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おまけ2 ※

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「長く待たせてごめん」

 私がシロくんの子を身ごもったことをきっかけに、仕事の休みを使って川のほとりに家を建ててくれた。
 改装したケビンさんの両親のおうちは二年ちょっとしか住めなかったけれど、ララとルルが先に番を見つけた方が住むって賭けを始めて。

 ほんの少しケビンさんを悲しませた。
 パパの近くに一生住むってことだから悲しまないでって二人が慰めていたけど。
 それはおいといて。

「そんなことないよ! 忙しいのに、ありがとう。この家でこの子を育てられるんだね……すごく嬉しい……」

 シロくんは私の腕の中で眠る娘ごとそっと包むように優しく抱きしめてくれる。
 私たちの愛から生まれた子だからアイと名づけたこの子は産まれて三ヶ月を過ぎたところで、ようやく赤ちゃんのいる生活のリズムに慣れてきたかなと思う。

 わからないことだらけで慌てることも多くて、ケビンさんが探してきてくれた育児書をシロくんと一緒に何度も読んで試している。

 ララやルルが食事の差し入れをしてくれたり、掃除を手伝ってくれたりとみんなに助けてもらいながらなんとかやっているという感じ。
 ララとルルの時は今お世話になっている分、私がお返ししたいと思う。

 シロくんはアイが産まれる前に家を仕上げる予定でがんばっていたけれど、思ったよりアイが早く産まれたことで、仕事と育児と家作り……二足どころか三足のわらじで頑張ってくれた。

 疲れているはずなのに私のことをとてもいたわってくれるから、もっともっと好きになる。
 こんなに幸せでいいのかなと、毎日思う。
 
「シロくん……大好き。私、シロくんの奥さんでほんとに幸せ。アイもシロくんがお父さんだもん。幸せだね」
「僕こそマミの旦那さんで幸せだよ。アイだってマミがお母さんだから間違いなく幸せだ」

「ふふっ……二人でまた褒め合ってるね」
「マミ、愛してる」
「私も、愛してる」

 私たちの関係は少しも変わらない。
 
 




「今夜はここに泊まっていくんだよね?」

 シロくんの大きなリュックとかばんをみて言った。

「うん、明日休みだからね。食べ物も布団もあるし、アイが使うものも余分に持ってきたから、この家に足りないものをマミに確認してもらいたいんだ」
「うん、わかった。じゃあ、さっそく夕食の準備しようかな」

 目を覚ましたアイをシロくんに預けて私はキッチンに向かう。

 カウンターに置かれた鍋には水に浸した豆が入っていて、シロくんがこの家に着いた時に準備してくれていたみたい。
 一時間もかからず煮える便利な豆だから我が家ではよく食卓にのぼる。

 事前に持ってきていたらしい木箱に根菜類が入っていたから芋と人参を取り出し、干し肉を加えて豆のスープを作ることにした。
 
 チラッとシロくんを見ると抱っこしながらベランダでおしゃべりしている。 
 アイにたくさん話しかけている姿を見ていると、とても幸せな気分。
 安心してソーダブレッド作りに取りかかった。

 シロくんの作ったテーブルも椅子も、私たちに合わせて作られているから座りやすくて身体に馴染む。
 もうすぐここで毎日ご飯を食べることが当たり前になる……嬉しい。

 テーブルは大きいのに二脚しか用意されていないのは家族が増えたら作り足すからだって。
 でも、十人は座れる大きさだから、シロくんはたくさん子どもが欲しいのかな。

 そう思って聞いたら、ケビンさんたちともご飯食べれるようにだよって、三脚分はしまってあるんだって笑った。
 今すぐは考えられないけど子どもは何人でもいいって、頬にそっと口づけられた。

「マミ、今日もおいしかった。片づけは僕がするからゆっくりしていて」
 
 




 アイのお世話をした後、眠ったのを確認してからシロくんに向き直る。
 最近の夜は連続して数時間ぐっすり眠ってくれるようになった。

「新しいおうちでドキドキして眠れないかも。シロくん、ほんとにありがとう」
「いいんだ、マミやアイのためでもあるけど僕のためでもあるから。カヤネズミの獣人はたいてい自分で家を作るよ」

「それでも、ありがとう」
「どういたしまして。…………マミ……その、今夜、いい?」

 なんとなくそろそろかなと思ってた。
 妊娠がわかってからシロくんはずっと我慢してくれていたし、アイが生まれてからも私をぎゅっと抱きしめて眠るだけだった。

「いいよ……久しぶりだから、恥ずかしい、かも」
「うん、僕もそう……でも、マミをもっと近くで感じたい」

 唇が重なり、舌が滑り込む。

「あっ……」

 口づけをすることはあっても、舌を絡め合うような日々を過ごしてこなかったことに今さら気づいた。
 体がかっと熱くなってシロくんにすがりつく。

「マミ、かわいい……」
「シロくん、ごめんね……」
「どうして?」

 口づけながら、お互いにささやき合う。

「妊娠中から、いっぱい、我慢、させちゃったかな、と思って……」
「しかたないよ。……それに今、こうして触れてる」

 シロくんの手が私の身体を撫で回る。
 やわやわと胸を揉む手が先端に触れると私は小さく声を上げた。

「見せて……すごく、大きくなったね……、ねぇ、ここ痛い?」

 寝間着を脱がされ胸の先端をまじまじと見られる。
 言われた通り、慣れない授乳で赤く腫れて痛い。

「うん、少し。恥ずかしい……あんまり見ないで」
「じゃあ、ちょっとだけ……甘い匂いがするんだね……」

 舌で優しく舐めるから脚の間がぬるぬるしてきた。
 気づいたシロくんが、そこへと指を伸ばす。

「んっ……!」
「よかった……久しぶりだから、どうかなって思ったけど……」

 そう言いながら、私の脚の間に舌を這わせる。
 気持ちいいけれど、やっぱり恥ずかしくて。
 硬くなる私に、優しい言葉をかけてくれる。
 
「マミ、かわいい……。女性らしい体になったんだね。前も今も変わらずきれいだよ」

 慎重に挿れられた指はなんなく奥に到達するけれど、ひりひりするような違和感もある。

「もしかして、痛い?」
「……痛くはないけど、……へんな感じ」
「そう……」
 
 シロくんが丁寧に私の身体をほぐしていく。
 私が熱くなって満たされたいと思うまで。
 シロくんはどうしてこんなに優しいんだろう。

 私を大好きで愛しくて大切にしたいんだって答えてくれる。
 私も同じだけ返せるかな。
 愛が溢れて身体が蕩ける。
 
「マミ」
「シロくん……」

 自分の甘えるような声に、気恥ずかしい思いをしながらもシロくんの夜だけしか見せない笑顔にきゅんとする。
 膝裏に手を添えてゆっくりと私の中にすべり込んだ。

「んぅ……。あっ……」
「だい、じょう、ぶ……?」
「うん……どうして、忘れてたのかな……こうして、抱き合うと気持ちいいこと……ごめんね……」

「気にしないで。僕にとっても番の妊娠も出産も全てが初めだから……マミを、優先、したかったんだ。…………ごめん、動いていい?」

 苦しそうな顔を見せるから私は慌てて頷いた。

「ごめんね?」

 シロくんはそう言って私を揺さぶる。
 漏れそうになる声を、手で覆って耐えていると手の上に口づけが落とされた。

「手、どけて」

 首を横に振る私に、口づけたいとささやく。

「マミ」

 動きを止めたシロくんにそっと手を外されて唇を覆われると、大きく揺さぶられた。
 私の頭の中がまっ白になって、わけがわからなくなり、シロくんが私の中で達する。

 でもすぐに元気を取り戻したシロくんに再度揺さぶられて、ごめんねって言われた意味がようやくわかった。
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