの用意してくれるものはみんなおいしいから……」
恥ずかしそうに笑うけど、いっぱい食べるアンジーはかわいい。
そういえば、最近アンジーのお胸が大きくなったような?
「はぁ……かわいい」
じっと見つめたら、アンジーが首を傾げる。
「もう……ヴァルったら。……ちょっと最近胸の辺りが苦しいの。ドレスが合わなくなったら困るから、食べ過ぎに気をつけないといけないわね」
「ぜんっぜん! 気にしなくていいから! ドレスは作り直せばイイだけだしっ。まだアンジーは成長期だと思うんだ……」
僕達まだ二十歳だしね?
アンジーは今が一番かわいくて、これからもっときれいで大人っぽく、女らしくなっていくってことだよね?
僕もがんばらなくちゃ。
「そう、かな……? 私、ヴァルの隣に立って自慢できるような奥さんになりたいから、もっと」
「だめっ!」
「……え?」
アンジーが眉を下げてちょっと困った顔をするから、僕は慌てて言った。
「アンジーはすでに僕の自慢の妻だよ! これ以上磨いたら他国の王族から結婚の申し込みが来てしまうよ!」
アンジーはすばらしい女性だからね。
想像したら悲しくなって涙目になった僕をアンジーが大きなお胸でぎゅっと抱きしめてくれた。
「そんなこと、絶対ないのに……ヴァル、大好き」
「アンジー、僕の方がずっとずっと大好きだからっ! だから、安心して好きなようにしていてほしい!」
「ヴァルも……ヴァルもそうしてくれる? そのままのヴァルが好きだから」
きゅうん。
アンジーは女神様で母性に溢れていて、僕は包み込まれるような優しさに浸った。
実際におっきなお胸はふかふかで幸せで。
それから間もなく、アンジーが眠くてだるいのも、体温が高いのも、いっぱい食べちゃうのもお腹の中に僕達の子どもがいるからだと、知った。
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頬を染める愛しい妻がかわいくて幸せで胸がいっぱいになる。
「アンジー、僕、全力で守るから!」
そっと優しく包み込むように抱きしめた。
「うん……もっと抱きしめても大丈夫よ」
ぎゅって抱きついてくるアンジーも、僕もいつもより心音が早い。
僕もとうとう父親になるんだ。
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