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36 悪役騎士団長? 悪役攻め様しか勝たんという私はBLの世界に飛び込んでしまったようだ?※微?

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* 今年の干支ヒーローです! 
 正月疲れの方、正月もお仕事の方、仕事始めの方、さまざまと思いますが息抜きになればいいなと。
* Rはごく軽めで♡が飛びますのでご注意を。ちょこっと濁点喘ぎもあります。







******

 
 正統派のキラキラした攻めが好き過ぎた時期がある。
 その反動なのか、今の私は悪役の攻め様が好きだ。
 
 だけど総攻め主人公と同じくらい、悪役の攻め様はまだまだ少ない。
 書籍に同人誌、WEB小説。
 端から読んだ。
 あとは推し作家さんたちが新作を描いてくれるのを待つだけ。

「早く読みたいよー! もっと悪役の攻め様に会いたい!」

「そうよね♡ 会いたいわよね♡」
「……どちらさまですか? あー隣の部屋に引っ越してきた方? 一部屋間違ってますよ!」

 私鍵かけてなかったんだ。
 隣、女の人でよかったわー。

「あら、あなたに会いにきたのよ♡ 悪役の攻め様に会いたいんでしょ? 紹介したい人がいるの」

 誰?
 あ! びびっときた!
 販売会で会ったことがあるのかも……!
 紹介ってもしかして推し作家さんを⁉︎

「会いたいです! 会わせてください!」
「もちろんいいわよ。でもこの世界に戻ってこられないけどいいの?」

「もういいです。戻るつもりはありません!」

 私は一生この沼から抜け出せなくてもいい!
 
「いい覚悟ね♡ あなたを幸せにしてくれる相手だから。安心して飛び込みなさい♡」
「はーい! 萌えシチュもお願いしたらあるってことかな!」

「そうね♡ ふふっ♡ 頼んでみたら叶えてくれるかもしれないわ♡」
「早く会いたいです!」

「うんうん♡ じゃあ、行きましょうか♡」
「あ、ちょっと待ってください! おしゃれさせて下さいよ。化粧もー!」
「いいわよ♡ 大切なものは持ってね♡」
 








「……ネザーランドが失敗するとは思わなかったな。可愛い顔に騙されるかと思ったが、活発すぎたか」

「人気騎士でしたのに、もう表舞台での活躍は厳しいでしょうな」
「まだ使いようはある。確かレッキス侯爵は強い男を囲ってしつけ直すのが好きだったな?」

「彼は、尊厳を奪って従順な奴隷に仕上げるので……もしや、ネザーランドを奴隷市場に出すおつもりで?」

「悪くないだろう? あいつはホーランド殿下の右腕だった男だ。早く潰して正解だ」

「団長は本当に悪い男ですな」
「何を今さら。俺は騎士団の頂点、総長になるためならなんでもする」

 おや?
 察するにここは……BL演劇の練習中?
 うたた寝しちゃってたのか、いつの間にかここに一人でいた。
 あのお姉さん、見学して先に帰っちゃったのかな。一声かけてくれたらよかったのに。

 BL作家さんの作業場に行けるんだと思ったんだけど……。
 これはこれでいい!
 きっと私が楽しめるように置いてった……んだよね?

 多分壁一枚隔てたところで、なんかすごい妄想はかどる物語が繰り広げられてる。
 
 察するに流行りの異世界もの、悪役騎士団長と部下か策略の関係者との会話かな?
 人気騎士のネバーランドが主役っぽいわ。
 不憫受けなんかな。

 なんか大人になりたくないピーターなんちゃらの国みたいな名前だわ。
 こりゃきっと、逃避エンドか楽園エンドね。
 
 そしてイケボの悪役騎士団長が攻め様⁇
 あ~! 顔が見たい。
 ムッキムキのワイルドなコワモテ系なのか、すらっとした冷酷で影のある雰囲気なのか、おっちゃん……。

 イケボのおっちゃん……だと攻め様っていうより受けだ。ないな。
 やめて、夢壊さないで。
 きっと、氷の騎士様みたいなクールな見た目かもしれん。

 役に入り込んでいるところ悪いから、そーっと回り込んで隙間からのぞいた。



「なんだこの可愛い生き物は」

 ポロッと漏らして口を押さえた。
 ないわー、ないわー。
 黒くて長い耳、ベビーフェイスのウサギ獣人の悪役騎士団長?
 小柄なんだけど、ジャラジャラと派手なバッチとかフッサフサの飾りがついてるから間違いない。

 もう一人はペタッと倒れた耳がついていて、むっちりしてる。

「ロップイヤー、話はここまでだ」
「承知、では」

 ロップイヤーと呼ばれた男はジャンプした次の瞬間消えた。
 見えなかったけど、ワイヤーアクションすごいなぁ!
 
「出てこい。そこにいるのはわかっている」
「…………」

 やっぱり私のことだよね?
 さっき私、ぽろっとしゃべっちゃったもんねぇ!
 
「出て来ぬ気か……? ならば」

 めちゃくちゃ役にのめり込んでる!
 慌てて私は手を合わせながら彼の前に顔を出した。

「邪魔してごめんなさい。 それにしてもかわ、カッコいいですね!」
「……まさか、女か? 珍しい」
「えっと、はい、そうです。本当にごめんなさい。もう邪魔しません」

 まだ役に入り込んでいるのかも。
 ストイックな役者さんだわ。
 私もこの世界線に合わせて話した方がいいのかな。
 女が少ないか珍しい世界の話っぽい?

「どうしてここへ?」
「えっと、お姉……いえ女神が連れてきてくれたみたいで気づいたらいたっていうか。えーと、ごめんなさい」

 お姉さん、美人だったし女神でいいよね。

「…………」
「ここがどこの劇場世界か教えて欲しいくらいで、ははっ。か、帰ります!」

 可愛い顔なのに表情があくどい。腹黒そう。
 キュンてくるけどハマっちゃダメなタイプだ。貢がされるのが目に見えてるー。
 役者、役者ー!
 でも……キュン。

「異世界人か。女神が俺の番を連れてきたのか」

 お兄さんの耳、めっちゃ本物っぽい。
 ピクピク動いていて、毛並みがいいから触れたくなる。

「お前は人間か? 俺は気づいているだろうがウサギ獣人だ。何度も孕ませてやろう」

「えっ?」

 ウサギ設定だから、そういう口説き文句?
 ちょっと引くわー。

「俺の番、耳が悪いのか? いや、お前も俺と会えて発情しているのだろう。濃いよ」

 あ、自分で俺様設定でやっててやりすぎって思ったのかな。濃ゆいキャラだわー。
 
「恋って……」

 耳元でイケボにささやかれて、力が抜けた。
 やばいっしょ!
 知り合ったばかりの人と恋バナなんてできないよ!

「名前は?」
「宇佐美です。どうも! それじゃ……」
「どこに行くつもりだ。俺の腕の中以外にウサミの居場所はない。……逃すつもりはないのだが?」

 ずきゅん。
 ギャップがありすぎる!
 もしかして、アドリブで私も役者と思われて試されてる⁇
 異世界人の女設定なら、素でできるわー。

「俺はヒマラヤン。今すぐ俺の嫁になれ」
「いいんですか? そんなこと言われたら私、間に受けますけど!」
「あぁ、もちろん」

 あっ、楽しい……。
 カッコかわいい人に口説かれるってこんな気持ち?

「ウサミ、いつも俺のそばにいろ。守ってやる」
「はい♡」

 さりげなく抱きしめて、しれっとキス。
 そんでもって今ベッドにいるわけだけど!

「待って、待って♡ あ……っ♡」

 ウサギらしく後ろから攻めてくるんだけど!

「可愛いな。ほら、もっと俺を求めろ」
「ひぃ♡ はぁ♡ ふう♡」

 イケボ危険~!
 何回するつもりなんだろう?

「孕むまで離さない」

 へ⁉︎ 鬼畜系絶倫騎士団長?
 
「ほ、ほんとに……? もう孕んでいるかも」
「……そうか。だが、まだわからない。それにこれまでの男のことは忘れてしまえ」

 お互い初めて同士じゃないのが気に入らなかったのかー!
 ちょっと付き合ったけどすぐフラれたのよ。しかもかなり前の話!

「もうっ、ひ、ヒマラヤンの形になってるよぉ♡」
「……クッ」

 あ、なんか大きくなったかも?
 もう一押しでフィニッシュするかも⁇

「こんなに……おっきぃの、はじめてぇ♡」
「……誰と比べている……? 眠れると思うなよ?」

 なんで、なんで、なんでー⁉︎
 男子がキュンとくるセリフってネットでみたんだけど⁉︎

 あっ! もしかして間違えた?
 こんなのはじめて、だっけ?
 おっきいじゃなくて硬いとか熱いのほうが使いやすいんだっけ⁇
 なんか色々間違ったー!

「え? あっ♡ うっ♡ いいっ♡ お゛お゛っ♡♡♡」

 体から堕とされちゃうよー!
 夢が現実かもうよくわからない、けど。
 手が早くて悪い男……ダメなのに私の理想の男かもしれない。

「好きだウサミ、逃げられると思うな。地の果てまで追いかけてやる」

 悪役執着攻め様、最高ぉ!
 
 
 
 
 






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